∧∧
( ‥)でっ? 誰がどう絶望するんです?
(‥ )自分が連続した系譜の一部で、便宜的に
切り出された、外界に実在なんかしない
恣意的な定義/区分だとしてだよ。
こういう話に不安を覚える人はいくらかいるけども、もっと不安を覚えるのが。
( ‥)そもそも人間には魂どころか、意識だって
実体としては存在しないだろって話は
∧∧
( ‥)ああ、不安感を覚えるみたいですねえ。
(‥ )でも、自分たちは物質が織りなす現象であって
死ねば雲散霧消する。死後の世界なんて無いって
考えははるか昔から洋の東西を問わずあった
みたいなんだよな。場合によると歓迎される
考えでもあったらしい。
∧∧
( ‥)歓迎? なんで?
無限大の地獄に堕ちて永久の苦痛を受けるよりはるかにましだから。
∧∧
( ‥)ああ、そういう。
( ‥)完全なる消滅が救済になる場合もあるって
こったな。
ある種、都市伝説的になった話でこういうのがあるそうな。大事に育てたペットは死ぬと、飼い主がくるのを天国へ至る橋のたもとで待っている。そして飼い主が来た時に一緒に橋を渡る。
∧∧
( ‥)そうしないと別れに耐えられないんですね?
(‥ )そうしないと別れたことに耐えられない。
人は大事なものを喪失することに耐えられない。自分自身を喪失することにも耐えられない。
∧∧
( ‥)だから天国を必要にすると。
しかしそもそも魂の存在を前提にする
必然性がこの宇宙にはないでしょ?
( ‥)人は物質の流れ以上のものではない。
この考えは人を地獄から救済してくれるが、
天国の破壊という虚無と恐怖をもたらす。
ようするに不等式で示すとこんな感じらしい。
なんか楽しい場所にいけるっぽい>>>消滅>>>無限大の地獄と永久の苦痛
∧∧
(‥ )なんか最近はよほど悪いことをしない限り
\- 無条件に天国へいく/いったような認識ですが。
(‥ )人の命の価値が昔より上がっているからなあ。
大事な人を失うことに耐えられないとしたら
いや、耐えられないから安らかであることを祈るんだろ。
天国と地獄うんぬん以前に、はるか太古における死後の世界観は天国でも地獄でもない、何か恐ろしくて寂しい場所だったらしいけども、誰もそれには耐えられない。
( ‥)ともあれ、人は喪失の恐怖に怯えて
自分は物質が織りなす流れだということを
否定し、それ以上を期待する。
∧∧
( ‥)でも、魂があるのならお酒に酔っぱらうのって
すごくおかしな話ですよね? 肉体の調子が悪くても
魂さんからすれば、その立場は故障した巨大ロボットを
操縦しているパイロットみたいなもんで、
肉体の不調と魂のあり方は関係ないですよね?
ロボがぐわんぐわんゆれるので魂さん、顔が真っ青、ついに「うげーーーっ」とコクピットの中で吐いてるとか言うのならともかく、人に魂があり、滅びる体と不滅の魂、この2つがあらゆる点で完全にリンクしているとするのなら、例えば不滅の魂がアルコールという滅びる物体に致命的な影響を受けているように見えるのだとしたら、その設定はずいぶん無理がある。
(‥ )まあ、関係ないのに完全にリンクしているように
一見見えるものは色々あるんだけどね。
同じ時を刻む2つの時計とかな。
∧∧
( ‥)いやいや。
渦潮を見た時、人は歓喜の声を上げるが、そのくせ自分は渦潮が持っていない本質的なものを持つと豪語するとはこれいかに?
∧∧
( ‥)でっ?
( ‥)喪失に耐えられないから必然でないものを手にするのは
まあ、良しとしようじゃないか。
だが自分が喪失に耐えられないからといって、すべてを虚偽で塗り固めようとするのなら、それは敵だ。
∧∧
( ‥)敵なら打ち倒すんですか?
(‥ )いや、虚無と喪失を彼に見せよう。
命とは結局のところ引き延ばされた緩慢な崩壊だってことを見せつけてやろうじゃないか。
∧∧
( ‥)それを知らない人は多いでしょうけど、
分からない人っているんですかね?
(‥ )生命は熱力学の法則に反してる、と言う人、
今でも時々いるだろ。
命も出会いも奇跡などでないことを教えてやれ。
生きているなんてことはただただ自己を喪失する過程なのだってことを見せてやろう。
∧∧
( ‥)便宜的に設定した自己を喪失する?
(‥ )便宜的に切り出した現象が存続を停止して
元の場所へ還ることを観測する。
二酸化炭素と水に還る。
それはしかたないじゃないか。
だけどあきらめられんかね?