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2010年4月10日土曜日

常識的な頭に体力を

 
 例えばある人が科学に関する記事を書くことになったとする。

 その人が比較的まっとうな内容を書くために一番重要な条件ってなんじゃらほい? と考えた場合。その人の頭の出来が常識的であるというのならば、


    ( ‥)そうねえ、大事なのは体力じゃないか?
 ∧∧
( ‥)? 体力ですか? 頭じゃなくて?


 いやだって、体力ない奴は本を読まんがね。せいぜい2、3冊読んで分かった気になっちまう。それも難しいことを理解しようという気力がないから、研究者の書いた本は読まない。

 せいぜい、研究者は難しいことばっかいっている、ぷんぷん、と逃げ出す口実を思いつくのがせきのやま。だけどさ、尻尾まいて逃げる前にちゃんと読もうね。逃げる時は読んでから逃げよう。それが最後の意地だ。

 体力の無い奴は物事をネットでしか調べないし、調べてもせいぜいぐだぐだのWikiどまり。やる気ない学生がてきとーにレポート書いてこれから遊びにいこうというのならともかく、仕事としてはそれでは駄目だ。


    (‥ )体力ないと辞書を引かないし、英語も読まない、
        図書館にいかない、バックナンバーを調べない
        論文を読まない、というかそもそも探さない
        英語よりも先に日本語の大切さを、とかいって
        面倒くさいことから全力で逃走。
 ∧∧
( ‥)はあ、まあねえ。
 

 体力ないと取材しないし、自分の書いた原稿だって5回ぐらいしか見直さないのではなかろうか? 若い時なら10回ぐらい見直しているうちに、誤植もさることながら、論の展開がおかしいことにも気づくだろうけども、ならば、年をとるとどうなのだ? 体力がないならどうなのだ?


     ( ‥)体力はどんどん落ちるから、40歳なんて
         なったら、まずは自分の頭と能力の衰えを
         自覚しないとまずいぜや。だいたい、ライターってのは
         40あたりからおかしくなるし。
         そもそも人は35歳を過ぎたら老人です。
 ∧∧
( ‥)まあ、それこそ今のあなたがそうなんですけどね。
    でっ? 常識的な頭ってどのくらいのレベル?


 問題集を解いていて、回答欄を見たら、自分の答えが間違っていることに気がついて、「おっかしいなあ、どこで間違ったんだろう?」とぶつぶつ言いながら参考書を読み直し、自分の式の展開を再確認するレベル。


 ∧∧
( ‥)??? はあ? それでいいの?

     (‥ )これすらできないやつがいっぱいいるじゃんか。


 確かに学校の授業では「オレ様の答えが正しいのだから問題集が間違っている!!」と叫ぶやつは(少なくとも個人的には)見たことがない。

 だが、これがいざ、進化だ、温暖化だ、隕石衝突だになると「オレ様正しいのだから、他の連中みんな馬鹿、研究者は陰謀を企てている」と言い立てる連中がごろごろ出てくる。

 ∧∧
( ‥)ああ、いますねえ。どういうわけか。

     ( ‥)問題集より論文の方が簡単だと思っているわけで
         考えてみればシュールな話なんだけどね。

 常識的な能力者で体力があれば整備された登山道なら自力で登れるだろう。

 だめな能力しかもたない人間では標識を勝手に読み間違えて、整備された山道でさえ遭難するだろう(でっ、新しい(と勝手に思った)山頂を発見しちゃうん)。

 ∧∧
( ‥)登山道とはこの場合、科学者がすでに確立した
    知識体系のことですね。体力があって標識をちゃんと
    読めるのであれば山に登ってレポートを書けると。

      (‥ )まあ、すでにある知識体系ってのは科学の
          真骨頂でもなんでもないんだろうけどね、
          逆にいうと研究者に接近すればするほど
          常識と体力だけじゃあ駄目になるんだろうなあ。

 最前線じゃあ、登頂うんぬん以前にどこが山頂なのか皆さん五里霧中で探索しているわけで、そこまで接近するのは素人には危険、危険。特にパラダイムシフトって呼称されるような事態が発生している時は特にそう。

*パラダイムシフト:現状を打破するという(触れ込みで)新しい物差しが提案されたのだが、どの物差しを使うのかで研究者同士が物差しを使った殴り合いをしている修羅場。怖い、怖い。

 

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