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2014年11月30日日曜日

物理法則を再現しない電子と物理世界のノイズを持つ紙

 
 ∧∧
(‥ )紙に絵を描く利点とは
\‐  なんだと思います?
 
  (‥ )まず第一に
      保存が効く事だな
      20年、30年は問題ない
      次に特別な読み取り機を
      必要としないことだね
 
 電子データはこの点が信用できない。というか事実として駄目だった。媒体なりメディアなり、それらが新しくなると古いデータは回収や閲覧ができなくなったり、読み取れなくなったりする。
 
 ただし、これは作業上の利点ではない。
 
 ∧∧
(‥ )作業上の利点は?
\‐  
 
  (‥ )眼で見て直に操作できる
      ことだよね
      後は紙の上に描くと
      物理世界の法則が
      効いてくることだよな
 
 ∧∧
( ‥)そりゃあ現実世界ですからね
 
  (‥ )パソコンのプログラムや
      容量では
      これは再現できないんだ
 
 いくら人間が都市に閉じ込められ、自らを飼いならしてしまった動物だとはいっても、本来はサバンナを歩いていた猿なのである。神経も筋肉も認識もホルモンも全部そういう風に設計されている。そうである以上、物理世界の法則が直に効いている紙の絵には独特な刺激がある。電子ではこれが再現しきれない。
 
 
 ∧∧
(‥ )反対に電子で絵を描く利点とは
\‐  なんでしょうね?
 
  (‥ )複製が容易であることだね
      例えばデータのやり取りが
      簡単だし
      画像の切り貼りも容易だ
      それから
      上描きしやすいよね
      その点は油絵に似ているが
      油絵は乾くのに
      時間がかかる
      だけど電子なら即座
 
 ∧∧
(‥ )電子のお絵描きは
\‐  光の波長と強度しか
    再現していない
    だから可能な芸当だね
 
  (‥ )物理世界の法則
      溶剤やコロイドのふるまい
      溶媒の揮発、顔料の固定
      そういうものを
      再現していないがゆえの
      利便性であるな
  
 つまり電子上のお絵描きが持つ長所は、物理的なシミュレーションが不完全であることの裏返しでもある。

 ∧∧
( ‥)それに電子なら
\‐  絵の具をそろえる必要も
    混ぜる必要もない
 
  (‥ )絵の具なんて
      白赤黄青があれば
      十分なんだけどな
      それでも
      混ぜるとなると
      それなりに
      空間を使わなくちゃいかん
      水や油を使うと
      事故の危険もある
 
 コラージュ、油絵的な上描き、作業のやり取り、空間の節約、安全性。
 
 このように電子は作業上の利点が多い。特に、大人数でやり取りする時には、これは便利だろう。
 
 だがむしろ 検討すべきはである。
 
 ∧∧
( ‥)お金になるのかどうかだね
 
  ( ‥)例えばの話な
    ‐/ 電子でとても綺麗で
       こったイラストを
       描く人がいるだろ?
 
 あれ、採算が取れているのか? という問題。
 
 ∧∧
(‥ )2日で描いて
\‐   支払いが3万円なら
     日給1.5万円になるけども
 
  (‥ )残念ながらイラストって
      そんな大した金には
      ならんのだわ
 
 少なくとも本のイラストはそうだ。そもそも出版社が支払える絶対的な金額がさほど多くないのである。
 
 例えばひとつの本で作者に支払われる原稿料は70万円程度だし、60万と見た方が良い。
 

 ∧∧
( ‥)10枚のイラストを描いて
    それぞれにつき3万円を
    請求すると
    それだけで30万だよね
 
  ( ‥)その場合は著者と
    ‐/ イラストレーターで
       原稿料を半分に分ける
       ことになってしまう
 
 本を書いた人からすれば、は? という話だろう。
 
 わずか10枚のイラストで、本の平均的なページ数、200ページを作った自分の取り分が半分になってしまうからだ。仮にイラストがフルカラーで見開きをまるまる占領していても、180ページ分の原稿料が、10見開き(20ページ分)と同等だ、ということになってしまう。
 
 
 ∧∧
(‥ )イラスト1枚の金額は
\‐  現実的に言えば
    1万程度で
    一冊の本に10枚とか
    そんな感じでしょうね
    イラスト1枚の完成に
    3日かかったら
    日給は3333円だね
    死んじゃうね
 
  (‥ )1万で採算が取れるイラスト
      1日ですぐ描けるもの
      それはまずモノクロだな
      そして線画だ
      さらに小さいものだ
      あまりこっても
      印刷には出てくれないしな
 
 
 電子で絵を描くと細部を拡大して作業出来る、という人もいるけど、この状況ではあまり意味がない。数センチ四方のイラストに細かい点は出てこないし、そもそも読者もそんなところまで見たりはしない。

 それならさっさと手書きで紙に描いてしまえば良い。人間はもともと眼で見て手を動かし、物を操作する動物である。いくらパソコンを使い慣れても、紙に描いた方が速い場合がある。
 
 ∧∧
(‥ )こうなると
\‐  イラストを描く時に
    電子と紙
    どっちがすぐれているか
    その争点が
    不明瞭になってくるよね
 
  (‥ )まあ基本的には
      電子であるのだ
      作ったものはデータ化して
      先方に送らなければ
      いけないわけだからね
 
 とはいえそれも、手で描いたものをスキャンすれば良いだけの話。

 つまり、
 
 パソコンの画面上で絵を描くよりも手で描く方が速く効率的で、なおかつその利点がスキャンするという余計な手間を越える場合、手書きをスキャンするという選択肢が最善の解答ということになる。
 
 ∧∧
( ‥)こうなると二者択一の話では
    ないってことになりますか
 
  ( ‥)きれいでこったイラストを
    ‐/ 効率的に描くのなら
       電子なんだがな
       需要と採算という
       現実の要素を加味すると
       異なる解が
       出てくるわけさね

 
 紙か電子か? 作業の効率だけを考えるか、あるいは採算まで考慮するのか、それで結論は人それぞれ、まるで異なるものとなろう。
 
 そして考えても見れば、紙が持つ原始性や頑強さや不便さは、人間の肉体と物理世界が持つ性質やノイズの結果でもある。だが、人間の認識は肉体によって作られているし、その肉体は物理世界の法則と性質に適合しているのだ。その延長線に物理的な紙と、紙に描くという行為があり、それが生み出す肉体への刺激がある。
 
 ∧∧
( ‥)紙の利点とは
    そこにあるのだと
 
  (‥ )物理法則を
      再現しないがゆえの
      電子の利便性
      物理法則のノイズが
      生み出す紙の刺激
      どれをどう選ぶのか
      そういうことなのだろうな

 

電子の速度で思考すると雨が止まって見える?

 
 例えばロボットが歩いている。体は機械、そしてその頭脳も機械であり、生身の部分はない。
 
 ∧∧
( ‥)でも頭脳となる
    計算機の部分には
    人間の脳からコピーした
    個人の記憶と人格が
    入っている
 
  ( ‥)機械の演算は
    ‐□ 回路を流れる電子などで
      処理されている
      つまり思考速度は光速
 
 ∧∧
(‥ )でもロボットの動きは
\‐  人間程度なんだよね
 
 (‥ )仮に音速で動けるロボットが
     いたとしても
     音速と光速ではなあ
     桁が違いすぎるよな
 
 
 人型ロボットは部品で出来ており、走るとか歩くという行為を行うと負荷がかかる。しかも可動部分である関節が非常に多い。
 
 ∧∧
( ‥)すぐ壊れるだろうし
    ましてや音速で動ける
    ロボットなんか
    たちまちパーツ交換どころか
    一回の動作でおしゃかに
    なっちゃうでしょうね
 
  (‥ )まああれだな
      出来るとしたら
      飛行機やロケットを
      電子人間が操縦するような
      そんな状況なのかなあ
 
 ∧∧
(‥ )すごく単純に考えると
\‐  電子の速度で考える電子人間は
    蛋白人間よりも
    高速で移動する物体を
    認識したり制御したりするのが
    うまいってことですかね
 
  (‥ )ただし素材の問題で
      単純な構造の物体
      飛行機やロケットでないと
      真価を発揮できない
      わけだな
 
 とはいえ、例えば自動車の運転は蛋白人間よりもうまいわけだ。反応速度が非常に速い分、事故にも素早く対応できるだろう。
 
 ∧∧
( ‥)反応速度が速い分
    蛋白人間からは
    考えられないような割り込みや
    車線変更をするだろうけどね
 
  (‥ )そして事故った場合
      事故を回避できないって
      認識できるわけだ
 
 例えば一番肝心な部分。頭脳を司る回路、これは重要な機関だから胴体に収めているのかもしれない。チタン合金の外殻で覆っているのかもしれない。
 
 ∧∧
( ‥)でもそこに猛烈な衝撃が
    かかって
    車体ごとつぶされる可能性が
    ”見えてしまう”という
    ことですか
 
  ( ‥)万が一にそなえて
    ‐/ 自分の記憶や人格を
       保存したくても
       そんな時間はないしな
 
 だが、現実世界でトレーラーが自分めがけて吹っ飛んでくる。激突まで0.5秒という状況でも、それは電子の世界から見れば、他人とやり取りを十分に出来る時間だということやもしれぬ。
 
 つまり

 「事故ナウ」

 とか
 
 「助けて!\(^o^)/」
 
 とか

   
 ∧∧
(‥ )そんなやり取りを
\‐  している時間があるって
    ことかもですね
    スレが立ったりする時間も
    あるのかな?
 
  (‥ )事故に会う事を考えれば
      電子人間本体が入っている
      機械の体を使って
      何かするのは危険だから
      端末かもしれんけどな
 
 とはいえ、本体が入っているサーバーそれそのものが破壊されるような事態。それが事故なのか戦争なのか犯罪なのかは知らないが、そういうことも起こりえよう。
 
 会社の端末が壊れちゃうよー(泣き)
 
 ですむのか
 
 じゃあみんなサヨナラ
 
 そうなってしまうのか。

 いずれにせよ、後1秒、あるいは0.5秒後には致命的な破壊が起こるという時、電子人間はそれを十分に長い時間としてはっきり認識できるということかもしれぬ。
 
 ∧∧
(‥ )電子人間さんは
\‐  噴水や雨のような
    落ちる雫とその形状の変化を
    スローモーションで
    認識できるということ
    ですかね
 
  (‥ )後、必要なのは
      認識のための
      プログラムだろうけど
      電子の速度で
      思考できるとは
      多分そういうことだよなあ

 
 
 

明滅する電子人間

 
 サーバーに自分の”意識”を移植する。
 
 ∧∧
(‥ )ようするに電子計算機に
\‐   人間を模倣させるのみならず
     自分個人を模倣させる
     そういう行為ですけども
 
  (‥ )それが電子人間
      そして
      金属や半導体の回路で
      物事を演算する
      電子人間の思考速度は
      電気の速度
      つまり光速となる

 
 単純に考えればそうであろう。ところが、機械の製造や機械の運用、増設やメンテナンスは光速よりもずっと遅い。
 
 ∧∧
( ‥)そもそも自己増殖と
    自己複製ができない機械は
    蛋白質で出来た有機人間
    つまり蛋白人間に
    頼る必要がある
    当然
    蛋白人間のエネルギー源である
    光合成と呼吸と
    化学反応の速度に
    制限されることになる
 
  ( ‥)電子人間とは
    ‐□ 植物の中に動物である
      人間の心が宿ったような
      状況なわけだな
 
 勘違いでなければ、これは大変な困難なのではなかろうか。
 
 例えば、電子人間は蛋白人間と会話できるのだろうか?
 
 自分の何倍も思考速度が遅い生物と会話するにはどうすれば良い?
 
 例えば、状況に応じて思考速度や認識の速度を落とすとか?
 
 ∧∧
(‥ )1秒間に240回の動作が
\‐   出来るのであれば
     24回まで落として
     残りの216回分の動作は
     停止することにする
 
  (‥ )いわば思考と動作の
      明滅であるね
      でも蛋白人間には
      1秒24回の動作でも
      十分なめらかに見える
 
 一方、216回分を停止して過ごした電子人間にも問題はない。明滅した1秒間24動作は、電子人間からすればあまりに無駄で遅い。この場合、電子人間とその動作の速度は本来の10分の1にまで落ちている。だが主観的には連続しており、電子人間にとっても自分の動作はなめらかだ。
 
 ∧∧
( ‥)例えば思考できる植物を
    サーバーにする
    人間の意識をそこに移植する
    有機体のサーバーなので
    思考速度は人間であった時と
    同じだが
    動作が植物である
    この場合も
    サーバー上の人間は
    休眠と覚醒を交互に行い
    それを極端な比率にすれば
    植物の成長の速度で
    移動するような
    非常にのろい動作も
    主観的には
    気にならないだろう
 
  (‥ )まあ、それと同じことを
      電子人間が
      やりだすのじゃ
      ないかなあ
 
 とはいえ、これはこれで色々な問題を引き起こすのだろう。

 例えば極端で非常に単純な状況を考えてみる。
 
 その未来の地球には、あいも変わらず都市があり、農地があり、道路があり、そこをトラックが盛んに走っている。大勢の人も道を歩いている。一見すると現在とよく似ている世界だ。
 
 だが違いもある。これらの人々は全部、電子人間の端末だ。
 
 電子人間たちは蛋白質で出来た端末を使い、サーバーを維持し、サーバーを維持するための工場を、その工場を維持するための工場と物流網と、それらを維持するための工場と鉱山を運営している。蛋白質の端末を維持するための農地があるし、食料生産工場もある。端末たちは食べ、飲み、そして排泄をしてシャワーを浴びる。服も着るし、それに必要な仕事も機械も工場も運営されている。
 
 私は電子人間だが、この蛋白世界で働いている。光速で思考できる我々にとって、この仕事は永遠に思えるような長いものだが、私たちは自分の思考を明滅させることで、蛋白世界の速度に順応できている。端末を使って工場を整備している期間は、私の主観時間では”1日”だ。だがしかし、電子人間の世界に戻ると、その間に”1000年”が過ぎている 。

 もちろん、蛋白世界の仕事の合間にも、ちょくちょく私は電子の世界へ戻る。それは蛋白世界ではほんのわずかな時間、100分の1秒程度になるはずだが、その間、私は電子世界に感覚を移して、友人たちと語らう。もちろん家族とも会話をする。
 
 だが、蛋白世界で作業する以上、私の時間は友人や家族たちとずれているのだ。蛋白世界における2時間後、娘は成長し、世代を繰り返して、もはや私が知っている娘ではなくなった。彼女は私が遺伝的な祖先だということを覚えてはいるが、私に関して知っている情報は、もうそのぐらいしか残っていない。
 
 ∧∧
(‥ )主観時間と客観時間に
\‐  あまりに極端な差があると
    人々が時間の壁の向こうに
    引き裂かれるってことが
    起こりえますよね?
 
  (‥ )電子人間の思考速度
      蛋白世界の作業速度
      電子人間の世代交代
      電子人間の進化
      電子人間の繁殖
      実際どうなるのかは
      よく分からんが
      訳が分からなくなるのは
      確実っぽいなあ
 
 
 これはhilihiliのhilihili: 蛋白人間の幻覚はなめらかに動くの続き
 
 
 
 
 
 

2014年11月29日土曜日

愛する人を守ったのはお前が能無しだからだろ?

 
 我が暮らし楽にならざり by 啄木
 
 ∧∧
(‥ )でも実際は
\−  借金しての女遊びで
    有名だった啄木さん
 
  (‥ )今だったら
      詩で人気 ネットで発覚
      大炎上で終わりかもな
 
 
 現実の啄木は26歳で亡くなってしまうが、現在の炎上した啄木がいたらどうなっただろう? 
 
 ただの引きこもりとして終わるのか、あるいは炎上が忘れられた頃、詩だけが残るのか。それが生活に愚痴をこぼしたい人たちの心をつかみ、詩だけが残るのならば、結果は同じである。
 
 ∧∧
(‥ )芸術家はこういう話が
\−  多いですよね
    迫力のある絵を残したけど
    自らが夭折するどころか
    幼い娘も死なせた
    そういう画家がいましたよね
 
  (‥ )反対にさ
      愛する人を養うために
      定職について
      絵はそれっきりになった
      奴もいるんだよな
 
 もとからつまらない絵を描く人間だった。腕も基礎もあるがそれだけだ。そして結果はそういうことである。
 
 ∧∧
( ‥)なに?
    他人も殺し自分も殺すから
    良い絵が描けるわけ?
 
  (‥ )むしろ逆で
      絵にすべてを
      集中させている
      それゆえ結果的に
      他人も自分も殺す
      そう考えるべき
 
 別に人を殺せば良い絵が描けるというわけではあるまい。

 考えてみれば奇矯なパフォーマンスを行うアーティストはこれを誤解しているのやもしれぬ。
 
 ∧∧
( ‥)彼らは
    奇矯な行動が
    才能の発露であり
    成功への道だと
    勘違いしていると
 
  (‥ )連想する行為をすれば
      同じ結果が得られる
      そう考えているだな
      類感呪術の一種かもね
 
 実際には間違いだ。人を殺し、自分も殺したのは結果でしかない。原因はすべてを創作に集中させたその集中力だろう。奇矯で放蕩な行動は結果でしかない、結果である奇行をまねても、それは原因に遡及したりはしない。因果関係が逆なのである。
 
 ∧∧
(‥ )それでも
\−  芸者遊びをする理由には
    なりませんけどね
 
  (‥ )そういうことをしながら
      それがなかったかのように
      我が暮らし楽にならず
      そう平気で言える
      それを平気で書き残せる
      それはまっとうじゃないが
      それが才能なんじゃね?
 
 いや、それこそが才能の結果であると見るべきか。
 
 それを考えればつまらない奴が愛する人の命を守ったのは当然であろう。
 
 愛する人の命を守ったからつまらない奴に成り下がったのではない。能無しだから愛する人を守ることができたのだ。
 
 



 
      
 

合理主義者が極端な利己主義者の擬態である可能性

 
 ∧∧
( ‥)つまり合理主義者
    というのは
 
  ( ‥)あれだろ手持ちの
    −□ わずかな前提から導いた
      結論の正しさに拘泥する
      人間だろうな
 
 手持ちのわずかな前提から答えを導く
 
 多分、論理的な人間だからなのだろう
 
 導いた答えに拘泥する
 
 多分、正しさに固執する人間だからだろう
 
 その結論に沿って断固として改革を進める
 
 それはつまり、他人の話を聞かない人なのだろう

 
 ∧∧
(‥ )話を聞かない人なら
\−  わずかな前提だけから
    理屈を展開するでしょうね
 
 (‥ )結論を正しいと信仰する
     正しさに固執する
     現実を見ても結論を変えない
     つまり話を聞かない
     なぜなら正しさに
     確信を抱いているから
     まあ
     整合的な行動であるな
 
 例えばの話、人間も含めて生物の大半には性というものがある。異性と遺伝情報を交換して混ぜ合わせないと子孫を作ることができない。そうでない、単一で繁殖できる生物と比べると、その効率は50パーセント。なんと半分しかない。
 
 ∧∧
( ‥)そして性を二次的に放棄して
    自分で自分の子供を産んで
    クローンで増えるようになった
    種族が幾つもいる
 
  ( ‥)繁殖が非常に効率的になる
    −□ 数は増やせるはずだし
      実際そうなのだが
      どうやら
      病原体や寄生虫の出現で
      数の増加を押さえられて
      しまうらしい
 
 それは均一なクローンが持つ最大の弱点であった。どれも同じだから全員が同じ弱点を共有している。その弱点を突くことに特化した敵が現れたら全滅は必至。
 
 ∧∧
(‥ )農業でも単一の品種に
\−  特化するのは非常に危険だと
    言われるよね
 
  (‥ )アイルランドは
      ジャガイモが全滅して
      大飢饉を招いて
      大量の餓死者が出たし
      1991年
      青森の果樹産業が
      台風の直撃で大損害を
      受けたのも
      そのせいだろうな
 
 *青森は果樹産業が非常に発達しており、その果樹はほとんどがリンゴであり、そして当時、そのほとんどが品種の”ふじ”であった。条件と収益が良いからそうしたわけで、この特化には必然かつ正当な理由がある。だがこれは、収穫期に異例の台風が直撃するとすべてが同時に被害を受けてしまうことを示していた。
 
 ∧∧
( ‥)こうした時折起こる危険に
    対抗するために
    生物は遺伝子を混ぜ合わせ
    性を作り
    効率の悪い繁殖様式を採用し
    多様な品種の育成が奨励され
    あるいは
    それができない場合
    いざという時の保険として
    お金を積み立てる
 
  (‥ )そういうのを
      無駄だ無駄だと言うのは
      簡単なんだよな
      事実、
      それらを切り捨てると
      短期的には利益が
      上がるしね
 
 ∧∧
(‥ )言い換えると合理主義者や
\−  改革者は短期的な利益を
    上げることができるけど
    長期的には不利益を
    もたらすのだと
 
  (‥ )企業の立て直しを請け負う
      辣腕経営者なんかは
      そういう連中かもな
 
 確かに、改革者という者は、自分の正しさを確信しなければあんなことは出来まい。正しさを確信しているから人間を切り捨てられるし、他人の意見を聞かないから無駄に精力的に、そして熱心に邁進できるのである。
 
 ∧∧
( ‥)でも長期的には
    大破壊をもたらしうると?
 
  (‥ )辣腕経営者なんて
      任期は数年で
      逃げ出すだろ?
      

 論理的な人間は他人の話を聞かないし、世界観がものすごく単純で物事をすぐに割り切ろうとする。そのくせすぐに逃げ出すように見える。これには合理的な理由があったと見るべきであろう。
 
 ∧∧
(‥ )合理的な判断は
\−  近視眼的な行動で
    それは長期的には破滅を招く
 
  (‥ )あいつら合理主義者たちが
      すぐに逃げるのは
      必然の理由があり
      計算づくだと
      見るべきだろうな
 
 実際、人間の意識なんてのは脳が行っている演算のごく表面でしかないのだ。
 
 それを考えれば、合理主義者どもが言う、”合理的”という言葉は信用できるものではない。いや、そもそも彼らの意識や自覚や心すら信用できるものではない。
 
 合理性をわめくその口と心の奥では、本人も気づいていない計算が延々と行われ、どれだけ自分の利益になるのか、それだけのために神経細胞がソロバンをはじいているだろう。なんといっても合理主義者なのである。そうしない理由はない。
 
 合理主義者とは、むしろ極端な利己主義者の社会的な擬態と見るべきかもしれぬ。
 
 あまりに擬態が完璧すぎて、彼らは自分たちが詐欺師であるということすら自覚していないのではないか?
      
 
 ∧∧
(‥ )合理主義者とは
\−  真っ先に排除すべき敵だと
    考えるべきですかね?
 
  (‥ )あと、あれな
      短期的には不利益だが
      長期的にはこれが必要だ
      そういう意見や
      改革の方をこそ
      聞くべきだということかも
      しれんな
 
      

2014年11月28日金曜日

蛋白人間の幻覚はなめらかに動く

 
 機械の演算で動作をシミュレーションし、現実の世界を擬似的に再現する仮想現実。
 
 ところで、単純に考えた場合、電子の世界に移植された電子人間の思考速度は、回路を流れる電気の速度、つまり光速に到達するのではなかろうか?
 
 そして人間の認識もまた演算。
 
 なれば、機械の演算と電子人間の認識は同じ速度。
 
 だとすると電子の世界に心を移植して、電子世界の仮想現実で楽しく過ごそう、というSF的な欲望。あれはうまくいかないのではないだろうか?
 
 機械の演算と認識の速度が同じなら、蛋白人間にはなめらかに見える仮想現実の風と水の流れも、電子人間にはカクカクしたコマ送りに見えるのではないか?
 
 とっ、ここまで考えて
 
 ∧∧
(‥ )でもそうだとしたら
\−  蛋白人間の幻覚も
    動作はカクカクのコマ送りに
    見えるはずだけど
    どうもそうじゃない
    みたいですよね?
 
  (‥ )蛋白人間、つまり我々の
      脳が作り出す幻覚と
      我々の認識は
      原理的に同じ速度な
      はずだからな
 
 だが、どうやら、話からすると幻覚というのはなめらかに動くものらしい。少なくともカクカクとコマ送りに見えるという話は聞いたことが無い。
 
 夢もそうだ。あれがカクカク動くというのは聞いたことが無い。
 
 ∧∧
( ‥)仮想現実
    つまり幻覚を動かすことと
    その幻覚を認識することは
    まるで別のことだ
    そういうことですかね?
 
  ( ‥)現実にある脳の損傷には
    −□ 風景がコマ送りに
      見えちゃうのが
      あったけども
      それは
      なめらかな動作の認識は
      脳が編集作業をした
      結果であることを
      示唆しているように
      見えるけども...
 
 この理解が正しいのかどうか。それは確認しなければいけないけども、これを踏まえると
 
 ∧∧
(‥ )ネットの世界に意識を移植して
\−  不死になり
    仮想現実の世界で永久に
    楽しもうという
    引きこもり的な発想は
    一応、可能だということですか
 
  (‥ )問題はやはり
      容量の争奪戦が起こること
      電子世界の電子人間には
      独自の淘汰圧がかかるから
      人間じゃなくなるし
      蛋白世界の道楽や
      それを楽しむ認識自体を
      捨て去る方向へ進化が
      進むことだろうな
 
 敵のサーバーを物理的な攻撃で破壊するということもありえよう。サーバーを占拠して相手の情報を消し、サーバーの容量を再利用するのが最前だろうが、それができないのなら、敵をサーバーごと抹殺するのは次点の策である。
 
 サーバーの物理的破壊によって数十万の電子人間が死ぬ。
 
 ∧∧
(‥ )都市部の空襲、核攻撃で
\−  大勢の蛋白人間が死ぬのと
    同じだよね
 
  (‥ )違うのは
      サーバーは小さいから
      防御を固めやすいこと
      その反対に攻撃を
      しぼりやすいこと
      蛋白人間と違って
      媒体そのものが
      破壊されたら
      電子人間は
      即座に死んでしまうこと
      そこだよなあ
 
 蛋白人間は食料と酸素と水があれば生存できる。蛋白人間の媒体は地球全体なので、サーバー全部の破壊に相当するのは地球破壊だ。その点では蛋白人間は電子人間や人工知能よりもはるかに頑強だろう。
 
 ∧∧
(‥ )電子人間さんは
\−  余裕のある人なら
    自前のサーバーを買って
    シェルターに隔離するのでは
 
  (‥ )核兵器の電磁パルスからも
      防御できるようにな
      できれば攻撃後に
      自力で退避や
      移動もしたいから
      戦車にサーバーを
      乗っけるとかなあ
 
 軍用車両なら物理的な都市壊滅後でも移動は楽だろう。
 
 ∧∧
( ‥)電子の肉体を防衛するために
    機械の体を持つ
    機械の体を維持するために
    あくせく働く
    さらには蛋白質の肉体を
    持つようになったりね
 
  ( ‥)存続するためには
    −□ 一見すると
      無駄である保険を
      幾つも用意しなければ
      ならないわけだ
      そのために
      甚大な維持費を
      支払う必要がある
 
 考えてみれば人間など多くの動物が男性と女性という性を持つ、これこそが代表的な無駄のひとつであろう。実際、分裂で自分の数を増やせるのなら、配偶者を養う必要も、探す必要もなく、簡単に子孫を残せるのである。男女が無駄な存在であることは明らかだ。
 
 ∧∧
(‥ )でも男女がなく
\−  遺伝子の交換と混交がない
    そういうクローン集団は
    外敵、寄生虫、病原体の
    攻撃に弱く
    全滅することもある
 
  (‥ )無駄だ無駄だ
      そう言って
      合理性を追求する人間は
      大概の場合
      近視眼なんだよな
      大事なパーツを捨てて
      後から慌てるのだ
      そのくせ
      その合理主義ゆえに
      ネットで永久に
      仮想現実を楽しめるなんて
      妄想を抱くわけよ
 
 実際、以上を考慮すれば、ネット世界で永久に仮想現実を楽しむということが技術的には可能でも、原理的に不可能であることは明らかだろう。この世界は、合理主義者たちが思い描く単純な御都合主義のようには振る舞わない。
 
 ∧∧
(‥ )貧乏な電子人間は
\−  保険として機能する
    物理的な肉体を
    買えないし
    維持も出来ないという
    過酷な現実
 
  (‥ )そして豊かな電子人間は
      自前の物理的肉体を
      維持するために
      仮想現実を楽しむことなく
      ひたすら働き続けるの
      だろうなあ
   
 
 
 これはhilihiliのhilihili: 電子の心は化学反応の牢獄に捕われるの続き

 
 
 

電子の心は化学反応の牢獄に捕われる

 
 人間の心は物質の影である。心とは神経細胞の配置とそれが持つイオン勾配と電位であり、その他、諸臓器が作り出すホルモンなどの作用から成り立っている。
 
 その有様が完全に解明された未来。ついに人類は脳を走査し、個人の記憶をネット上に移し替えることに成功した。肉体を擬似的に再現したプログラムで記憶を動かすことで、人は電子の世界で自在に肉体を選ぶことさえ出来るようになった。
 
 ∧∧
(‥ )でっ? サーバーの容量を
\−  どのぐらい食うのですかね?
 
  (‥ )これ
      一人の人間につき
      一人分の容量で
      満足できる話では
      ないんだよね
 
 サーバーがふっとんだ。
 
 ∧∧
( ‥)電子人間しんじゃったー
    
  ( ‥)本体である人間
    −□ つまり蛋白質の肉体を持つ
      オリジナルの蛋白人間は
      怒り狂うだろうな
 
 確かにオリジナルである自分が死んだわけではない。蛋白世界で生きている自分が死んだわけでもない。だが、自分の電子的な分身が消滅したのだ。端末を介して電子の向こうにいる自分とやり取りしていた会話と、その過去ログだけがむなしく残った。電子の分身が返信を返すことはもう二度とない。
 
 被害者たちがサーバー会社を襲って、技術者もプログラマーも社長も平も、全員、ぶち殺すこと確実である。
 
 ∧∧
(‥ )予備が欲しいよね
\−   維持費はいくらかな?
 
  (‥ )人間一人分の記憶と
      人間一人分の記憶を
      正しく動作させる
      プログラム
      それを維持するために
      毎月いくら払うのか?
 
 例えば、金持ちは幾つも自分のコピーを作るのかもしれぬが、一般人は二人ぐらいだろうか? 
 
 ∧∧
( ‥)貧乏だと電子人間を
    一人維持するのが精一杯
    いや
    そもそも一人も電子人間を
    持つことができないのかも
 
  (‥ )伝統的な生活のまま
      蛋白世界で生きて
      死んでゆくだけの貧乏人
      維持費がはらえず
      活動を停止された
      貧乏な電子人間
      そして
      蛋白世界で維持費を
      払いつつ
      複数の電子コピーを
      生かし続ける富裕層
 
 
 なんにせよ、サーバーの容量はあっという間に飽和してしまうんじゃなかろうか?
 
 ∧∧
(‥ )あるいはあれだね
\−   飽和するまで
    電子人間の人口が増大する
    のだろうね
 
  (‥ )電子人間も働くのだろうな
      自らを維持するサーバーを
      維持するために働くのだ
      蛋白人間が
      畑をたがやすのと
      同じだよね
      ご苦労なこった
 
 それに、いずれは電子人間のオリジナルである蛋白世界の蛋白人間は死ぬのである。電子人間が電子の世界で働くのは当然のこと。電子人間は親である蛋白人間亡き後、自活しなければいけない。
 
 そしてできれば可能な限り、電子人間たち自身も自分のコピーを作らねばならない。そうしない者は遅かれ早かれ存続が停止するだろう。生き残るものは自らのコピーを可能な限り増大させようと目論むものたちだ。
 
 ∧∧
( ‥)やっぱりサーバーの容量は
    あっという間に飽和して
    しまいますか
 
  ( ‥)電子人間の進化速度って
    −□ どのぐらいなんだろうな?
 
 記憶と肉体を模倣したプログラム。それをコピーする速度は単純に考えれば相当速いのだろう。仮に完全な自分のコピーを作るのに10月10日かかったとしても、それでもなお蛋白人間の世代交代に比べれば数十倍の速度となる。蛋白人間の一世代は、出産と誕生で終わるわけではない。
 
 ∧∧
(‥ )むしろ電子人間は
\−  サーバーの増設速度に
    制限されるんじゃないですかね
 
  (‥ )あるいはサーバーと
      それを維持する
      電力網と工場群と物流の
      発展速度に制限される
      そういうことだろうな
 
 もちろん、機械は自己複製できない。部品で出来た機械は原理的に自己複製が無理だとも言える。端的に言うとSFで出てくるような機械生物は存在しえない。
 
 だとしたら、究極的に言えば電子人間は、工場群を維持するためのユニット、つまり、蛋白人間と蛋白質の製造工場、要するに田畑や牧場の生産に制限されるのだとも言える。

 ∧∧
( ‥)電子人間は究極的には
    光合成の速度に制限される??
 
  (‥ )速度自体をある程度
      上げることは可能だな
      現在の我々が
      やっているように
      圧縮された
      太陽エネルギーである
      石油を燃焼すれば
      物流は効率的になる
      石油が尽きても
      核融合があれば持続できる
 
 だが、化学反応の速度まで上げるのは事実上無理な話だ。
 
 ∧∧
(‥ )やはり電子人間は
\−  蛋白世界とその化学反応の
    速度に依存すると
 
  (‥ )でも世代交代自体は
      我々よりも速いのだ
 
 これは、やはりあっという間に飽和することになるのだろう。
 
 誰か一人、それが蛋白人間なのか、あるいは電子人間なのかは知らないが、とにかくたった一人で良い。自分のコピーをとにかく増大させて、使える容量をまずは占拠してしまえ。そう考えたら奴がいたら、一気にこれが進む。
 
 ∧∧
(‥ )法律で規制するべきですね
\−
 
  (‥ )だけどこんなことを
      やり始める奴が
      出てきたらどうする?
 
 Aさんの記憶と私Bの記憶を半分ずつ混ぜた電子人間を2人作りました。彼ら電子人間はは私そのものでもなく、そしてAさんそのものでもありません。私たちとは違う、異なる個人です。彼らのために容量を割いていただくのは正当です。容量の使用を正当に申請します。
 
 ∧∧
( ‥)記憶を分割して
    別人間だとして
    自分のデータを分割して
    保存する
 
  ( ‥)容量の奪い合いで
    −□ 戦争も起こるだろうな
      容量戦争だ。
  
 それにまた、蛋白世界の動向が電子世界に影響を及ぼすのなら、電子人間が蛋白世界の争いに介入するのも当然だろう。電子人間が電力の安定供給のため、石油利権確保を目指して軍事介入を支持する。それもありうる話である。
 
 ∧∧
(‥ )電子人間は思考速度が
\−  非常に速いのですかね?
    しかも世代交代も速くて
     有限の容量を制覇せんと
     生存競争を繰り広げる
     わけだよね
 
  (‥ )たぶん、あっという間に
      ホモ・サピエンスじゃない
      思考回路を持つ
      別物へと
      進化しちゃうだろうな
 
 ∧∧
( ‥)人工知能が人類を支配する
    どころか
    電子人類が蛋白人類を
    支配する?
 
  ( ‥)蛋白人間を
    −□ 薄のろと呼んだりとか
      するのかねえ?

 ∧∧
(‥ )でも電子人間は蛋白世界の
\−  化学反応の速度に
    制限されなければならない
 
  (‥ )それを考えると
      つらい立場だな
 
 これって、のろのろと拡大する狭い世界に閉じ込められたまま、ぎゅうぎゅうに押し合いへし合いしている世界だってことじゃあなかろうか? まるで狭い水槽に閉じ込められたネズミの大群のようなものである。
 
 ∧∧
( ‥)電子の世界でバーチャル空間を
    楽しむって話があるけど
    電子人間の思考速度と
    バーチャルの演算速度って
    同じぐらいなんですかね?
 
  (‥ )あれか?
      蛋白人間にはなめらかな
      動きに見えても
      電子人間には
      コマ送りに見えるのか?
      なんか
      ますます嫌な世界だな
 
 まあ、そうはいっても悪いことばかりではなかろう。多分、電子人間はコピーを重ねて淘汰と生存競争を続けた結果、そういう環境を苦もなく生き抜くような、何かへと進化してしまうはずだから。
 
 ∧∧
( ‥)人の感覚や感性が
   まったく失うわけだ
   それはもう人間じゃないよね
 
  (‥ )なんか、変なものだろうな
 
 例えばの話、我々が知性も感性もそのままに、岩や樹木になったとする。それに耐えられるか? これはそういう話なのかもしれぬ。
 
 ∧∧
(‥ )耐えられない人は
\−  死んで淘汰されるから
    世代を重ねれば
    岩石や樹木にあった
    思考へと進化するのだろうね
 
  (‥ )それを考えると
      電子人間って
      どうなっちゃうんだろうな
 
 蛋白世界の速度に合わせる一方で、電子の速度にあった生存競争に勝ち抜く、それは一体どんな思考であり、有り様であろうか? 人間の免疫機構と脳がまったく別の器官であるように、別々のものとして異なる動態を示すのか?
 
 ともあれ、少なくとも言えることはある。
 
 ∧∧
( ‥)脳とネットをつなげて
    素晴らしい世界へいくって
    それは無理な話であると
 
  ( ‥)ろくでもない未来か
    −□ 今の世界を
      悪化させたような
      世界なんだろうなあ
 
 それにしてもふと思う。
 
 電子人間の思考速度は、蛋白人間よりも本当に速いのか?
 
 だがしかし、単純に考えると電子人間の思考速度は回路を駆け抜ける電子であり、その速度は光速だ。そしてそれは蛋白世界の化学反応の速度をはるかに超えている。
 
 ∧∧
(‥ )でも悲しいかな
\−   電子人間の媒体が
     機械であり
     それを維持、建設、
     運営するのが
     蛋白人類である以上
     電子人間は化学反応の速度に
     拘束されてしまう
 
  (‥ )化学反応の牢獄に捕われた
      電子の心
      これは悲惨だよねえ
      こんなことなら
      サーバーが有機体の方が
      良いよなあ
 
 この話である=>hilihiliのhilihili: 生きているサーバーの物語
 
 脳を持つ有機体をサーバーにして、その電子世界にすんでいる電子人間。媒体が有機体なら、電子人間とサーバーの増設、時間と速度の深刻なずれは起きたりしないだろう。
 
 だがこれって...
 
 ∧∧
( ‥)有機体の脳でバーチャル世界を
    楽しむ人間たち
    これってさ
    空想の世界に逃げて
    幻覚を見てるおかしな人と
    変わりないよね?
 
  (‥ )というかだな
      歩きながら
      スマホ見てる人と
      あまり変わらないよね
 
 
 思うのだが、僕らは十分にSFの世界にすんでいるのだ。
 
 だが確かにまだ足りない。来るべき未来は歩きスマホの画面が幻覚と区別ができない世界となろう。
 
 ∧∧
(‥ )それって進歩なの?
\−
 
  (‥ )みんなでネットに夢を
      見ながら
      上の空で歩いて生きて
      ネットを維持するために
      あくせく働く
      これがより洗練された
      ものになる
      これは進歩であり
      人類の勝利であろうよ
 
 ああ、諸君。夢はもうほとんどかなえられたのだ。
 
 後は幻覚さえ見せることができれば完成だ。歩きスマホはその第一歩となろう。

 

 

2014年11月27日木曜日

その不合理の正体とは一体何であろうか?

 
 それは非合理的ではないか。なぜそんなことをするのか? 
 
 ∧∧
(‥ )合理的でないお前たちは
\−  馬鹿だ
    そういう見解だね
 
  (‥ )対して曰く
      合理的でない事柄を
      馬鹿だと評論する
      そういう評論しか
      できないお前は
      もっと馬鹿だろ
 
 冒頭の人物は、こう問われたら、ではなんと答えるべきか?
 
 あるいはこうである。
 
 合理的でない行動を行う人々がいる。それを観察すると、その行動には以下のようなパターンが見られた。それを解析し、その動態を説明する理論を作り上げ、その理論に沿って行動し、賛同を集めることに成功した。そうして取り入り、物事を操作して全体を動かす。
 
 ∧∧
( ‥)それこそが
    合理的ではないのか?
 
  ( ‥)まあ、なにをもって
    −□ 合理的とするのか?
      それは定義の問題であるが
      少なくとも言えることが
      あるよな
 
 ”それは合理的ではない。なぜ非合理的なことをするのか? 非合理的なことをするお前たちは馬鹿だ。”
 
 これはありがちな意見ではあるのだが、自分から見て合理的でない。ゆえにその現象や行動は非合理的であるから論ずる価値無し。そう切って捨てるのは実のところ説明の放棄でしかない。
 
 ∧∧
(‥ )自分の理論に
\−  拘泥しているだけだとも
    言えるよね
 
  (‥ )自分の理論で説明できない
      物事は考慮しない
      これはいわゆる
      トンデモ理論なんだよね
 
 トンデモ理論とは、自分の理論で説明できない物事に遭遇しても、理論が正しいのだから、現実がおかしい、そう言い出す人々とその理論のことである。

 しかし考えてみれば、これは誰しもやることなのであった。
 
 かつて団塊世代はマルクス主義に拘泥してそれで説明できない事柄は全部切って捨てた。そうして結局は自分たちが無視した現実に報復されるかのように押しつぶされた。
 
 メンデル遺伝なんか信じている愚かな資本主義的な生物学では品種改良などできぬ! そう鼻で笑ったマルクス主義者たちは、獲得形質にこだわった品種改良で取り返しのつかない失敗を犯し、メンデル遺伝に基づいた農業生産の前に屈服した。
 
 あるいはこうである。日本社会は遅れている、日本は封建制だ、日本は旧日本軍のように愚かだ、この国には真の民主主義などない、二世、三世議員だらけで貴族制ではないか、言論の自由もないじゃないか、馬鹿ばっかりだ、俺の会社の上司もそう、なんで俺のところを誰も評価しないのか?
 
 ∧∧
( ‥)馬鹿馬鹿言うだけで
    物事を説明できて
    いないんじゃないのか?
    だから出世できないん
    じゃねえの?
    という疑惑
 
  (‥ )少なくとも理論によって
      現象を操作し扱うことに
      失敗したのは確かだな
 
 
 そんなに、”俺様は頭が良い”と思っているのなら、社会を説明する理論で社会を勝ち抜けば良いだけの話ではないか。
 
 例えばの話、俺様を評価しない野球界は馬鹿ばっかりだ。俺の実力を見よ!
 
 といったところで物事はどうにもならぬだろう。
 
 ∧∧
(‥ )実際には実力が
\−  無いのかもしれない
    あるいは
    実力はあるけども
    チームワークが駄目なのかも
 
  (‥ )自分には実力がある
      あるいは
      実力さえあれば評価される
      そういう前提や理論が
      間違っているのだ
      だがしかし本人は
      間違っているのは世の中で
      正しいのは
      自分であり自分の理論だ
      そこに拘泥しているのだな
 
 では問われる
 
 正しさに拘泥する
 
 合理的にかたくななまでにしがみつ
 
 これこそが不合理ではないのか?
 
 この不合理の正体とは一体なんであろうか?
 
 
 ∧∧
( ‥)子供の頃になにかあったのか?
 
  (‥ )あるいは遺伝のなせる技か?
 
 
 正論にこだわる人が示す不合理な拘泥。この正体は一体何であろうか?
 
 
      
 これはhilihiliのhilihili: 合理性と自由競争の追求から合理的に不合理が生まれてくるの続き
 
 
      

合理性と自由競争の追求から合理的に不合理が生まれてくる

 
 困った。今時の子供は、白熱電球と赤熱するタングステンのコイルを知っているのだろうか?
 
 ∧∧
( ‥)今時の照明は効率の良い
    蛍光灯か発光ダイオード
    だからね
 
  ( ‥)豆電球とかは今でも
    −□ 教材で使うのかな?
 
 漫画的な表現において、照明器具を意味するアイコンとして、つまり象徴として、イコンとして白熱電球を使って良いのか? そういう問題だ。
 
 さてもさても
 
 ホリエモンが曰く、安倍さんは元首相の孫という以外、何の取り柄も無い、と
 
 ∧∧
(‥ )そうインタビューで
\−  答えたことになって
    いるんですけどね
    本当ですかね?
 
  (‥ )さあなあ
      メディアは発言を
      正確に伝えられるのか?
      あるいは反対に
      メディアのすべてを
      疑うことは果たして
      正当であるのか?
      どっちをとっても
      答えがたい部分が残るよね
 
 まあ、とりあえず、その通りに答えたとする。
 
 ∧∧
( ‥)その場合どう思います?
 
  ( ‥)外交の場は私服では
    −□ 出て行けないよな
      これが結論じゃね?
 
 ∧∧
(‥ )安倍さんという色々な理由で
\−  色々な揶揄をされるけど
    外交経験は昔から
    あるんだよね
 
  (‥ )ブラック企業の社長さんを
      議員にしたりとか
      怪しげな
      精神論に傾く傾向が
      あの人には
      あるように見えるよな
      とはいえ
      これ自体は誰でも
      持っている非合理性だ
      しかし外務大臣だった
      お父さんの秘書として
      活動した経験がある
 
 つまりこの一点で他を圧倒できるということでもあるし、こういう経験をしたことが無い人間では、かの人にまったく太刀打ちできない。これは明白だろう。
 
 だって、やったことないんだから。
 
 やったことがないものは出来んのだ。
 
 やったことがない舞台にはこれまで経験したことがないルールがあり、聞いたことも無い決まり事がある。それを知らないと馬鹿にされ、それを守らないと足下を見られ、良いように利用され、そして最悪の場合、殺される。
 
 外交もまたそういう場であろう。
 
 ∧∧
( ‥)その経験が若い時にすでにある
    その一点において
    もはや勝つことはできない
 
  (‥ )それを無視して
      我は蛮夷なり
      鼎の軽重を問う
      これが出来るのは
      圧倒的な武力がある時
      だけだからな
 
 いや、圧倒的な武力があっても、結局は出来ないのだとも言えるのだろう。ナポレオンなんかはそうかもしれぬ。皇帝になっても所詮は成り上がりもので、最後は周囲から袋だたきにあって敗北だ。
 
 ∧∧
(‥ )ホリエモンさんというと
\−  民営化と自由競争と
    合理化を象徴する
    キャラとして
    評価されたり
    あるいは嫌われたりした
    ものでしたけども
 
 (‥ )希望であったよな
     そして
     憎しみの的でもあった
     勝負が進むと
     勝ち組と負け組の
     二極化が進む
     負け組は破壊者を望む
     勝ち組は破壊者を憎む
     負け組は合理主義者を望み
     勝ち組は合理主義者を陥れる
 
 それを考えると、希望であったというのは当然だ。
 
 だがこれを踏まえると、評価されるというのも考えものだ。
 
 それは良いように利用しようとする連中がわんさか群がってくるということでもあるから。もちろん、それ自体を利用するというのもまた手であるし、それを選んだ人もかつて大勢いたのであった。その人々がどうなったか、それはまた人それぞれである。
 
 ∧∧
( ‥)でもそれ以上に
    辛辣だとすればですよ
 
  ( ‥)合理化と自由競争を
    −□ ひたすら押し進めると
      何が起こるか?
      実は不合理が
      生まれてくるのだよな
 
 合理化と自由競争とは進化に他ならぬ。
 
 しかし進化を見れば分かるように、自由競争によって、不合理が暴走的な発展を遂げるということが普通に起こる。例えばもしかしたら、日本のバブルとはクジャクの尾羽であったのかもしれない。まあこういうことが普通に起こる。そもそも我々人類の知性自体が不合理で無意味な理由で進化した可能性がある。
 
 *大きな脳が良いものなら、もっと多くの動物が巨大な脳を持つようなっただろう。だがそうではない。これは、人類の巨大な脳を進化させた原因と理由が、あまり合理的なものでなかったことを示唆している。
 
 ∧∧
(‥ )どこまでいっても
\−   不合理からは逃れられない
     そういうことだね
     合理性の追求
     自由競争の追求
     それ自体が
     無駄で不合理で意味不明で
     不必要で無駄な構造物を
     急速に肥大化させる
 
  (‥ )そして勝負に勝つには
      その無駄
      その不合理な舞台
      不条理で不必要なルール
      それに沿って勝負を
      挑まねばならぬ
      だとすれば経験が
      ものを言う
      つまりどうやっても
      素人には勝てんのだよ
 
 2世議員、3世議員として生まれ、若い時、父親の後をついて実務を経験した。たったそれだけのことで超えがたい壁が生まれ、そうでない人間にはそれを突破できない。独自のルールがある以上そうなる。そしてそれを不合理と切って捨てても、誰も認証してはくれぬ。あるいは自由化と自由競争と合理化を押し進めても、あっという間に別の得体の知れない無駄が成長して、それが支配的なルールになる。これを止めることはできぬ。
 
 ∧∧
( ‥)それが進化であり
    それこそが自由競争であり
    合理化の行方とは
    こういうものである
 
  (‥ )それゆえにだ
      勝ちたければルールを
      知らねばならぬ
      あるいは抜け道を探すのだ
      うまくやると賞賛される
      人間は技を評価するからね
      でも
      悪くすると断罪されて
      袋だたきなんだがな
 
 それにしてなんだ。顧みると、むしろこれこそが奇妙な話だろう。
 
 飽くこと無く合理化を求め続けること。これ自体が極めて奇妙なことである。なぜならそれこそ、不合理の極みであろうから。
 
 ∧∧
(‥ )不合理な世界があるのなら
\−  その不合理を説明する
    理論を作らねばならぬ
    そうして
    不合理な世界を把握し
    勝ち抜かねば成らぬ
 
  (‥ )そうでない
      そうしない
      それこそが強烈で
      不合理な拘泥だよね
 
 これは合理的な理由では説明できない事柄だろう。
 
 ∧∧
( ‥)あなただって
    会合に私服でいって
    ひんしゅくを買ったことが
    あったよね?
 
  (‥ )分かるかい?
      これがつまり
      強い拘泥の一例だ
      合理的に
      説明できないことだな

 
 

2014年11月26日水曜日

共感できない怒りは売り物にならんのですよ

 
 右翼は貧乏人である。なぜなら彼らにはそれしかよりどころがないからである。学力や金や財産や知識や、他人よりも優れているという自分の売りがないのだ。だからナショナリズムに走るのである。今の若者は雇用がなく、そして教育の機会が無く、それゆえに愚かである。愚かで可哀想な人々であり、そんな彼らが右翼へと走るのである。同じ若者と言っても若い頃の僕らはそうではなかった。僕らは改革の意欲に燃え、問題意識を抱き...
 
 ∧∧
(‥ )...という
\−  同情の風を装った
    知識人による
    強烈な差別意識と
    侮蔑ですか
 
  (‥ )”賢い人間”ってのは
      こんなものよ
      他人よりちょっと賢いと
      周囲から浮くからな
      賢い”はずの”自分の言葉を
      真面目に聞いてくれない
      同級生や社会を憎むのだ
      生涯に渡って憎むのだ
 
 とはいえである。世界を愚かと憎み、あるいは同情の風を装って人々を侮蔑する彼ら知識人は、もっとはるかに愚かであった。
 
 彼らはかつて、マルクス主義という理論を信奉し、それが挫折した後でも、それが破綻した後になっても、それを信奉した国が滅びた後でさえも、それでもなお、それを後生大事にそのまま信仰しているからである。
 
 ∧∧
(‥ )現実の前に挫折しても
\−  間違いを間違いと認めず
    是正することもできない
 
  (‥ )論理的に正しいのだから
      正しいはずだ
      マルクス主義的であるから
      これは正しいはずだ
      マルクス主義者や
      知識人が
      良く使った言いようだ
      ようするに彼らは
      経験を通して
      理論の改良をすることが
      出来ないってこと
      なのだよなあ
 
 ∧∧
( ‥)賢いけども思い込みで行動して
    失敗も是正できない?
 
  (‥ )賢いという
      自画自賛と裏腹に
      病的なまでに
      馬鹿っぽいだろ?
 
 賢いとは病気である。

 あるいはむしろこう言えば良いか?
 
 上っ面の正しさに拘泥する病的な人間こそが、正しさに集まってくると。
 
 そういう人間こそが論理を振りかざすと。

 
 ∧∧
(‥ )でもそういう人たちの声は
\−  良く聞くようになったよね
  
  (‥ )冷戦が終わって
      アメリカが最強とはいえ
      19世紀的で
      列強が割拠する時代に
      戻ったからな
      ナショナリズムは復興し
      先進国は
      どの国も景気が悪く
      求められる社会保障は
      不十分で
      人がすがるのは
      いまや普遍の救済を唱える
      宗教か道徳
      さもなければ
      家庭や共同体しかない
 
 
 あるいは国の保証にしても余裕が無い。だとすれば、国民でない裏切り者や寄生虫と見なされる人々を皆が狩り出そうとするのは当たり前だ。そこには、フェアであるという基準が存在する。裏切り者を抹殺せよ、とはフェアであれ、ということだ。誰でもそうであろう。ルールを破ると村八分にされる、あるいは処刑される。子供の社会からギャングから国家に至るまで、それは原則である。

 そしてこういう流れは物理的な要請で起こっている。それゆえ、それを止める術は無い。

 だが、若き日にナショナリズムを得意げに否定してみせた人々はこれが気に入らないだろう。得意げに吹聴したことを無視された、あの日の怒りを再び思い出すだろう。愚かな愚民共と毒づいた日々を思い出して、もう一度、血をたぎらせるだろう。
 
 ∧∧
( ‥)でもそんなこと言っても
    何の意味もありませんよ、と
 
  (‥ )実際、代案を
      何も出してないからな
 
 考えてみれば彼ら知識人には若い時も、そして今も、物理的な説明も根拠も対案も何も無いのだ。
 
 いや、対案はあったのだ。マルクス主義という対案が。
 
 ∧∧
(‥ )でもそれはとっくの昔に
\−  滅びて消えた
 
  (‥ )もはや代案も対案もない
      残るは憎しみと憎悪で
      しかもそれは独りよがりの
      ものなのだ
 
 なぜあの時、俺たちの声を聞いてくれなかったのか?
 
 結果を言えば理由は明白である。失敗しそうな案だから聞いてもらえなかったのだ。事実、失敗した。それで問いに対する答えは十分であろう。
 
 ∧∧
( ‥)でもそれでは彼らは納得しない
    我々の怒りは
    どうしてくれるのか? と
 
  (‥ )だから独りよがりだし
      だから誰も話を
      聞いちゃくれんのだ
 
 いや、そういう声に共感して寄ってくる人もいるのである。だがそれは、やっぱり上っ面の正しさに拘泥して正義に集まってくる病的な人間だけなのである。それでは怒りは共有できるが、解決策も対案も生み出せまい。
 
 それでは誰にも支持されまい。
 
 ∧∧
(‥ )共感できない怒りは
\−  売り物にならないって
    ことですかね?
 
  (‥ )ここで話はいつもの話に
      一巡してしまうのだ
 
 これってようするにあれだ。自分のこだわりが商売にならなくて怒り狂い、オタクは堕落した、駄目になった、それでも俺はオタクを信じる、啓蒙すれば分かってくれるはずだ、そう怒りに震えながら無駄で見当違いな努力を積み上げながら、侮蔑と憎悪を振りまいている奴と同じ詰み手だ。
 
 ∧∧
( ‥)そうではなく我々は
    成り立つ商売を
    しなければならない
 
  (‥ )そうでないと
      死んじまうし
      成果も出ないでな
 
 
 これを踏まえるとひとつ分かることがある。自分の賢さに誇りを持ち、理想を唱え、現実に絶望し、賛同しない人々を愚かと吐き捨て呪詛する奴ら。彼ら知識人や文化人たちは実際のところ生活に困っているわけではないのだと。彼の怒りは本気かもしれないが、真剣でもなく、それは冗談でしかない。
 
 
 
 

今はもう小説を読まない

 
 「課長島耕作」も小説「失楽園」もその内容はラノベと同じ。
 
 ∧∧
(‥ )少なくともあなたに言わせれば
\−  いずれも俺モテモテ
    うっは、であると
 
  (‥ )小説「愛に流刑地」の方が
      よりその傾向が強いかな?
      人妻、女検事、小学生から
      もてもてですよ
 
 以上を踏まえてこう考えればどうか?
 
 ラノベには男のあらゆる欲望がつまっている。
 
 だがしかし、いい歳をした大人がラノベを読む訳にはいかない。
 
 じゃあ「課長島耕作」ならどうか? これなら大人のビジネスマンでも共感できるビジネスシーンが描かれているよ。過ぎ去りし高校生活じゃないし、疲れた大人にはもう読めない異世界ファンタジーでもないよ。
 
 でも「課長島耕作」って、これは漫画だよな? 
 
 それなら「失楽園」や「愛の流刑地」ならどうか? これなら漫画じゃなくて”文学”だから面子も立つよ。
 
 ∧∧
( ‥)大人の面子をつぶすことなく
    口に出せない
    ラノベ的で赤裸裸な欲望を
    提供する
    これは画期的
 
  (‥ )作者は渡辺淳一さんか
      あの人は実に革命的な
      業績を上げた人なのだ
 
 これはまさに天啓ぞ。この事実が物書きに与える答えは明白なり。
 
 子供向け程度の内容で、しかし読者である大人のプライドをつぶさないような体裁の本を作るべし。それがブレークスルー。
 
  ( ‥)これぞ、
      渡辺淳一という人が
      切り開いた
      新たな地平が持つ意味ぞ
 
 ∧∧
( ‥)先人が切り開いた後に
    諸君、続くべし!
 
 大人はどうせ子供向けの内容しか理解できない。だから大人向けに偽装した子供向けの本を書かねばならぬ。
 
 確かにこのような行為は陳腐ではあろう。こういう見解を鼻で笑うような、自称読書家の人々は多いであろう。
 
 だがしかし、以上の事実は、そんな彼らに関してもほぼ無条件に適用できることである。
 
 実際、こういうことは科学の本において非常に顕著だ。読書人とか知識人、文化人は、子供程度の陳腐で間違った科学知識を、後生大事に抱え込み、この本を読んだ自分はすごいだろ、そう言い出すものである。

 例えば読んで見知った人は曰く、ダーウィンの進化論とはこういうものである。あるいは現代進化論はこういうものである。例えばグールドの著作を見よ、これにはこう書いてあると....
 
 ∧∧
(‥ )ところが残念
\−  グールドさんって
    ダーウィニストとは
    言いがたい人だよね
 
  (‥ )というかあからさまに
      違うんだよな
      ダーウィニストでもないし
      現代進化論者でもない
 
 種同士の競合と淘汰があると前提した点からして、グールドの意見は、ダーウィンやそれ以降の進化学の流れとはまったくの別物である。
 
 というか、グールドという人は、実際にはアンチ・ダーウィニストであり、その最後の大物であったと言った方が正しいのではないだろうか? これはグールドという人がマルクス主義者だったから、そういう影響もあろう。
 
 そしてある意味その影響が顕著に出たのが断続平衡説であった。
 
 進化は停滞の時期と、急激な進化の局面とがある。グールドたちはこの仮説を引っさげてセンセーショナルな話題を振りまいたが、これには重大な欠陥があった。
 
 ∧∧
( ‥)急激と停滞って言うけど
    それぞれが
    偶然でないという保証は?
    そうではなく
    その振る舞いに意味がある
    そう考える根拠は何?
 
  ( ‥)彼らはこの問いに
    −□ 答えることが
      出来なかったのだ
 
 結果はあからさまである。
 
 断続平衡説? お前たち何言ってるの? 
 
 そういう扱いで終わり、それでお仕舞い。
 
 これはいかにも理論と論理を偏重するマルクス主義者らしい失敗であった。なぜかというとこういう世界観は、因果関係の推論や統計という考えと相性が非常に悪いからである。実際、断続平衡説は因果関係の推論にまったく失敗して、そうして消え去った。
 
 ∧∧
(‥ )でもグールドさんの本は売れ
\−  それを読んだ読書家は
    ダーウィニズムは現在では
    そのままでは通用しないことが
    明らかとなり
    断続平衡説のような意見もある
    そう理解する
    それを吹聴する
 
  (‥ )たわ言よな
      科学の世界では
      お前たち何言ってるの?
      そう揶揄された仮説を
      画期的で知る人ぞ知る新説
      これを知っている俺すごい
      そう勘違いしたのだ
      そうして
      間違いを理解した自分を
      自慢しておる
 
 
 それもこれも、普及書などという、おこちゃま向けの内容を大人向けに書いた本を鵜呑みにしたせいだ。
 
 それもこれも、自分は忙しいから、教科書なんて読んでる時間はない。そもそも教科書なんてアカデミズムだから、それはきっと堅苦しいだけの保守主義者とその陣営の産物で、きっと間違いが書かれていて、だから読む必要なんかないんだ。
 
 そういう言い訳をして教科書を読まなかったせいだろう。
 
 あるいは、他人が知らないものを知りたいから、目新しいものを知りたいな。自慢できる珍奇な仮説を誰よりも速く知りたいから、そういうものを読みたいな。そういう欲望を利用された結果にすぎぬのだろう。

 これはなにもかも子供じみた浅い欲望の結果であるし、結局のところ、読書家だの文化人だの知識人だのというものが、所詮はこんな程度のものでしかないという証拠でもあろう。
 
 彼らの読書も膨大な読書録も、大量の読破も、そのすべてが子供じみた行為であるし、それゆえに不毛である。なにもかも、ただのガキの所行でしかない。
 
 ∧∧
(‥ )言い換えれば
\−  子供向けの本を大人向けに
    偽装して売る
    この行為には
    責任がともなうという
    ことであるね
  
  (‥ )大人も読書人も
      馬鹿だからな
      いや、
      自分は子供ではない
      そう思っているからこそ
      大人は
      救いがたい馬鹿になって
      しまうのだ
 
 子供向けの本を大人向けに偽装する。これは古来より無自覚に行われてきたことであり、意図的にやれば、さらに効果的だ。
 
 ゆえに本というものはそういうものでなければならぬ。大人に大人向けの内容を与えてはならぬ。大人には本を読む能力が無いから。

 大人には子供でも分かるような内容で与えねばならぬ。しかし、本の見た目は大人向けでなくてはならぬ。そうでないと大人はプライドがおおいに傷ついてしまうのである。だから見た目は大人向けに偽装しなければならぬ。
 
 だがしかし、それゆえにこそ、作り手側は、これが責任を従う行為であることも十分自覚せねばならぬ。
 
 相手は自分と同じレベルのたわいもない子供である。これを忘れてはならぬ。

 
 ∧∧
( ‥)あなたも子供の時のまま
   だよね
 
  ( ‥)小学校の図書館に
    −□ いた時から
      何も変わっていないな
 
 いや、ひとつ変わったところがあるか。今はもう、小説を読まない。
 
 
 

2014年11月25日火曜日

大人は本に関して嘘を言う

 
 改行を増やす
 
 漢字を減らす
 
 難しい表現を避ける
 
 一見するとボリュームはあるが、内容は薄い本
 
 ∧∧
(‥ )でもそういう本でないと
\−   私は読めません
     大人はそうは
     言えないのです
 
  (‥ )大人は面倒くさい存在でな
      プライドが邪魔して
      出来ないことを
      出来ませんとは
      口に出せないのだ
 
 でも態度には出る。改行が多い本は売れ、内容の濃い本は売れない。
 
 口でなんと言おうが、態度に現れるのだ。作り手側には一目瞭然である。
 
 
   (‥ )ツンデレですよ
       ツンデレ
 ∧∧
(‥ )意味違うけどね
\−   口と態度が違うのは
     確かだよね
 
 本に関して大げさなことを言う人はいくらでもいるが、ああいう意見は真に受けないことである。嘘をついているか、あるいはその嘘を真に受けて勘違いしているか、そのどちらかだから。
 
 本を作る側から見れば、なにもかもあからさまだ。
 

 
 

直接民主制は相互監視があまりにも強すぎる?

 
 ∧∧
( ‥)つまり?
 
  ( ‥)ふと思ったのだが....
    −□
 
 直接選挙制の古代ギリシャ。軍隊を率いる将軍も政治家も裁判も一般人がなる仕組み。
 
 ∧∧
(‥ )しょせんは素人集団
\−   プロの政治家と
     プロの軍人から成る
     ローマに勝てる道理なし
 
  (‥ )まあそれもそうだけど
 
 そもそも、直接民主制では国を大きくできなかったんじゃねえの?
 
 ∧∧
( ‥)プロではないし
    官僚もいない
    良く言えば政治が
    素人に開かれているけども
    悪く言えば
    政治が公民館レベルであると
 
  ( ‥)これじゃ巨大国家を
    −□ 運営できるわけないよね
 
 アレクサンドロス大王崩御の報を受け、マケドニアに対して独立を挑んだラミア戦争。国家を挙げての総力戦で動員されたアテナイ市の人数5000人。これは戦闘可能な男性の数でしかないけども、当時の政治は男性主体。戦闘不可能な高齢者を入れるにしても、統治され、統治に参加する人数はこんなもんなのだろう。
 
 ∧∧
( ‥)5000人程度を統治して
    似たような都市国家を
    相手にする政治だった
    そういうことだよね
    まさに大きめの公民館
 
  (‥ )そしてこれ以上の
      規模の統治は....
      直接民主制では
      そもそも無理だったろうな
 
 ∧∧
(‥ )巨大化を志向すること
\−  そういう発想それ自体が
    なかったと考えるべき
    なんでしょうかね?
 
  (‥ )ペルシャ戦争の勝利で
      アネナイ市は
      調子ぶっこいて
      同盟の金を私的流用して
      パルテノン神殿を築いて
      大ひんしゅくを買ったよな
      これだって
      統治ではなくて
      自分たちと身内のことしか
      考えてない行動に
      見えるよねえ
 
 そして、結局この後、大ひんしゅくの果てにスパルタ市と戦争に突入、ペロポネソス戦争で敗退。ぱっとしないまま、ギリシャ諸都市はマケドニアに服属し、ヘレニズム諸国に蹂躙され、最後はローマに征服されてアテナイ市は歴史から消えてしまう。

 ∧∧
( ‥)伝統的な直接民主制に
    こだわって
    大きくもなれず
    結局、より巨大な国家に
    圧倒されて征服されたと?
 
  ( ‥)直接民主制が堕落したから
    −□ ポリスが滅びたと
      言う人もいるけども
      直接民主制にこだわって
      その弱点ゆえに
      成長もできず
      未来を失った
      むしろそう見えるよな
 
 確かに、例えばの話である。
 
 我が社は社員全員参加型で物事を決める。そう言い始めた会社はちょっと成長できそうにない。
 
 ∧∧
(‥ )経理する人はいるけど
\−  経理部が存在しない会社
    みんなの調整役はあるけど
    総務部がないような会社
    だよね
 
  (‥ )こんな会社では
      大きくはなれんよなあ
 
 
 しかもそういう仕組みのまま最後までいってしまう。考えてみれば、これは奇妙なまでの保守性ではなかろうか?
 
 ∧∧
( ‥)オスマントルコ帝国は
    最初は小規模の武装集団から
    始まったけども
    村を占領して
    町を占領して
    規模が大きくなって
    そのままだと統治できないから
    イスラム法学者を招いて
    軍隊を維持するために
    イエニチェリ制を整えて
    官僚とかもそろえていったよね
    それで最後は地中海を制覇する
    巨大帝国になる
 
  ( ‥)それを考えると
    −□ ギリシャのポリスって
      とんでもなく保守的な
      社会なのな
 
 あるいは、直接民主制というのは、例えば相互監視と同調圧力があまりにも強すぎて、とてつもなく保守的にならざるをえない、そういうことだろうか?
 
 ∧∧
(‥ )戦闘人員が5000人だと
\−  全員が顔見知りみたいな
    ものだからね
    例えば戦争の時は
    戦線から一歩も引けないよね
    一人逃げたら周囲から
    フルボッコでしょう
 
  (‥ )ギリシャ諸都市は
      素人集団なのに
      少なくとも当初は戦争に強く
      ペルシャ帝国も退けた
      それは
      こういうことなんだろうな
      だけどそれは
      社会が保守的になって
      身動きがとれなくなること
      だったのかもしれん
 
 
 
 
     

2014年11月24日月曜日

正しさには空気を読まない人間がよってくる

 
 みんなで山田くんのことを考えて上げよう。
 
 ∧∧
(‥ )強烈に漂うお節介臭
\‐  
 
  (‥ )山田くんの置かれた状況を
      理解も把握もしないまま
      それぞれ勝手に考えた
      思い込みで口出しする
      そこが痛さの原因だよな
 
 小難しい言い方をすれば、この場合、
 
 ”こうすれば山田くんの人生はうまくいくに違いない理論”
 
 という仮説に基づいて皆が干渉してくる、そういうことでもあるし、
 
 ∧∧
( ‥)その仮説が現実的でないから
    ものすごい迷惑という
    ことでもある
 
  (‥ )そりゃ全員が山田くんでは
      ないからなあ
 
 全員が山田くんではないので、山田くんの置かれた状況をまったく理解できていない。

 もちろん彼らは
 
 良かれと思ってやったのです!
 
 そう言い訳するに違いないが、手前勝手な善意で間違った解決策を押しつけられた山田くんはたまったものではないだろう。
 
 ∧∧
(‥ )でも? これと同じことを
\‐  人は政治に関して
    やってしまいがちであると?
 
  (‥ )政治や軍事、外交、予算
      それは複雑だ
      もちろん
      そういうものの中には
      確かになあなあで
      不必要なものもあろうが
      なあなあの不必要に見えて
      必須なものも含まれて
      いるだろう
      でもそれは部外者には
      分からない
 
 分からないけども、意見を申し述べて政治に参加することこそが民主国家の国民の義務であり、それをするのが偉い事だ、とやたらと推奨されている。
 
 これはどっちかというと、そういう面倒くさいことは皆がやりたがらないから、やらなければ駄目ですよ、そう奨励しないとバランスが取れないから推奨されているのだろう。
 
 だが、一部の人間は先生に言われた通り、素直に馬鹿正直に、さらに言えば表面的な事柄、つまり、意見さえ言えば偉いのだ、という上っ面の価値観だけで邁進しだす。
 
 先生に言われたことを馬鹿正直になぞるのだ。この手の人は思い込みが激しいだろうし、正しいと思った事をただ繰り返すだけになろう。そして対立意見や、あるいは自説に都合の悪い現実は全部無視するだろう。 そもそも正義とはそういうものである。正しさとは、これは不正であると見なしたものを踏みにじるだけの行いで、根本的に暴力的な馬鹿である。 
 
 ∧∧
( ‥)正しいことをする
    これは正しいと設定されている
    だからこれは正しいし
    正しいのだから他の意見は
    聞かなくても良い
    現実を見る必要もない
    意見を変える必要もない
    なぜならこれは正しいのだから
 
  ( ‥)入力された事柄を
    ‐□ 機械みたいに
      馬鹿正直に反復する
      こういう人が
      正しいことを熱心に行う
      そういうことになるな
 
 端的に言えば、人の意見を聞かないし、現実を見ないし、場の空気を読まない人間が、正しさに引きつけられて集まってくる。そう言えば良いか。
 
 考えてみれば、そもそも、自分たちが社会を変えるのだ、という発想が痛いのだ。
 
 なぜってこれは、自分たち以前に自分たちのような人間がいなかった、ということを前提にしているからである。
 
 そうではなく、こうではなかったか?
 
 前にもお前たちのようなものがいて、彼らは官僚を目指し、あるいは政治家を目指したのではなかったか?
 
 だが世界は変っていない。
 
 ∧∧
(‥ )全員が失敗した
\‐   そういうことだね
 
  (‥ )というかあれなのよな
 
 多分、むしろこうなのだろう
 
 理想論を語るのは良いけどもね、現実はこうなんだよ。この予算を君はどうするつもりなの?
 
 これに対して彼らは答えることが出来なかった。そう考えるべきなんだろう。
 
 ∧∧
(‥ )巨大な官僚機構に
\‐  太刀打ち出来なかったのです
    そういう陰謀論も
    あるんだけどね
 
  (‥ )その手の愚痴はあれよな
      我が社の経営陣は
      馬鹿ばっかり
      俺ならこうするね
      そう言っている平と
      変わりないだろう
 
 もちろん、その平の意見がもっともなこともあろう。業種や業態によっては平社員やアルバイトの方が現場経験が長い、ということもあるからだ。だが、ここで言っていることはそういう事例ではない。知りもしないまま間違った仮説で、物事を評論家目線で切っている、そういう話である。
 
 ∧∧
( ‥)まあ、政治の話を
    まじめに語るのは痛いと
 
  ( ‥)とはいえ俺も
    ‐□ 政治を話題にするから
      あまり人のことは
      言えないんだけどな
 
 例:

二大政党制はすばらしいって言うけど、アメリカ、どんどん悪い方向へいっているから、実際には言うほどの効果ないんじゃね? 

政権の決定と、それがうまくいったかいかないか、それを選挙でフィードバックさせる。そういう形式で演算するのが民主主義なのだから、首相がころころ変る日本の有り様でも十分機能できるんじゃね? というか長期政権のフランスとかアメリカとか、あの有り様ってどうよ?
 
直接民主制のギリシャポリスを制圧したのが終身議員制のローマだったことから考えると、ぽっと出の議員では、二世、三世議員に勝てないんじゃないですかね。


それを考えるとアメリカって、二大政党制と議会民主制を形骸化させた方がいいんじゃね? 後、二世、三世議員をもっと増やした方が良いんじゃないすか?
 
日本のような間接選挙制は良いぞう、トップにすえた人間が想像以上に馬鹿だった場合、暗殺なんて手段を使わずとも、任期を待たずに引きずり下ろす事が出来る(アミバ様風に)

 
 ∧∧
(‥ )でもまあ、あれですね
\‐  こんな浮き世離れした話より
 
  (‥ )どんな仕事を作り出すか
      そっちのことを
      考えるべきだろうなあ
 
 実際、若者が政治のことを考える社会! なんていう薄い話よりも、若者だろうが誰であろうが、というかむしろ自分の話なんだが、収入をアップさせる新しい仕事を考案、創出せよ、という方が急務であり、必要なのだ。
 
 ∧∧
( ‥)でも本当に難しいのは
    これなんだよね
 
  ( ‥)政治に関心を持とうって
    ‐□ 意見は
      あれは現実逃避でも
      あるんだよな
 
 
 どうすれば新しい仕事が作れるか、それで生活を楽にできるのか、更に言えば、欲を出せば、雇用すらも創出できないだろうか....これはどうだろう。駄目だ、ではこれは?
 
 このように試してみるよりも、
 
 きっとこの予算は無駄に違いない、だからこれを撤廃するように声を上げよう、これは民主的に正しいのだから僕らのしていることは正しい、正しいことをしているのだからこれで良いのだ、そう考えた方が楽である。
 
      

2014年11月23日日曜日

青い秋空、選挙の未来

 
 昨日、今日と神奈川は青空である。

昨日のイチョウ














 そして本日、23日のシュロヤシ














 あまりぱっとしない光景だけども、まあ、秋の青空だということは分かるだろう。
 
 空気は冷たいが、日差しは、それが照りつける限りはやはり強い。

 ∧∧ むしろ暑いー
( ‥)
 ‐( ‥)まあ暖かいのは歓迎だな
   ‐□
 
 それにしても、なにか疲れた。多分、12星座のコンテンツなんかを作ったせいだろう。
 
   区切り良いところまで
 ∧∧ やってしまう悪い癖だ
( ‥)
 ‐( ‥)絵を描く人間は
   ‐□  病的なのが多いけども
      まあそういう事例さ
 
 ぼんやりとベンチで日向ぼっこをしていると、老人3人組がやってきた。この辺りは南向きで、そして谷間になって昼間は空気が暖かい。そのせいか、寒い季節にはテントウムシがやたらに飛んで集まってくる。どういうわけか連中は、飛んではとまり、とまっては飛ぶ、ということを繰り返すので、鬱陶しいことはなはだしい。自分もテントウムシをさけて少し離れたそのベンチで休んでいたし、老人3人組も話し振りからすると同様だ。
 
 ◯◯さん、今度の選挙はどこに入れるね?
 
 そういう会話をしている
 
 
 ∧∧ いきなり投票の話?
(‥ )
 ‐( ‥)そういうのを聞くのは
   ‐□ あまり関心できんけどなあ
 
 問われた方も口ごもっているが、言った方はさらっと続けた。
 
 俺は自民党だね。
 
 すると問われた方も答えた。
 
 ああ、俺もそうだねえ。
 
 自民党しかないよねえ。
 
 奥さんもそう答えた。
 
 安倍さんにやってもらう。
 
 最初に問うた老人がそう続けたが、続投という程度の意味なのか、あるいはアベノミクス継続ということなのか、そこまでは分からない。
 
 声がうるさいこともあって、こちらはその場を離れた。
 
 そういえば少し離れたベンチでは自分ぐらいの歳、多分、40ぐらいの男性が、母親らしき人に対し、政治に関して演説している様子が聞こえた。テレビは駄目で、ネットで見るとこうである、そうちゃんと確認できるんだよ。
 
 言い様からすると、左というよりは右という感じだろうか。
 
 いや、左が言うところの右である、というだけの話かもしれない。左から見れば中道も極右なわけだ。いまや、右翼、右派という言い様は、陳腐なものに成り果てた。
 
 彼は携帯を使って母親に熱心に説明していた。
 
 それにしても、この様子からすれば
 
   なに? 民主党も野党も
 ∧∧ 負け確定? 惨敗?
( ‥)
 ‐( ‥)こんなわずかな抽出で
   ‐□ あまり大きな事を
     言える訳ないんだがな
     それっぽいよなあ
 
 民主党政権が決めた増税を見送りたいから信を問うて解散します。なにがどうあれ、そういう構図になっている以上、与党が負ける道理はない。それを考えると、解散に追い込もうとした野党やマスコミは一体、何を考えて自殺に走るのか理解に苦しむけども
 
 ∧∧ 煮詰まっているだけかもね
( ‥)
 ‐( ‥)自分は正しいことを
     している
     それを無条件に
     信じている人間は
     是正が効かないからな
     というか
     是正を効かせられない人が
     これが正しいと
     無条件に頑固に信じ込む
     そういうことかもね
 
 つまり、正しいことをする人は原理的に病人なのだ、ということやもしれぬ。

 実際、正しい事をしている人は大体において融通が効かない。
 
 ∧∧ まあそんなことより
(‥ )
 ‐( ‥)自分の仕事をこの先
     どう展開するか
     それが肝心だなあ
     処理し切れなくなって
     きたからな
 
 勝ち負けが確定した選挙の事は、取りあえず念頭から外しておこう。
 
 どう生き抜くのか、それが第一。
 
 そしてあわよくば、なにか新しいことを行い、新しい仕事を作る。これが肝心。
 
   おっと
 ∧∧ 欲を出しましたね
( ‥)
 ‐( ‥)そうやって前に出ないと
      そのうち崖っぷちに
      追いつめられるからな
      逃げるためにこそ
      前へ出る
      前に出ることで
      一歩下がる余地を作る
      一歩逃げるためには
      まず二歩前へ出る
      そうしないと
      すぐに詰んじゃうでな
 
 考えてみれば、前に逃げなかった連中は、全員、消えていったと思う。
 
 少し雲が出て、かげって寒くなりかけたところで公園を後にした。
 
 
 

シンギュラリティすると魂が降りてくる

 
 シンギュラリティ
 
 この場合は技術的特異点のこと。コンピューターの容量と演算能力がついに人類を追い抜いた時、人類を越える超知性体がこの地上に出現するという。
 
 ∧∧
(‥ )2045年頃に
\‐  それが起こるって
    予測でしたっけ
 
  (‥ )とはいえあれよな
      例えば人間の知能は
      単純に容量が
      大きくなったというよりも
      むしろ仕組みの問題だから
      容量が大きくなった
      ゆえに即座に
      知性体が出現!
      という風にはならないの
      だろうな
 
 考えてみれば神経の動作なり、それが織りなす知性なり、それは入力と出力の話。
 
 ∧∧
( ‥)言って見れば宅配便の
    倉庫みたいなものだよね
 
  (‥ )どれをどう仕分けて
       どれをどう出すのか?
      それを決めるのは
      ベルトコンベアーとかの
      配置だな
 
 これを踏まえれば、倉庫の規模が大きくなったとか、ベルコンの数が増えたとか、ベルコンの速さが上がったとか、それだけでは、知性は出現しないだろう。そういうことが薄々分かってくる
 
 ∧∧
(‥ )ただ大きくしただけじゃ
\‐  新しいサービスには
    なりませんからね
 
  (‥ )人工知能の実現に
      苦労しているのも
      人間どころか
      線虫の神経についても
      研究が進行中なのも
      そういうことだろうな
 
 ベルコンの配置が具体的にどうなっていて、それがどんな役割を果たしているのか? それを知る事が無い限り、容量が単純にアップしても知性は出現してこないのだろう。
 
 もちろん、これは人間の知性は機械で複製不可能だ、という話ではない。なんだかよく分からんものは作れん。それだけの話である。
 
 逆にそれが分かれば、人間の神経を模造した機械の体に人間の心を移植することも可能なんだろう。
 
 ∧∧
( ‥)でもシンギュラリティで
    超知性が出現する
    そう考えている人は
    こうは考えていない
    そういうことでしょうね
 
  (‥ )思うのだが
      意外と世の中の人は
      魂の実在を
      信じているのだろうな
 
 そうでないと、容量と速度がある臨界を越えると、そこに自動的に知性が宿る、とは考えまい。
 
 

      

図書館物語

 
 ∧∧
(‥ )やぎ座=>
\‐  みずがめ座=>
    うお座=>
    これで十二星座はすべて
    そろったと
 
  (‥ )都市部で秋の星座を
      しかも小さなデジカメで
      撮影するのは
      無茶があるよなあ
      とはいえあれだ
      このっくらいの画像の方が
      都市部では現実なんだよね
 
 というか、秋の星座は非常に空気が良くないと都市部では見ることすらできない。画像を撮影したのも実は夏の夜更けである。非常に空気が良くて、空が暗くて、なおかつ月が無いような夜。そうでないと以上を見ることすらできない。
 
 さて
 
 図書館へいってチェックをする。例えばギリシャ神話に曰く、ヘラクレスはネメアという地方で化け獅子を退治したという。それは巨大な人食いライオンで強靭な肉体をそなえていた。
 
 ∧∧
(‥ )洞窟にひそんでいたから
\‐  ホラアナライオンの
    生き残りだ
    とかまことしやかに
    言われたりする奴だね
 
  (‥ )実際には普通の
      ライオンなんだろうけどな
 
 ホラアナライオンPanthera spelaeaは、一般的には現在のライオンPanthera leoの亜種とされる化石種だが、実際には別種で良いらしい。いわゆる氷河期に栄えた大型肉食獣で、人類の拡大と共に数を減らし、1万年前には絶滅している。紀元前のギリシャにいたライオンがホラアナライオンだなんて考える必要はないし、そもそも証拠も根拠も無い。多分、ヘラクレスが倒したものの正体は現在のライオンの亜種、Panthera leo persica。歴史時代にはギリシャからインドまで分布し、18〜19世紀でも中東やインドに残っていたライオンである。しかしいまや絶滅寸前、インドの一部にわずかな数が残るのみ。
 
 ∧∧
(‥ )ヘラクレスさんは
\‐  ネメアの獅子を倒して
    それを鎧にしたって
    話があるのだね
 
  (‥ )ところがアポロドーロスの
      ギリシア神話だと
      そうじゃないんだな
      まずキタイローンの獅子を
      殺して
      それを兜にするのだ
 
 つまりヘラクレスは2頭のライオンを倒している。つまり理屈の上では、ネメアのライオンを倒した時、ヘラクレスはキタイローンのライオンの毛皮と頭蓋の兜をまとっていてもおかしくない。
 
 しかし、神話には色々なバージョンがある。ヘラクレスがネメアの獅子しか殺していないし、ネメアの獅子の皮を鎧にしたバージョンがあるのか? 
 
 そういえば図書館に詳しいギリシャ神話の本があったよな、ふと思い出して図書館で探して確認した。
 
 記述からするとそういうバージョンがどうもあるらしい。というか、そのバージョンしか書いていなかった。
 
 ∧∧
(‥ )でも参考文献は煩雑だから
\‐   割愛すると訳者さんが...
 
  (‥ )こういうことをやっては
      欲しくないんだけどね
      まあ、良しとするか
 
 そのバージョンがあると分かれば良い。文献と原典には、原著に当たれば良いだろう。
 
 ああ、それにしても図書館というのは色々な人が来るものだ。
 
 例えば数年前に時々見たおっさん。
 
 コピーをしていると、こちらをじっと見て、釣り銭を忘れないか観察しているおっさんがいる。このおっさんが釣り銭の出口を指でさぐるのを見たし、ロッカーを使いもしないのにきょろきょろと見渡すのも見た。多分、使用後に返却される100円玉、それが取り忘れられて残っていないか探していたんだろう。あのおっさんはそれっきりだ。
 
 それでも色々な連中がいる。例えば何か飴をかじっているじじいがいる。
 
 これが、静かな図書館ではびっくりするくらい鬱陶しく響くのだ。カチカチコチコチうるさい。
 
 あるいは、昨日見たじいさん。通りすがりにふと眼を落とした時、自分の眼に飛び込んできた本のページの文字は

 
 ”女性の性感帯”
 
 じいさんが、それを震える指で読んでいる。
 
 そしてあるばあさんは、他人が近くを通ると眼をきょろきょろさせながら、びくっと体を震わせ、背中を丸める。どうも対人恐怖症か、あるいは心を病んでしまっているらしい。
 
 自分が歩いた時もそうだったし。
 
 通り過ぎてから、そうだ、あの本を探せば分かるのではないか? そう思って...
 
 ∧∧
( ‥)そう思ってあなたが
    近くで身をひるがえしたら
    すごい勢いで
    荷物をひっつかんで
    走っていっちゃったよね
 
  ( ‥)怖かったのだねえ
    ‐□ 病んでるよなあ
 
 だがしかし、なによりも一番、うわあ、と思ったのは、図書館で小説を読むじいさんであった。
 
 ∧∧
( ‥)まあ読んじゃいけないわけじゃ
    ないんだけど
 
  (‥ )しかし思うわけさ
      ”良い歳なのに
      このじいさん
      図書館にまで来て
      嘘を読んでるよ!”
      
 
 あるいはムック本を読んでいるじいさん。
 
 ああいうのを見て思うに、若者は活字離れだの、読んでも頭の悪そうなラノベばかりだの、どうしてそんな非難ができようか?
 
 遺伝子が同じである限り、人間の能力が世代ごとに大きく変わるわけがない。若者の能力と自分の能力は体力と経験値という変数はあれど、基礎は同等と考えるべきだ。若者が愚かだというのなら、自分たちの世代も、それ以上の世代も同様に愚かであろう。そしてラノベが駄目なら他のいかなる小説も全部駄目だ。そもそもその全てが作り話で嘘なのだから、同等以外の何物でもない。区別する必要など一体どこにあろう?
 
 
 ∧∧
(‥ )やっぱ大人向けに偽装した
\‐  子供向けの本を書くべきだと
 
  (‥ )僕らの知能と能力は
      小学生並み
      それを大前提とすることは
      確かに正しいのだ
 
 図書館にいけばそれがよく分かる。我々はまるで子供だ。だが子供もそうであるように、大人にはプライドが必要なのだ。

 なれば大人のプライドを満足させる子供の本を書くが道理。

 一体、大人というものに対して、他に何を期待できようか? 一体大人に、大人の何を期待しえようか? 
 
 
 ところで
 
  ( ‥)話を戻すとさ
    ‐□ 俺はやぎ座と
      みずがめ座と
      うお座に対する
      ギリシャ神話の解釈が
      どうにも気に入らん
 
 ∧∧
( ‥)変身に失敗しただの
    美少年をはべらせたいから
    ゼウスがさらっただの
    そういうとってつけたような
    話になっているからね
 
 水の地下世界にすまうヤギ魚、水をもたらす偉大なる者、天の耕作地の脇に横たわる魚たち、これらがなぜそんな適当な話に解釈されてしまったのか?
 
 ∧∧
(‥ )ポリスのギリシャ人は
\‐  どっちかというと
    商業の人だったからとか?
 
  (‥ )農耕の重要な要素を
      理解できなかったとか
      そんなことあるのかな?
 
 あまり安易に考えるわけにもいくまいが、どうにも納得できぬ。
 
 

2014年11月22日土曜日

硫酸星人よりも硝酸星人

 
 いて座=>Untitled Document
 
 おうし座=>Untitled Document
 
 
 ∧∧
(‥ )いて座さんは形が
\‐   はっきりしませんね
 
  (‥ )弓が主体だと
      見るべきだろうなあ
  
 いて座はギリシャ神話では半人半馬の存在だが、オリジナルであるメソポタミアでは、それとはちょっと違う存在、パビルサグであった。
 
 *パビルサグはネットで検索をかけると、なんかちょっとそれは違うよね、というゲームのモンスターが出てきてしまうので割愛する。古式ゆかしきメソポタミアの文化はなかなかに伝承されがたいものだ。
 
 さてもさても

 我々は酸素を呼吸する。
 
 だが、この地球には他の元素と結合した酸素の酸化力を利用して呼吸するものもいる。
 
 ∧∧
(‥ )例えば硫酸とかね
\‐
 
  (‥ )つまり硫酸呼吸だ
 
 もしそれが主流になっている惑星だったら一体全体どういう世界であったろうか?
 
 ∧∧
( ‥)単純に考えればあれですか
    光エネルギーで硫酸を
    作っている生物が
    いるんですかね?
    それが植物で
    その生成物である硫酸を
    使って呼吸する
 
  ( ‥)防御用に硫酸を作る
    ‐□ 海藻なら
      地球にもいるし
      かじるとめちゃくちゃ
      すっぱいんだけどさ
      ああいう感じなのかな
 
 しかし、酸素と違って硫酸は液体だ。硫酸惑星の動物たちは大気を吸うのではなく、硫酸を含んだ水か、あるいは生物を食べなくてはいけない。
 
 ∧∧
(‥ )食事のために食べるというより
\‐  呼吸のために”食べる”量の方が
    多いわけだね
 
  (‥ )それを考えるとあれだな
      顎の構造が
      脊椎動物的なのか
      あるいは
      節足動物的なのか
      いずれにせよ
      雑食に向いた
      構造なのだろうな
 
 多分、食べ方が汚いかもしれない。草だろうが、葉っぱだろうが、ナメクジや昆虫に該当するような小さな動物だろうが、手当たり次第に口に運んで、ぼりぼり食べてはぺっと吐き出しているのかもしれない。呑み込んでも良いだろうが、汁気の多いものは以上のようにするだろう。つぶして吸って、殻とか外骨格は吐き捨てているのではないだろうか?
 
 ∧∧
( ‥)植物は動物に
   どんどん食われるから
    どんどん葉っぱを伸ばすの
    ですかねえ?
 
  (‥ )地球より食害がひどいよね
      でも
      食われたら困る器官は
      ちょっと手が届きにくい
      地下とかに隠しておけば
      十分かもな
      あるいは
      ちょっと固い外皮で
      守るだけで良いかもしれん
 
 
 動物たちは呼吸のために食っているのである。少し面倒な作りにするだけで、相当防御になりそうだ。
 
 ∧∧
(‥ )硫酸呼吸は酸素呼吸よりも
\‐  生み出せるエネルギーは
    低いんじゃ
    ありませんでしたっけ?
 
  (‥ )それを考えると
      変温動物しかいないかもな
 
 人間のように体温を一定に保つ動物は食べたものの多くを燃やして熱にしてしまう。燃やすとは呼吸なわけで、生み出せるエネルギーがさほど多くないとしたら、恒温動物であるのは厳しいかもしれない。
 
 ∧∧
( ‥)脳みたいにエネルギーを
    膨大に消費する器官も
    それを維持するのは
    厳しいのでは?
 
  ( ‥)でっかい体で
    ‐□ 脳の維持に割ける
      エネルギーを生み出す
      そんな感じかなあ...

 
 体が大きくなると、新陳代謝もゆるやかになる。つまり効率的だ。効率的なら脳に回す余力も大きくなろう。

 してみると、硫酸星人は体がでかくて、変温動物で、いつもいつもなんでもかんでも、とにかく手当たり次第に口にしては、くちゃくちゃ嚼んでいることになろうか? 呑み込んだ分だけ水を排水する必要もあるので、しょっちゅうトイレにいっていることになる。もっとも、人間から見れば不衛生とは正反対の生物だけども。
 
 ∧∧
(‥ )骨格はなんですかね?
\‐   炭酸カルシウムとかは
     普通に考えれば
     溶けちゃうよね
 
  (‥ )鉱物質の骨格は
      持っていないのかな?
 
 化学的な平衡状態とかそういうことをよく理解していないから、なんとも言えない。しかし、単純に考えれば、硫酸人間は高分子の強化された組織だけを骨格にして歩き回っているのかもしれない。もしかしたら骨格がなくとも巨大な体を支持、動かすことにむいた、多足の動物かもしれないし、咀嚼器官も人間のような鉱物質の歯ではないのかもしれない。丈夫な筋肉と角質の板ですりつぶすのだろう。でかい軟体動物のようなものかもしれぬ。
 
 さて、ここまで考えてふと思い至る。
 
 ∧∧
( ‥)あのさ
   ハルク・クレメントさんの
   「窒素固定世界」に登場する
   異星人オブザーバーは
   硝酸呼吸だよね?
 
  (‥ )ああ、たぶん
      そうだろうな
 
 硫酸呼吸をする生物は地球にいるが、硝酸で呼吸する生物も地球にはいる。そして窒素固定世界は大気中の酸素が全部硝酸になってしまった世界。
 
 そういえば人間に捕まったオブザーバーは逃げ出すのだけど、すぐに人間の居住区で栽培されている硝酸植物を見つけて、それを食ってたよな。
 
 連中はやたらに食うし、食う描写が多い。それも、必要なものを見繕って食べるのだ。
 
 ∧∧
(‥ )あれは硝酸呼吸の描写だ
\‐  そういうことですかね
    そういえば
    オブザーバーには
    骨がありませんでしたよね
 
  (‥ )ああ、
      あれはそういうことか
      今から思い出せば
      納得できるな
 
 考えてみれば作者ハル・クレメントという人はそういうことをする人であったと思う。「重力の使命」だと、メスクリン人は酸化ではなく水素による還元反応を代謝に使うのだが、それを暗示する場面があるのだ。
 
 ∧∧
(‥ )メスクリンの焚き火に
\‐  肉を加えると
    より燃えやすくなる
    でしたっけ?
    還元反応を促進する
    酵素の存在を暗示する
    場面ですよね
 
  (‥ )作者がそう述べてたしな
  
 これは、表面的にはあまりにもご都合主義だとも言える。酸化反応を促進する酵素があるからといって、地球の焚き火に肉を放り込んでも肉が焼けるだけだ。だが、言わんとすることは分かりやすい。例えばの話、酸素呼吸をしない宇宙人が人類の話を聞いた時、
 
 過酸化水素水に肝臓を一切れ加えると激しく発砲して酸素が出てくる??? どういうこと??
 
 あれは過酸化水素の分解を酵素が促進するためで、これは酸素呼吸に関連した機能なんだけども、それを知らない宇宙人はひどくめんくらうだろう。それを考えれば、メスクリン人の証言に人類が、なんだかさっぱり分からん、という反応を示す場面は、そのものずばりではないにせよあり得る話だ。
 
 そして作者がこういうことを作品に、暗示的に練り込む人であるからには、異星人オブザーバーがやたらと物を食う事や、骨を持たないことがどういうことか、それはそういう設定があったということなんだろう(確かに思い返せばそういう場面や暗示や説明があったと思う)。
 
 それに、硫黄化合物である硫酸よりは、窒素化合物である硝酸の方が量が 多そうに思えるし
 
 ∧∧
( ‥)それを考えると
    硫酸星人よりも
    硝酸星人ですかね?
 
  ( ‥)そういうことかなあ
    ‐□
 
 一応、これはhilihiliのhilihili: 80年代、すでに飽和していたという可能性の続き
 
 
 
 ∧∧
(‥ )でもこういう設定って
\‐  創作だと生かすのが
    難しいよね
 
  (‥ )人類とかけ離れた
      異星人というだけでも
      どうにもならなくなるのに
      硫酸呼吸だの
      硝酸呼吸だのと言われたら
      困っちゃうよね
      こういう作品が廃れたのは
      分かるよなあ
 
 考えてみればハル・クレメントさんの作品は、そんな血湧き肉踊るようなものではない。なんかすごーく地味だ。「20億の針」は少年が主人公なのに、ジュブナイル小説にありがちな冒険が無い。あるいは薄い。「重力の使命」は大人たちの惑星探査である。だがしかし、それに比べると「窒素固定世界」はかなりドラマチックな話だ。
 
 ∧∧
( ‥)骨無し硝酸呼吸なのに
    ドラマチックときたもんだ
 
  ( ‥)でもあれもさ
    ‐□ 硝酸呼吸世界に移行した
      未来の地球が舞台で
      酸素マスクをした家族
      その家族と連れ添う異星人
      彼らを巻き込む人々の思惑
      硝酸の海
      赤茶けた空
      水没した都市
      そういう世紀末的な
      地獄のような世界で
      みんなが生きているから
      ドラマになったんだよな
 
 それに、硝酸世界に移行して、誰もが酸素マスクをつけねばいけない時、そんな拘束がまったくない異星人が誰よりも自由に動いて子供を助ける。そうであるから硝酸呼吸異星人の設定が生きてくるのだろう。
 
 端的にいうと、硝酸呼吸星人が酸素地球にただ来ただけでは、ああいう話にはならなかったということだ。


 ∧∧
( ‥)じゃあなに? 
    色気出して
    美少女型硫酸呼吸星人とか
    萌え型硝酸呼吸星人とか?
 
  (‥ )酸ですっぱい子か
      そりゃまた冒険だな
 
 
    
 
 

2014年11月21日金曜日

これはSFではなくパクりというのは認識論で自然科学ではない

 
 ねえねえ、これ知ってる?
 
 こんな話を聞いた!
 
 人間はネタを仕入れて、それを皆に吹聴するのが好きだ。
 
 
 ∧∧
( ‥)見つけた芋や捕らえた獲物を
    持ち帰って
    みせびらかすようなもの
    ですかね
 
  ( ‥)数万年前のサバンナで
    ‐□ していたことの
      延長なのだろうな
      猫だって獲物を飼い主に
      見せびらかすし
      鳥の中には
      きれいなものを集めて
      それを陳列して求愛する
      種類がいるわけだしね
 
 それを考えれば、人間のしていることはそんなにおかしなことではない。変っているとしたら自慢や見せびらかしが物だけでなく、さえずりのような複雑な声、つまり言語でもそれを行うということだろうか。
 
 ∧∧
(‥ )無駄に巨大な脳
\‐  複雑な言語
    あなたがたはそれを使って
    見せびらかしと自慢を行う
 
  (‥ )というか
      それを行うために
      そういう能力を進化させた
      そういうことだよね
 
 もっと正確に言えば、言葉や言い回しで自慢と見せびらかしを行える者が子孫を増やせたので、結果的にそうなった、ということになろう。
 
 それを考えると、「寄生獣」は「20億の針」のパクリだ、と言ったあの人は、それを言わずにはいられなかったのだ。
 
 ∧∧
( ‥)それが人間なのだ
 
  (‥ )自分の知識を誇示して
      見せびらかしを行う
      これが人類の特性
 
 ただ悲しいかな、話題というものは流行り廃りが非常に激しい。非常に激しいから、以前は尾羽を広げることが流行りだったけども、今ではトサカを広げることが流行りになる。そういう変化が急激に起こる。

 つまるところ、彼がやった自慢はトサカを使って自慢大会が行われている場所で、なんだ、俺の方がすごいぞ! と尾羽を広げたようなものだったのだ。
 
要するにこの話である=>hilihiliのhilihili: 今はね、トサカが流行りなんすよ
 
 以上のように、「寄生獣」は「20億の針」がオリジナル、彼がそう言った時代は1990年代。もし1980年にはすでにSFが飽和状態であった、というのなら、彼の行為は10年、あるいは20年近く遅かったのだとも言えよう。
 
 
 以上を踏まえるのならば
 
 ∧∧
(‥ )時代遅れうんぬんはともかく
\‐  SFファンが
    そのアニメは
    このSFのパクリ!
    そう言い立てるのは
    性淘汰で進化したサルとしては
    しごく当然なこと
 
  (‥ )しかし性淘汰は不安定
      これまでの自慢が
      時代遅れになるのも当然
      人が時代についていけなく
      なるのもまた当然だ
      ....とはいえだな
 
 とはいえ、多分、それだけでは話はすまないのだろう。例えばの話
 
 エヴァンゲリオンは「幼年期の終わり」のパクリ
 
 スターウォーズや銀河英雄伝説はSFじゃない
 
 ∧∧
(‥ )これ、確かに時々見ますよね
\‐
 
  (‥ )これは分かるような
      気がする一方で
      よく考えれば
      おかしんだよね
 
 まず、アーサー・C・クラークが書いた「幼年期の終わり」。ある日、宇宙人が地球にやってくる。彼らの支配の下、地球からは戦争が無くなり、人類は黄金時代を迎えるが、それには目的があった。重力を操り、光速で宇宙を自在に駈ける技術を持つ宇宙人たち。地球人からは全能者のように見える宇宙人にも上位存在がいる。時間も空間も、光速の限界をも越えた存在である何者か。その神とも言えるものの指示で宇宙人は地球にやってきた。その目的は人類から生まれる次なるものを、その上位存在へと導くこと。

 つまり宇宙人は助産婦である。神では力が強大すぎて、人間の進化に直接介入できない。ゆえに、御使いとして宇宙人は遣わされたのだ。宇宙人はじっと待っている。そしてある日、一人の少年から事は始まる。それはあっという間に子供たちに広がる。宇宙人は子供たちを親から、いまや旧人類となった人々から隔離する。子供たちは個体としての人格を失っていく、かつての個人がいわば細胞となる。しかし、それらが集合して成立する新たなる存在は、宇宙人をも圧倒するものだ。これが次なるもの。
 
 旧人類が死に絶えた地球の空に、ついに上位存在、神たるものがやってくる。そしてかつて人類から生まれた新たなる者は、地球を破壊吸収し、神のもとへと旅立っていくが、それを見届けた御使いたる宇宙人は、果たして何を学んだのであろうか?
 
 ∧∧
( ‥)エヴァンゲリオンの
    人類補完計画も確かに
    個体の喪失と次なる進化
    ではありましたけどね
    こじつけ気味に言えば
    秘密の計画や
    人類進化の促進も
    共通と言えば共通ですかねえ
 
  ( ‥)つまりエヴァンゲリオンと
    ‐□ 「幼年期の終わり」の
      共通点はそのくらいだな
 
 
 一方、スターウォーズはSFではないと言う。確かにまあ、あれは善と悪の戦いを描いたもので、むしろファンタジーかもしれない。
 
 銀河英雄伝説もSFではないと言う。まあ確かに、どの居住惑星にいっても季節も気候も環境も重力もどういうわけか同じだ。これは”銀河英雄伝説は所詮は宇宙三国志であって、SFではないのだ”、と言い張る根拠にはなろう(もっとも、あの不思議設定は便宜的にそうしていたはずだが)。
 
 問題はだ
 
 これを持ってエヴァンゲリオンは「幼年期の終わり」のパクリであるとみなす
 
 これを持って銀河英雄伝説とスターウォーズはSFではないとみなす
 
 この根拠とその正当性はなんだろうか?
 
 ∧∧
( ‥)これってあれでしょ
    その分類の根拠を
    客観的に明示できるか?
    そういう問題だよね
 
  (‥ )こう尋ねると
      根拠は明示したではないか
      そういう答えが
      返ってくるものだけどね
      根拠の”正当性”は
      明示されていないのだよね
 
 
 例えば、
 
 タコと人間の眼球はどちらもレンズ眼である。これを根拠にタコは軟体動物ではなく、人間の仲間に含めて良い
 
 確かに、根拠自体は明言されている
 
 あるいは反対にこうである
 
 タコの眼球と人間の眼球は網膜の配置が異なる。これを根拠にタコと人間のレンズ眼は別物だと考えて良い
 
 確かに、根拠自体は明言されている
 
 だがしかし、
 
 ∧∧
(‥ )どっちもペケでしょうねえ
\‐  
 
  (‥ )ひとつの根拠で
      同じにまとめる
      そこまで強力な意味合いを
      その証拠に与えるのは
      なぜか?
      ひとつの根拠で
      別々のものだと示す
      そこまで強力な意味合いを
      その証拠に与えるのは
      なぜか?
      どちらもこの問いに
      答えておらぬ
 
 根拠を出せば良いというものではない。根拠の正当性が問題なのだ。
 
 例えばの話、タコと人間はレンズ眼だから起源が同じだ、というのは、レンズ眼が一回しか進化しなかった、ということを前提にしている。
 
 なぜそんなことが言えるのか?
 
 反対に、網膜の配置が異なるから別物だ、ということは、網膜の配置は絶対的に変化しない、ということを前提にしている。
 
 なんでそんなことが言えるのか?
 
 ここが問われる。
 
 これに答えられるか? 
 
 答える事が出来ないのなら、それは永久に主観論でとどまるだろう。
 
 この議論はかつて70年代以後、生物学と系統学の世界で起きたことであった。つまり、まさに科学の問題である。
 
 ∧∧
(‥ )分類学はこの問いに答えられず
\‐  系統学はこの問いに対して
    すべての証拠を取りあえず
    等価であると仮定し
    全体の整合性を見ることで
    答えた
 
  (‥ )整合性という基準を
      導入したわけだな
      整合性以外にも
      確率とか
      変化を最小化するとか
      そういう基準もあるが
      まあ全部似たようなもんだ
 
 分類学はこの問いに答えることはできなかった。答えようとした分類学はあったが、結局それは系統学になってしまった。分類学は分類学のままだった。そして系統学は以上の問いに答えた。
 
 これは科学の世界で実際に起きた問いであり、そして解答であった。


 では? エヴァンゲリオンが「幼年期の終わり」のパクリであり、銀河英雄伝説とスターウォーズがSFではない、という分類は、以上の問いに答えているか? 答えられるか?
 
 ∧∧
( ‥)答えておらんと
 
  ( ‥)答えていないね
    ‐□ 
 
 端的に言ってしまうと、これがSFだ、これはSFじゃない、これはこのSFのぱくりだ、というのは自然科学でもなんでもない、主観的な認識論でしかない、ということである。事実、そこには解析というものがまったく無いのだ。
 
 ∧∧
(‥ )SFファンはこんなの
\‐  科学的じゃない!
    と言うのですけどね
 
  (‥ )ところがそれ自体が
      科学的じゃないんだよな
 
 
 解析が無いまま、これはパクリだ、これはSFじゃない、そうやって分類の話をする。それは科学じゃなく認識論の話をしているだけだ。それにもかかわらず、それが科学的であると言い立てるのは、いかにも悪い冗談である。
 

 
*ちなみにタコと人間のレンズ眼は、整合性と最節約に基づく祖先復元から考えると別々に進化したものであり、起源は異なる。 
 
 

2014年11月20日木曜日

たった700億

 
 昨日はひさしぶりに町へでかけたので、電車に乗った。吊り広告を見ると、解散選挙で700億円の無駄遣い そうでかでかと書かれている。
 
   ああ安倍さんは
 ∧∧ 解散表明したのですよね
( ‥)
 ‐( ‥)そういえば
     そうだったな
 
 必要も無い選挙をするために、その運営として700億円も使うとは何事か! という揶揄。
 
 700億
 
 100人に配れば1人につき7億
 
 1000人なら7000万
 
 1万人なら700万
 
 10万人なら70万
 
 100万人なら7万
 
   50万人に配るのなら
 ∧∧ 1人につき14万
(‥ )
 ‐( ‥)ようするに
     50万人の年金受給者に
     1ヶ月分の生活費を
     振り込んだらそれで
     終わりってわけだ
 
 この計算には色々細々と突っ込みを入れることが可能であろう。だがしかし、以上以外に振込の手間賃や人件費や、それを円滑に運営するための運営費がかかることを考えれば、そういう細かい話は全部ふっとぶ。
 
 要するに、700億なんて金額で出来ることは、以上の計算よりも、もっと小規模で雀の涙でしかない、ということだ。
 
 700億円の無駄遣い!

 しかしそれは、たった一ヶ月の、しかも、わずか数十万人の年金と運営にさえも及ばない。
 
   それを考えると
 ∧∧ 消費税アップは急務?
( ‥)
 ‐( ‥)そういうことだろうね
     でも消費税を上げると
     老人も文句を言う
     年金や医療費が苦しくなると
     やっぱり文句を言う
     まあそういうことだな
 
 政治家は八方ふさがりである。それでも必要とあれば政治家は決断しなければならぬ。文句だけを言えば良い国民やマスコミや野党でないのなら決断が必要だ。それが当事者というものだ。
 
 それでもおそらくは不安なのだ。消費税を上げることで、かつて3から5パーセントに上げた時のようなことが起こるのではないか? と
 
  あれはすごかったよね
 ∧∧
( ‥)
 ‐( ‥)当時、バイトにいっても
     客がほとんどゼロでな
     帰りは電車が終わって
     家に帰れなくて
     数キロの道のりを
     歩き出したのよ
     そうしたら
     他の乗客たちも
     全員歩き出すわけさ
     ぎょっとしたものさね
 
 誰もタクシーに並ばないのである。
 
 一方、8パーセントに上がった現在、人々はまだ普通にタクシーを使っている。少なくとも、並んでいる。
 
 経済の構造とか産業の構造は変るものだ。だから安易に比較はできないが、あれを見る限り、5パーセント時のようなダメージはまだ無いらしい。
 
 だがそれでも不安はぬぐえない
 
 8では大丈夫っぽい。
 
 だが、10ならどうなのだ?
 
 さすがにこれはまずくね?
 
   いろいろな経済学者が
 ∧∧ 色々なことを言っています
(‥ )
 ‐( ‥)学者は所詮のところ
      当事者じゃない
      運営をしているわけじゃ
      ないからね
 
 彼らがいかなる経済理論を持っているにして、少なくとも肩書きと立場上は、胡散臭い経営コンサルタントと変らない。運営をしない、責任を取る訳でもないとはそういうことだ。実際、国の根幹は経済なんだが、国の運営は経済だけの話ではないのだから。
 
 あるいは、増税しても問題ないそう言っている経済学者に怒り心頭の人もいる。
  
   日本経済はお前たちの
 ∧∧ おもちゃじゃない! と
( ‥)
 ‐( ‥)ご立腹であるねえ
     それは当然だよね
     でも理論というのは
     決断するための根拠でもある
 
 端的に言えば、増税しても問題無い理論、これ自体は経済学の話でしかないのだが、政治家が決断をする理論にも使われうるということだ。というか理論というのはなんでもそうなのである。それは決断をする道しるべに使われるものであって、極端な場合、理論の内容と予測が当たっているのか、はずれているのか、それ自体はどうでも良いのだとも言える。
 
 
   どうなりますかね?
 ∧∧
(‥ )
 ‐( ‥)選挙自体は勝てる見込みが
     あるんだろうな
     見込みがあるから
     解散する訳だしね
 
 そもそも民主党が決めた増税ですけども、ちょっと無理っぽいから解散して信を問いますね、という構図だ。現政権と現与党である自民党が負ける道理はちょっと見当たらない。
 
    問題はそこから先だね
 ∧∧  でもこれはどうにもならない
( ‥)
 ‐( ‥)700億なんて
     はした金では
     どうにもならない規模の
     問題だからな
     小手先の経済理論で
     どうこうできる事柄では
     ないからね
 
 さてもさても、しかし、目下の課題は、まずは自分が生き残ることなのであった。
 
 
 

80年代、すでに飽和していたという可能性

 
 そういえばふと思い出したことがある
 
 ハル・クレメントの書いた小説「窒素固定世界」
 
=>The Nitrogen Fix - Wikipedia, the free encyclopedia
 
 これを評して曰く、SFはすべてのアイデアが出尽くした。後はアイデアの組み合わせだけだ、そう言う人もいる。だが、この「窒素固定世界」を見よ、と。
 
 ∧∧
(‥ )出版は1980年
\‐  日本語版は1984年
    ようするにあれだね
    SFは80年代において
    すでにアイデアが枯渇していた
    そういうことだね
 
  (‥ )実際に枯渇し切った
      わけではない
      「窒素固定世界」が
      その証拠である
      そういう話なんだが
      裏を返せば
      飽和状態にあった
      そういうことだろうな
 
 「窒素固定世界」は惑星の大気進化を扱ったSFであった。例えば地球では光合成生物が出現することで分子状酸素が大気中に放出された。これによって、それまで存在した二酸化炭素やメタンなどからなる大気は、窒素と酸素が主体となった大気へと変貌した。そうして酸素呼吸生物も誕生した。
 
 窒素固定とは現在でも一部の生物が行うことで、窒素は蛋白を作るのに必要な元素である。大気中の窒素を、肉体を構成する要素、あるいはそれに利用可能な分子として固定する。それが窒素固定。例えばマメ科の植物がやせた土地でも成長できるのは、彼らが根に共生させている細菌が窒素固定を行うので、その生成物を利用できるからだ。
 
 「窒素固定世界」とは、知的生物が関与することで惑星の大気が次のフェーズへ進行してしまった状態を描いたもの。つまり、食料増産のために大気中の窒素を固定する植物を技術的に作り出す。そうしてある条件が整うと、それが爆発的に繁茂を開始する。
 
 大気中にあった酸素は、窒素酸化物を作るためにすべて消費される。結果的に惑星の大気から酸素は失われ、それを阻止出来ずに、知的種族はそれまで栄えていたすべての酸素呼吸生物ごと全滅する。そうして全く異なる、新たな生物群が繁栄する世界へと惑星は移行する。
 
 窒素固定によって生産された硝酸で海は酸性となり、空は窒素化合物で赤茶けて濁り、酸性化した海から放出された二酸化炭素で温暖化が進行した世界。これは様々な酸素惑星で起きる事であり、それが地球でも起こった。
 
 そういう設定だ。
 
 要するにこれまで作者ハル・クレメントが描いてきた、地球と化学的に異なる異形の惑星という設定ではなく、異形の惑星になってしまった未来の地球と、なんとか生き延びた人類、そしてそこにやってきた宇宙人オブザーバーたちを描く物語。硝酸によって金属が使えない人類は水没した遺跡からガラスを回収して道具として使う。窒素固定後の世界で進化した種族オブザーバーは、空気を呼吸することがないため、必然的に音声ではなく、神経を直接接触させることで意思と知識を伝達する。
 
 ∧∧
( ‥)これは確かに非常に
    斬新なアイデアであったのだと
 
  ( ‥)そしてひるがえれば
    ‐□ 当時SFはすでにアイデアが
      枯渇しかかっていた
      だからこれがいわば
      衝撃であった
      そういうことだよな
 
 もちろん、こんなたったひとつの事柄からジャンル全体の傾向を論じることに異を唱える人もいるであろう。だがしかし、次のように考えることが出来るのも、また事実。
 
 SFオタクは、このアニメのこの設定はこのSFのこれこれだ、と無駄に知識をひけらかすが、なぜだろうね?
 
 そういう苦言に対して、こう答えることが出来るのではなかろうか?
 
 SF自体が80年代にはすでにアイデアが枯渇して、アニメうんぬん関係なく、SFというジャンルの中ですでに「この設定はこれこれが元だ。こんなのをありがたがってどうするんだ??」そういう内ゲバみたいなことをしていたんじゃねーの?
 
 少なくともこの疑惑はぬぐえない。
 
 今から30年以上前、このジャンルはすでに飽和して、未来などなかったのではないのか? という疑義
 
 ∧∧
(‥ )まあ、今でもこのアニメの
\‐  この場面はこのアニメの
    パクリだ! とか
    熱心に言い立てる
    アニメファンがいますからね
    漫画ファンにもいるし
    小説のファンでもいるし
    どこのジャンルでも
    自分の知識を
    クジャクの尾羽として
    誇示したい人はいるのだと
    そして30年前
    すでにSFは
    飽和状態であったのだと
 
  (‥ )アイデアが飽和する
      そうなるとさ
      クジャクの尾羽という
      自慢大会自体が
      成立しなくなるんだよな
 
 そういう時に流行りの小説と物語の形式が古い相を放棄し、次のフェーズへ移行する。これは当然ではなかろうか?
 
 人間の想像力は無限かもしれないが、物語として成立する設定となるとあからさまに有限である。物語は人間の認識や神経回路に制限される。そして現実もまた物語に制限をくわえる。物理的、化学的、生物学的、社会的な制限がどうしても加わる。
 
 それを考えればどんなジャンルも早晩、飽和してしまうのは当然であろう。これは別に自慢大会で尾羽を広げる一部の”オタク”に限ったことではない。同じものを何度も見せられると、もっと大量にいる声を上げない消費者たちも飽き始めるのだ。彼らは次を求めだす。ホラーやファンタジーがその受け皿になるのは当然。これらは人類と共に歩んできた、古い、古い、ジャンルであり文化なのだから。
 
 ∧∧
( ‥)ジャンルが飽和したら
    次のフェーズへ移行する
    これはいわば
    リセットみたいなもの
    ですかねえ
 
  ( ‥)どこかでリセットして
    ‐□ もう一度新鮮な気持ちで
      始める
      それはどんな分野でも
      必要なことだろうな
 
 それを考えたら、このアニメのこれはこのSFのこれこれだ、と乱入する人は、現代世界に迷い込んだ、滅亡した古代文明の生き残りみたいなものかもしれない。
 
 
 ∧∧
(‥ )でもアイデアが伝承されて
\‐   いるのだとしたら
     SFは文化としては
     アニメという子孫を
     残せたわけだよね
     だとしたらむしろ
     喜ぶべきじゃ
     ないですかね?
 
  (‥ )文化としての存続ではなく
      自分の知識を見せつける
      尾羽誇示の場として
      好きだった
      やっぱり
      そういうことじゃないか?
 
 ただ、「窒素固定世界」のアイデアが伝承されたのかは、知らない。
 
 ∧∧
(‥ )大気進化が別フェーズへ
\‐  移行する
    これはちょっと難しいかもね
 
  (‥ )人類の活動で大気が
      汚染されすぎて
      酸素が消滅した未来とか
      そういう話はあるのだがな
      「窒素固定世界」は
      アイデアが特異だから
      伝承が難しいよなあ
      

 これはhilihiliのhilihili: 存在とは....しかしもはや何もかもが手遅れであるの続き
 
 
 
   
  

2014年11月19日水曜日

存在とは....しかしもはや何もかもが手遅れである

 
 存在とは何か?
 
 ∧∧
(‥ )答えようがないよね
\‐  
 
  (‥ )答えようがないね
      でも次のように
      考えてみればどうだろう?
 
 
 それが存在する。それってどのぐらい確かな根拠があるの?
 
 ∧∧
( ‥)あなたはSFオタクという
    言葉を使った
    ではSFオタクとは
    実在するのだろうか?
 
 ( ‥)実在するのか?
   ‐□ 問題はだよ
     この場合のSFオタクとは
     「寄生獣」良いよね
     ”いや、あれの元ネタは
     「20億の針」だ”
     そう言って
     SF小説の知識を
     ひけらかした人
     という意味なんだよな

あるいはこの人に類似の行為をする人をSFオタクと便宜的に言っているだけにすぎないとも言える。
 

つまりこの話である=>hilihiliのhilihili: 今はね、トサカが流行りなんすよ
 
 この使い方に関する限り、ここで言っているSFオタクとは、
 
 泣きぼくろのある人
 
 酒を飲むと泣き上戸になる人
 
 ショートヘアの女の子が好きな人
 
 という程度の意味にしかならない。
 
 ∧∧
(‥ )ある特徴を持った人
\‐  という意味でしかないね
 
  (‥ )ある特徴を持ったものを
      集めて指し示す
      これだけだと
      実在するとは言えないなあ
 
 
 もちろん、個々の個人は存在するのだ。先の「寄生獣」は「20億の針」だ、と言った人は実在する。それに類似する行為を行う人も実在する。
 
 問題は、では、個々の個人はいるが、それらはひとつの集合であると言えるのか? ということになる。
 
 ∧∧
( ‥)つまりSFオタクと呼ばれる
    個人は存在するが
    その個人をまとめた集合
    ”SFオタク”という集合は
    実在するのか?
 
  (‥ )小難しい話をすると
      集合には
      存在する集合と
      存在しない集合が
      あるんだけどな
 
 例えばの話、すべての時計が正午を告げた。でっあるから時計が一つの集合として機能しているか? と言えばそうではないだろう。
 
 ∧∧
(‥ )時計は同じ時刻に合わせて
\‐  動くように設定されて
    いるだけだからね
    この集合は集合として
    存在しているとは言えない
  
  (‥ )だがしかし
      お互いに通信によって
      時刻を合わせている
      そういう時計たちなら
      どうであろうか?
 
 それは巨大なひとつの存在だ、と言って良いだろう。
 
 ∧∧
( ‥)それを言えば
    サッカーチームは存在する
    わけだね
 
  (‥ )取りあえず相互作用を
      していることは確かだな
 
 もちろん、内部では様々な思惑が渦巻き、暗闘も葛藤もあろう。しかし、ひとつの目的に沿って組織化され動いていることには違いない。
 
 あるいはこうも言える。
 
 一致団結して動いているチームは存在が強い
 
 反対に、観客席から人を適当に選んで、さあ、チームとして試合をしろと言われた場合、それは存在がひどく希薄であると
 
 ∧∧
(‥ )つまるところ
\‐  存在する、しないとは
    0か1かではなくて
    有無の間のグラデーションで
    あるのかもしれない
 
  (‥ )最初に言った
      SFオタクという
      言い様の場合だと
      これはこのSFのパクリだ
      と主張する人のこと
      それだけなのだ
      この言葉のままなら
      集合としての存在は
      希薄だよね
      少なくとも
      ひとつの集合として
      連動して動く奴ら
      という指定はここにない
 
 とはいえ、一方では言うではないか。
 
 我こそはオタクの王者なり。
 
 我が思うに、真のオタクはいなくなってしまったのである、と。
 
 これは、存在に関する極めて強力な主張である。
 
 ∧∧
( ‥)実在する私は断言する
    SFオタクは集合として実在する
    私はその集合の一員である
    そして私は集合の喪失に
    抗議する
    そう述べておりますよ
 
  ( ‥)少なくとも本人は
    ‐□ SFオタクという集合が
      実在すると認識できた
 
 しかめっつらしい、もったいぶった言い方をすれば、相互作用するひとつの系、とでも言うのか。
 
 彼は主張する。SFオタクは相互作用するひとつの系として、確かにかつて実在したのであると。
 
 もし本当にそういう形式でSFオタクが実在したと言うのであれば
 
 ∧∧
(‥ )その人が言っていることは
\‐  昔はチームが実在した
    でも今は
    チームが存在しない
    そういう嘆きである
 
  (‥ )相互作用する
      要するに自分たちの知識を
      みせびらかしあって
      競い合っていた
      そういう場がかつてはあり
      そして今はない
      そういう嘆きだと
      みなすべきだろうね
 
 そういう意味でとらえ直した場合、冒頭で取り上げたSFオタクという言葉は途端に強烈な意味を持つようになる。実際、自らの存在と誇示の場を確信していなければ、それへの渇望がなければ、寄生獣は20億の針だ、などといちいち言わないだろう。
 
 怒ったように知識をいちいちみせびらかすとは、表現の場、表現の舞台、見せびらかし合い競い合う、そういう相互作用の場を奪われたという怒りに他ならぬ。
 
 ∧∧
( ‥)つまり?
    SFオタクとはかつて
    集合として確かに
    実在したのだと?
 
 (‥ )少なくともご本人は
     そう言っておるわけだ
     でも新種にすべてを奪われて
     絶滅の道を辿っているのだな
     集合としての肉体を解体され
     ばらけた個々の断片は無力で
     しなびて死にかかっている
     まるで破壊された
     寄生獣のようにな
 
 知識を見せびらかす、このような、生存に直結しない無駄を誇示する行為は進化的に非常に速く”成長する”一方で、とても不安定だと言う。
 
 確かにそれはそうだろう。第一にそれは生存や存続という枠組みから離れている。つまり枠組みの中で安定する道理がない。さらにそもそも無駄でないと意味がない。言い換えれば無駄であれば良いのなら、誇示するものが流行り廃りで次々に交代するのが道理。
 
 例えばの話、クジャクの尾羽、あれは実のところ進化的にはもう役割を終え、消滅する可能性があるものだとも言う。実際、すでにああいう無駄がブームとして過ぎ去って、二次的に装飾を失った種族も色々といるのだ。
 
 ましてやSFとは文化の1形態であるに過ぎない。文化的なコピーと変異と伝承は極端に速い。つまり進化が速いのだ。しかも無駄となれば、それはもっとうつろいやすかろう。
 
 ∧∧
(‥ )SFオタクも
\‐  不安定な進化の中で
    廃れて時代遅れになって
    新種に置き換えられていく
    過程の真っ最中だと
 
  (‥ )実際
      このアニメ、
      この漫画のこれは
      このSFのパクリだ!
      どやあ!
      と言っている時点でな
      置き換えと置換が
      猛烈な勢いで
      進行したという
      ことだからな
 
 さながら有機生物が機械生物に置き換えられるように、炭素生物が人造の器官としてケイ素生物へと置換され、置き換えられていくように。
 
 お前らロボット共の手の指はな、俺たちホモ・サピエンスの指のぱくりだ、どやあ! と言ったところで、相手は はあ? と言うだけだ。
 
 これはつまり、種族の交代が進行したこと、そしてその過程がほぼ完了してしまったと見るべきだろう。
 
 そのアイデアはこのSFのパクリだ、と言った時点で、すべての置き換えがすでに済んでしまったということなのだ。肉体が次々と別のものに置き換えられ、世界と認識が変っていく過程。
 
 何も知らぬ若造共め、そう、どや顔をする前に、これはまさに自分たち種族の落日と絶滅の兆候と見るべきだったのだ。更新と置換が進行して、過去は抹殺されたということに気づくべきだったのだ。
 
 ∧∧
( ‥)どうするべき
    だったのでしょうね?
 
  (‥ )さあ?
 
 もはや滅びは避けられぬ。そう気がついた時にどうするべきだったのか?
 
 故郷を捨てて太陽系の外へ逃げ出すべきだったのか?
 
 もはや逃げ出すこともできぬ。座して母星がノヴァ化するのを待つしか無いが、せめて最外縁の惑星に自分たちの記録とモニュメントを打ち立てるべきだったのか?
 
 あるいは自らも新人類として同化し、己の体のすべてを新しい要素に置換するべきだったのか?
 
 あるいは反対に、我こそは最後のSFオタクとしてアニメや漫画という化け物たちと戦い続けるが、最後に捕まり、そして今や自分こそが醜い時代遅れの怪物として恐れられていたことを知って終わるのか?
 
 あるいは、蛋白人間から電子人間になるように、自らを全く別の媒質上で模造し、それを起動させ、自らを自らの後継者とするべきだったのか?
 
 ∧∧
(‥ )でもまあ
\‐  置き換えが完了したってことは
    そんなことを
    わざわざする必要はもはやない
    そういうことだよね
 
  (‥ )ようするにすべてが
      手遅れなのだな
 
 
 
   

2014年11月18日火曜日

ボテインは知らなかった

 
 一仕事終わったので、気晴らしにおひつじ座のコンテンツを作る=>Untitled Document
 
 おひつじ座周辺の空をblogに上げるとこんな感じ。













 

 撮影自体は8月のものだが、写っている星座は秋と冬のものだ。秋の星は暗い星が多く、形が分かりにくい。以上の画像の場合、上にペガサス座の一部とアンドロメダ座が、中央におひつじ座、下におうし座とその星、すばるとアルデバランが、さらにはうお座のα星とペルセウス座のβ星も写っているのだが、知らない人にとっては、何がなんだかさっぱりだろう。

 そして、コンテンツを作っていて、初めて知った名前、δ(デルタ)星ボテイン
 
 一応、上の画像でもボテインは写っている。中央やや右上の「へ」を逆にしたような並びがおひつじ座の頭、そして画面の中央やや左下に写っている、三つの三角並びをした星のひとつがボテインだ。
 
 そしてこの名前、ボテインとは参考文献によると
 
 ∧∧
(‥ )アラビア語で”胃”ですか...
\‐  するとここが
    おひつじ座のお腹だと?
 
  (‥ )おひつじ座っていうと
      「ヘ」を水平反転させた
      三つの星が目に付くけど
      ボテインは...
      知らなかったなあ

 
 というか、そもそも見た事がない。
 
 ∧∧
( ‥)光度4.5等は
    ここらへんで見るには
    ちょっときついよね
 
  (‥ )北斗七星のアルコルが
      光度4.6等
      それが
      ミザールの隣にあると
      知った上で見て
      ようやく分かるぐらい
      だからね
 
 明るい星から離れて孤立しているボテインは、そりゃ分からんよな。
 
 ∧∧
(‥ )おひつじ座さんも
\‐  それなりに大きいのですと
 
  (‥ )ちょっと新鮮だね
 
 
ちなみに、しし座の流星群が極大のはずなんだけども、夜更けの散歩の際に見れたのは引っ搔き傷のように流れたひとつだけだった。
 
 
 
 *なお、北斗七星のミザールと、その脇のアルコル。これは中東では視力検査に使われたという逸話で有名な星である。ただ、この話、出典が不明で怪し気だとも言う。


 
 

今はね、トサカが流行りなんすよ

 
 1990年代、自分を含めて幾人かの人が集まった時、「寄生獣」の話題が出た。
 
 ∧∧
(‥ )それは前に書いた通り
\‐  なんだけども
 
  (‥ )「あれ良いですよね」
      そう一人が言った時に
      別の一人がこう返した
 
 あのアイデアは、SF「20億の針」だ。あれが画期的でオリジナルだと思っては困る

 それは前に書いた通りの話だ=>hilihiliのhilihili: 劇場で踊るクジャク
 
 だがしかし
 
 実のところ、あの時、あの場には「20億の針」を読んだ人間が他にもいたのである。
 
 ∧∧
( ‥)あなたもその一人だし
 
  (‥ )そもそもな
      「寄生獣」は良いですよね
      そう言い出した人も
      「20億の針」は
       読んでいるんだよね
 
 つまり、最低でもその場には「20億の針」を読んだ人間が3人はいたわけだ。
 
 そのうちの2人は、「寄生獣」は「寄生獣」であって、これは良いぞ、そう思ってそのことを口にしなかった。
 
 ∧∧
(‥ )だけど3人のうちの1人は
\‐  あれは「20億の針」の
    パクリだ
    みたいなことを言った
 
  (‥ )あの余計な一言でな
      話の腰がぽきって
      折れてなあ
 
 あの時、思ったのは、
 
 あなたは「20億の針」を知っているのはこの場で自分しかいないと思っているようだが、他に最低でも2人はいるんですよ。いるんだけども「寄生獣」は「寄生獣」である。これは良いと思い、その話をしているので、そんなどうでも良い指摘はあえてしていないんですよ。だのにあなた、なんでそういう余計なこと言うの?
 
 ということであった
 
 知っているのはあなただけではないですよ
 
 そもそも「寄生獣」が良いと言い出した人もそんなことは知った上で言っているのですよ
 
 こういうことをいちいち指摘する気にもならない。
 
 言い出しっぺもそういうことは言わなかった。だが、言い出しっぺの彼がこっちをちらっと見た時の様子から、お互いが同じことを考えていることは、なんとなく分かった。
 
 あの時、あの瞬間の空気の悪さと言ったら、なんとも言い様がないのである。もう20年も前の話なんだが、今でも覚えているのはそのせいだろう。
 
 ∧∧
(‥ )SFオタクが
\‐  そういうことをするから
    SFって衰退したのですかね?
 
  (‥ )いや関係ないだろ
      オタ芸だかなんだか
      一般の客がどん引きする
      パフォーマンスをする
      熱心なファンが生まれた
      そうしたらアイドルが
      即座に凋落しました
      なんてことは
      ないだろうからな
 
 こういう愚痴を見た事がある。
 
 SFオタクとかSFファンとかさ
 
 このアイデアはこのSFのパクリだ。だのになぜアニメオタクはこのようなものを画期的と評価するのか?? 
 
 あの人たちはそういうことをやたらと言いたがるよね。
 

 ここで槍玉にあげられているSFファンの行動は、いわば自分の知識をひけらかす行為であるし、そのような知識自慢をする場を、アニメという別ジャンルに奪われてしまった事に対する憤りでもあるだろう。
 
 ∧∧
( ‥)自分の知識をひけらかす
    それはクジャクが尾羽を
    広げるようなもの
    それは生物としては
    非常に当たり前の行為
 
  (‥ )だがクジャクは
      パフォーマンスをする場を
      新種に奪われてしまった
      そういうわけだよ
      まあ、怒るのは当然だよな
 
 怒るのは当然だ。だから、新種がトサカを広げて美を競い合っている場所に乱入して、

 なんだそんなもの! お前らのそのトサカの柄と有り様は俺の尾羽のパクリじゃないか!!
 
 そういって尾羽を広げて、皆に、ほれほれ、どーだ、どーだ、と見せつけるのは当たり前のことであろう。
 
 ∧∧
(‥ )でもそれはトサカじゃないから
\‐  結局のところ
   全然まったくうけないんだよね
 
  (‥ )そのトサカはパクリだ!
      そういって尾羽を
      広げられてもな
      今の流行りは
      トサカなんだよ
      馬鹿だろお前で
      話は終わっちゃうんだよね
 
 美というものは性能ではない。それは必然の存在ではないので、どうしても流行りという挙動を示す。いきなり勃興して、そうしていきなり衰退するものだ。
 
 ∧∧
( ‥)それを考慮すると
    SFが衰退した理由を
    考える必要なんてない
    そういうことでもあるね
 
  (‥ )流行りに
      積極的な理由なんて
      存在せんからな
      理由なんて頻度と確率で
      説明するものだろ
 
 一世を風靡したアーティスト、小室哲哉さん。ブームと席巻と凋落があまりに極端だったので非常に印象的だったけども、ある人が曰く、音楽のすべてを彼が席巻してしまうと、同じものに遭遇する頻度が非常に高まるため、必然的に、しかも急激に飽きられてしまうと。
 
 ∧∧
( ‥)頻度、刺激、慣れ
    もうそれだけで説明が可能
 
  (‥ )マニアがどうした
      オタクがどうの
      そんな精神論は
      説明には不必要だろうな
 
 オタクは無駄なことに命をかけているのだから、その魂は高潔である、という精神論もまた不要だ。生物である以上、そんなことはありえない。オタクは人体から生み出される即物的な欲望、人間社会における地位を確保したいという打算で行動しているにすぎぬ。

 知識の誇示、とはそういうことに他ならぬ。
 
 彼ら自身がしばしばそう主張するではないか
 
 ” まったく無駄で浮世離れしている行為に全力を尽くす、それこそが知的行為である”と
 
 ∧∧
( ‥)でもそれこそが
    人類が巨大な脳を誇示して
    他人に自分を
    見せびらかすという行為
    つまり欲望の発露
    社会的地位の確保
    そのものに他ならない
 
  ( ‥)オタクの純粋さを
    ‐□ 歌い上げる人はだな
      進化を理解していないのだ
    
 
 ∧∧
(‥ )そして知識の誇示とは
\‐  流行りに左右されてしまう
    そういうはかなさを
    そなえている
 
  (‥ )流行はうたかた
      そして
      流行に乗り遅れるのは
      悲惨だってことよな
 
 
 以下、備考

 *SF小説「20億の針」は細胞よりも小さな構造を基本単位として、それによって体を構成している宇宙人が地球にやってくるところから始まる。この種族は液体状であり、細胞から体を作っている別の生物の体内に、浸透するように入り込んで寄生し、それを操る事で生活している。地球にやってきた宇宙人の目的は犯罪者の追跡だ。宿主を傷つけること、それは彼らにとって重罪であり、その罪を犯した逃亡者を星々を越えて追跡してきたのだ。地球にやってきた追跡者は少年の体内に潜り込み、少年に接触をはかる。網膜に文字を投影し、意思疎通をおこない、そうして一緒に犯罪者の捜索を開始する。相手はおそらく地球人の誰かの体内に潜り込んでいる。それは誰か? 「20億の針」とはこういう話である。
 
 **「20億の針」の作者ハル・クレメントは化学や物理学から異世界の設定を考えるのが非常に得意であり、例えば地球の数百倍という高い重力を持ちながらも自転速度が異常に速いために赤道付近の引力が地球の3倍程度という惑星、メスクリンを設定したのもこの人だ。(メスクリンの話はこのblogでも何度か話題にしてもいる=>hilihiliのhilihili: たぶん、SFすら読んでいない)。ただ、登場する異形の宇宙人たちの心は、どれも普通に人間なので、その点は物足りないとも言えるし、お話の都合なのだとも言える。ハル・クレメントの小説の宇宙人でかなり変な行動を示すのは、例えば個体という概念ではなくユニットという概念で自分をとらえている「窒素固定世界」のオブザーバーたちだろうか。
 
 ***クジャクの尾羽は実際には尾羽ではないのだけども、一般的にはこの名称を使用。
 
 
 
 
   

2014年11月17日月曜日

神秘のベールをはぎ、そのすべてを還元すべし

 
 日本軍は補給を軽視して負けた
 
 ∧∧
(‥ )これを言う人は多いよね
\‐   結果論としては
     正しいかもだけどね
 
  (‥ )ところがこれを言う奴は
      次にこう言い出したりする
 
 だから日本軍は馬鹿だらけだったのだ、ひるがえるに今の日本社会も当時の日本軍と同じ。国の政治家、愚かな官僚、そしてうちの会社の上司! 本日もこのような...
 
 ∧∧
( ‥)さっきまで即物的な話を
    していると思ったら
    いつの間にか精神論に
 
  ( ‥)馬鹿って言うのは
    ‐□ 説明じゃないからなあ
 
 例えば、”平均的なテストで5点しか取れないような人の状態”、これを、”馬鹿”、と表現することは、ただの要約であって説明ではない。
 
 ∧∧
(‥ )短く言っただけだよね
\‐  しかも短くしただけだから
    ちっとも具体的ではない
 
  (‥ )ただの短縮だ
      ところがだ
      この馬鹿という総括が
      一人歩きするのだ
      日本軍は補給を軽視した
      だから日本軍は馬鹿だ
      馬鹿だから
      補給を軽視したのだ
      こうなっちゃうんだよね
 
 こうなるとただの循環論法である。これは論理的であると同時にたんなるごまかしである。言っている人間は論理のみごとさにうっとりとするが、中身は空っぽだ。精神と心の有り様に原因を求める、ただの精神論でしかない。
 
 日本軍は精神論で戦おうとした愚か者である。そう笑う人間が、同じ精神論で突撃を開始する。
 
 ∧∧
( ‥)精神に原因を求める
    これは説明ではない
    むしろオカルトであろう
 
  (‥ )なんかすごく
      馬鹿っぽいと思わん?
 
 そうではなく、説明とはその構成要素のすべてを、可能な限り即物的でありきたりで、そしてなおかつ、つまらない部品で組み上げるようにしなければならん。
 
 
 ∧∧
(‥ )例えば
\‐  オタクは堕落したのだ
    とか
    消費者に情報発信して
    鍛錬すればオタクに
    なってくれるはずだ
    とか
    そういう見解と計画を
    あなたは肯定しないと
 
  (‥ )それって
      悪魔は本来堕天した
      御使いなんだよ
      とか
      鍛錬して仙道を積めば
      不死身になれる
      そう言っているのと
      同じだろ?
      オカルトだよオカルト
 
 それはごまかしである。オタクなどという言葉からその神秘の響き、そのすべてを剥ぎ取るべし。
 
 ∧∧
( ‥)剥ぎ取ったら
    どうなりますかね?
 
  (‥ )最初から誰もいなかった
      それが明らかになると
      思うのだがな
 
 誰もいなかったし、そんなものがかつていたこともなかった。それが明らかになるのではないのか?
 
 そもそもオタクなどという言葉、それは単なるカテゴリーであり、認識論の話である。認識が変れば、それは最初から実在しなかったこととなろう。そしておそらく、それが事実なのだ。
 
 
 

劇場で踊るクジャク

 
 ∧∧
( ‥)なに?
 
  ( ‥)「寄生獣」って漫画が
    ‐□  あったじゃない
 
 ∧∧
( ‥)今、アニメ化されて
    放送中でしたっけね
 
  ( ‥)まあ、それで
    ‐□ 思い出したのだが
 
 漫画が連載されたのは1990年代である。当時、さる方々と会って話をしている時に、一人が「寄生獣」の話をふって、あれは良い、と言った時、別の一人が言ったのである。
 
 だがあれは「二十億の針」だ。あれが画期的だと言うのはよろしくない、と
 
 ∧∧
( ‥)なんだかな
 
  ( ‥)共通する点は
    ‐□ 自分に寄生した寄生体と
      共闘して
      他の寄生体と戦う
      それだけだからな
 
 ∧∧
( ‥)でも、実を言うと
    あなたも漫画を見ながら
    20億を思い出してたでしょ
 
  (‥ )でも20億のエイリアンは
      人を食ったりしないからな
      それにアイデアってのは
      誰でも思いつくんだよ
      後はどう展開するかだ
 
 キャベツを食おうと思ったからと言って、出来る料理が同じとは限るまい?
  
 それに、共通点を...なんて言い出したら、なんでもつながってしまうのである。もちろん物語はすべてがつながっているが、距離や位置関係は違う。それにアイデアの重要度や見せ方も全部違う。それが効果に差をもたらす。例えばそれは売り上げに反映される。あるいは文化として存続できる向きが変ってくる。
 
 共通点があれば他は全部無視して良い、その主張は、いたずらに話の解像度を下げるだけだ。
 
 
 ∧∧
(‥ )でもなんで
\‐  そういうふうに
    こっちが起源だ
    と言い出すのでしょうね
 
  (‥ )単純な指摘である場合も
      あるだろうな
      単に連想したことを
      口にしている場合もある
      あるいは
      ただ知ったかぶりを
      したかっただけの場合も
      あるだろうな
 
 だが、
 
 あれが画期的だというのはよろしくない
 
 という指摘はこういう知ったかぶりの域を一歩踏み越えているだろう。
 
 それは、先取権を犯された、という感情ではなかったか?
 
 ∧∧
( ‥)誰の先取権だよ
 
  (‥ )すでに知っていた自分の
      先取権かもね
 
 これは素晴らしいアイデアだ
 
 違うんだ、そのアイデアは、本当はこっちのものなんだ、僕はそれを知っているんだ 聞いてくれよ
 
 ∧∧
(‥ )会話とは社会の一部であり
\‐  社会とは自分の地位を
    示す場でもある
 
  (‥ )皆が「寄生獣」の話を
      している時に
      彼は先取権を奪われたと
      感じた
      自分の社会的地位が
      おびやかされると考えた
      そういうことかもしれんな
 
 ∧∧
( ‥)結局、オタクもマニアも
    社会的地位をかけて
    自分を誇示して尾羽を広げる
    クジャクにすぎないと
 
  (‥ )だから必死なんだろ?
 
 真のオタクはいない、オタクは死んでしまった。
 
 そう彼らは必死になる。それは自分が尾羽をいくら広げても、誰もそれを評価しないという恐怖、社会的地位が失墜してしまうという恐怖の反映ではなかったか?
 
 オタクもマニアも孤高の戦士ではない。それは結局のところ劇場で踊るクジャクだ。踊るクジャクは他の踊り子たちを下品だと言って蔑むが、やっていることも動機も、実は同じなのだ。
 
 
 ∧∧
(‥ )そういえばあなたに
\‐  寄生獣を進めた人って
    高校の美術部の同期
    だったよね
 
  (‥ )彼が数年前に
      進めてきたのは
      進撃の巨人だったなあ
      極端にめざといわけじゃ
      ないけども
      彼は結構早くから
      ああいうのを
      見つけてくるよね
 
 

2014年11月16日日曜日

冬のダイアモンド

 
 3時を過ぎて散歩に出ると、冬の星座はすでに西の空に傾きかけていた。冬の星座は明るい星が多い。特に

ぎょしゃ座のカペラ
ふたご座のポルックス
おうし座のアルデバラン
こいぬ座のプロキオン
オリオン座のリゲル
そしておおいぬ座のシリウス

この六つの星が六角形を形作っている。英語ではウインター・ヘキサゴン(Winter Hexagon)、つまり冬の六角形と呼ばれるが、日本語では冬のダイアモンドと呼ばれることが多い。
 
 ただこれが巨大で、手持ちのちっちゃなデジカメでは視野に収まらないのである。

   と思っていたら
 ∧∧
( ‥)
 ‐( ‥)あっ、入ったわ
   ‐□ 
 
 ぎりぎりだけど入った=>Untitled Document
 
 blogにも画像をアップするとこんな感じだ



















生きているサーバーの物語

 
 機械で維持されたネットの世界に自分の精神をコピーする。そうしてネットが存続する限り、無限の寿命と果てしない楽しみを謳歌する。
 
 これは魂の実在を仮定したもので、非現実的な願いだ。実際にはそのように動作できないだろう。
 
 ∧∧
(‥ )ただそうだとしても
\‐  電子の世界にすむ電子人間は
    電子の世界の快楽を覚え
    電子の世界の欲望と美を
    見つけるだろう
 
  (‥ )自らの動作を司る
      プログラムを
      そうなるように
      作り替えるわけだが
 
 
 蛋白世界の楽しみを電子世界に持っていこう、これは間違いであるし、それは無理だ。
 
 しかし、電子世界にいって楽しもう、これはありうる。
 
 だから、ここまではありだ。
 
 
 
 だが、無限の寿命によって楽しみを果てしなく謳歌出来るか、というと、それは無理だろう。
 
 心をネットに移し替える。バーチャル世界で永久に生きていく。
 
 より正確に言うと、自分の記憶をネットにコピーし、それを動作させるプログラムを設定する、そういうことなのだろうけど、これは古典的には精神を機械に移植する、という言い方をされていたものだ。
 
 だがしかし
 
 ∧∧
( ‥)問題はですよ
    ”精神を機械に移植する”
    これをした瞬間に
    機械の利点と欠点を
    両方受け継ぐことに
    なるよね
 
  ( ‥)機械の利点と欠点は
    ‐/ 表裏一体なんだよな
 
 機械は化学的、力学的な破壊や摩耗や疲労でない限り壊れない。なぜなら自己増殖しないので、バクテリアのようなものに犯されないからだ。機械には破壊はあるが病気というものはない。
 
 *ここではカビによる破壊とか、コンピューターウイルスのように自己増殖するプログラムとか、そういうことは割愛する。
 
 一方、機械は自己増殖ができない。それゆえ、自分で自分を修理することができない。
 
 ∧∧
(‥ )機械を修理する機械を
\‐  作ることはできる
    でもそうしたら
    修理する機械それ自体を
    修理する機械を作らねば
    ならない
    これはどこまでいっても
    きりがない
 
  (‥ )部品を用いた機械が持つ
      強みであり弱みだな
      病気というものが
      存在しない代わりに
      自己修復も自己増殖も
      できない
 
 生物はこれとは正反対である。水に溶けた原子や分子で体を作っているから、部品の品質は事実上一定であり、組み立ての動力にはブラウン運動を使えるので、熱と液体の水がある限り、組み立て工程が自動的に進行する。
 
 その代わり、同じように自己増殖するバクテリアや寄生虫の餌食になるので、生物はそれに対抗する仕組みを幾つも用意しなければならない。
 
 病気にならないが自己修復も増殖もできない機械
 
 自己修復も増殖も出来るが病気に悩まされる生物
 
 つまり、生物である人間が機械に精神を移植するとは、機械が持つ耐久性を手に入れると同時に、機械にはできない自己修復を自分で行わなければならないという問題を背負うことでもある。
 
 ∧∧
( ‥)せっかく機械の体を
    手に入れたのに
    それを整備するために
    有機物の肉体を端末として
    持っているという状況
 
  (‥ )おそらくそうなっちゃうの
      だよね
 
 これは、知能を備えたロボットが叛乱を起こして人類を滅ぼすなんてことはないということでもある。
 
 これは、知性を備えたロボットは人間を自己修復できる便利な労働力として奴隷にする可能性を示している。
 
 あるいは機械に心を移植した電子人間たちは蛋白人間の存在を必要とする。そういうことでもある。
 
 最低限、電子人間は蛋白質で出来た人型の端末を操作して、工場や発電所やネットや送電網、道路や輸送機関を整備しなければならない。
 
 ∧∧
(‥ )ものすごく面倒だし
\‐  非効率的だよね
    いっそのこともっと
    生物化したらどうですか?
 
  (‥ )逆に言うとその手が
      あるよな
      病気はメンデル遺伝と
      免疫機構で対処可能だしな
 
 
 今から1万年後、地球は人為的に引き起こされた氷河期に突入していた。これによって森というものは消え去った。リグニンで強化された樹木は、建材としてはともかく、食料としては利用しがたい。エネルギー効率の観点から、効率の悪い樹木は抹殺されたのである。寒冷化で降水量は減り、地球の大部分は乾いた草原に覆われた。本来の野生動物はことごとく滅ぼされた。鳥もネズミも残っていない。バッタさえも駆逐された。いるのはほんのわずかな節足動物だけである。
 
 しかしおびただしい動物がいる。それはウシのようだが大きさは最大級のサイに近い。巨大な頭と顎で草を延々と食べている。足は奇妙に太い。速く走るというよりは、転倒しても傷つかないように、安全性を考慮した作りだ。敵というものがいないし、仲間と争うようにも設計されていないのだ。
 
 この動物は知能が低く、餌を食べることしか考えていない。しかし、脳自体は巨大だ。そして頭には奇妙なコブがある。これは送受信できる器官である。
 
 光合成によって成長した草を食べ、そのセルロースを分解し、そうして得たエネルギーで巨大な脳を維持し、さらに化学的な発電を行って電波を飛ばす。この動物は遺伝的に設計された、生きているサーバーなのだ。自己増殖し、自己修復し、自ら発電し、電波を生み出して演算する。
 
 そしてこのサーバーたちが作り出すネット世界に人類がいる。本来の体を放棄し、生きているサーバーの中で生活し続ける電子人類の心は、もはやホモ・サピエンスのそれではない。確かに、かつての祖先と共通するところも多い。生存に関わる戦略は蛋白質の体を持とうが、電子化されていようが同じだからだ。だがそれ以外の部分ではまるで変化してしまった。
 
 もう誰もいない地球で、生きているサーバーたちが草を食べている。しかし、この世界にはそれでもなお、数百億の人類が電子的な意味で存在するのだ。
 
 ホモ・サピエンスとは異なる道徳と美意識を持ち、繁栄を謳歌する人類がここにいる。時々、サーバーの眼がいつもと違う動きをすることがある。ネット世界にすむ電子人類の誰かが外部の世界を覗き込んでいるのだが、それはすぐに興味を失ったかのように元の無関心な眼に戻ってしまう。
 
 こんな感じで
 
 ∧∧
( ‥)これならかなり問題を
    解決出来るけど
    これですらも
    問題山積みだよね
 
  (‥ )あたりまえだけどさ
      ここまでしても
      資源の争奪戦からは
      自由になれないんだよな
 
 例えば、誰かが考えるであろう。
 
 あの草原を手に入れれば、自分たちのサーバーをもっと増やせるはずだ、と。
 
 それを考えれば以上で設定されたような、無害な草食獣としてのサーバーという姿は消え去るはずだ。生きているサーバーを維持するには豊富な草原が必要で、それを防衛するために攻撃に特化したサーバーが作られるはずだ。というか、それはもうサーバーというよりも戦闘用の端末である。巨大なゴリラのような姿をしているのかもしれないし、武器と鎧を身につけて優勢に立とうとするために、工場を運営しているかもしれない。こうなると、すべてを生物化して効率よく楽しく過ごそう、という目論みは前提が崩れ始める。
 
 軍事費と防衛費をかせぐためにサーバーの演算能力が動員されることもありえよう。生きているサーバーたちが作り出すネットとそこにすむ電子人間たち。彼らは何らかの奉仕や支払いを迫られるはずだ。資源は有限であり、人は資源の限界まで自らを増やそうとする。そうであれば、この世界の電子人間たちは現代の我々と同様、様々な困難に直面しているだろう。楽しい生活なんかできないだろう。
 
 ∧∧
(‥ )しかもそういうところは
\‐  ホモ・サピエンスと共通だから
    美意識は違っているけど
    愚痴は同じかもね
 
 (‥ )たぶんあれだな
     役所の連中は
     税金だけとって仕事しない!
     電子人間もそんなことを
     言っているんだろうな
 
 
 これはhilihiliのhilihili: 蛋白世界と電子世界の続き
 
 
 

2014年11月15日土曜日

蛋白世界と電子世界

 
 人はしばしば曰く、次のような渇望を口にする。
 
 電子とバーチャルの世界にいって肉体から開放され、無限の時間の中で無限の楽しみを満喫したい。
 
 ∧∧
( ‥)残念、それは不可能だ
 
  (‥ )これを言う人は
      魂の実在を信じているのだ
      例え電子の世界に
      移植されても
      蛋白質の肉体で
      演じられてきた
      この心は不変であるとな
  
 もちろん、実際のところそんなことはない。
 
 魂なんてものは存在しないからだ。
      
 魂なんてものはない。魂は比喩でしかない。実際のところ心は神経細胞が作り出すもので、あるいは内臓や諸器官が作り出すホルモンなどで調整されている。
 
 心は神経細胞が作る電位差や器官が作る化学的な刺激で構成されたもので、物質の影だ。
 
 ∧∧
(‥ )そうである以上
\‐   自分の記憶を持ち
     自分をそっくりそのまま
     再現できるプログラムを
     電子の世界で動かしても
     それはもう人間じゃない
 
  (‥ )正確に言えば
      肉体を再現できるけども
      電子の世界では不自然で
      それゆえに不安定なのだな
 
 ∧∧
( ‥)肉体を電子的に
    再現することは
    可能なのだよね
 
  (‥ )自分の記憶と記録を
      どう実行するのか?
      そのプログラムに何を
      選ぶのか
      そういう話であるな
 
 例えば性ホルモンが過剰であり、新陳代謝も激しい、そういう神経と内臓の作用を電子的に再現したプログラム
 
 思春期14歳ver.8.5
 
 というような感じで。
 
 このように肉体を再現することは可能なんだろう。
 
 電子の世界に自分をアップ出来る技術。それはオリジナルの自分からすれば自分のコピーを電子の世界に子孫として託す、という話でもある。
 
 どの肉体を選ぶのかはアップ主である自分の自由であるし、あるいはアップされて、いまや主体となった電子人間の自由でもある。
 
 若返りたい奴はそうするであろうし、俺はもう老成した状態で良いよ、という奴はそれに合った肉体を購入するのだろう。
 
 より正確には肉体を再現したプログラムなのだが、こういうことは可能なんだろう。肉体だけじゃない。大容量かつ超絶的な高速演算を可能ならしめる機械があれば、リアルタイムで変化する自然な世界を再現することもできるだろう。水が流れ、雲が沸き、雨が降り、虹が出て夕日が西の地平線へ沈み、風が樹々を揺らし、紅葉が落ち葉となって舞い落ちる。電子化された人間たちが集う広い世界。

 その世界に分子や原子はないだろうが、人間の知覚には現実世界と変らない世界が再現できているのだろう。
 
 問題はである。
 
 ∧∧
(‥ )それは電子世界においては
\‐  まったく不必要な再現だ
    ということですよね
 
  (‥ )電子の世界を維持するには
      機械を維持し
      機械を維持するための
      部品を調達し
      部品を調達するための
      工場を維持し
      工場のための部品を
      製造のための資源を
      資源採掘のための鉱山を
      そしてすべてを動かす
      電力を維持するという
      ことである
 
 そんな世界において、以上のようなことに機械の容量を使うなどまったく完全に不経済だ。
 
 ∧∧
( ‥)不経済であれば
    それはどこかの時点で
    放棄されることになるだろう
 
  (‥ )なにかしら
      危機があるだろうからな
      必然、電子人間たちは
      無駄を切り捨て
      容量の確保と
      電力と金属の調達
      これに専門化した
      プログラムを持つように
      なるはずだよな
 
 例えば電子の世界で理想の異性と永遠にいちゃラブする。しかしそれはずいぶん容量を食う話だ。電子の世界も資源は有限だ。資源が有限であれば資源の利用には支払いが必要になる。生活が苦しくなったら、人は一時的にバーチャル異性の運用を止めるのではないか? 
 
 ∧∧
( ‥)あるいはバーチャル異性を
    必要としない肉体に
    乗り換えたり
    バーチャル異性に欲情する
    プログラムを停止するかもね
 
  (‥ )そもそもそれが正しいのだ
      電子世界には電子世界の
      欲望があって
      電子世界において
      蛋白世界の欲望は
      いまや不必要なのだからな
 
 
 人間は本来、蛋白質世界の住人で、体を維持するタンパク質、デンプン質、糖分、脂肪、ミネラルを好むように出来ている。それを効率的に確保する個体こそが素晴らしいとされている。
 
 なれば同様、電子の世界の住人は容量を確保し、電力を確保し、それらを維持するための金属資源とその調達に心を砕くであろうし、それらを効率的に確保する個体こそが生き残る。そうである以上、そういう個体とプログラムのあり方が素晴らしいとされるだろう。
 
 彼らは電力と容量の確保を効率的にこなす肉体、つまり電子的な肉体にこそ欲情し、渇望するだろう。
 
 ∧∧
( ‥)つまり電子人間の世界では
    蛋白世界のバーチャル的な
    再現を好む個体は
    不利となって
    淘汰によって除かれる
    そうして
    電子世界に適合した
    プログラムを持つものが
    数を増やしていく
 
  (‥ )趣向自体も変るのだ
      風や花や
      女の子や
      フィギアやアニメを
      喜ぶように作られた
      プログラムは
      廃れていくだろうな

 
  電子世界において蛋白世界のバーチャル的な再現は不安定だ。進化的に不安定なのだとも言える
 
 電子の世界に移植された蛋白人間の子孫は、我々とはまったく違う存在になる。まるで違う欲望と美意識を持つようになる。
 
 つまり心が変る。
 
 それは人の子孫ではあるが、もはや人間ではない。
 
 当然、我々の文明、いわば蛋白文明が生み出した文化も伝承もまったく不安定だろう。残す必然性がまったくないし、電子人間たちの心の琴線にも触れないからである。
 
 蛋白人間の作り出した文明と美と欲望のすべて、これらのほぼすべてが顧みられることのない、くだらないものとして打ち捨てられる。
 
 ∧∧
(‥ )あなたたち人類は
\‐  無駄なことを誇示する
    生物だから
    無駄に残している
    可能性自体は
    あるのだろうけどね
 
  (‥ )我々の巨大な脳は
      こんなにエネルギーを食う
      脳みそを無駄に
      維持できています
      そんな僕ってすごいでしょ
      そういう誇示で
      巨大化したんじゃね?
      という説もあるからな
 
 そういう意味では、もしかしたら蛋白世界のAVとかエロいフィギアのデータなどを後生大事に残している電子人間もいることはいるのかもしれない。
 
 例えばの話
 
 ∧∧
( ‥)これが蛋白世界の欲情と
  ‐□ エロを表現した
    フィギアの元データです
    主題は
    オークに捕まった女騎士
    これは古いものでね
    これ専用に設定した
    プログラム上でないと
    閲覧することも
    できないのです
    もはや数少ない一品ですよ
 
  (‥ )ああ、初めて見ました
      こういうのを
      保存するには
      特殊な技術と投資が
      必要で
      コピーすら
      容易ではないとか...
      話では聞いていましたが
      まさか本当に
      残っていたとは
      
 
 ∧∧
( ‥)我が王家の歴史
    分かっていただけましたか?
 
  (‥ )感服しました
 
 
 こんな感じで
 
 これはhilihiliのhilihili: オタク啓蒙計画などというのはあり得ないの続き


 
    

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