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2016年2月24日水曜日

神性を否定する努力家は飛行機を使わずに飛ぼうとする

 
 世の中には次のように嘆く人がいる。曰く、

 努力、友情、勝利こそが創作の王道であったのに、いつの間にかそれが血統や前世など、あらかじめ持って生まれつきな特権へと変わってしまった。若者はどうなってしまったのか?
 
 ∧∧
(‥ )こういう風に嘆く人は
\‐  多いけども
 
  (‥ )まあいつもの話だな
      最古の文学
      ギルガメシュ叙事詩から
      ギリシャ神話
      アーサー王にスサノオ
      古今東西数々の英雄譚に
      努力、友情、勝利なんて
      そんなものがそもそも
      あったか?
      という話よ
 
 
 実際にはもちろん、あったんだろう。

 例えばギルガメッシュの友、エンキドウ。
 
 そしてなにより現実世界に顕現した最大の英雄アレキサンダー大王。彼は友人たちと苦楽を共にしてペルシャ帝国を下し、世界を征服するのである。
 
 ∧∧
( ‥)もっとも自分の手で友人を
    殺しちゃうし
    そもそも大王が生きながら
    英雄になれたのは
    努力、友情ゆえではない
 
  (‥ )大王は英雄の条件を
      ことごとく
      一身に集めたがゆえの
      英雄だ

 
 由緒正しい血統である
 *マケドニア王フィリッポス2世の子供である

 近親から命を狙われる
 *母親があまり高貴な血ではなく、父王が愛人を持つことで父子の仲が悪くなった。後に父王は暗殺される
 
 国を手に入れる
 *父王暗殺後、王国を継ぎ、さらに文字通り世界を征服する

 不憫な死を遂げる
 *不敗のまま若くして死ぬ
 
 ∧∧
(‥ )血統、不遇、征服、悲劇的な死
\‐  神話に登場する英雄たち
    それそのものの生涯を
    送った男
    それこそが
    アレキサンダー大王
 
  (‥ )だから彼は英雄に
      なれたのだよね
 
 実際、アレキサンダーの友人たちの名前など、誰も覚えちゃいまい?
 
 あるいはセレウコスやプトレマイオスの名を上げるか? しかしそれとて王朝創始者として歴史に残され、そして覚えた名前であろう?
 
 大王の不敗と無敵ぶりは誰もが知るところだ。

 だがしかし、世間の輩共は口では努力、友情と言い立てるが、誰一人として、言い立てる奴ら自身までが、友情なんぞに注目しておらんのだ。
 
 つまり努力、友情という漫画の王道とやらがむしろ異常なのである。
 
 ∧∧
( ‥)おそらくこれは
    高度経済成長時における
    一時の幻想ではなかったか
 
  (‥ )高度経済成長など
      ただのまやかしにすぎぬ
 
 本当は単なる低賃金で成り上がっただけの現象なのに、努力さえすれば誰でも成り上がれる! 日本人はそう勘違いした。
 
 努力、友情、勝利とはその時に残骸ではなかったか?

 そして、かつて高度経済成長を自らの貢献で支えたと勘違いした人々は、努力さえすれば誰でも勝利できるという、誤った成功体験を終生抱くようになってしまった。
 
 だからお前たちは言うのであろう?
 
 若者はなぜ頑張らないのか?
 
 若者はどうして自動車を買わないのか?
 
 奴らはこういう無理、理不尽を繰り返す。
 
 ∧∧
(‥ )実際はすべてたわ言である
\‐
 
  (‥ )勝利の鍵は努力じゃない
      ただの低賃金なんだ
 
 しかし低賃金が終われば勝利は消える。あわてて低賃金に戻したってそんなものは無駄だ。豊かになって出費が増えた分、実入りは少ないのに支出は多くなる。つまり貧困になるだけだ。

 あるいは、若いうちは俺たちのように低賃金で働けと若者にいっても駄目だ。賃金据え置きで働くわけが無いし、払わないのなら経済だって動くわけがないだろう? あげくに、低賃金で努力させればうまくいくと勘違いして次世代を搾取しようとしておる。
 
 ほら、努力などという愚か極まることばかりしてきたから、今じゃ何もできやしない。
 
 ∧∧
( ‥)努力友情世代は
    間違った成功体験を
    ぶんぶん振り回すだけである
 
  (‥ )そんな連中が
      なんで今時は血統や前世
      なのであるか?? と
      たわ言をほざいておる
      嘆かわしいことよな
 
 努力、友情、勝利とはなんと忌まわしいものであるか? これはもはや思想犯罪である。

 そしてそもそも英雄の本質とは血統と神性だ。
 
 さらに才能とは天賦の才。それは遺伝的に決定されたもの。努力ではいかんともしがたい、皆より先に抜きん出る力。これぞ勝利の鍵であり、そしてこれこそが神性を作る。
 
 ∧∧
(‥ )でもあれだね
\‐  どうやら努力、友情を叫ぶ
    旧世代の人々は
    それを遺伝的な決定論として
    認めたくないみたいね
 
  (‥ )正体見たり
 
 なんのこっちゃない。中世期の古ぼけた生気論者共じゃないか。心と魂の力さえあれば肉体の限界さえも突破できる。ようするに鍛錬を積めば生身のまま拳銃にも対抗できると信じた仙術の信仰者と同じこと。
 
 ∧∧
( ‥)遺伝子はハードウェアの
    構造を決定する
    努力根性でどうにかしようとは
    ハードを無視して
    ソフトの力で万能勝利って
    考えだよね
 
  (‥ )ソフトでハードを補う
      ある程度は
      可能なんだがな
      当たり前だけど
      無理なものは無理なんだ
 
 
 ∧∧
(‥ )血統を認めると
\‐  精神と知性の敗北であると
    考えているみたいですよ
 
  (‥ )人間は鳥じゃないから
      空を飛べないと言うと
      それは遺伝的決定論で
      敗北主義! と
      言い立てる阿呆と同じ
 
 そんなもの、飛行機使えば良いだけの話なんだが、努力と友情、つまり組織的友情にこだわるからこそ、むしろ飛行機を使わない。

 つまり努力と組織的友情連帯に頼る人間たちは、精神の全能性をうたいながら、実際には肉体の卑小な限界に引きこもるのである。

 彼らはいつだってそうであった。そしてそれはブラック企業の経営者たちと同じこと。
 
 
 神性を否定する努力家は飛行機を使わずに、その身ひとつで空を飛ぼうとする。死ぬのは勝手だが、自分一人で死ぬべきだ。他人を巻き込むべきではない。
 
 
 
 
 
 
 

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