自己紹介

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2011年4月15日金曜日

この世界の認識は確かに仮説的で夢

 
 ふと思い出した。テレビを捨てる、そのはるか前の話、テレビで映画なのか何かのドラマなのか、妙なオムニバス形式の奇妙な物語がやっていた。

 そのなかのひとつが放射能に色をつけた話。

 ∧∧
( ‥)プロパンガスに匂いをつける
    ようなもん?

    (‥ )たぶんね。

 それを思い出して考える。

 
    (‥ )もしそういう技術があったら
        今回の時とか便利だったろうな。
 ∧∧
( ‥)そうでしょうけど、
    風評被害は防げないでしょう。

 まあ、たぶん、防げない。色なり染まり具合なりがどのくらいになると危険なのか(認識と結果が具体的にリンクしない限り、)、それが分からない限り、風評被害は起こる。

    ( ‥)ああ、この染まり具合なら
      -□ 毎時5マイクロシーベルトね
 ∧∧
( ‥)結局は元の木阿弥ですね。

 便利であるには違いないが(汚染土壌とかをすぐに具体的に”見て”発見できる)、理解が無い限りは風評被害を防げない。困ったことだ。

 とはいえ、あの映画を思い出して、一番印象に残ったのは実はそこではないことを思い出す。

 ∧∧
( ‥)どこ?

    ( ‥)最後の話で、水車のある村が
        出て来て、老人と若者が語り合うの
        だけども。

 どうやら原発と対極にあるエコっている村らしい。そこに葬儀の列だかなんだがやってくる。彼らは楽器を持っているのだが、しかしそれが異様。

 ∧∧
(‥ )単なる管弦楽器ですよ?
 □-  ←メモリー

    (‥ )いや、それこそが異様なのさ。

 水車で動力を代用しているらしい、産業革命以前を思わせる村。であるのに、なぜ”工業製品”が存在する?

 古ぼけたくたびれはてた代物にはされているが、作ったにしては規格が統一されすぎていると感じた(まあ、当たり前、演出の上では本物を使っているだろうし)。

 しかし、あれをフィクションと考えると、途端に異様な雰囲気を醸し出す。

 ∧∧
( ‥)買ったのでは?

    (‥ )どうやって? どこから??

 産業革命以前のような村が一体何を対価に払う?

 ∧∧
( ‥)牛さんとか、お米とか小麦
    じゃないですかね?

    ( ‥)つまりさ、あの村の外部に
        巨大な産業世界が存在するわけだ。

 あるいはもしかすると、丘や森を越えた先に村人を働かせる工場があるのかもしれない。

    (‥ )時給500円ぐらいで
 ∧∧
( ‥)ああ、まあねえ。
    田舎や外国に工場を作るのは
    こちらにとっての低賃金でも
    喜んで働いてくれる
    人たち目当てですからね。

 だから思った。老人は村を理想郷のように語っているけども、

 ∧∧
( ‥)偽りではないのかと。

    ( ‥)あの楽器を見た時、
      -□ ぎょっとしてしまってね。

 あれは原作者なり監督なりの無邪気な世界観の表明で、単に手近にあった楽器を使っただけなのか? そして確かに映画の理想郷の外部には、巨大な産業世界である現実の地球が存在する。

 あるいはそれとも、

    (‥ )あれは計算された悪意そのもので
        楽器は種明かしの道具。
        老人の語りはまったくの嘘で
        物語は悪夢であったのか?
 ∧∧
( ‥)謎であると。

 
 今でも謎であるし、しかしどうでもいいことでもある。

 夢

 理想はやがて妄想となり、ついには悪夢になった

 これは確かに、起きてしまった事実に対してかつて言われたことでもあった。

 ∧∧
( ‥)彼は国家を相互殺戮と相互軋轢による
    巨大な肉挽き器に変えたのだ。

    ( ‥)夢や理想の最後ってのは
        そういうもんだ。

 自分を信じるな。他人を信用してしまう。
 自分を大事にするな。他人を切り捨てられなくなる。
 何も信じるな。何かを信じればそれは罠だ。

 ∧∧
( ‥)とっ、言うの簡単ですが、
    非現実的ですね。

    (‥ )しかり、僕らは何かを前提にして
        解釈し、認識し、理解したと称して
        歩き、しかし、ゆえに転んでしまう。

 
 自分を信用しなくても、何かを前提にしている。どれだけ疑っても、自分の信用も他人の信用もまったくの皆無にはならないし、前提からは自由にはなれない。

 ∧∧
( ‥)政府と東電は嘘をついているのです!!
    マスコミもぐる!!

    (‥ )だから原発事故もうっそぴょーん
        あれ、CGなんだ。
        とは、みんな言わないわけよ。

 そこは信じているんだ? 政府もマスコミも信用しないんじゃないのかい?

 ∧∧
( ‥)信じるな、と言っても
    信じていないわけではない。

    ( ‥)前提と仮定から自由になれる
        わけではない。信用しない自由を
         うたっても、それには限度がある。

 ではなんとする?

 例えばこう?

 自分が実在すると思うな、認識したものすべてが実在すると思ってしまう


 ∧∧
( ‥)認識したものも、理解も
    納得も把握でさえ、
    それは単に仮説であると

    (‥ )この世界自体は実体かもしれないが
        僕らの認識と理解はまぎれもない
         仮説だ。

 認識と理解=世界そのもの、では明らかにない。

 ∧∧
( ‥)世界が実在したとしても
    認識した世界、それ自体は、
    かりそめの夢ですか?

    ( ‥)そう考えるからテストするし、
      -□ テストするからより妥当と
        思われる仮説を発見する。
        そういうことじゃねーの?

 天動説はかつては真実であるとされたが、地動説にとって変わられた。世界の構造そのものが天動説から地動説になったわけではなく、我々の理解、それ自体が所詮は夢まぼろしで、しかしそうであるからこそ、かりそめな認識が是正される、そう考えればどう?
 
 ∧∧
( ‥)かりそめの仮説に沿って
    世界を眺めているのだと。

    (‥ )これが現実の表面に僕らが
        暫定的に作ったはかない夢と思えばこそ、
        是正の必要が認識されるのじゃね?


 夢は真実ではないし、真実でないのなら前に歩く理由になるだろう。

 言い換えればこう? 真実と納得と理解はあきらめで、それを得た瞬間に死んだも同然。老いるとはこういうことか?

 ∧∧
( ‥)老いるとは夢から覚めることだと?

    (‥ )いや、夢から覚めたくない、これで
        いいのだと納得することが老いで、
        夢から覚めたいがために、
        何が覚めるということか、
        それが分からぬままに、
        しかし、果てしなく歩けば
        前進できるってことで。


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