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2016年1月24日日曜日

我々の未来にビッグシスターは存在しない

  
 天頂にはほぼ満月。夜空を雲があわただしく流れていくが、今のところ雨も雪もなく、最新の予報ではこのまま晴れる見込み。














 画面左下で輝く小さな光点はプロキオン。
 
 そして温度は5度、湿度は55%であった


 
   ( ‥)雪が降らないのは
     ‐/ 良きかな
 
 ∧∧
( ‥)寒いの嫌い
 
  
 
 さて
 
 
 我々の時間線とは異なり、その世界ではWW2の後、核戦争が勃発した。全世界中の国家が事実上、瓦解し、革命が起こり世界は大規模に再編成されて、地球は三つの超大国が分割統治することとなった。
 
 大英帝国と新世界を合したオセアニア
 
 ドイツ帝国とソヴィエトロシアを合したユーラシア
 
 中国と大日本帝国を合したイースタシア
 
 そして第三次世界大戦から1世代が経過した1984年。この時間線において世界はいまだに三つの超大国によって統治され、緩慢な戦争がずっと継続されている。
 
 これが小説1984年。
 
 ∧∧
(‥ )この世界は
\‐  今の僕らの世界よりも
    実は格差の少ない世界である
 
  (‥ )例えば集団餓死とか
      食料危機がない
 
 そんなことが起きれば国家が倒壊してしまう。それだけは絶対に阻止されねばならない。
 
 もちろん、人々の多くは貧困だ。果てしなく続く戦争。慢性的な物資不足。人々の多くは靴を持つ事も出来ず、裸足ですごしている者も多いのだ。当然、平均寿命も短い。
 
 ∧∧
( ‥)だがそれでも
    集団餓死は無いのである
 
  (‥ )そして上の人々の生活も
      つつましいもの
      なんだよね
 
 確かに支配者たちはワインを飲み、絨毯が敷かれた部屋でくつろぎ、エレベーター付きのマンションで召使いを従わせて生活し、自家用ヘリコプターも持っている。
 
 ∧∧
(‥ )でもそれだけ
\‐
 
  (‥ )こっちの金持ちに比べると
      ずいぶん質素だよね
      それに1984年には
      娯楽がまともにないからな
 
 いや、世界自体がひとつの娯楽になっている。そう言うべきかもしれぬ。
 
 継続される戦争は実際にはまやかしだ。この世界の戦争は、戦争の脅威を無くすために無限継続しようという戦争である。
 
 無限継続とは勝敗が無いということである。敗北の無い戦争に脅威など無い。
 
 1984年の世界は戦争が続く世界であると同時に、戦争が地球上から消滅した世界でもある。
 
 そして戦争は資源を浪費させて慢性的な物資不足を引き起こすためのものでもある。余裕の無い世界で、人は最小限度のことしか考えない。
 
 敵が存在せず、敗北が無く、考える余地の少ない世界。
 
 この条件を整えた時、三つの超大国は永久のごっこ遊びを続けられることになった。
 
 例えばこう考えれば分かりやすい。
 
 偉大なる兄妹。ビッグシスターは永遠の17歳である。彼女のポスターは町の至るところに貼られている。ビッグシスターの歌がラジオやテレビから絶える時は無い。

 いつでもビッグシスターのトークが流れている。戦争が続く中、敵を断固として非難し、裏切り者を糾弾し、それでいて聞くものに癒しを感じさせる、物腰が柔らかく、分かりやすい話し言葉。まさにバブみとは彼女のためにある言葉だ。
 
 ビッグシスターの名前が聞こえるようになったのは、大戦の直後だ。その時から彼女の言葉は苦境の中にある人々を勇気づけてきた。そして1世代が経過した今、未だに彼女は17歳のままである。
 
 ∧∧
( ‥)実際には
    ビッグシスターは存在しない
    ましてや永遠の17歳でもない
 
  (‥ )だが人々と指導部は
      ビッグシスターを信奉し
      彼女が
      永遠の17歳であることを
      信じて疑わぬのだ
 
 より正確に言えばこうである。
 
 仮想キャラであるビッグシスターをバブみる対象として設定して以来、指導部は自ら作り出した永遠の17歳を信じるごっこを続けているのだと。
 
 無限戦争も、三つの超大国による三国鼎立も、すべてはこれだけのためであった。
 
 
 この苦境は何のためであるか?
 
 それはビッグシスターが持つバブみを輝かせるためである
 
 なぜ彼女は永遠の17歳でありうるか?
 
 それは彼女の実在を信じる我らが共同体として存続する限り、彼女もまた実在するからである。
 
 自分たちが作り出した苦境の中で輝く彼女は実在しないがゆえに普遍、存在しないがゆえに不滅。
 
 まさに永遠の17歳。
 
 ∧∧
(‥ )これは国家を擬人化して
\‐   国家に萌える
     そういうファシズムだよね
 
  (‥ )だから1984年の世界に
      人種差別はないんだよな
 
 白人も有色人種も先住民も黒人もユダヤ人も指導部にいる。
 
 なぜって、当たり前ではないか。永遠の17歳のバブみに集った者たちに、一体、いかなる垣根があろうや?
 
 
 ∧∧
(‥ )そして現実世界に話を戻せば
\‐  これからの地球は
    この1984年の世界に
    少し似てくるだろう
 
  (‥ )人件費は上がり
      低賃金労働者に仕事を
      奪われた
      その状況で人々を救うには
      保護貿易を行い
      職を与え
      給料を上げると同時に
      強制的に皆に支出させて
      消費させねばならん
 
 給料を即座に使うことを余儀なくされる世界。
 
 皆の生活を支えるために、安いものが禁止され、高いものをしぶしぶ買わなければいけない世界。
 
 貯蓄は悪となるであろう。宵越しの金を持たないことが美徳とされるのだ。
 
 ∧∧
( ‥)この経済的な苦境に
    血統主義ではなく
    国家と共同体に対する
    義務と奉仕が高らかにうたわれ
    そして強制されるのである
 
  (‥ )ほら少しだけど
      これからやってくる未来は
      1984年の世界に
      似ているだろ?

 物価の上昇に悩みながら経済を回し、建前からも現実的な見地からも実力主義を、そして国家と共同体に対する奉仕と義務をよりどころとしなければならぬ。移民を排斥すると同時に、選ばれし移民は取り込んだ苦闘の世界。
 
 ∧∧
(‥ )実際には1984年のような
\‐  理想状態にはなりえません
    けどもね
 
  (‥ )そりゃそうだ
      1984年は小説だからな
 
 2世代後の地球は半分だけ1984年に似た世界になるだろう。これは半分幸せなことであるし、半分は不幸なことでもある。
 
 ∧∧
( ‥)現実の未来は1984年よりも
    不平等で格差があって
    
 
  (‥ )1984年よりも
      自由があって
      そして希望は無いのだ
 
 なにより、1984年と違って我々の未来にビッグシスターは存在しない。皆に永久のバブみを与えてくれる永遠の17歳は、我々の未来には実在しない。ただ、灰色の義務が屹立するのみである。
 
    
 
 
 これはhilihiliのhilihili: 2世代後の地球はファシズムの世界の続き
 
 
 

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