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2013年4月29日月曜日

つまずきの石を避けるには歴史を知らねばならぬ

 
 
 でっ、さらにhilihiliのhilihili: 挫折が浅いの続き。
 
 例えばの話、微分、積分の教科書を読んでも分からない。
 
 ああ、微分積分が楽しく学習できる教科書をなんで作ってくれないのか?
 
 頭の良い人はなんでそういう必要性に気がつかないのか?
 
 
 ∧∧
( ‥)そんなことはない
    気づいていますよ、と
 
  ( ‥)そればかりじゃない
    –□ 面白く書いた本も
       膨大にあるんだ。
 
 問題はである。
 
 分からん。
 
 ∧∧
( ‥)そりゃそうでしょうね
    微分積分の歴史は
    ゼノンのパラドックスから
    スタートして、
    アルキメデス、
    ケプラー、ガリレオ、
    ニュートン、ライプニッツ
    と続く。まさに科学、数学の
    歴史に燦然と輝く天才達の
    行軍ですよ
 
  (‥ )言い換えればだ、
      彼ら綺羅星のごとき
      天才達でさえ、
      よってたかって
      2000年かけた過程だ
      それを一個人で
      理解するってのは
      そもそも無茶なんだよ。
 
 これはもう数学だけではなく、数学史という学問にもなっているジャンルだ。もちろん、科学史、天文学史、物理学や力学、さらにはキリスト教史とさえも重なっている部分がある。
 
 こんな状況にあるものを、本を1冊読めば分かるか、というと
 
 ∧∧
( ‥)分かるわけがない
 
  ( ‥)アルキメデスの極限を
    –□ 用いた論証でさえ理解は
       容易ではなく、
       理解するための本、
       それ自体を
       理解するための本が
       ある有様でね。
 
 微分積分の歴史の最初、アルキメデスを把握するだけでも本が何冊も必要なのだ。
 
 分かりやすい教科書が欲しいよー

 いやあ言うのは勝手だけどさ、それ、読める量だと思うの?
 
 というか背負って運べる重さじゃねーだろ。
 
 
 ∧∧
( ‥)もちろん、これに反論する人も
    いるでしょう。分かる教科書が
    欲しいのであって、数学史を
    聞きたいわけではないのだと
 
  (‥ )言わんとすることは分かる
      だがな、分かる、には
      どうしても数学史に足を
      踏み入れねばならんのよ。
 
 結果だけ見ているから、成立する過程を見ていないからさっぱり分からない。そういうことがある。
 
 建築の過程を見ていなければ家は理解できない。
 
 作成の過程を見なければ、あるいはその過程が分かる部分を見なければ理解できない。
 
 それが当たり前じゃあないかい?
 
 
 ∧∧
( ‥)実際、ニュートンさんが
    微分積分を作り出した時、
    これに噛み付いた神学者が
    いたんですよね。
 
  ( ‥)それがさ、無限に分割し、
      量が0になっているのに
      ある種の関係性が残って
      いることに戸惑っている
      そういう事例なんだよな
 
 ああ、こういう理解のつまずきは確かに今でもあるのだ。
 
 例えばの話、競技場のトラックのように巨大な円周上にいるとする。円の中心から等間隔に放射状に線を引いて分割する。ちょうど内接する多角形を作り、そしてそれを三角に分割するように。最初のうち、三角形と円周の間にはずれがある。多角形の角をどんどん増やす。三角と円周のずれは小さくなっていく。正500角形とか、それ以上になれば多角形の辺はほとんど円周と近似される状態になっていく。分割をさらに続けると、円周上にいる僕らには三角形の底辺にある2つの角が限りなく90度に近づいていくのを見る。
 
 ∧∧
( ‥)その三角形の見た目は
    ほとんどテープの
    ようになり、
    見た目は長方形のようで、
    それは糸になり、
    ついには線になる。
 
  (‥ )それでもなお、
      それが三角形である
      という関係性や性質は
      残るのだよな。
 
 例えばの話、面積に該当する数値は底辺×高さ÷2という関係性を残している。そういえばいいか?
 
 ∧∧
( ‥)神学者さんはこれそのもの
    ではないけども、
    こういうことに
    噛み付いたのですよね
    これはおかしいではないか
    不条理ではないか、と。
 
 (‥ )だが、これが
     ケプラーの法則を証明した
     ニュートンの論証なんだよね
     そしてこれは
     僕らのつまずきの石でも
     あるな。

 ニュートンに噛み付いたこの神学者のことを、僕らは笑えるだろうか?
 
 ∧∧
(‥ )理解が難しいとは、
\–   同じような理解のつまずきを
     皆がしたってことでも
     あるのですよね
 
  (‥ )それを解決するためには
      天才達の群れでさえも
      何百年をかかったわけよ
      理解は歴史的な過程なのだ
      そういう意味ではだ。
      分かりやすい教科書を
      読みたいのであって
      数学史を知りたいわけ
      ではない、というのは
      完全なたわ言よな。
 
 理解のつまずきを解決した過程、それが歴史です。

 歴史は知りたくないけど分かりたいのです、という主張は頭がいかれてる。
 
 
 ∧∧
( ‥)しかも、この話、歴史的な
    後日談があるらしいじゃ
    ないですか
 
  (‥ )この神学者さんの疑問、
      僕らのつまずきが解決される
      のはニュートンからさらに
      150年後らしいのよね。
 
 
 理解は容易なことではない。しかも、微分積分は近代科学では重要な要素であっても、科学全体ではないし、数学全体でもない。一ジャンルでこれである。分かりやすい教科書が欲しい、という望みはあまりにものを知らなすぎる。
 
 
 
 
  

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