自己紹介

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2013年4月10日水曜日

空席ヶ原

 
 
 
 あの企業はブラック企業か? という話題を知る。
 
 ∧∧
( ‥)ああ、ちょっとしたマニアさん
    なら誰でも知ってる会社だね
 
  ( ‥)職人さんを抱えているの
      だけどな、
      正社員じゃないんだよね
 
 というか、契約しているかどうかも疑わしい。たぶん、発注して、会社の機材や場所を使わせて生産させ、出来上がれば報酬を払う。それだけの関係だろう。
 
 ∧∧
( ‥)正社員じゃないから保証は
    ないのである。
 
  (‥ )まあ、僕らがいるような
      ”コンテンツを作成する”
      という業界だとこういう
      いい加減なことが
      まかり通っているからな
 
 写真、イラスト、造形、テキスト、デザイン、二次元、三次元、どれもどこかしらそういう側面がある(あるいはそうらしい)。
 
 ∧∧
( ‥)言い方は悪いけど、
    駆け出しの若者に修行の機会を
    与えるかわりに、安くこき使う
    そういうことだよね。
 
  ( ‥)徒弟制度っぽい仕組みって
      概してそういうところ、
      あるからなあ。

 
 まあ、いい加減なのは別にいいさ。〆切りと品質以外では、どいつもこいつもいい加減なのがこの業界だ。
 
 むしろ問題は
 
 ∧∧
( ‥)問題はそのまま這い上がれずに
    下請け職人のまま一生を
    終えてしまう場合があること
    ですかね。
 
 (‥ )なんかね、コンテンツを作る
     人っていうのは、集中力が
     ある代わりに、他のことが
     おろそかになるからね。
     そこを突かれているとも
     言えるよね。
 
 好きなことをさせてもらえるから、これでいいや、
 
 ∧∧
( ‥)とっ、言うよりも、
    好きなことに夢中になっている
    うちに、時間が過ぎて、
    いつのまにか30代後半、
    あるいは40代になっている
 
  (‥ )そうなるともう手遅れだ。
 
 今のまま雇われ続けるしかないだろう。
 
 ∧∧
( ‥)会社が存続すればね
 
  (‥ )あるいは本人の才能が
      摩耗し切るまではな。
 
 会社の経営が苦しくなった時、あるいは本人の才能が加齢と体力の低下で機能を十分にはたせなくなった時、ポイ捨てされる。なんの保証もなく。
 
 
 ∧∧
( ‥)あなたの知り合いにも
    こういう立場の人たちが
    いましたけども。
 
  (‥ )ひとり、またひとりと
      消えていくのだ。
      いや、もちろん
      生きてはいるんだけどね

 
 一時、少し売れたので、このまま自分の名前だけで独り立ちするのかな? と思ったのに、軌道を下げて、無名の職人になっていった人がいる。そういう意味。
 
 
 ∧∧
( ‥)あなたよりも才能のある
    人たちでした。
    あなたよりもずっとうまい
    絵を描く人たちですよ。
 
  (‥ )才能だけじゃ
      やっていけない。
      そういうことだろうな。
 
 これを福音と見るか、あるいは凶兆と見るかは受け取る人次第なんだろう。
 
 *イラストを描く動作が集中力を要求するとすれば、集中力が高ければ高いほど、そっちいっちゃ駄目だろう、とか、なんでこれをしないの?? とか、そういうことに陥りがちになる。だとしたらある種の才能が高いことは必然的に破滅の原因になりえる。そういう意味。
 
 
 ∧∧
( ‥)あなたは以前、言いました
    若者は挑戦すべき!
    俺は正しい!
    挑戦しない者の揶揄など
    気にしない!
    皆はそう威勢良く言うけど、
    実際は死体だらけだと*
 
  (‥ )そして厳密に言うと、
      死体がある、
      というよりも、
      椅子が転がっている、
      そんな感じなんだよね。
 
 確か、誰か、以前ここにいたはずなのに、椅子だけが残っている、そんな状況。

 
 
 年収は自分の方が彼らよりも多いはずだが、自分は一人暮らしで、彼らは実家暮らし、という違いがある。
 
 ∧∧
( ‥)支出を考えれば立場の
    やばさは同じ。
    どちらも落下のカーブは
    同じようなものでしょう。
 
  (‥ )底辺の背比べでしか
      ないだろうけどさ
      彼らと話す機会があると
      おいちゃんはいつも
      ぶつぶつ愚痴を言って
      いたもんだけどね。
 
 しかし、自分のどうしようもない人生をぶつぶつ愚痴り、彼らに笑われる一方で、
 
 しかし彼らには聞けなかったんである。
 
 お前らはどうするの?
 
 とは聞けなかった。

 ∧∧
( ‥)彼らもやばさは薄々気づいて
    いたでしょうから、
    そんな愚痴を言われては
    内心穏やかで
    なかったのでは?
 
  (‥ )まあ、今となっては
      それを確かめるすべもない。
 
 彼らがどうなったのか、これからどうするのか、それは知らない。生きていることも仕事をしていることも確かだが、空っぽになった椅子を見るのみである。
 
 
 
 
 

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