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2012年12月30日日曜日

5年ごとに変わるって都市伝説でしょ

 
 
 オレ様理論家の特徴のひとつは、調べないで、手持ちの知識だけから壮大な話を展開することにある。
 
 間違いがある、とかが問題ではない。調べもしないのに思い込みだけで話を過剰に作ることが問題なのだ。
 
 
 ∧∧
(‥ )というかあれですね、
\–   手持ちの知識だけで話を
     ふくらませると、
     あらが出るということですね
 
  (‥ )あらが出る。
      そのあらを指摘されても
      手持ちの知識だけで
      あらをふさぐので、
      話がどんどんおかしく
      なる。言い換えると、
      自分と自説を守ることに
      きゅうきゅうとして
      他人の話を聞かない。
 
 必然的に、本人は必死なのだが、周囲から見ると
 
 「ああ、確かにお前の理屈は正しいのだろうな。ただしお前の中ではな。」
 
 という事態に陥る。
 
 
 
 ∧∧
( ‥)理論は普遍的なものには
    ならず、結果的にオレ様にしか
    ならないのだと
 
 ( ‥)まあ、そういうのを
   –□ 世の中の人は
      オレ様理論とか
      それはオレ様の理屈でしか
      ないよねえ、
      そう揶揄するわけよ。
 
 
 
 例えば巨大隕石が衝突すると地殻に穴があいてどかーん、だ、という説をあっさり信じた連中の会話も見ていると。
 
 1:マントルを液体だと思っている。地震波のうち、S波は固体しか伝わらない。S波の伝わるマントルは当然、固体であり、マグマのようなものではない。そういう物理的な事柄を指摘されてもマントルは液体だと主張する=>物理学を無視している
 
 2:次にマントルはクレーターの掘削による減圧で溶融する(1の主張とはそもそも矛盾するがとりあえず置く)と言い出すが、その条件をソリダスのカーブで見ると、非常に厳しいことが分かる(どうも50kmは掘削しないといけない)=>明らかに地学の教科書を読んでいない
 
 3:続いて、例えば日本語で書かれたクレーターの本を読んでみよう。そうすると減圧による溶融の可能性が簡単だが1つ上げられている。だが隕石噴火を信じる当の本人達がそれに言及していない=>明らかに日本語の本を読んでいない(この手の本で簡単に入手できる日本語の本は事実上、1冊しかないが、それすら読んでいない)。
 
 4:次に英語で検索をかけてみよう。幾つかの英単語の組み合わせを試みると、数時間程度で、2の条件が満たされることがありうる、と主張する論文、言及がひっかかってくる。=>だがそれに言及していない。英語で検索をかけていないことは明らかである。
 
 端的に言うと、物理学も地学も日本語文献も英語の検索もしないまま話をどんどんふくらませていることは明らか。
 
 
 ∧∧
( ‥)読んでいないことは
    丸分かりであると
 
   (‥ )思い込みで話を展開
       していることは
       明白なんだよね。
 
 教科書を読むとか英語で検索するどころか日本語の本すら持っていない状態で、延々と壮大な話をふくらませてしまうわけで、それでしかも基本を勘違いしているのだから、そりゃあおかしなことになるだろう。
 
 間違いを犯すことが問題なのではない。調べもしないで手持ちの知識で、手持ち以上のことをばんばん述べてしまうから問題なのだ。結果的に、言うことが間違いというよりも嘘、あるいはほら話になっている。当人たちに自覚はないから意図的な嘘ではないのだろうが。そういうことだ。
 
 
 *ついでにいうと、4で紹介した事例は、なかなかよさげなアイデアに聞こえるのだけど、証拠がちょっとなくねえ? という案配で、特に支持されているわけでもない(一般的に巨大クレーターの生成で火山活動が起こることに関しては否定的な見解が多い)。
 
 *つまり、クレーターの生成と火山を因果関係で結ぶには、もっと手堅い話を持ってこないと皆、納得しないよ、ということでもある。
 
 *クレーターと火山の関係というと、月には明らかに因果関係がある(と思われる)事例がある。問題は、月の火山は地球の火山と全然違うし、月と地球とでは地質学の有様もずいぶん違う。月の事例を地球に安易にあてはめて考えるのはあまり正しくない。安易にあてはめて、月にはクレーターと火山があるから隕石衝突でマグマがごぼごぼ確実だぴょん、とか言っていると、月の謎を見落とすし、みすみすチャンスを失う=>hilihiliのhilihili: 「分かった」とは死へと至る病
 
 
 ∧∧
( ‥)そして例えば
 
   ( ‥)そうねえ、オレ様理論
     –□ で言うと、分岐学は
        結果がころころ変わる
        から信用できないんだ
        なぜ、オレの一押しの
        仮説を認めない??
        と声を荒げた人が
        いたよなあ。
 
 これの亜流では、
 
:恐竜学は5年置きに内容が大きく変わるのです!! 
:分岐学が作る分岐図は恣意的だ!
 
 というものがある。
 
 分岐学についてはこちら=>*
 
 ∧∧
( ‥)でも、これもねえ
    確かに、分岐図は恣意的に
    作ることができますけど
 
   (‥ )恣意的に作ったものが
       恣意的だと分かる、
       それが分岐学と分岐図の
       強みなんだがな。
 
 分岐図はグラフだ。グラフとはデータから発見するものであり、
 
 ∧∧
( ‥)いい加減なデータから作った
    グラフはあっさり破壊できる
 
   (‥ )いい加減なグラフは
       検証に耐えられない。
 
 これが分かっていないと、
 
 分岐学なんていい加減なんです。恣意的なんです。しかもご覧なさい! 鳥から恐竜が進化したことを示した分岐図すらあるではないですか! 分岐学自身が私の仮説を支持している!!
 
 といっていたのだが、その自説を支持する分岐図とやらがおっそろしく恣意的で、しかも同じ年に出た別の論文にあっさり破壊される、という事態が生じる。=>hilihiliのhilihili: あれはジョークか本気か?
       
 
 
 ∧∧
( ‥)分岐図なんか恣意的なんだ、
    と言いつつ
    引用した分岐図それ自体が
    恣意的以上にあからさまに
    ほら話に近い、
    という悲しい結果に
 
  ( ‥)恣意的な分岐図と
    –□ そうでない分岐図の
       識別ができない、
       なんのこっちゃない
       分岐学がどんな
       アルゴリズムか
       分からないままに
       話を展開しちゃった
       わけさね
 
 つまり、マントルはマグマだー、衝突でごぼごぼだー、というのと構図は何も変わらない。思い込みだけで話をどんどん膨らませるからそう言うことになる。調べもしないで過剰に語るから問題になる。そして何のどれの本を読んでいないのか、端から見ると明白だ。
 
 ついでにいうと
 
 ∧∧
( ‥)恐竜学が5年ごとにころころ
    変わるってのは間違い
    ですよねえ
 
  ( ‥)検証の過程でちょっと
    –□ ちょっと変わるのけどね
       基本的に一部がぶるぶる
       振動しているような
       状態なんだよな。
 
 
 よくわからんものはよくわからんので色々な位置に出るが、基本はぶれない、という意味。
 
 ∧∧
( ‥)というか、1986年に
    恐竜と鳥の分岐図が描かれて
    から26年
 
   (‥ )ぶれは収束していく
       傾向にあるのだよね
 
 資料が足りないので不明瞭で、将来、ここは壊れるかもね、という箇所はあるけども、例えば鳥に近い系統群の位置関係はもうあまりぶれがない。
 
 ∧∧
( ‥)むしろですよ
 
   ( ‥)研究者の人が言って
     –□ いたよね、実は
        紆余曲折はあったけど
  
 鳥は恐竜であり、肉食恐竜であり、その系譜はこのようなものである。それが分岐学的に明らかにされた1986年。これ以後、研究者達はデータを次々に加え、それぞれ様々な意見を表明し、仮説を突き合わせ、そして最終的に得たもの、
 
 それは1986年のものとほぼ同じものであった。
 
 
 恐竜学が5年、3年で大きく変わる、というのはセンセーショナルなニュースタイトルを追えばそうかもしれないが、あれはマスコミの作り出した虚像であって、単なる都市伝説だと思った方がいい。
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

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