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2010年7月3日土曜日

空想中間種

 
 そういえば、ふと思い出した、昨年の秋にアルディピテクス(Ardipithecus)の化石が発見された時、こんな反応があったという記事を見たことがあった。

 曰く、アルディピテクスはチンパンジーとはまるで異なり、ダーウィンの進化論が間違っている証拠であることが分かった。

 ∧∧
(‥ )ああ、アルジャジーラがArdiをそう報道した、という話みたいですね
\-   検索でひっかかってきました。

     (‥ )たぶんあれだな、論文の中で出てくる

 "We have seen the ancestor, and it is not a chimpanzee"

Science 2009 vol.326 pp37

 おそらくこういう表現を勘違いしたか、拡大解釈しちゃったんだろうなあ、と推論。

 ∧∧
( ‥)私たちが見つけた祖先はチンパンジーではない、
    聞きようによっては人間の祖先はチンパンジーのような
     類人猿ではない、とも受け取れますからね。

     (‥ )まあねえ。

 ようするに、ごくありがちなintermediateに関する誤解だよね、これ(ありがちな誤解は視聴者に受け入れられやすいことを計算して、意図的にやったということでなければ)。

 チンパンジーと人間という現生種のみをデータにして共通祖先を推論すると。

 ∧∧
( ‥)ナックルウォークと直立二足歩行という
    2つの歩行形式の共通点が祖先が持っていた
    形質ってことになりますかね、単純に考えると。

     (‥ )ゴリラとチンパンジーのどちらもナックルウォークする
         ことを考えると、ナックルウォークが祖先的な形質
         だったのだ、そう考えることもできる。

 さらにありがちな誤解で考えるとチンパンジーが人間に近いのだから、人間の祖先は現生種のチンパンジーと現在の人間の”中間”であると解釈する人が多いだろう。

 ∧∧
( ‥)ようするにチンパンジー→人間なのだから
    人間の祖先は(チンパンジー+人間)÷2であると

     (‥ )進化を1、2、3、4、という順序で考える、
         ありがちな解釈であるね。

 だけども本当にそうだろうか? 進化は分岐するものである。つまり1、2、3、4ではない。だとしたら

 ∧∧
( ‥)人間とチンパンジーの共通祖先、さらには人間の祖先が
   (チンパンジー+人間)÷2であるという保証はありませんね。

     ( ‥)確かに、分岐するという考え、つまり順番のようでいて
         次々に分岐するので順番そのものではない(半順序ってやつ)
         で考えても、祖先形質はナックルウォークであると
         考えることはできる。

 だけどもそうだろうか? 実はチンパンジーやゴリラが派生的なだけかもしれない。

 ∧∧
( ‥)実はそんな派生的な特徴を持たない、特殊化していない
    ご先祖様からそれぞれナックルウォークや直立二足歩行が
    進化したのかもしれない。

     (‥ )ダーウィンが言ったことを思い出せー。
         異なる外見をした2品種のハトがいる。
         ではこの2品種の共通祖先の姿は
          2つの品種のごちゃまぜだろうか?

 否。2つの違う品種の共通祖先はカワラバト。2つのごちゃまぜではない。

 ∧∧
( ‥)ブルドックとダックスフントの共通祖先は
    (ブルドック+ダックスフント)÷2であるかというと

     (‥ )そうではなくて、もっと普通の姿をした
         ありきたりなイヌだよな。

 同様に、人間の祖先は(チンパンジー+人間)÷2であるかというとおそらくそうではない。人の祖先は人間とチンパンジーのあいのこだという考えは、進化とintermediateを順序であると勘違いし、さらに1と3の間は何? それは2!!と推論した誤解。

 ∧∧
( ‥)分岐(半順序)で考えても
    ナックルウォークが祖先形質に見えるけども・・・

     (‥ )では、化石という新たなデータを
         くわえた時、その最初の推論は生き残れるか?

 どうもそうではない。少なくともアウストラロピテクスはもう直立二足歩行していた。そういうことはすでに分かっていたけども。

 ∧∧
(‥ )アウストラロピテクスよりも時代的にさらに古く、
 □-  持っている形質もさらに原始的なアルディピテクスを
     見ても・・・。

     (‥ )やはりそれは(チンパンジー+人間)÷2でもないし、
         (ナックルウォーク+直立二足歩行)÷2でもない。

 いや、確かに腰の骨の形、犬歯の大きさ、歯のエナメル質の厚さ、足の親指のあり方には原始的なところがあって、そういう意味では(チンパンジー+人間)÷2かもしれないけども。

 ∧∧
( ‥)でも、アルディピテクスの見た目はチンパンジーと
  -□ あなたたちのハーフというわけではありませんね。

     (‥ )ダーウィンが言うように、2つの品種の共通祖先、
         あるいはそこから派生したばかりの片方の祖先は
          2つの品種のごちゃまぜじゃないんだよな。

 進化は順番だから1と3の中間は(1+3)÷2で考えればいいんだぴょん、というのは進化とintermediateに関するありがちな誤解

*これは種の起源を読んで、「なーんだ、中間種の問題解けて無いじゃん」としたり顔で言う人がしばしば、というかほとんどの場合、というか例外なく陥っている誤解でもある

 ∧∧
( ‥)人間の祖先の歩行形式がナックルウォークと直立二足歩行の
    中間だというまだしもありうる推論も

     (‥ )アルディピテクスはそうではない。最低限、人間の進化に
         おいてそういう”段階”は実際には観測されていない、
         そういうことだね。

 そういう意味においては We have seen the ancestor, and it is not a chimpanzee であるのは確か。


 アルジャジーラがしたという報道は

     (‥ )まあ、最低限ありがちな誤解だよな。
 ∧∧
( ‥)ですね

 宗教世界だからそういう誤報を招くのだ、と意地悪く言う人もいるかもしれないが、いやしかし、日本にだって中間種が見つかってないじゃん、しかも「種の起源」を読んだ上で”書評”にそんなことを書いてしまう、人がいるわけで、

 ∧∧
( ‥)あちら様のことを宗教のせい、とか言えないかも
    知れません。

     (‥ )そういう書評を書いた人と同じ能力者が記者であるなら
         宗教だろうが、なんだろうが起きうる誤解だろうしね。

 *書評ってのは通常の人よりも何かいいたくて、なおかつ他人よりも頭いいと思っている(思われている)人がする行為じゃないの? と考えた場合、先のような書評の存在と記事の存在は、実は”頭がいい”とされる人間の所行かもしれず、それはある意味では失望的。

 そして今日もきっと「進化論では中間種の問題が未解決!!」と得意げに言う人々がどこかにいる。

 ∧∧
( ‥)でもそれは、

     (‥ )自分の空想した中間種がいないと
         言ってる、それだけってことだね

 ”オレの考えた中間種”って言えばいいの? あるいはオラ中間種というか。

 ∧∧
( ‥)チンパンジーと人間のハーフがいないよー

     (‥ )そんなものは最初っからいねー。

 
 ありもしないものを思いついて、ないない間違っている。そんな主張はないだろう。だが人は時にそういうことを平気でいうし、それをするのは自分は頭がいいと思っている人間かもしれぬ。


 

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