自己紹介

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2014年9月21日日曜日

不満の声だけを聞くわけにはいかんでしょう

 
 hilihiliのhilihili: 自分で檻に入ったのに檻の文句ばかり言っておるの続き
 
 自分から檻に入り、だがしかし、檻があるから僕は出れないと彼は言う。
 
 しかし、本当に悔しかったら檻から出れば良いのだ。家族を捨て、職場を捨て、給料を捨て、安定した飽き飽きするような毎日を捨て、自分を捨てて邁進すれば良い。
 
 だがそれができない。
 
 そしてそんな人々のために出版界は今日も本を売ります。この世の中がどれだけ駄目であるか、なぜあなたが認められないのか? そういう”疑問”をとことん説明してくれる本を。
 
 ∧∧
(‥ )出版界って最低だよね
\‐
 
  (‥ )俺たちゃ娯楽を売って
      いるのだよ?
      その儲けたお金があるから
      真面目で価値あるものを
      作る余裕ができるのだよ
      彼らがそういう本を
      買うからこそ
      もっとまともな本が
      できるわけだよ
 
 彼は犠牲になったのだ。

 
 さて、それにしても思うに。
 
 かつて3世紀のローマ帝国、50年に及ぶ内乱と軍人皇帝の時代に区切りをつけたディオクレティアヌス帝は帝国を四帝統治したという。
 
 *一般的には四分統治なんだけども、帝国は四分割されたわけではなく、正帝2人とそれを支える副帝2人による役割分担で、結局のところ四人の皇帝の首席はあくまでもディオクレティアヌス帝であったという位置づけから”四帝統治”という訳語がある。
 
 **「ディオクレティアヌスと四帝統治」文庫クセジュ ベルネール・レミィ 2010 訳者による後書きを参考のこと
 
 ∧∧
(‥ )ディオクレスさんと同時代の
\‐  ラクタンティウスさんは
    キリスト教徒だったから
    最後の迫害者である
    ディオクレスさんに厳しくて
    帝は皇帝を4人に増やして
    結果的に軍隊をさらに増やした
    そう批判したと言うのだよね
 
  (‥ )一次文献は
      まだ読んでいないけど
      引用だとそうだな
      *上記文献のpp109
 
 30万人程度の軍隊を43万5000人あまりにしたそうな。
 
 ∧∧
(‥ )日本の自衛隊よりも
\‐  ずっと多いね
 
  (‥ )もちろん、戦車とか
      戦闘機とかそういう
      高度な機械類はないわけだ
 
 だがしかし、いくら兵隊を安く使っているとは言っても、これだけいれば人件費はかかるし、しかも農業の生産性が今よりもずっと低く、石油がない時代である。
 
 ∧∧
( ‥)兵隊さんが必要とする
    食べ物を生産する
    さらに集めて
    それを運ぶ
    これだけでも大変だ
 
  ( ‥)それを考えると
    ‐□ 当時のローマ帝国の
      軍事費とその負担は
      大変なもの
      だったのだろうな
 
 だから税金が上がるし、色々な政策が打ち出されたし、新しい貨幣の発行は物価の上昇とインフレをまねいた。それに対して皆が帝に文句を言うのも当然であったのだろう。
 
 だがしかし、これがなかったら蛮族がやってきて町や畑を略奪するのだ。というか略奪が起きているから軍隊が出動していたし、そのために軍隊司令官である皇帝が4人も必要になって、そうしてそれぞれ役割分担を決めたわけで...
 
 ∧∧
(‥ )それを考えると
\‐  ラクタンティウスさんの
    言い様はあんまりだよねえ
 
  (‥ )一次文献を見ていない
      状況で言うのは何だが
      印象からすると
      一体誰のおかげで
      安全地帯で
      文章を書いていられると
      思っているのだ?
      そう問いたくなる
      話であるよな
 
 だが、考えてみれば、これと同じことを我々はしているのだ。
 
 例えばはるか未来。人類が存続しており、そうして現在の日本のことを文献から調べたとする。彼らは一体どういう日本を組み上げるだろう?
 
 国民は全員会社員であり、社畜という奴隷であった。低賃金労働と残業という過剰な労働によって次々に自殺者や、あるいは過労死する人が出た。国民のモラルは乱れて、若者の異常犯罪がしばしば報道され、退廃的なアニメや漫画を規制すべきだという声も上がっていた。社会は閉塞感に満ちていて、ネットの発達で人々は互いに互いを監視し、すこし目立つことをすれば、すぐに炎上し、袋だたきにされた。言論の自由はなく、民主制と言いつつも実態は全体主義であり、与党は世襲制議員で占められ、彼らが政治を牛耳り、民主的に選ばれた議員は無力な野党勢力であり、政策は官僚が決定していた。官僚は天下りを行い、よく分からない部署が次々に増え、彼らに支払う給料は税金であるから消費税は上がり、生活が苦しくなった。寿命は延びて老人が増大しているにもかかわらず。老人にも治療費などに関して負担を求めるような切り捨てを行った。一方、困窮した若者は偏狭な民族主義に走り、社会全体が右翼化の傾向を示した。それを阻止すべきメディアは腐敗し、あるいは唯一の良心である進歩的な知識人やジャーナリストたちはこうした人々に弾圧され、保守の傾向を強めた政治家たちは軍隊を増強し、国民にますます大きな負担を...

 
 ∧∧
( ‥)なんといいますかね
    そこそこ事実もあるけど
    実態からかなり
    かけ離れてますよねえ
    というか矛盾だらけで
    めちゃくちゃだよね
 
  ( ‥)でもあれだよ?
    ‐□ 今の時代の知識人や
      文化人が得意げに
      書き残している内容から
      考えるとだ
      未来人が再現する
      現代日本の姿は
      こうなっても
      おかしくないよな
 
 確かに物事に問題がないわけがない。皆の不満には根も葉もある。
 
 ∧∧
(‥ )でも、そこだけを
\‐  とって集めると
    これはおかしいだろ?
    という話になる
 
  (‥ )これと同じことを
      ローマ帝国の著述家たちは
      やっただろうし
      彼らがかつてやったのと
      同じことを
      今の僕らもしている
      そう考えるべきだろうな
 
 人々を守るためにやった処置に対して、人々が不満と呪いの声を申し述べる。それは当然なのだろう。人は個人の動物で、社会性という仮面の下は疑心暗鬼とむき出しの我欲が渦巻いている。
 
 だから、 
 
 相手からあてがわれた安全圏の中から、それをあてがった相手の悪口を言う
 
 これも当たり前のことなのだ。
 
 それは親子喧嘩のようなものなのだろう。そこには事実に基づいた不満がある。
 
 ただし、それは事実のごくわずかでしかない。
 
 ∧∧
( ‥)つまりこの手の不満の声を
    そのまま真に受けるなと
 
  (‥ )なにかあるのは確かだが
      鵜呑みにするわけには
      いかんだろうな。
 
 例えそれが過去の人であっても、あるいは現代人であっても、そんな言い様は真に受けるわけにはいかない。
      
 
 

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