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2010年5月23日日曜日

色あせた論理

 
 昔、こんなことを言ったサイエンスライターがいた。論理的に正しければ実験しなくてもいいのです。

 ∧∧
( ‥)はあ

     (‥ )まあ、あれだな、論理的に正しく答えを導けば
         それは証明であり、=真実だ、という
         考えなんだろうな。

 こういう論理的で矛盾がない=正しい科学、という思い込みなり理解なりはかなり根深いものがあるらしい。例えばオレ様鳥進化論を展開していた掲示板でもこんなような書き込みがあった。

 物理は法則があるのに生物学には法則がない。物理学ほどに生物学は確立していないに違いない。

 ∧∧
( ‥)そういうの灰皿のなんとかって言うんでしたっけ?

     (‥ )なんかそういう言い方がある見たいねえ。

 まあそんな言い方があろうがなかろうが話は単純。陽子と中性子と電子で世界が出来ていたとする(ものすごく粗雑な世界観だけど)。過去においても未来においても陽子と中性子、電子の性質は同じで均一だろう、そこから一律に答えを導けるだろう。だけども、これが一歩物理学から離れて化学の世界に入ったらどうなるか。

 ∧∧
( ‥)もう話が成り立ちませんね。

     (‥ )なんで塩素の原子量って≒35.5なのー?

 それは同位体があるからですね。均一で一律なものから構成されていても、構成が違えば、もうそれは一律じゃない。そして性質も違えば挙動も振る舞いも違う。同位体は存在するのかもしれないが、では元素って存在するわけ? それって概念だったりしね?
 

     ( ‥)そういえばある本を読んだ書評であったよな。
         陽子や中性子のような個物から出来ているはずなのに、
         生物や種が個物ではないのは不思議だと。
 ∧∧
( ‥)当たり前の話ですけどね。

 構成が違えば一律に記述したり、一律に振る舞ったりなんかしないだろう。

 そもそも最初の物理学の話からして論理を越えちゃっているんよね。

 ∧∧
( ‥)中性子は過去においても未来においても一律に同じ性質を
    示すだろう、という仮定は、、、

     (‥ )現代の観察に基づいて延長した飛躍的な
          推論であって。

 それは帰納だ。論理なんかじゃねーよ(一部のデータを観察しただけで全体を推論するのは論理とか証明とか演繹とは呼ばないよね、という意味)

 ∧∧
( ‥)物理学の理路整然とした論の展開も
    その根本には論理では正当化できない飛躍が
     しかれていると。

     ( ‥)そうでないとこの宇宙のことは推論できない。


 これがゆえに、物理学が確立していて生物学がそうではない、という意見は色々な意味でぺけ。というか、いつの世界観ですかそれは?

 同様に、論理的に正しければ実験しなくてもいい、というのは、これまた話にならない。

 ああ、そしていったよなあ、分岐学(系統解析の一種)は永遠に不完全なデータしかそろえられないので不完全な答えしか出力できない、駄目なんだって。

 ∧∧
( ‥)それって帰納は論理的には正当化できないって
    話ですよね。

     (‥ )経験で妥当性を確認する事が良いと言えるのは
         経験に基づく判断で、つまり経験で経験を正当化
         しているわけで、あれ? 根拠がなくね?
          問題あるんじゃね? という話なんだよな。

 その事自体は間違っていないし、何世紀も課題になっていることだけど、だから駄目だというと、それは自殺行為。

 ∧∧
( ‥)人間が手に出来るデータは全体の一部ですから。

     (‥ )つまりいかなる推論も意味がない。


 ようするに、これを言った人の意見も意味がなくなる。その主張は私の意見は帰納論ですから考慮に値しませんです、と言うのと同じ。


 ああ、こういう考え方をする人(複数)もいる。すべての素粒子のベクトルを入力して演算すれば未来は予知できるし、これなら生物学も進化学も科学になる。

 ∧∧
( ‥)それは、古典的で褪せた世界観ですね。

     (‥ )仮にこの宇宙がラプラス的にふるまっていて、
         すべての素粒子のベクトルを正確にはかることが
         できて、すべてを演算できるとしよう。

 でもさ、そんな決定論的な宇宙においてさえ、未来が均一だっていう飛躍した仮定は論理では正当化できてないんだよ?

 ∧∧
( ‥)論理だけで世界を論じようとした人は幾人もいましたが
    これまで成功した人は聞いたことがありませんね。

     (‥ )提案者はこれならどうだっ!! って出して
         くるんだけどね。

 まあ、最初に立ちし人はそれぞれ立派なのでしょう。失敗したとはいえ、道を切り開こうとしたんだから。しかし何も知らない何番手だかはどう評価するべきか?

 
 ご本人たちはみんな得意満面で持ち出してくるけども、そのネタ、前にもやりました。
 
 そしてこうも思う。サイエンスライターは信用ならん。
 
 

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