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2018年7月5日木曜日

襲来の変位電流

 
 電気回路にコンデンサーをつける。コンデンサーは2枚の向き合った金属板で、間には空気があるだけだとする。つまり回路とは言うものの、回路は完結していない。間に空気という絶縁体が挟まっている。
 
 ∧∧
(‥ )ところがこれでも
\‐  電気が流れるのである
    コンデンサーを作る
    金属板に電気が
    たまるまでの間流れる
    あるいは交流だと流れる
    あるいは...
 
  (‥ )なんだよそんなの
      見せかけの
      電流じゃないか!
      とか思っていると
      実はここで磁場が
      生じている
 
 磁場が生じているのなら、電流は実際に流れていると考えるべきだろう。これをマックスウェルは変位電流と呼んだ....

 ∧∧
(‥ )...というような説明を
\‐  されることあるけど
    実際にはマックスウェルさん
    そういうことは言ってない
 
  (‥ )電気を通さない絶縁体が
      誘電分極を起こすことを
      観察して
      流れない電気
      流れない電流
      流れ始めの電流がある
      そう言ったとみなすべき
      みたいなのよね
 
 マックスウェルがコンデンサーを論じたことがあるのは事実だ。確認した。コンデンサーから絶縁体を通して電気が逃げてしまう現象があること、それを変位電気で説明しているのも事実(絶縁されているはずのコンデンサーから電気が逃げる。これはファラデーなどによって発見された現象で、当時は電気吸収と呼ばれていた)。
 
 ∧∧
(‥ )そこは確認できたけど
\‐  皆が言うような意味合い
    コンデンサーの間で
    磁場が生じているから
    絶縁体を流れる電気が
    存在することに気づいた
    という趣旨の発言は
    ちょっと見当たらないね
 
  (‥ )マックスウェルが
      絶縁体でも
      変位電流を考慮すれば
      電流が流れるのと
      同じ現象を再現しうる
      と論じたこと
      これ自体は
      事実なんだよな
 
 始まりの電流である変位電気が絶縁体に生じる。なれば、これは絶縁体に起電力を生み出すし、絶縁体に生じた起電力は、絶縁体に変位電気を生み出すだろう。
 
 ∧∧
( ‥)この振動こそが電波
    電磁波
 
  ( ‥)そういう理解で良いと
    ‐/ 思うのだけどな
       だからこそ
       マックスウェルは
       明らかな絶縁体である
       エーテルを伝播する波
       電磁波を予言しえた
       わけなのだ
       *磁場と電場をどう
       解釈するのかは別問題
 
 まあエーテルが明らかな絶縁体であるのは、エーテルが実在しなかったからなんだけど、間違った前提から、結果的にマックスウェルは正しい結論に到達している。こういうこと、科学の歴史ではありがちだ。
 
 ∧∧
(‥ )そして変位電流とはそもそも
\‐  誘電分極のような
    電気の偏りを
    電流の萌芽とみなした理解
    から生じた概念で
    だからこそ変位
    つまり
    電気を司る粒子の配置に
    ずれが生じることで発生する
    電流に似た現象と作用
    という名前を冠されたのである
 
  (‥ )だからさ変位電流という
      命名からして
     ”コンデンサーの絶縁体を
      流れる電気みたいな何か”
      という発想ではありえない
      のだよな
 
 実際、もしそういう発想で命名されたのなら、変位電流は、イマジナリー・カレントとか、虚電流とか呼ばれたのではないか? そうでないとおかしかろう。
 
 もちろん、自分はマックスウェルの論文を全部読んだわけではない。そもそも一本読むだけでどえらい苦労をするはめになったし、自力では不可能だった。全部読むのは無理に近いだろう。少なくとも今、それをしている時間はない。
 
 とはいえ
 
 ∧∧
(‥ )とはいえ、世間における
\‐  変位電流の理解って
    後世の後付け解釈で
    成立したっぽい
    そういう感触は
    得られましたな
 
  (‥ )いやもうね培風館の
      新物理学シリーズ6
      物理学史II
      広重徹 S42 pp28
      には
      大変助けられましたよ
      マックスウェル
      何言ってるんだか
      わからねーんだもん
 
 遊星歯車の軸が動く場合、その速度は二つの歯車の速度の和の2分の1である。
 
 ∧∧
( ‥)これが実は
    磁力線の回転速度に違いが
    ある時
    それが電気の駆動力
    つまり起電力となる
    という意味なのだよね
 
  ( ‥)もう広重さんの本が
    ‐/ なかったら
       まったく
       歯が立たなかったよ
       マックスウェル先生
       せめて
       これが電流を生み出すと
       一筆書いていただきたい
 
 マックスウェル先生、説明を端折りすぎである。
 
 そして、コンデンサーから変位電流が発明された、という理解が流布していることからして...

 広重先生、こちらの著書を読んだ人間はほとんどいない。そういうことがわかる。
 
 ∧∧
(‥ )今の所 広重さんの引用が
\‐  あったのは
    「電磁気の単位はこうして
     作られた」
     工学社 木幡H15
     だけですかね
 
  (‥ )文献の伝達とは
      難儀なものだぜ
      せっかくの内容も
      読まれなければ
      後世に伝わらん
      
    
      
 
      

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