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2015年11月26日木曜日

いつ屈服するか見据えるべき

 
 ∧∧
(‥ )2015年11月24日
\‐  トルコが領空を侵犯した
    ロシア軍機を撃墜
    ロシア人パイロットは
    脱出するも
    シリア反政府軍によって
    殺害される
 
  (‥ )撃墜された場所って
      シリアのラタキア県と
      トルコの境界だって話だね
 
 
 シリアのラタキア県。そこは現在のシリアを支配する少数派、アラウィー派が一番多い地域だそうな。
 
 









 =>ラーディキーヤ - Google マップ
 


 ∧∧
(‥ )そして都市ラタキアは
\‐  港のある町でもある
 
  (‥ )googleで見ると
      シリアで大きな港があるのは
      後は南のタルトゥスだけ
      みたいだな


ラタキアの港










タルトゥスの港





 
 



 都市ラタキアとラタキア県はかように重要な要地なので、フランスの統治下で進んだアラウィー派の自治は一度、スンニ派によってつぶされたことがあったとか。
 
 ∧∧
(‥ )現在のシリアの内戦は
\‐  その後巻き返して
    ついに支配権を握った
    少数派アラウィー教徒の
    支配に対する
    多数派スンニ派の反乱
    ...ですね
 
  (‥ )独裁に対する抵抗とか
      そういうのとは
      ちょっと違うんだよね
 
 少なくとも、自国民から現れた独裁者とそれに抵抗する自由を求める人々、という世界観で見ては事態を見誤ることは確実。かつて賤民扱いされた支配者と、それを快く思わない多数正統派の戦争。
 
 ∧∧
(‥ )逆に言うとあれだよね
\‐  いくらシリア国内全体では
    スンニ派が多数でも
    アラウィーが多数の
    ラタキア県は落とせないって
    ことだよね
 
  (‥ )以前は多数派で権力を
      握っていたスンニ派が
      ラタキアの自治を
      武力でつぶしたけど
      フランスの統治を経て
      今はアラウィー派が
      政府軍だからな
      確かに政府軍も
      さすがに多勢に無勢で
      苦境かもしれないが
      昔からアラウィー派寄り
      だった
      ロシアとイランの支援が
      ある今となっては
      このラタキア県は
      そうそう落とせないよね
 
 港町で、しかもgoogleで見ると四方が山だ。プロの目にどう映るのかは分からないが、素人目にはなかなか難しそうである。

 






 

 
 
 ∧∧
(‥ )アラウィー派の人は
\‐  国境の向こうトルコにも
    いるんだよね
    なんでもひどい差別を
    されているとか...

 
  (‥ )あまり他所様の国を
      あげつらうようなことを
      言うもんじゃないけどな
      そうみたいだな
 
 アラウィー派は古来よりある預言者の宗教でない。そのせいなのか、あるいは一見するとイスラームの風を装うせいか。そして実際にはクルアーンには従わないせいなのか。いずれにせよアラウィーの人々はひどく忌み嫌われたらしい。そして忌み嫌われるとどうしても衝突が起こる。衝突が起こると、やはりあいつらは邪悪なのだと思われる。蔑まれることを嫌って社会的上昇を目指せば叩かれるし、上昇に成功すれば憎しみの目で見られる。これは当然と言えば当然。
 
 ∧∧
( ‥)いずれにせよ
    スンニ派のトルコが
    アラウィー派を
    認めるわけがない
 
  (‥ )ましてや宿敵ロシアが
      黒海の防波堤である
      自分たちの領空を
      飛び越えて
      飛び地よろしく地中海に
      拠点を築こうなんて
      許すわけがないからね
 
 そりゃ撃墜するよな。
 
 ∧∧
(‥ )そして脱出したパイロットは
\‐  シリアの反政府軍
    つまりスンニ派に殺される
 
  (‥ )アラウィー派も
      正教徒のロシアも
      シーア派のイランも
      事実上全部異教徒だ
      シリアで起きていることは
      まさに
      異教徒VSムスリムだね

 
 ようするに複雑に見えてただの宗教戦争である。もちろん、動機は即物的なものだけども、心情は宗教戦争ということになろう。人の争いとは、あいつ気に入らない、から始まるものだし、そういう心理が関わるものだ。
 
 ∧∧
(‥ )ただムスリム側が
\‐  ばらんばらんで
    訳が分からなくなって
    いるんだよね
 
  (‥ )シリアの反政府軍
      イラクの残党であるISIS
      かつてはイスラームの英雄
      サラディンを輩出しながら
      国民国家の出現で
      急に折り合いが悪くなった
      クルド人
      ムスリム側は
      めちゃくちゃだなあ

 
 文明が長く続いたせいなのか、どうにも自由人すぎて結束がない(それに考えてみれば結束する理由もない)。
 
 
 ∧∧
(‥ )だとするとムスリム側の
\‐  敗北ですか
 
  (‥ )ムスリムやアラブには
      軍人貴族である
      騎士と覇王が必要だよね
      地球に
      騎士が戻ってくるのは
      まだしばらく先だし
      今回も負けかなあ
 
 そしてムスリムに負けず劣らずちんちくりんな立ち位置が
 
 ∧∧
( ‥)まずはアメリカ
 
  ( ‥)イラクではシーア派を
    ‐/ 支援して
       シリアではアラウィーを
       敵視して
       だけどスンニ派のISISを
       攻撃する
       何をしたいんだか
       さっぱり意味不明
       大企業のプロジェクトが
       炎上失敗する王道を
       驀進中
 
 ∧∧
(‥ )次にフランスだけど
\‐  これもなかなか厳しい
 
  (‥ )シリアのムスリムから
      すれば
      賤民のアラウィーに
      権力を渡して
      独裁をまねいたのは
      フランスじゃねえか!
      って話だからな
      ましてや十字軍の
      フランク共だしな
 
 つまりフランスが、よし、ISISのテロに報復するためにロシアとアサド大統領に歩調を合わせるぞ! と、これ自体はしごくまっとう当然の反応を行えば
 
 ∧∧
( ‥)宗教戦争中であることを
    考えれば
    ますますムスリムから
    嫌われますね
    しかも元凶だし
 
  (‥ )そのくせ国内には
      アラブ人やムスリムが
      いっぱいて
      ネットワークを
      築いているわけだよね?
      報復されるよね
 
 ∧∧
(‥ )しかもロシアやイランは
\‐  地理的、社会的に遠いから
    全部の報復がフランスに
    集中するとか?
 
  (‥ )ようするに今回負けるのは
      ムスリムとアメリカと
      フランスってことなのな
      それぞれ
      ばらんばらんか
      立ち位置がちんちくりんで
      中途半端か
      あるいは問題の元凶です
      おまけに仲違いしてます
      これではね
      勝てるわけないよね
 
 というか、アメリカはすでにテロに屈したのである。イラクでの損害に顔色を失い、尻尾巻いて逃げ出した。
 
 ∧∧
( ‥)つまりお次はフランスだと
 
  ( ‥)フランスがいつテロに
    ‐/ 屈服するのか?
       それは何年先か?
       むしろそれを
       見据えるべき    
 
 
 
 
 *サラディン:イスラーム世界の英雄。かつて西欧の侵略者、野蛮な十字軍を撃退した王である。彼はクルド人であったらしい。クルドの人々はムスリムなのでオスマン帝国ではトルコ人とも別に普通の仲であったそうだ。しかしWW1における帝国崩壊後、トルコが西欧に習って国民国家化すると、トルコ人とクルド人の対立が始まったという。国民国家ではすべての国民がトルコ人でなければならない。トルコ人はトルコ語をしゃべる。こうしてクルド人はその言葉を禁じられ、それがクルドの反政府活動をまねき、現在に至る。国民国家と民主制は、多民族多宗教の統治には向いてないよね、という実例。
 
 
 

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