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2013年11月3日日曜日

秋の人肉食い 山田くんは普通においしいよ

 
 
 学生時代の同期で、後進国に援助をしよう、という運動をサークルだかなんだかでやっている奴がいた。
 
 ああ、そういう活動なんだ。確かにあちらの方々がバタバタ死んでるおかげでこっちは豊かなのだからね。あの人たちにちょいとばかしお返しするのは良いことだよね。
 
    (‥ )と、言ったら
        すげー嫌な顔された
 ∧∧
( ‥)ああ、まあねえ。
 
 彼がどうして嫌な顔をしたのかはよく分からない。
 
 そんな活動はしょせんは偽善だよね という意味だと受け取られたのか
 
 そんな活動しても効果が上がるわけないじゃん と受け取られたのか
 
 お前だって、あの人たちの命をばりばり食ってここまで大きくなったんじゃねーの? そう言われたと思ったのか
 
 あるいは
 
    ( ‥)単純にこいつ、
        何言っているのだ?
        そう思われたのかも
 
 ∧∧
( ‥)確かに、あなたの発言には
    正確でない部分がありますよね
 
 内乱や汚職、あるいは独立して行政の経験がまだ浅いこと、そもそもインフラが整いきっていないこと。あるいは部族社会の軋轢という解決には何世代もかかるだろう問題、そしてかつての宗主国の介入など、飢餓と餓死には色々な要因がある。
 
 
 ∧∧
( ‥)必ずしも先進国が後進国に
    貧乏を売りつけたから
    餓死や飢餓が起きているとは
    限らないし、言えない
 
   (‥ )とはいえだ
 
 
 とはいえ、原料を輸入し、それを精錬し、それを加工して組み立て、それを購入して一般に販売する。商品は以上の過程、それぞれの段階で関わるそれぞれの人が利潤を出すようになっている。
 
 ∧∧
(‥ )絶えずそうではないけども
\‐  原料はしばしば買いたたかれ
    ますよね
 
  (‥ )希少資源を採掘するために
      その地を植民地化して、
      現地人を奴隷同様に
      酷使して安く買いたたく
      そうして大きな儲けを
      生み出してきた。
      そういう歴史があると
      なおさらにそうだよね
 
 もともと鉱物資源などの採掘は過酷なものだし、先進諸国は歴史が長いので掘れる場所はおよそ掘っている。そういう状況で、手つかずの資源を持つ地域(手つかずということは必然的に大きな文明や政府が出現していない地域であり、必然的に先進諸国が”強制力”を発揮できる地域)が見つかれば、そこは植民地化され、収奪が始まり、原材料費は下がり、それゆえに商品は安くなって本国の鉱山は衰え、人は零落するか、あるいは会社員に転職して安いものを買い、繁栄を謳歌する。
 
 
 ∧∧
( ‥)そもそもそうでないなら
    本国の鉱山や
    先進国の鉱山からの
    輸入だけで今でも
    成り立っているでしょうし
    代わりに商品は高いまま
    でしょうね
 
  ( ‥)もっと大量に、
    ‐□ もっと安く、
      皆が望んだ結果、
      当然の帰結だよね。
 
 もちろん、安く買う側は、相手に貧乏を売りつけているのだ。安く買いたたくとは支払いを減らすことであって、それはマイナスを相手に売りつけることと同じである。
 
 ∧∧
( ‥)マイナスとは貧乏だ
    つまり、豊かな人は誰かに
    貧乏を売っている。
    そして先進国の人間は
    ほぼ全員豊かであり、
    貧乏と言われても、
    その貧乏、
    後進国よりはるかに豊か
 
  (‥ )援助って言うのは
      貧乏をずっと
      買わされていたあちらに
      ちょいとばかし支払いを
      するってことであってね
 
 当然、根本的な解決にはならない。
 
 そもそも根本的な解決をしていないから援助が出来るのだ、とも言える。
 
 *もちろん、いわゆる後進国や発展途上国の持つ問題はこれだけではないし、こうした問題が仮に解決されても、それでもなお、先進国の優位は揺るがないだろうけども、ここではそこまで論じない。
 
 ∧∧
(‥ )理想に燃えて実行しても
\‐  問題解決など不可能
 
  (‥ )んー とはいえ、
      立派ではあるよね
      無駄で無力であっても
      人は己の信念に殉じる
      ことができるのだ
 
 ∧∧
( ‥)あなたより立派な行い
    ではあるのでしょう
 
  (‥ )そりゃあそうさ
      俺はなーんにも
      しないからね。
 
 我々には何かしら、人食い、の要素がつきまとっている。それは先進国だろうが後進国だろうが、貴族だろうが、貧乏人だろうが実は同じだ。
 
 ∧∧
(‥ )アメリカは格差が
\‐   進んでいると聞きます
 
  (‥ )中間層は壊滅しつつあり
      彼らが貧乏を買うことに
      なって、その分、
      一部が極端に豊かになった
      そういうことかもね。
 
 アメリカの貧乏人は圧倒的な強者に貧乏を売りつけられた。しかしその彼らもジャンクフードを食べるデブであって、後進国のもっと貧乏な人々に極貧を売りつけている。別に悪い事じゃない。批判でも非難でもない。道徳の問題でも倫理の問題でもない。単純な事実であり、ただの仕組みだ。
 
 日本では、老人が若者に貧乏を売りつけて、死に損ないの肉体で必死にがめつく金にしがみついている。
 
 ∧∧
( ‥)ヨーロッパはしばしば
   正社員が日本の社員よりも
    幸せで健康的で
    無理のない労働をしていると
    評価されますが
 
  (‥ )さてどうだろうな?
 
 以上の図式からすると、それは”ありえない”ことになる。あるいは、ありえた、としたらどこかに貧乏を売りつけていることになる。
 
 ∧∧
(‥ )ヨーロッパで台頭する
\‐   右派勢力、
     移民問題、暴動、
     ギリシャ、スペイン、
     イタリアなどが抱える
     経済的な危機
     
 
   (‥ )そして旧植民地。
       とてもじゃないが、
       西欧社会の社員は幸せだ
       人間的だ、というのは
       にわかには
       信じられないね
       偽りの楽園だと見た。
       厚化粧の下に法令線と
       小じわがくっきり
       見えてるじゃないか。
 
 実際、人間的で幸せな生活を”普通の人間”が送っていられる。そんなことは現実にはありえない。平均人間は劣った存在でしかない。平均点がすぐれた業績か? 答えは明らかに否だ。平均が勝利者になれるか? 答えは明らかにノーだ。収奪されるのが平均人間だ。平均人間が幸せとは、それは虚偽でしかない。移民か、植民地、後進国に貧乏を売りつけないとそうはならないだろう。光があるなら影がある。平均人間は本来は境界線にいるはずだ。だのに光にいるというのなら、それはどこかに影を売りつけたことに他ならない。
 
 自分たちが人間的だというのなら、一体全体、どこに影を押しつけた? 植民地か? 移民か? 若者か? それとも、もっともっと深い場所か?
 
 ∧∧
( ‥)でっ?
 
   ( ‥)そうね、先日、
     ‐□ 11月の1日に
       攻殻機動隊を買い直して
       読み直して、以前の
       書き込みに追記したけど
 
=>hilihiliのhilihili: うろ覚えではあるが、少佐の話はそういう事ではないと思う
 
 *書き込みは10月の26日、11月1日に本が届いたので当日、追記済み。引用した台詞の一部がうろ覚えで間違っていたので、正確な台詞を追記。とはいえ、大意は変わらないと思う。
 
 思うのだけども、例えば冒頭の彼、大学同期の彼、ちょうど攻殻機動隊の連載とほぼ同じ時期の彼、彼は攻殻機動隊の物語を読んでも、全然理解できないかもしれない。ふと思い出して、そう考えた。
 
 ∧∧
( ‥)もし冒頭の彼が豊かさは弱者に
    貧乏を売りつけて実現される
    そういう理解をしていない場合
    攻殻機動隊を読んでも、
    理解できないと
 
  (‥ )そういうことにならんかね?
 
 後進国に貧乏を売りつけて、代わりに安くなった商品を買う。
 
 低賃金労働者に貧乏を売りつけて安い食事を楽しむ。
 
 若者に貧乏を売りつけて、年金生活をする老人が、例えば”和民”で食事を楽しむ。
 
 技術者に貧乏を押しつけ首を切り、一時の黒字を己が手腕の成功と思い込んだ経営者が暴利をむさぼり、会社を傾ける。
 
 貧乏を売りつけておいて、自ら人間を安く買いたたき、悠々自適に生活する。それにも関わらず、己が還元するわずかな施しを福祉であると自画自賛する。
 
 
 ∧∧
( ‥)これを理解しない人は
    やはり攻殻機動隊も
    少佐の台詞も、
    施設の要員の指摘も、
    戦災孤児の嘆きも
    理解できなくなると
 
  (‥ )自分たちは無自覚に
      人食いをしている。
      これを理解していない人は
      あのやり取り全体が
      意味不明になるんじゃ
      ないのか?
 
 もちろん、別に漫画に限ったことではない。こうしたことが理解にないと、現実の問題全てが、解決どころか、理解も把握も不可能になるだろう。
 
 事実、日本の老人たちは若者を買いたたいているくせに、なぜ若者が我々のように金を使わないのか?? そう首をひねるばかりではないか。
 
 
 
   ( ‥)以前、人は人を食うのだ
       ある人にそう言ったら、
       後進国や貧者の困窮に
       心を痛めていた
       その人は
       ”はあ?”
       と言ったな。
       たぶん、自分が人食いを
       していることに
       耐えられないのだと
       思うよ。
       理解をシャットアウト
       していた。
 
 ∧∧
( ‥)まあ、そうかもね
 
 このハンバーグ、おいしいねえ。
 
 ああ、山田君だからね。
 
 それを聞いて、それを理解して、それでも、もしょもしょ食える奴はそうはいない。
 
 はあ? 何言ってるの? 
 
 このように聞かなかったことにするか、理解をし損なうのが普通だ。あるいは後進国の人間や若者を悪者に仕立て上げて、愚かな彼らを食うのは当然なのだ、そう自己欺瞞するものだ。事実、日本の老人が語るたわ言を聞き直してみれば良い。
 
 ∧∧
( ‥)それでも冒頭の彼は
    あなたより立派なのですよ
 
  (‥ )そりゃあそうさ
      彼はハンバーグを食いながら
      人参を山田君にお裾分け
      しようとしているのだ。
      単に彼は、
      ハンバーグが山田君であると
      認めなかっただけだよ
      
 
 ∧∧
(‥ )あなたは、お裾分けもしないで
\‐  食ってるだけだからね
 
  (‥ )山田君、普通においしいよ
 
 
 ところで
 
 ∧∧
( ‥)なぜ山田くん?
 
  (‥ )いや、古い友人でいたから
      名前だけ使った。
      今は何してるか知らんがな
      取りあえず、
      現実問題として
      彼を食べるのは正直、
      気が進まないけどね
 
 
 

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