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2020年3月11日水曜日

イタリアは医療崩壊していない! と言うこと、それ自体はできるでしょう

 
 イタリアの死亡率の変遷は最初からおかしかった。
 
 イタリアの感染者数と死亡、死亡率は
 
 25日  229 6   2.6%
 
 28日  650 17  2.6%

  1日 1128 29  2.57%
 
  3日 2036 52  2.55%

  5日 3089 107 3.46%
 
  8日 5883 234 3.98%
 
 10日 9172 463 5%
 
 
 ∧∧
(‥ )イタリアは検査重視だから
\−  死亡率は低くなるはず
    だのに重症者だけの発見
    救命をしている日本よりも
    むしろ高い死亡率で
    始まった
 
  (‥ )まあそこから後は
      予測の通りでは
      あったけどな
 
 重症者のみを発見、救命する日本は見かけの死亡率が上がるはず。
 
 反対に検査を重視するイタリアと韓国では分母である感染者が大量に見つかるので、見かけ上の死亡率が下がる。しかし検査は医療の手を塞ぎ、いずれ検査が追いつかなくなる。つまり見かけの死亡率は増加し、大量に押し寄せる患者で医療崩壊が起こる。すると死亡率は顕著に増大する。
 
 だのにイタリアは最初から日本とほぼ同じ死亡率だった。検査しているのならこれはずいぶんおかしな値である。
 
 ∧∧
(‥ )死亡率が当初から2%以上と
\−  高いことから
    イタリアは口で言うほど
    検査してないんじゃないか?
    そう思っていたけども
    その後は予想の通りに推移
    死亡率は横這い、微増、急増
 
  (‥ )イタリアは押し寄せる患者で
      溢れかえり
      病院の廊下で治療を
      余儀なくされている
      そんなニュースが出たのは
      8日だった
 
 =>https://www.corriere.it/cronache/20_marzo_07/coronavirus-stiamo-creando-terapie-intensive-anche-corridoi-cb01190a-60be-11ea-8d61-438e0a276fc4.shtml?cmpid=tbd_0d695e50pD&refresh_ce-cp
 
 残念ながら自分にイタリア語は読めない。とはいえタイトルにcorridoiすなわち廊下という単語があるだけで、噂通りの非常事態であるらしいことはわかる。
 
 8日はイタリアの死亡率が顕著に上昇しはじめた5日から少し後。だいたいこのあたりでイタリアの医療は押し寄せる患者に対応しきれなくなったことがうかがえる。
 
 英語だと9日に出たニュースがある
 
 =>https://www.theguardian.com/world/2020/mar/09/italian-hospitals-short-beds-coronavirus-death-toll-jumps

 
 To manage the emergency, the sick are being placed in operating rooms or in hospital corridors.

 この非常事態に対処するため、患者は手術室や病院の廊下で寝かされている。

 
 同じく9日に出てきたニュースは、状況がさらに過酷であることを示すものだった。

 =>https://www.brusselstimes.com/all-news/belgium-all-news/health/99412/coronavirus-we-must-choose-who-to-treat-says-italian-doctor-covid-19-christian-salaroli/

 
 ∧∧
(‥ )he and his colleagues
\−  must now select the patients
    who will or
     will not be able to access
    mechanical resuscitation
    (by intubation) from among
    the most seriously ill.

 (‥ )Dr. Salaroliと同僚たちは
     今や患者の選別を
     余儀なくされています
     最も重篤な患者たちのうち
     誰が人工呼吸器を
     つけるべきか否か
     その決断を
     しなければならない
 
 ∧∧
(‥ )intubationとは挿管のこと
\−  つまりは気道に管を入れて
    呼吸を助けること
    それすら選別せざるを
    えないほど患者が
    増えてしまったと
 
  
  (‥ )ではその原因は何か?
      まあひとつには
      やはり
      検査のしすぎっぽい

 
 例えば時間を少し遡った3月4日のニュース 

 *この時点のイタリアの死亡率は日本と同じ程度で医療崩壊の明確な兆候は見えていない。
 
 **ただし一応書いておくと検査重視を打ち出していたイタリアの見かけの死亡率が日本と同じであること、これはこの時点ですでに異常事態なのである。
 

 =>https://www.washingtonpost.com/world/europe/coronavirus-in-italy-fills-hospital-beds-and-turns-doctors-into-patients/2020/03/03/60a723a2-5c9e-11ea-ac50-18701e14e06d_story.html
 

 Italy has been conducting extensive testing for coronavirus, including testing people who do not exhibit any symptoms of covid-19, the disease it causes.

 As of Tuesday evening, 2263 people had tested positive. Of those, 1263 were hospitalized, including 229 cases in intensive care. Seventy-nine people had died.


 イタリアはコロナウイルスの広範な検査を指揮し、こうして検査された人々にはCOVID-19による症状をまったく示していない人もいた。

 火曜日の朝には2236名が検査で陽性となり、それらのうち1236名が入院し、うち229名はintensive care(集中治療)が必要で、79名が亡くなった。
 
 そっけない一文だが興味深い内容でもある。
 
 ∧∧
(‥ )集中治療が必要でない
\−  陽性反応者は全員
    家に返して
    良かったのでは?
    そう解釈できる
    内容ですからなあ
    これは医療崩壊の原因と
    言われてもしょうがない
 
  (‥ )是非の判断とか
      評論を抜きに語ると
      そう解釈できる内容でね
      興味深いだろう?
 
 このニュースは4日のもの。医療崩壊が数字で見え始めるのは5日とか8日だから、つまりはイタリアの医療崩壊を念頭に入れていないニュースであることに価値がある。

 症状が出ていない人までたくさん検査した。大量に入院させた。死者が出た。
 
 単純なこの内容は、今から振り返れば価値があるものとなるだろう。
 
 そしてこれは韓国の状態と似ていた。やはり検査偏重であった韓国で、先に見つかった軽症者が病院から出たくても出られず、自宅待機を余儀なくされた重症者が亡くなったのは3月3日。4日におけるイタリアの出来事は3日の韓国と基本は同じであったことを暗示している。

 
 一方、医療崩壊のその後の展開は、イタリアと韓国ではまったく違った経過をたどった。

 韓国は10日の時点で感染者:死亡者は7513:54 その死亡率は0.7%

 微増状態が続くし、報道されたようにベッドが埋まって自宅待機を余儀なくされた患者の死亡も起きている。しかしイタリアほど状況は深刻ではない。韓国は人口比でいうと日本の12倍も死んでいるわけで絶対的には良い状態ではないけども、イタリアの死者463名よりははるかにましだ。
 
 ∧∧
(‥ )この違いは患者の年齢層で
\−  説明できそうですなあ
    イタリアの死者の
    平均年齢は81
    中国は73だった
    雑な比較だけども
    イタリアの死者は明らかに
    死者の年齢が高いよね
 
  (‥ )イタリアは
     年齢の高い層に
     集中的に感染を許したって
     ことだよね
     どんな経緯があったのかは
     知らんけどな
 
 老人ホームや介護施設に侵入を許したのか、どうなのか、よくわからない。しかし年齢に偏りがあるとはそういうことなのだろう。
 
 反対に、医療崩壊のきざしを見せながらもなかなかに健闘している韓国。実は集団感染の源になった新興宗教の信者が若い年齢層だった、という話がある。
 
 ∧∧
(‥ )確かにこの新興宗教
\−  出回ってる画像を見ると
    皆さん若いよね
 
  (‥ )若いと重篤化しにくいし
      若い連中にベッドを
      占領されても
      新興宗教が感染地帯なら
      医療崩壊でなくなる
      部外者の老人は
      そう多くないはずだ
      だったら
      死者の数の違いは
      説明できる
 
 無駄に検査すると検査数自体と患者の殺到で人手は不足し、器具は不足し、救命できなくなり、院内感染も拡大し、それ自体が人手を奪い、それ自体がさらに治療を奪い、さらに死者が出る。

 その上、高齢者への集中的な感染を許した。

 イタリアのおびただしい死者と医療崩壊は、推論するにそういう現象であった。
 
 
 ちなみに
 
 ∧∧
(‥ )イタリアや韓国が
\−  医療崩壊したというのは
    デマ情報だ
    検査を妨害する安倍政権と
    右翼が流しているデマなのだ
    そう主張する人がtwitterに
    たくさんいますけども
    これはなんですかな?
 
  (‥ )単純に情報が
      周回遅れなんだろ?
      イタリア語はわからんし
      イタリアは
      日本から遠くて
      日本人はイタリアに
      興味ないし
      英語圏の連中だって
      似たり寄ったりだ
 
 イタリア語のニュースが英語化されて、さらに日本語になって出回るまで時間がかかる。

 しかもイタリアの医療崩壊が数字で見え始めたのは5日ぐらい。

 イタリア語のニュースで現場の混乱が表面化し始めたのが8日ぐらい。

 英語のニュースになり始めたのは9日ぐらい。
 
 ∧∧
(‥ )本日は11日
\−  イタリアの医療崩壊が
    ニュースになり始めたのは
    一昨日ぐらいだからね
    医療崩壊はデマだと
    言い立てる人も
    そりゃあおりますか
 
  (‥ )まあそれに医療崩壊と
      言う必要は確かに
      ないからね
 
 自分だって便利な言葉なので医療崩壊という表現を使っているだけだった。

 より正確には、

 患者が多すぎて手術室や廊下で治療せざるをえなくなり、人工呼吸器も足りないから助けられる人だけを助ける方針で、医者も足りない上に院内感染で倒れていくから退職した医者や学生まで総動員している

 というべきで、医療崩壊と表現する必然性は確かにないのである。なるほど、検査の増大で重症者が死ぬことは理論的に予測できる。そして規模の違いはあれど、事実として韓国とイタリアではそれが起こった。だがこれもあくまでも推論値。推論値は真理ではない。真理でない以上、医療崩壊という表現を使うな! そう強弁することは可能なのである。
 
 ゆえに正確には
 
 患者で飽和し、廊下で治療し、救命を選別し、学徒出陣状態である

 そう表現するべきだった。
 
 
 ∧∧
( - -)そういうのを
    医療崩壊って言うんだぞ 
 
  (‥ )えー?
      患者が増えただけで
      検査のせいだとは
      限らないよー
      と言い訳できますのでね
      言い訳する奴は
      最後まで言い訳するぜー
    
 

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