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2016年5月15日日曜日

物書きとはガラクタ売りになることである

 
 例えば世の言説に曰く、

 チョウチンアンコウの雄は雌に寄生する。寄生すると雄は雌と一体化して、眼も脳も心臓もなくなり、睾丸だけの存在に成り果てる。
 
 
 ∧∧
( ‥)これはまず色々と
    間違いですよと
 
  (‥ )チョウチンアンコウの雄は
      雌に寄生しないんだよな
 
 チョウチンアンコウ類の魚たちは雄が雌よりずっと小さい。そして種類によっては雄は雌に寄生する。
 
 ∧∧
(‥ )だけど皮肉なるかな
\−  チョウチンアンコウ類の代表たる
    チョウチンアンコウは
    雄が寄生しない種類である
 
  (‥ )少なくとも
      寄生するという証拠は
      ないんだよね
 
 
 冒頭の説明はその後も色々と間違いである。チョウチンアンコウ類の寄生する種族であっても、雄は寄生後もなお頭蓋を残している。当然、脳もある。眼も退化するが残ってる。確かに雌と雄が一体化することは事実である。少なくともあろうことか血管が共有されてしまう。当然、雄の心臓は必要ないし、酸素を取り込む鰓も必要ない。ところがそれにも関わらず雄には心臓も鰓もちゃんと残っている。ほぼ完全に痕跡的になってしまうのは消化器官だ。
 
 ∧∧
( ‥)かようにチョウチンアンコウの
    雄は雌に寄生すると
    脳も心臓も鰓も眼もなくすとは
    間違いなのである
 
  (‥ )でも一般的にはこういう
      言説がまかり通って
      いるのだよな
 
 実際、以上の解説を聞いても、誰も考えを改めないであろう?
 
 眼は退化する。
 
 雌と一体化する。

 脳は必要ない。
 
 心臓も鰓も本来は必要ない。
 
 消化器官を事実上、失い、発達するのは精巣、すなわち睾丸、キンタマのみ
 
 この事実をおおまかに翻訳したのが、

 チョウチンアンコウの雄は雌に寄生すると眼も脳も心臓も鰓もうしなってキンタマのみなる、という言説なのだ。
 
 ∧∧
( ‥)でもこの翻訳は間違っている
    近似解ですらない
 
  (‥ )だけどこれを皆は
      近似解だとみなすんだよ
 
 ガンダムに興味のない人間は、アムロは強化人間でエスパーで名パイロットで戦争の英雄である、という話で理解するだろう。ニュータイプだの宇宙における人の可能性だの、過剰な機械オタクで軍事兵器を即座に動かせる引きこもり気味の異能者だとはいちいち理解しないであろう。
 
 ∧∧
(‥ )私たちの理解はこういう
\−  雑で歪んだ把握で
    構成されていて
    正しい部分などほとんど
    ないのである
 
  (‥ )そしてもっとましな理解を
      提示されても
      頑として
      それを受け入れないのだ
 
 我々の理解はことごく間違っている。そしてもっとましな理解を見てもめんどくさいから拒否する。そういうガラクタで我らの認識は構成されている。これを直視しなければならぬ。
    
 
 ∧∧
( ‥)つまり物書きとは
    意図的なガラクタ売りに
    なることなのである
 
  ( ‥)困った事態だねー
    −/
 
 チョウチンアンコウなんてそんな浮世離れした話題だから理解がいい加減なんだよ、とか言ってはいけない。原発がぱーんして、世の中がパニックになったとか言っている時でさえ、図書館には放射線医学の本がそのまま残り、貸し出されたのはどうでもいいトンデモ本だったのだ。命が心配だと自称する時でさえ理解に手を抜く。それが我々であった。
 
 理解したいなどという言葉を信用してはいけない。理解したいのです、などというやからはただの嘘つきである。
 
 
 
  

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