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2016年5月19日木曜日

勇者は酒盛りを開始した

 
これの続き=>hilihiliのhilihili: 啓蒙入力万事解決! はあくまで娯楽
 
 ∧∧
(‥ )「チムール帝国紀行」を読むと
\−   スペイン使節のクラヴィホさん
     サマルカンドでは
     ティムールさんと
     延々と宴会だよね
 
 
  (‥ )夏のイランを必死で踏破して
      4名が(熱中症で?)
      死んでいて
      命からがら
      ようやくサマルカンドに
      ついたら
      今度はそこで延々と
      宴会漬けにされるのだよな
 
 さっきまで飲み水にも事欠いて仲間も死んでいくような場面だったのに、首都についたら一転、食い物と酒の話が延々と続く。
 
 もちろん、サマルカンドの様子やしきたり、ティムール帝国の人々がどれだけ巨大で豪華な移動式テントを持っているか、ティムールがどれだけ建築に情熱を傾けたのかも語られるのだが。
 
 ∧∧
(‥ )でもこのすさまじい宴会ぶりは
\−  ただごとじゃないですよね
    一人では運べぬ皿に
    もられた様々な肉
    そして盃の馬乳
    大宴会では
    肉を荷車に乗せて運び入れ
    酒をふんだんにふるまい
    馬や羊の丸焼きや
    お菓子や果物が
    ぞくぞくと用意される
 
  (‥ )しきたりとかあるし
      お遊びじゃないけど
      わー
      なんか俺も参加してー
      思わせるものだね
 
 宴会というと、最近は上司の愚痴につきあわされる飲みニケーションと揶揄されるけども、この宴会では、客は酔っぱらい楽しむことが求められる。

 まあ、酒をがんがん飲まないといけない、というのはどこの世界でも同じなんだけど。
 
 ∧∧
( ‥)でもこういう宴会はどうも
    接待というか
    社交儀礼のような感じ
 
  (‥ )実際、
      主であるティムールは
      最後まで残ったりする
      わけだしなあ
 
 王者ティムールの年齢はもう70近く。毎日のように各国の使節や国内の有力者、貴族たち、様々な人々を招いて宴会である。こう考えると、これはなかなか厳しい社交儀礼だ。実際、スペイン使節クラヴィホたちが訪れてしばらく後、彼は亡くなるのである。
 
 まあ、節制して長生きするよりは良い人生かもしれぬ。
 
 しかしそれはともかくとして
 
 ∧∧
(‥ )異世界に転生したら
\−  宴会を延々と開催しなければ
    いけなくなった勇者とか
    あまり聞きませんね
 
  (‥ )あるにしても
      聞いたことねえな
 
 異世界にいって主人公が活躍する。それが近年のはやりのものであれ、あるいは一昔前のSFであれ、あるいはさらにそれ以前の植民地や未開の地で白人が大活躍する話であれ、異世界を訪れた主人公は現代文明とその文化のすばらしさを説き、人々を啓蒙し導こうとする。
 
 ∧∧
( ‥)つまるところあれですか?
   ティムール帝国に転生したら
    宴会文化は野蛮ですとか
    勇者が言い出すんですか?
    辛気くさいやつですな
 
  (‥ )そう考えるとさ
      異世界転生
     (非常に広い意味で)が
      どれだけ傲慢で
      すかしてるか
      良くわかるよな
 
 そして、そんな啓蒙なんて事が出来るわけないこと、以上の宴会を見れば明白であろう。
 
 ∧∧
(‥ )宴会で歓待するがしきたりなら
\−  それをしなかったら失礼だし
    禁止したら人望は失墜し
    反乱でしょうなあ
 
  (‥ )紀行文を読んでると
      宴会で富を誇示したり
      宴会で序列を示したり
      宴会で貨幣をばらまいて
      富を還元したり
      そういうことをしている
      みたいなんだよね
      これを禁止したら
      大混乱だろうな
 
 毎日宴会なんか馬鹿げています!
 
 ティムール帝国で勇者がそう主張するとしたら、それはおおいに滑稽であろう。
 
 だが、実のところ異世界転生小説(非常に広い意味で)の傲慢さとはここにある。
 
 そしてこう考えれば、文化的啓蒙なんてことが出来ないこと、明白だ。
 
 アメリカがイラク統治に失敗したことだって、根っこはこれと同じことである。
 
 
 ∧∧
(‥ )でも反対に転生したら
\−  そういう文化に
    すっかり染まっちゃって
    延々と宴会している勇者
    というのはちょっと
    見てみたいですね
 
  (‥ )ティムールも最初は
      部下数人だけの
      下っ端武士だったけど
      盗みや略奪で獲物を
      捕まえて
      それを食べて酒盛りして
      手に入れたものは
      みんなで分けて
      人のあしらいがよくて
      それで人が集まってきて
      大集団になって
      ついに帝国を築くわけよな

 
 そういえばチムール帝国紀行には、この国のしきたり通りに酒を飲むスペイン使節たちに対し、ティムールが気をきかせるという場面が出てくる。使節たちにある庭園にいくように命じ、そこに料理と酒を運ばせる。ここで自分たちの作法で、好きなように、飲み、かつ、食べよと。
 
 ∧∧
( ‥)あらティムールさん
    首の塔を作る一方で
    意外と配慮してくださる
 
  (‥ )酒盛りで人のあしらいが
      うまくて
      徒手空拳から成り上がった
      大帝国の創始者とは
      こういうものかもな
 
 以上を考えると、ティムールが死ぬほんの少し前まで宴会三昧だった、というのは当然のことなんだろう。それで命をわずかに縮めたにしても、それは単に必然の代償で、代わりに帝国を手に入れた、そういうことなのだろう。
 
 ∧∧
( ‥)というかティムールさん
    まんま勇者じゃないですか
 
  (‥ )後に皇帝になるんだけど
      異世界に転生した当初は
      泥棒して酒盛りしてる
      勇者ってのが
      本来のあるべき姿なのな
 
 
    
 

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