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2014年3月13日木曜日

誰かがあの歪みを引き受けたはずだが

 
 去年は上野の国立科学博物館で深海展があった。
 
 ∧∧
(‥ )だから去年2013年には
\‐  深海の本を書いてくれという
    依頼が2件あったよね
    ただ、どちらも〆切が今年
    2014年の1月、2月
    だった
 
  (‥ )とてもじゃないが
      そんな時間なくてな
      状況を話したら2件とも
 
 ....ああ、それでは残念、無理ですね。
 
 となった
 
 ∧∧
(‥ )スケジュールがあまりに
\‐  厳しい案件もありましたよね
 
  (‥ )すでに3ヶ月を
      切っていてな
 
 一冊の本を作るのに3ヶ月以下はきつい。
 
 週刊連載漫画でさえ年間4冊の単行本分の原稿を作るのが精一杯。つまり3ヶ月で一冊であることを考えればこれは明白だ。
 
 ∧∧
( ‥)でも、あなたは困っている
    相手に言ったのです
    可能であると
 
  ( ‥)深海生物の本の売りは
    ‐□ 写真でな
      原稿なんかどーでも
      良いんだよ
 
 今はどうだか知らないが、数年前は白黒写真のパルプな単行本でも売れたのである。
 
 このように写真第一、説明第二となれば話は簡単だ。
 
 ∧∧
( ‥)写真をそろえる
    写真を大きく使う
 
  (‥ )後はな、
      300文字程度の
      説明文をそえれば
      充分なわけよ
 
 分類、大きさ、分布、深度、体の特徴、生態について分かっているわずかな事柄、これだけあれば300文字なんて稼ぐのは容易だ。
 
 要するにである、深海生物の本なんか馬鹿でも書けるのだ。書けないなら死ねよお前、と言って良いほどに容易なレベル。
 
 ∧∧
(‥ )だから誰でもいいから
\‐  ライターに頼めば
    3ヶ月あれば出来るっしょ
    そういうことを相手に
    言うわけだ
 
  (‥ )それは無理っしょ
      と言うわけには
      いかんし
      仕事断るなら
      可能な手を相手に
      伝えるのはありだろ
      実際、可能だしな
 
 ただ、この手にはどうも落とし穴があるらしい。
 
 あれから三ヶ月以上が経過した先日、知り合いの編集者にこの話をしたところ
 
 ∧∧
( ‥)問題がある
    深海生物の本は限られて
    いるから、僕なら怖いと
 
  ( ‥)確かになあ..
    ‐□ それは盲点だったな
 
 科学の本は引用で出来ている。ものすごい悪い言い方をすると、あるいは創作100パーセントでなければならない小説などの立場から見ると、科学の本はパクリから錬成されていると言っても良い。
 
 ∧∧
( ‥)問題はですよ、
    パクリと表現しようが
    引用であろうが
    引用すべき本の数が少ないと
    まんまコピーに
    なっちゃうことだよね

 
  ( ‥)昆虫とか鳥、魚
    ‐□ 爬虫類や哺乳類だと
      この問題は起きないんだ
 
 情報が多い分野であれば引用先も多い。1をまるまる引用するとパクリそのものだが、100を引用して1を作ればオリジナルだ。
 
 ∧∧
( ‥)深海生物それできなーい
 
  ( ‥)文章を極力減らしても
    ‐□ むしろ基本だけになるから
      まったく同じになっちゃう
      だろうね
 
 つまり、確かに、先の編集者が危惧する通りの事態になる。
 
 オリジナルの情報はほとんどない
 この状況で水増しすると間違いが起こる
 間違いをなくして文章をかせぐには感想文にするしかない
 だが、それはそれが許される場合に限る
 
 ∧∧
(‥ )それでも真面目な本にするには
\‐  もろパクリをするしかない
    しかし
    いくら仕事でもそんなことが
    果たして出来るか?
 
  (‥ )仕事と割り切って
      プライドなりなんなり
      捨てるしかないだろうな
 
 だがしかし、物書きにとって、これは、辛い。
 
 物書きってのは本来、出力したいことがあるから物書きなんぞしているのだ、それを放棄してまるパクリせよ、とは

 心か、感性か、どちらかが、あるいは両方がきしんで潰れる。
 
 ∧∧
( ‥)すると、深海生物の本を
    作るのは意外と難しい?
 
  ( ‥)まあ、何事もそんな楽な
    ‐□ 仕事はないってことかな
 
 ∧∧
( ‥)あなたの次の本はどうよ?
    本は製本されて
    手元に届いたよね
 
  ( ‥)んー 絵をデータ化した後
    ‐□ レイヤーを複数重ねる
       べきだったかもしれん
 
 ∧∧
(‥ )絵の腕を上げるべきじゃね?
\‐
 
  (‥ )何事も色々と
      困難にぶつかるもんだな
 
 ∧∧
( ‥)なんと?
 
  (‥ )是正すりゃ良いんだろ?
      それだけの話だな
 
 話を戻せば、三ヶ月以上前のあの本と企画、さて、どうなっただろうか?
 
 ∧∧
(‥ )下請けに該当する
\‐   編集プロダクションに
     丸投げの企画でしたっけ...
 
  (‥ )そういうやり方は
      人件費を下げられるが
      本社=>下請けと
      間接的、かつ
      余計な手順が入るから
      作業が遅れる
      〆切がきつくなるんだよな
 
 
 誰かがこの歪みを引き受けたはずだが、どうなったことやら。
 
     
 

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