自己紹介

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2014年1月28日火曜日

透明な部屋が喧噪に包まれる

 
 核燃料は確率的に崩壊してアルファ粒子を放出し、安定した状態へと移行していく。
 
 ∧∧
( ‥)だが、ごくまれに原子核が
    ほぼ二分裂する場合がある
 
  ( ‥)大きな水滴が不安定で
    ‐□ あるように
      大きな水滴が雫を
      飛ばして安定するように
      だがごくまれに
      水滴が割れるように
      原子核はそのように
      振る舞い、
      現象は起こるのだ
 
 二分裂した原子核は、構成物であった中性子を幾つか放出する。
 
 ∧∧
( ‥)さらにごくごくまれに
    放出された中性子が
    他の原子核に吸収されて
    次の核分裂を引き起こす
    場合がある
 
  (‥ )だがそんなことは
      ごくまれだ。
 
 中性子にとって世界はガラスのように透明でわずかな曇りがあるだけだ。彼らはすべてを通過してしまう。
 
 だが、中性子の衝突。その可能性を引き上げる方法がある。中性子を減速させれば良い。
 
 物体は極微の世界では波としての性質を持っている。減速した中性子は見た目が”大きくなり”、他の原子核と相互作用する確率が高くなる。
 
 ∧∧
( ‥)減速させるには軽い原子を
    使えば良い
 
  (‥ )大きな壁にボールを
      当てても勢い良く
      跳ね返るが
      バスケットボールに
      ボールを当てれば
      相手は動き、その分、
      ボールは減速する
 
 核分裂の連鎖反応を引き起こすには水を使うか炭素を使えば良い。西側世界は水を選んだ。ウラン燃料の核分裂が暴走しても、高温で水が蒸発すれば中性子の減速は行われなくなり、暴走が自動的に終息するからだ。
 
 ∧∧
( ‥)まあ、分裂で出来た
    燃えかすが自然崩壊するから
    熱は急速に冷めつつも
    ずっと発熱するけどね
 
  ( ‥)東側は水ではなく
    ‐□ 炭素を選んだ
      炭素は蒸発しないし
      燃えるから、
      いざ暴走した
      チェルノブイリは
      原子炉がむき出しのまま
      ぼーぼー燃えた
      まあ、これは別の話だな
 
 条件が整うと分裂で生じた中性子は次の分裂を産み、それで発生した中性子が次の分裂を産む事になる。それでもほとんどの場合、中性子は燃料を通過して何の反応も引き起こさない。世界は相変わらず透明だ。だが減速によってわずかな曇りが出来た世界では、数が多ければ分裂が分裂を産み、状況は以前とは異なるフェーズへ移行する。
 
 次々に起こる持続的な連鎖反応。
 
  (‥ )これが臨界だ
 
 ∧∧
( ‥)でっ? この例え話から
    何を?
 
 ネットの案件を見て不快感や許せないという感情を持つ人がいても、それだけでは何も起きない。その人が「私は許せません」と大声を上げても、誰も聞いちゃいない。
 
 声は素通りだ。
 
 世界は声に対して透明だ。
 
 だから一部の人々は思い込んだ。ここではなにをしゃべっても良いのだ。ここでは自由なのだ、そう思い込んだ。
 
 事実、調子に乗っておちょくっても、何も起きない。
 
 誰かが自分の声に許せません!と大声を上げて反応しても、その声は時には次の反応を引き起こすが、それだけだった。
 
 広く広大な部屋で遠くの壁にむかって叫ぶようなむなしさと爽快感。世界はまるで透明。はてしなく透明。
 
 ∧∧
( ‥)時には誰かが声を返し
    2、3人の反応を引き起こす
    その時、初めて気づく。
    こんなところに声を返す
    壁があったのか、と
 
  ( ‥)実際には壁も
    ‐□ 反応する存在も
      最初からそこにあるのだ
  
 反応しないから、一見すると透明に見えていただけだ。
 
 だがそれはそこにある。
 
 ある時、同じようにすると、反応が5つ現れる。それは2、3人ではなく、10人の反応を引き起こす。その声はただちに透明な世界へ拡散して雲散霧消してしまうが、それでも消え去る前に20人の反応を引き起こす。40人、80人、160人、320、640、1280…
 
 突如、それまで自分の声にまったく無関心で透明だったはずの世界が、反響し増幅を続ける声と壁と喧噪と騒音に包まれる。
 
 ∧∧
( ‥)臨界だ。
 
  (‥ )世界は別のフェーズへ
      移行するのだ
 
 時に人はいわく。ネットの創成期はもっと静かだった、こんなことはなかったと。
 
 ああ、それはそうだろう。だが、それは最初からそこにあったのだ。
 
 ∧∧
( ‥)ただ、量が一定数を越えたとき
    臨界が発生する
 
  (‥ )我らついに、
      次なるフェーズへの移行に
      成功せり
 
 全員、望んでもいないのに、いつの間にかここへ来てしまった。いつ臨界が起こるか分からない、自分にまったく無関心で他人にまったく興味のない、茫漠とした透明な広い広い世界。
 
 だがこの世界にはわずかな曇りがあり、すべてがそこにある。そして条件さえ満たせば、透き通った世界が突如として臨界し、燃え上がる。
 
 
   

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