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2014年1月20日月曜日

ビッグブラザー(女の子)

 
 声優さんでもアイドルでも、彼氏がいたことが分かったり、あるいは結婚すると取り乱す人がいる。
 
 ∧∧
( ‥)まあ、ファンってのは
    そういうものですかね?
 
  (‥ )ビッグブラザーの
      ようなわけには
      いかないのかね?
 
 必要なのは、二重思考、そして犯罪停止だ。
 
 ∧∧
( ‥)二重思考とは矛盾する事柄を
    脳内で並列させて扱うこと
    虚偽を本当といい
    本当を虚偽だと信じ込む
 
  (‥ )犯罪停止とは思想犯罪を
      自動的に停止する
      思考のこと
      例えば、
      虚偽を虚偽と暴露する
      この行為は思想犯罪で
      あるとみなされるだろう
      そう認識した瞬間に
      その行為を思考すること
      それ自体を
      自主的に停止すること
 
 
 犯罪停止は思想犯罪と表裏一体だ。思想犯罪を認識しないと犯罪停止はできない。
 
 ∧∧
( ‥)犯罪停止には思想犯罪そのものが
    必要である
    思想犯罪と犯罪停止を同時に
    行わなければ、犯罪停止は
    完全には機能しない
    そしてそれには
    二重思考が必要だ
 
  (‥ )これは虚偽だから真なり
      これは本当であるから
      虚偽である。
      二重思考とは
      そういうものだ
 
 だからその世界におけるスミスはある時、逮捕されるのである。
 
 理由は明白だ。
 
 ビッグブラザー(この世界では女の子)が結婚してしまった、スミスがそう”信じ込んだ”からに他ならない。
 
 なんという許されざる大罪か!?
 
 ∧∧
( ‥)さあ、泣く子も黙る愛情省へ
    連行だー!
 
  ( ‥)101号室に連行だー!
 
 尋問に当たったオブライエンはスミスの病気を解説するのである。君はビッグブラザーが好きだった。彼女が出演する番組、ラジオ、声を当てたアニメ、そのDVD、彼女の歌声、キャラクターソング、金をつぎ込み、楽しみ、仲間との会話で口にして...
 
 だがビッグブラザーを愛して止まない君はある妄想を抱いた。
 
 ∧∧
( ‥)君には寝取られ属性があるね
 
  ( ‥)スミスには寝取られ属性が
      あったのだ
 
 愛する彼女が別の男に寝取られる。その衝撃に脳神経がノックアウトされてしまい、パンチドランカーのごとく麻痺して、さらに興奮してしまう者がいる。そういう同人誌があることも知っていよう。もちろん我々も知っている。というか、君が大切にしているあの同人誌は私が描いたものだ。許しがたい趣味かね? だけどね、あれは単なる虚偽、作られたお話でしかない。
 
 だが、君はいつの間にかそれを信じ込んだ。同人誌から得た妄想は肥大化し、彼女が演じるキャラクターを飛び越えて、ついに君はビッグブラザー(女の子)本人があろうことか結婚した、その記事をネットで確かに見た、ラジオで聞いた、彼女を寝取られた、そう思い込んだのだ。
 
 ∧∧
( ‥)それは思想犯罪だ
 
 
  (‥ )思想犯罪は万死に値する
      だが死ぬ前に、
      異端者は本心から悔い改め
      自分の間違いを認識し
      思考を改め、
      己から死を懇願せねば
      ならぬのだ
 
 異端者を異端者のまま殺す事などしない。異端者は同化され、それから処刑されるのだ。
 
 異端者であるお前は我々にされてから消去されるのだ。
 
 スミスの病気は癒される。それが愛情省の仕事だ。薬物と暴力により彼の心は真っ白に漂白される。だから彼は自分の過ちに気づく。彼は自分の妄想が思想犯罪であることを認識し、自分の病気を直そうと必死に抗う。スミスを尋問するオブライエンは別に処刑人でもないし、拷問官でもない。彼はスミスの心の病気を癒す医者であり、看護婦であり、生まれでる新しいスミスを取り上げる助産婦だ。
 
 そうして二重思考を身につけ、己の非と”妄想”をしっかりと認識したスミスは悔い改めることになるのだ。
 
 ∧∧
( ‥)でも処刑の前に通過儀礼が
    あるよ
 
  ( ‥)公開裁判、大粛清だー!
 
 犯罪人は裁判の被告席に立たねばならない。ビッグブラザーが結婚したなどという”認識”をただの一度でもしてしまった不埒者は、いかに悔い改めても、その罪から逃れる事は出来ぬ。
 
 否! 悔い改めているからこそ罪を認め、その醜態を世界にさらさなければならぬ。それがただの一度でも彼女に恋した者の勤めではないのか? そして誰でも良いからかたっぱしから共犯者を名指ししなければならぬ。告発する相手は友人であろうが同僚であろうが親であろうがどうでもいい。それが世の理というものだ。連座するもの数百名。そのことごとくをくびり殺す大粛清。
 
 ∧∧
(‥ )さあ、最後は愛情省の
    真っ白な廊下で銃殺だ
 
  (‥ )壁を覆う、永遠の17歳
      ビッグブラザーの巨大な
      ブロマイドを見上げながら
      背後から頭蓋を銃弾で
      撃ち抜かれるのだ
      一度でも彼女をうたがった
      信徒に対する、これは
      大いなる慈悲。
 
 彼は、歓喜の涙を流し、幸せに抱かれながら死ぬだろう。
 
 
 ∧∧
(‥ )でっ、結婚なさった
\‐  ビッグブラザーはいつ産休に
    入るのですかね?
 
  (‥ )さあ? 
 
 永遠の17歳はたとえ人妻になって娘が17歳になっても17歳のままであろう。それがビッグブラザーというものであり、彼女は永遠なる不死。彼女が死ぬ事はなく、あり得ないことだが、たとえ死んだとしても次の彼女が現れるだろう。そしてそれを支えるものこそ二重思考なり。
 
 
 
 

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