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2017年1月18日水曜日

フィクションとデマを見れば皆の世界観が分かる

 
 人間は小学校で学んだ程度の教養しかないし、それ以上のことは分からないし、知らないし、理解できない。
 
 ∧∧
(‥ )先日は夕暮れの空に輝く
\−   金星の話をしましたよね
 
  (‥ )今、金星は内側から
      地球を追い抜こうと
      こっちへ向かってくる
      途中であるな
 
 惑星は太陽を中心に同心円の軌道を動いている。そして外側のものほど歩みは遅い。これは同心円状のトラックを思い浮かべれば分かりやすい。内側のトラックを自分よりも速く走る相手は、私たちから見ると、トラックの中心を左右に行き来するように見えるはずだ。中心は太陽であり、そして第一コーナーを回った金星は、これから私たちに追いついて、そして追い抜こうとしている。
 
 ∧∧
(‥ )でもこれが全然分からないし
\−  話が通じない
 
  (‥ )図を描いたり
     イメージを思い浮かべれば
     一目瞭然なんだけどな
     これができぬのよね
 
 金星の動きは単純なものだが、月の動きと満ち欠けとなると理解はさらに悪化する。
 
 ∧∧
(‥ )学校で習わないか
\−  習っても忘れちゃうような
    分野のものだよね
 
  (‥ )天体の運行は
      時間と暦のように
      現実把握の基礎だけども
      時間と暦はすでに
      確立しているから
      そこは省略して
      社会生活を送る上で
      より訓練が必要な分野に
      教育の重点が
      置かれているからな

 そうして人間は社会生活を送れるように訓練されたが、現実把握にはまるで不十分な知識と理解だけで放り出されることとなった。
 
 ∧∧
( ‥)天体の運行というかなり
    単純な系ですら
    この有様であるから
    より複雑な系の理解は
    まったく不可能に陥っている
 
  ( ‥)創作とかデマとかを
    −/ 観察すると
       それが良くわかるな
 
 例えば人間は自然淘汰に即座に対応できるよう、膨大な量の変異を蓄積する仕組みを持っている。もちろんこれは別に人類の専売特許ではない。雌雄のある生物はすべてそうだ。
 
 ∧∧
(‥ )結果的に致死に至るような
\−  有害遺伝子まで蓄積して
    しかも飽和状態に
    なっている
 
  (‥ )進化というのは
      そういうものだな
      進化において個体とは
      演算の素子でしかないから
      個体が死のうが苦しもうが
      そんなことまったく
      考慮してくれない
 
 ともあれ、これゆえに人間を含めて有性生殖を行う生物は環境の変化に従う自然淘汰の変動に即座に対応できるようになった。
 
 ∧∧
( ‥)でもこういう進化論の基礎は
    ほとんど誰も知っていない
 
  ( ‥)そういうのは
    −/ フィクションやデマを
      見れば良くわかる
 
 それらは以前、何度も取り上げたものである。
 
 例えば銀河英雄伝説で暴君ルドルフ皇帝は劣悪遺伝子排除法を制定する。これは人類は有害遺伝子ですでに飽和していることを考えると実現不可能な法律と設定であるし、このことから作者も読者も、自分たちが致死に至るものも含めて有害遺伝子を自分の細胞に持っているということを知らないことが分かる。
 
 例えば、人間の生存戦略は弱者保護による有害遺伝子の蓄積にある、という名言。実際のところこれはたわ言というか悪質なデマと言うべきものだが、この”名言”はネットの人々から知性の勝利であるとたたえられた。これもまた、このデマを語った人もたたえた人も、自分たちがすでに有害遺伝子で飽和していることを知らないことを示している。
 
 あるいはこうである、ナウシカの原作において、ナウシカは地球浄化計画を破棄する。その選択肢は汚染された地球に適応するように遺伝子改造された自分たちが、浄化の後、絶滅しうる可能性をも踏まえた賭けだった。この賭けとその可能性をナウシカは恐怖するし、読者もまた無責任であると批判する。
 
 これもまた以上を踏まえれば正しくない、ただの杞憂だ。別にこんな程度で人類は滅びない。人類は浄化後の世界に、即座に進化適応するだけだろう。
 
 だがそうは皆、受け取らなかった。

 ということはやはりナウシカも同様である。作者も読者も自分たちが有害遺伝子に飽和しているということを理解していなかったのだ。
 
 かようにフィクションやデマを見れば、世の人が、自分たちの細胞は有害遺伝子ですでに飽和状態であるということを知らぬことは明白だ。
 
 ∧∧
(‥ )そして困ったことに
\−   人間は有害遺伝子ですでに
     飽和しているという
     この単純な事実こそが
     進化論理解の鍵なのである
 
  (‥ )だからまずここから
      理解してもらわないと
      困るのだがな
      ところが理解が一歩も
      進まぬのだ
 
 まるでどんよりとした霧に向かって話しかけているような感覚だ。世の人はなにかこう、夢を見ているだけで、目を閉じ、ぼんやりと歩いているだけのように見える。
 
 ∧∧
( ‥)実際には
    そのどんよりさの
    動機は単純で
    カロリーを馬鹿食いする
    脳の活動を最小限に
    抑えたいだけなのでしょうな
    金にならないことには
    興味を持たない
 
  ( ‥)現状最善とされる仮説を
    −/ 紹介するというのは
       こういう人たちに
       本を売る作業なわけで
 
 ∧∧
( ‥)無茶だね
 
  (‥ )その無茶を実現せねば
      ならぬのであるよ?  
 
 さて? フィクションやデマを見れば明らかなように、人間は理解のための基本を知らぬし、興味も持たぬし、むしろ積極的に拒絶しているように見える。

 だがそれでも売るにはどうしたら良いか? これが解かれるべき課題であった。
 
 当然と言えば当然なのだが、この課題を解いた人間は事実上、存在しないようである。
 
 
 
 
  

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