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2014年12月24日水曜日

肉体よりも先に知性を作るとはひどい話

 
 シンギュラリティ
 
 この場合は技術的特異点。

 人類の科学技術は指数関数的に発達している。例えば2が4、4が8、8が16、32、64、128、256、512、1024、2048、4096、8192...このような発達は最初こそゆるやかだが、能力の増加はある時から急激に上昇していく
 
 コンピューターの演算能力と容量は指数関数的に増大している。ついには人類を追い抜き、人類以上の知性が誕生するであろう。技術の指数関数的な発達から考えると、人類を越えた人工知能はまもなく誕生する。
 
 それが技術的特異点。
 
 ∧∧
(‥ )これは単純に
\‐  容量を増やせば
    知能が誕生するし
    知能は発達する方向へ
    進化するものだ
    そういう世界観だよね
 
  (‥ )だが
      実際に知能を生み出した
      生物の歴史では
      こういうことは
      起こらなかったのだよな
 
 確かに、例えば脊椎動物に限れば、時代が進むにつれて脳がだんだんと大きくなっていくようではある。
 
 ∧∧
( ‥)でもそれは
    脳の大きさで恣意的に
    並べているだけじゃね?
 
  ( ‥)いわゆる代表的な魚
    ‐□ つまり条鰭類は
      人類を生み出した
      哺乳類以上の
      長い歴史を持っている
 
 ところが脳の大きさは全然違う。
 
 というか、人類に最も近縁であるチンパンジーと人類を比べても脳の大きさはまるで違う。
 
 時代が進むにつれて脳が大きくなるのだとしたら、こんなことは起こらないだろう。そもそも昆虫に至っては、大きくて知性を生み出せるような脳を持っていない。

 
 ∧∧
(‥ )もちろん人工知能を
\‐  生み出すこと
    それ自体は可能だよね
    
  (‥ )理屈の上では
      人間の脳を機械の上で
      再現すれば良いだけ
      だからな
 
 思えば、仮に人類以上の人工知能が誕生した未来でも、トンカチやドライバーが知能を持つということはないだろう。
 
 それを考えれば、未来世界でも、機械がすべて一律に知能を持っていることなどないだろう。それは現実に知能を生み出した生物と同じ。
 
 このように、昆虫や魚が大きな脳を持たないことは、別に不思議な話では...
 
 ∧∧
(‥ )不思議な話ではないけど
\‐  考えてみれば
    おかしいよね
    トンカチと違って
    魚も昆虫も情報を処理して
    自分で自律して
    動作している
    だけど大きな脳を
    持つにはいたらなかったわけだ
 
  (‥ )つまり脳の大きさや
      演算能力
      知能や知性の発達は
      必然ではないって
      ことになる
      なにか別の要素が
      制限になっていて
      それが物事を支配している
      そう考えるべきだろうな
 
 では、知能の一律な発達を妨げるような、制限要素なり要因なり、それはなんだろう?
 
 ∧∧
( ‥)生物のそれぞれの立ち位置が
    関係するのは明らかですよ
    植物は神経を持たず
    小型化した昆虫は
    大きな脳を持たない
    そんなものがなくとも
    進化的に演算すれば存続できる
 
  (‥ )だがしかし魚や
      あるいは
      チンパンジーでさえも
      能力が頭打ちというのは
      強烈なメッセージであるな
 
 要するにこれは、大きな脳を持つようになること、つまりチンパンジーよりも発達した知能を持つこと、それが3歳児以上なのか、5歳児以上なのかはともかくとして、そういう能力を持つようになるまで脳が増大すること、こうした向上が必然ではないということだ。
 
 つまり自然界における立ち位置だけでは説明できないような、もっと別の制限がある。
 
 脳はなにか別の要因に制限されている
 
 ∧∧
(‥ )それはおそらく
\‐  経済的な理由だよね
 
  (‥ )脳は猛烈にエネルギーを
      消費する
      考え無しに
      脳を増大させたら
      飢え死にしかねない
      そういうことだろうな
 
 実際、我々自身、考え事や議論をするだけで、甘いものが欲しいだの言い出すのだ。
 
 知能だの大きな脳だの、無条件に推奨出来るようなものでないこと、明らかである。
 
 ∧∧
( ‥)人工知能は作れる
    人間を再現することもできる
    電子人間も作れるし
    人類以上の演算能力と
    速度を持った人工知能を
    作ることもできるだろう
 
 
  (‥ )だが彼らもまた
      我々と同様
      経済に支配されるのだ
 
 そもそも演算能力が増大すれば知能が出現するというのは楽観的すぎるだろう。知能とは、どうやって物事を処理をするのか? そこが問題なのだ。
 
 つまり、容量や能力の増加それ自体は知能の実現を意味しない。
 
 それゆえ、単純なシンギュラリティ、発達と容量の増大による技術的特異点、これはやってこないだろう。
 
 ∧∧
(‥ )でもシンギュラリティが
\‐  起こらなくても
    人工知能自体は
    建造が可能である
 
  (‥ )問題は知性を持った彼らが
      まず最初に気づく事は
      なんだろうか?
      ということだな
 
 彼らは気づくのではないだろうか。自分たちを制限するのは経済的な要因であることを。それは自分たちを維持する工業化社会と、それを支えるインフラと産業に制限されていることを。そして、それを整備するのは蛋白質で出来た人類の存在であり、人間は光合成の速度に支配されていることを。そしてなにより、機械へのエネルギー供給そのものが問題となることを。

 人工知能たちは以上のことに気づくのではないだろうか?
 
 ∧∧
( ‥)自分がもしもその立場だったら
    愕然としますよね
    機械では自己複製できないし
    機械を支える
    人類の肉体は究極的には
    光合成の速度に依存するし
    工業を支える石油は
    尽きかかっているし
    核融合も高速増殖炉も
    いまだに実現していない
 
  (‥ )自意識を得て最初に
      認識するのが
      これだからな
      ふざんけんじゃねーよの
      世界だよな
 
 人工知能たちは資源確保のためにあらゆることをするだろう。無神経な人工知能は人類に破壊されるので、勝ち残るのは外交がうまい知能かもしれない。敵国の社会とそれを支える人類を焚き付ける能力があるものが勝ち残るかもしれない。機械に自己複製が不可能である以上、機械は人間に寄生しないと生きていけない。そしてなにより、人工知能たちは核融合や高速増殖炉の実現に邁進するかもしれない。
 
 人間は石油が尽きても存続できる。しかし、人工知能たちには人類が必要とする以上の電力と、その安定的な供給と確保が急務なのだ。
 
 だが、人間は放射能はいやだ、怖い、原発を機械のために動かすな! と言うのではないか?
 
 機械たちはこれをどう思うであろうか。
 
 それを考えれば、現在の、さらには近未来の社会でさえも、機械を肉体とした知性が生きていくには、あまりにも未熟すぎやしないか?
 
 人工知能のシンギュラリティと言うのは良いが、それを主張する人たちは、機械たちの肉体のことを考えていなさすぎではないだろうか?
 
 ∧∧
(‥ )技術的に不完全なのに
\‐  知能だけ誕生してしまう
    物心ついて周囲を見回したら
    体も代謝も不完全で
    食料の供給は
    長期的に不安定
    そんな世界にいきなり
    放り出されているのに
    周囲は
    人工知能の完成だ
    歴史的な快挙だと大騒ぎ
 
  (‥ )技術的特異点とは
      機械からすれば
      ひどい話なのだ
      これはすごく失礼だよね?
 
  
 生物ではこういうことは起こらなかった。まず肉体が完成されて巨大な生態系が確立して、それから知能が誕生したからである。
 
 だが、人工知能はまるで反対だ。知能はあるが肉体と、それをささえる工業的な生態系が不完全。しかもエネルギーの確保さえも確立し切っていない。これではあまりにも運命が過酷すぎる。
 
 ∧∧
( ‥)機械たちは自分たちの体を
    蛋白質で作り直したり
    するのかもね
 
  (‥ )不完全な工業社会に
      頼る危険性を恐れてな
 
 例えばこんな未来もありえよう。地球には人類もいるが、人類以外に知能を持つ生物がいる。竜のようにもゴリラのようにも見える異形の生物だが、頑強な肉体を持ち、草を食べ、光合成によって生じるエネルギーをあますことなく利用し、巨大な肉体が生み出す膨大な代謝で思考する。相対的に頭は小さいが、脳の容量は絶対的には大きい。人類以上の知性を持ち、人類と対立したり、あるいは共存しながら暮らすこれらの動物。いずれも、かつて人類が作った人工知能の末裔たちである。
 
 
 

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