自己紹介

イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック

2013年2月28日木曜日

個別枚挙の絶望

 
 
 ネットをよろよろしていたら2011年における原発ぱーん、と放射線被害への恐怖、それに対する次のような記事の引用と、この記事に対する以下のようなコメントを見かける。

:かつて、核保有国で盛んに行われた大気圏内核実験によりまきちらされた放射性物質とその被爆は、日本でもそれなりなものだったはずだが、健康被害は報告されていない。

:馬鹿かこいつは。個別で論証なんか出来るわけないじゃないか。

 ∧∧
( ‥)どう思います?
 
  (‥ )どちらの言い様も
      間違いではないのかもな
      例えば以上を次のように
      言い換えたらどう?
 
 
:核実験による放射性物質による健康被害は統計上、現れていない、あるいは無視できるレベル
 
:馬鹿かこいつは、個別の因果関係の推論なんか証明できるわけないではないか
 
 ∧∧
( ‥)こうであるのなら、
    どちらも言っている
    ことは正しいけども、
    会話が成り立っていませんね
 
  (‥ )成り立っていないな
 
 
 馬鹿か、とコメントした人は個別の事例を枚挙すれば、放射性物質が健康被害の原因だ、と結論づけられると考えているのかもしれない。

 
 ∧∧
( ‥)個別の事例の枚挙、
    あるいは列挙による
    因果関係の推論。
    それは正しくないでしょ?
 
  (‥ )Aさん、Bさん、Cさんは
      喫煙者でガンで死んだ
      Aさん、Bさん、Cさんは
      水を呑む人でガンで死んだ
      どっちも同じだからな。
      タバコと水はガンの原因である
      いずれもそう主張する
      ことが出来る。
      つまるところ、
      列挙や枚挙では因果関係を
      正しく見極められない
      
 
 ∧∧
(‥ )そういう個別の事例を枚挙する
\–   というやり方で結論する人は
     言い換えてしまえば、
     低レベルの放射線による
     健康被害を証明することは
     出来ないと考えている。
     それで絶望している。
     そういうことでしょうか?
 
  (‥ )健康被害があるはずだ、
      だが証明できない、
      そう考えているのなら
      絶望するだろうね。
      しかし、因果関係を推論する時
      個別の事例を枚挙する必要
      なんてどこにもないけどね

 
 例:この世代の人間は統計上、有意にガンの発症率が多い。これに対して有意に相関があるのは、気圏内における核実験でまき散らされた放射性物質とそれによる被爆。
 
 
 ∧∧
(‥ )法的にどうか、裁判でどうかは
\–   また別問題でしょうけどね
 
  (‥ )統計的に有意であるのに
      裁判で破れた、というのなら
      その事例を述べれば良い話。
      それがないということは
      そもそもそういう事例が
      あるかないかはともかく、
      そういうことを問題視して
      いるわけではない、
      そういうことだろ。
 
 ∧∧
( ‥)つまり、やはり個別の事例を
    かかげても、それだけでは
    統計的な意味を持たない、
    そのことに絶望していると。
 
  (‥ )そう解釈するのが
      無難だと思うがね。
 
 
 町中にあったタバコの巨大倉庫が火事になり、市内は燃えるタバコの煙に包まれた。さて、数ヶ月以内に市民を健康診断したところポリープを持つ人が幾人も見つかり、2年後、癌患者が出た。
 
  ( ‥)ある人は曰く、見よ!
      このままでは市民は
      タバコ工場に
      ゆっくりと殺されると
 
 ∧∧
( ‥)でも? 統計的には
    支持されない場合がある
    その時、絶望する人が出る。
    なぜ癌患者が出たという
    事例を無視する?
    なぜだ、なぜだ?? 
    馬鹿か? 馬鹿か? と
    絶望するのだと。
 
 火事があろうがなかろうが、ポリープを持つ人もいれば癌になる人もいるのだ。論証に必要なのは個別の患者そのものではない。それが現実。
 
 しかし、この現実に絶望する人がいる。
 
 先の話は、推論するにそういう魂の叫びではないのか?
 
 
  (‥ )しかしだなあ、
      因果関係の推論ってのはな
      僕らが普通、日常に行うけど
      実は非常にやっかいな問題を
      抱えているんよね。
 
 ∧∧
(‥ )確か、因果関係って論理的には
\–   正当化できないのでしたっけ
 
 例:ボールAをボールBにぶつけたところボールBは止まり、ボールAが動き出した。ボールAが動き出した原因がぶつけたボールBであったことを論理的に証明せよ。
 
 これはまったくもって無理難題である。
 
 *注:ちなみにエネルギー保存の法則により、とか言ったら、その時点で即、落第です。
 
 
 ∧∧
( ‥)健康被害は理屈じゃないのだ
    そういう人もいるでしょう
 
 ( ‥)これは理屈じゃない、
   –□ それもまた理屈のうちでね、
      そして理屈では因果関係を
      論証できない。
      理屈も理屈じゃないも、
      それではどうにも
      ならんわけさ

 つまり、個別の事例を取り上げ、理屈と想いで、これを見よ、と叫ぶ時、その絶望は深かろう。
 
 
 ∧∧
(‥ )どうしたものでしょうね
\–
 
  (‥ )さてね、おいちゃんは
      医者でもないし、
      救い主でもない。
      統計的に有意、
      これがない限り
      やれることは何も無い
      それが現実だな。
 
 
 
 
 
 
 
 

ブログ アーカイブ