自己紹介

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2013年2月16日土曜日

そして去りゆく2012 DA14

 
 
 
 ロシアで小天体の空中爆発があったせいか
 
 ∧∧
(‥ )またあれですね、二億数千万年
\–   ごとに地球へ隕石が・・・
     という話がネットで
     出回ってますね
 
  (‥ )ああ、例の?
 
それはこんな内容。

:地球には二億数千万年ごとに天体の落下が起きている
:一番最近のものは恐竜を滅ぼした白亜紀末期のものだ
:それ以前のものは三畳紀などのもの
:原因は太陽の連星、あるいは巨大惑星
:地球の大量絶滅と定期的な天体落下はこれで説明がつく

 ∧∧
( ‥)残念ですけど、このお話には
    ほとんど正しい部分が
    ありません、と。
 
 ( ‥)これ、基本的に地球の
   –□ 大量絶滅には周期性がある
      という発表と、ではその
      原因は何か? をめぐって
      かつて一時だけ盛んだった
      議論に由来するもの
      なんだろうけどさ。
 
 それを踏まえると以上の内容は次のように書き換え、あるいは注釈が必要。

:大量絶滅が周期的に起こるという説は2600万年周期を主張していた

*3000万年とかそういう説もあったが、少なくとも先の話は周期の桁が1桁間違っている。二億数千万というのは明らかに勘違い(これ自体は多分、単純に書き手のケアレスミスなんだろう)

*実際、白亜紀末期(6550万年前)と三畳紀末期(1億9900万年前)に起きた大量絶滅。先の文章中で言及されているこの2つの大量絶滅の間隔は、2億年どころか、実際には1億3000万年程度しかない。その前のペルム紀末期の大量絶滅は2億5100万年前で、この場合、三畳紀末との間隔はわずか5200万年である(*ちなみに5200万年は一応、本来の周期説が主張する2600万のちょうど2倍ではある)。

:周期絶滅説を説明するために、太陽の未知の伴星、あるいは惑星がオールトの雲をかき乱し、太陽系内部に彗星を周期的に送る、というアイデアは確かにあった。

*ただし、もっと短い周期の天体と軌道ならいざしらず、2600万年周期という極端に長大な軌道は安定的に存在しないと考えられるので、これらのアイデアは結局のところ支持されなかった。

:それに隕石衝突で引き起こされたと思われる大量絶滅は白亜紀末期のものだけである。他に確たる証拠を持ってそうだと言える事例はない。

:そもそも、大量絶滅が周期的に起きるという仮説が、実のところ支持されていない。
 
:まとめると、大量絶滅はあったし、白亜紀末のものは隕石衝突が原因ではある。しかしそれだけ。大量絶滅に周期はないし、隕石が周期的に地球に衝突して大量絶滅を引き起こしたという仮説を採用する必要性は複数の理由からない。ましてや、その周期性が未知の星で引き起こされている、という説に至っては論じるようなものではないし、事実、そのように扱われている。
 
 
 ∧∧
(‥ )これも、とっくの昔に
\–   駄目になった仮説が
     ぐるぐるめぐる例ですか
 
  (‥ )周期絶滅も、太陽の未知の
       伴星説も、とっくの昔に
       死んだ仮説なんだけどね
       死んでもなお、
       ウォーキング・デッド
       しているんだよな。
 
 *=>この話の続きであるhilihiliのhilihili: デッドコピーがぐるぐる回る
 
 
 そしてこれだって、責任のある程度はサイエンスライターや出版界が負わねばならぬことなのだ。
 
 ∧∧
( ‥)サイエンスライターとか
    ジャーナリズムはこういうこと
    すぐに飛びついて
    おもしろおかしく書き立て
    ますからねえ
 
  (‥ )事実、書き立てたしな
 
 
 もちろん、半分は読者の自己責任でもある。なぜなら、まっとうな研究者が書いたまっとうな本には、2600万年周期だのそういう説は支持されていないよ、と書いてある。
 
 
 さて、一方では
 
 ∧∧
( ‥)どうです?
 
  ( ‥)//
    –  ┴ うん、見つけた
 
 昨日のロシアでの空中爆発に引き続き、本日、16日未明は小惑星2012 DA14が地球に最接近。5:00にしし座の後ろ足の恒星シェルタンに近づく予報なので望遠鏡であたりを探し、うまい具合に発見。
 
   ∧∧
\\(‥ )ああ、暗いけど動いて
 ┴ –   いますね。
 
  (‥ )ほとんどたまたま視野に
      入った状態だね。背景に
      星がないと、
      本当に望遠鏡で
      追跡しているのか、
      それとも恒星を小惑星と
      勘違いしているのか、
      だんだん分からなくなって
      くるな。
      目もちかちかする

 
 
 シェルタンと恒星ゾズマの間で視野を動かしてしまい、見失ったので、この間にレンズを広いものに換え、しし座の北にあるアルラボレアリスなる恒星に接近する5:25前後を待ち構える。
 

   ∧∧
\\(‥ )来ました来ました
 ┴ –   アルラボレアリスの脇を
       かすめていきますよ
 
  (‥ )ほんの少し前にちょうど
      人工衛星が反対側から
      通過したね。
 
 さすがに地球を周回する人工衛星は明るいし見かけの速度が速い。すぱーんと視野を通過。
 
 一方、2012 DA14は背景に散在する恒星のようで、しかし、じりじりじりじりと視野をよぎっていく。
 
 


   ∧∧
\\(‥ )心なしか、だんだん
 ┴ –   暗くなっていくように
       見えますね
 
  (‥ )もう地球から遠ざかり
       始めたのかな?
 
 5:40ぐらい。さすがに寒いので切り上げて、もう高々と上がり始めたこと座のドーナッツ星雲を見てみようとするが、さっぱり分からない。
 
 ∧∧
( ‥)我が家の望遠鏡は口径12cm
    ですけども、それでも
    白みゆく明け方東の空とは言え
    見るのはちょっと難儀だと
    いうことはですよ
 
  (‥ )それを考えると神奈川県の
      中央で、2012 DA14を見る
      のは意外に難しかった
      ということなのかな?
      2012 DA14はさいわいにも
      西空をよぎったわけだけど。
 
 もちろん、装備を整えている人にはどうということはないのだろうけども、都市化が進んで夜空が明るい地域で暗い天体の観測をするのは、ちょっと素人には厳しい。
 
 ∧∧
(‥ )ともあれ、2012 DA14さんは
    しばらくばいばいですね
 
  (‥ )大きさはせいぜい
      数十メートル。
      最接近でも肉眼では見えず
      それでも直撃すれば
      大都市を丸ごと破壊できる
      天体だ。こういうのが
      太陽系にはごろごろして
      いるんだよな。
 
 タイミングを見計らったようなロシアの天体爆発、それによっておそらく活性化されたネットの反応を後にして、小惑星は遠く去っていく。

 
 

 
 
 

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