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2010年3月4日木曜日

すぐにベネフィットを上げたい人の物語

 
 気づいて考えた人、チャールズ・ダーウィン

 しかしまあ、世の中には考えない人もいる。というか思いつきで終わっちゃう人の方が圧倒的に多い。

 例えば曰く、定向進化、生物にはそれぞれある方向に進化するという内在する力があるからマンモスの牙とかオオツノジカの角のようなものができるという説

 ∧∧
( ‥)それ、説明になってないがな。

    (‥ )単なる現実の言い換えだよな。

 表現が冗長になっているだけで説明でもなんでもない。

 例えば、どこぞでご本人たちは真剣に鳥の進化を議論している(つもりでいる)掲示板。そこで曰く、ああいう変な特徴は病気みたいなもんでしょー、という話。

 ∧∧
( ‥)それも説明ではないですね。

    (‥ )まあなんだ、オオツノジカのでっかい角が病気でも
        それでいいっちゃいいんだ。

 問題は病気でしょ?という解答が、そもそもなんで全員、角がでっかい状態なのだ? という問いに全然答えていないってことにある。

Q:なんで全員、角が大きいの?
A:全員、病気だからです

 これは結局のところなぜ”全員が角が大きい状態に固定されているのか?”、という疑問に答えていない。それは現実の単なる言い換えであって解答でも説明でもなんでもない。

 例えばダーウィンはなぜこの形質が一定なのか? という点でウォレスなんかと対立することになるけども、以上のような説明が平気ではびこるのを見て思うに(別にこういう意見はオレ様理論屋だけの専売特許でもなんでもなくしょっちゅう出てくる)、形質がなぜ一定なのか? という問題は実のところほとんどの人間、それこそオレ様は他人よりも物事を考えていると自称する人でさえ全然気がついていないのだってことでもある。

 そんな説明で満足している、あるいは良しとするのなら、そんな議論で例えば鳥の進化を語っても意味ないよなあ(そんなことやっているようだったら結局は同じように説明になってない説明で終わるでしょ、ということ)。

 だからほら、ぐだぐだ言わんと論文や教科書読めよ。


 でもしかし、そういう人々が、いや、そういう人々でなくても普通の人間は論文や教科書は読まないのは、これまた観測する限り、当たり前の出来事でございます。

 ∧∧
( ‥)なんでですかね?

     (‥ )コストがあまりにも大きいからじゃない?

 読むには本を買うとしたらお金がかかる。図書館にいくとしても時間がかかる。読む事自体にも時間がかかる。時間をかけるということは時給が発生してしまうのと同じ状態になるか、あるいは費やした時間分、他のことに使えなくなる。

 ∧∧
( ‥)例えば楽しいことに使う時間がなくなると

     (‥ )そういうこっちゃな。

 1時間かけたら、1時間分のコストが発生する。1時間で上げられるベネフィットを上げられなくなる分、実はそれはマイナスとして換算される。

     (‥ )例えば自営業者の場合、1時間を読書に
         費やしたら1時間で上げられる利益を
         失っていることになる。ようするに
         ”支払うべき時給”が発生しているのと同じ。
 ∧∧
( ‥)まあ、必要経費ってやつですね。

 会社に雇用されている人間だってそれは立場が同じだ。1時間を読書やリサーチに費やしたらその分だけ楽しい時間に回せなくなる。

 おまけにコストは買う時に生じる金銭や費やした時間だけではない。考えるという事自体が実は大変なコストだ。

 ∧∧
( ‥)だからみんな読まない?

     (‥ )そう考えていいんじゃないの?
         だって面倒くさーいって言うじゃんよ。

 そういえばあれだ、先の鳥の進化を論じているオレ様掲示板でもそういう話があったような。つまり曰く、僕らでも分かるような本を書くのがサイエンスライターでしょ!! という話。

 ∧∧
( ‥)このような個人の要望に例えばあなたなら
    なんと答えます?

     (‥ )個人は実在しないから却下します。

 というか、こういえばどう? 1人の個人の要望に基づいて本を作ることは、経済的にペイしない。確かに1人が500万円を支払うのなら1冊売れただけでライターと出版社は投資に見合った利益を得られるが、そんなことは普通、起こりそうにない。

 ∧∧
( ‥)だから個人の要望に答えられないと。

     (‥ )個人リサーチといわずして、
         市場リサーチと言うのはこれいかに
         そういうこっちゃな。

 市場リサーチしてから現実的な要望を述べなさい。そういうことでもある。
 
 ライターとか出版社からしてみれば、販売という場面において市場は存在するし必要であると仮定できる(実際には市場なんてものは多分、実在しない)。

 しかし販売において個人が実在すると考える必要性はないし、その仮定は非現実的。

 むしろ個人の存在を積極的に否定しているんだとも言える(実際には一般的な意味においてなら個人は便宜的には実在する)。

 ともあれ、僕らでも分かるように書いてくれる人がサイエンスライターでしょ、という発言からなんとなく分かることがある。

 消費者はサイエンスライターなり科学者なり、あるいは新聞社の記者なりテレビの報道番組になりに対して、お金を支払うことによって考えることや情報収集を代行してもらおうとしている。

 ∧∧
( ‥)まあ、当たり前ですね

     (‥ )だけど作り手側は個人個人の要望すべてには
         答えきれない。

 というわけで経済的にありうる本というものはおよそ平均的な内容になる。反対に十分な利潤を生み出せるほどには大きくない要望(市場)があっても、そんな需要に応じた本は誰も出さない。いや、出してもいいが、そればかりやっていることはできない、会社が潰れる。というか潰れた事例なんてちょっと知っている人ならすぐに幾つか例が出てくるだろう。ようするに淘汰される。

 ∧∧
( ‥)というわけで、どうしても取りこぼしが
    起きると。

     (‥ )まあそれは前にも書いた、A群、B群、C群
         の話なんだけども。

*人間の疑問を持つ力と理解力が平均にもっとも多く集中するとして、人間をA=物事をいちいち考えないで鵜呑みにする、B=鵜呑みにしないで考えるが正しい答えに行き着ける力がない、C=考えて資料を探し、論文を読んで自力で答えにたどり着ける、と3群に分けた場合、その数はA>B>C

 サイエンスライターはA群だけが投資に対してペイする大きな市場なのでA群向きの記事を書く、A群はおかしなことも鵜呑みにするが、研究者の書いたまともなことも鵜呑みにするので全体的に問題は少ない。

 C群はサイエンスライターをまったく必要とせず、眼中にない。

 B群はA群以上のものを求めるが、市場が小さいので答えを与えられず、さりとて自力で答えにたどり着ける程の投資は自分ではしないので(自分の要求に対して才能と投資が不十分であると言える)、それゆえに不十分な知識から間違った結論を導き出す。オレ様理論はこの群から誕生する。

というごく個人的な、人間の有り様を説明する仮説。

 ∧∧
( ‥)でっ、それはそれとして今回はどんな
    ことを論じるわけですか?

     (‥ )ベネフィットをすぐに上げたい
         お客もライターもそう考えるということはだね、、、

 と、ここで、長いので続く

 
 

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