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2017年12月6日水曜日

人体は正論を行使できるほど頑強ではない

 
 両論併記をしてはいけないことがある。
 
 ∧∧
(‥ )事実は事実だからね
\‐
 
  (‥ )問題はさ
     どれが事実なのか
     判定するのが大変だって
     ことなのよ
 
 この世界には事実というものは実のところ存在しない。存在するとしても我々に分かるのは、仮説AよりもBが正しいようだ、とか、反対にBよりもAが正しいようだとか、その判断だけである。
 
 ∧∧
( ‥)問題はその判断基準を
    正確に理解しないと
    A>BなのかA<Bなのか
    判断できないってことでね
 
  ( ‥)でっ、物書き、ライター
    ‐/ ジャーナリストは
       それができないから
       両論併記に走るのだ
       というか面倒なんでな
 
 こうして両論併記は手抜き術となる。
 
 ∧∧
(‥ )今あなたが書いている
\‐  本でいうと
    恐竜絶滅なんかはよく
    両論併記の餌食になるよね
 
  (‥ )隕石衝突で恐竜絶滅を
      説明する仮説が出た時
      対案で火山噴火による
      恐竜絶滅説が出たからな
 
 しかしその後の仮説の運命は、一方的だった。隕石衝突説がちゃくちゃくと証拠を固めて、反対に火山説は一方的に敗北する。
 
 だがしかし、なぜ隕石説が勝って、火山説が敗北したか? その判断基準は地学、古生物学、統計学、地球物理学、地球化学にまでまたがるややこしいものなのである。

 だったら隕石説もあるけど、火山説もあるよ〜、と両論併記してお茶をにごせば良い。
 
 さらに両論併記すると、なんか頭が良く見えるものである。

 それに火山説論者は敗北を取り繕った。例えば恐竜時代の終わりになるに従って、恐竜の種数は減っていく。これは隕石衝突では説明できない。火山噴火で恐竜は衰微し、隕石はそれにとどめを刺したに過ぎないと説明した。
 
 これなどは火山で衰微、隕石でとどめの両論合体魔改造なのである。なのであるが…、実は、こういう複雑な仮説は頭の良い人間を騙すのにちょうど良いものなのだ。だから余計にライターは書きたがる。
 
 ∧∧
( ‥)でもこれ
    一見するといかにも
    もっともらしいのだけど
 
  (‥ )説明としては下の下
      なんだよね
 
 次のように考えれば分かりやすい。地層には化石を産出するものとしないものとがある。するものでも多く産出するものとそれほどではないものとがある。
 
 ここで問題だ。化石を多く産出する地層は多いか少ないか?
 
 ∧∧
( ‥)そりゃ少ないだろうな
    そもそも相対的に多く出る
    レアな地層を多いと
    言っているのだからな
 
  (‥ )多く出る地層を黒丸
      それほどでもない地層を
      白丸にして
      時系列に沿って並べよう
 
◦◦◦◦●◦◦◦◦◦◦●◦◦◦◦●◦◦
 
 絶滅とはこの地層の時系列をある時点で切ることである。さて、どこで切ったら突然の絶滅にちゃんと見えるか?
 
 ∧∧
(‥ )黒丸のちょうど後ろで
\‐  ぶった切った時だけ
    突然の絶滅に見える
 
  (‥ )でもそんなこと
      そうそう
      起こらないんよね
 
 言い換えれば、ほとんどすべての絶滅はじょじょに進行していくように見えるってことになる。
 
 ∧∧
(‥ )だからそれを踏まえた
\‐  解析が行われて
    白亜紀の絶滅は
    急激に起こったことが分かった
    それが90年代の話
 
  (‥ )でよ、それから30年
      物書きもライターも
      ジャーナリズムも
      恐竜大好きマニアも
      誰一人ここには
      到達しなかったのよね
 
 誰一人。誰も行き着けなかった。その代わり、ずーっと両論併記か、火山で衰微、隕石でとどめの両論合体魔改造か、そのどれかであった。ただただそれが続いた。何百、何千、何万それ以上いる人間が30年間、誰も突破できなかった。
 
 ∧∧
( ‥)それもこれも面倒くさいからか
 
  ( ‥)俺たちゃどうしても
    ‐/ 楽な方へ楽な方へと
       流されていくからなあ
 
 科学の世界は丘の向こうにある。丘はそんな高くはない。時間はかかるが越えられる。だが誰も越えなかった。なぜって面倒くさいから。

 そして人は言う
 
 両論併記をしてはいけないこともある!
 
 それは正論だ。
 
 だが、人体は正論を行使できるほど頑強ではないし、我慢強くもないのである。
 
 ∧∧
(‥ )むしろ人体のそういう性質を
\‐  踏まえて
    物事や仕組みは設計される
    べきなのである
 
  (‥ )さてさてそれではだ
 
 
 それでは? どう設計すればいい? これこそが真の難題。
 
 
     

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