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2016年10月29日土曜日

知性はこの地上から抹殺されるべきである

 
 夢を見た。
 
 新聞に掲載されている漫画を読んでいる夢だ。漫画自体は漫画家とアシスタントの話で、絵柄はドラえもんに良く似ていた。
 
 彼らは連載漫画の展開に悩んでいるらしく、連載漫画が劇中劇として同時進行する。
 
 確かに悩みどころのある劇中劇だ。
 
 最初は北斗の拳のような世紀末劇画として始まったのに、翌日には世紀末三国志になり、翌々日には宇宙人がやってきて世紀末スペースオペラになっていた。
 
 連載漫画を戸惑いながら読む自分と劇中劇と、そして読んでいる自分を次々に尋ねる人たち。
 
 三つが同時進行してわやくちゃな..
 
 ∧∧
(‥ )嫌な夢を見てるな
\−
 
  (‥ )今進行している仕事に
      どうにも自信や展望が
      持てないことを
      表しているのかも
      しれないなあ
 
 なんというか、これ、あれだよね、初めて作った同人誌だよね、コミケに意気揚々と持ち込んで一冊も売れないという奴だよね。そんな案配。どうしよう。
 
 ∧∧
( ‥)とはいえ作るしか
    ないのですぞ
 
  (‥ )まあ案ずるより
      産むが易しというし
      考えて最前の手を打って
      いるつもりだけど
      考えるなんてひ弱な
      人間のやることだからな
 
 もっと考えろ! と人はしばしば、もちろん自分も含めて誰しも言うことである。
 
 しかし誰もが知っているのだ。
 
 考えることなど大した役には立たないと。
 
 考えるとはむしろ馬鹿のやることであるし、馬鹿ほど考えたがると。
 
 こんなこと、誰もが知っていることだ。
 
 ∧∧
(‥ )まあこう言うと
\−  考えれば分かる論者は
    激怒するんだけどね
 
  (‥ )その手の連中は
      プラトン以来
      歴史上絶えることなく
      存在したけども
      ははっ
      まあ次の様に
      ”考えて”みようか?
 
 環境が変われば最適の意味も変わる。つまり今、有害な遺伝子でもいつか役に立つかもしれない。人間の生存戦略は生存に不利な個体でも保護することでいつか役に立つ有害遺伝子を蓄積し、将来の環境変動にそなえることなのである。つまり、弱者保護こそが人間の生存戦略なのだ。
 
 ネットでおおいに喝采を浴び、考える人々から素晴らしいと評価され、これぞ知性だ! と言われたこの説明。
 
 これが完全な馬鹿理論であることは次のことから明白である。
 
 
 まずメンデル遺伝と劣性、優性は学校で習ったであろう?
 
 もちろん、今の生物教科書はより高度な領域に踏み込んだのでここがあまり強調されてはいないが、今の大学生以上なら習ったであろう?
 
 
 なれば自動的に分かるだろう?
 
 劣性遺伝は優性遺伝に隠される。劣性遺伝は対にならない限り発現しない。
 
 ということは、10人に1人が持つ劣性遺伝は10×10で100人に1人にしか発現しないし、100人に1人が持つ劣性遺伝は100×100で1万人に1人にしか発現しない”奇病”となる。
 
 単純なかけ算だ。そうだな?
 
 では次のことも明白だ。
 
 1万人に1人しか発現しないとは、100人に1人が持つようなありふれた劣性遺伝でも、ごくまれにしか発現しないし、淘汰で取り除かれないということだ。
 
 100人に1人が持つような有害遺伝ですらも容易には取り除かれない。
 
 では? 奇病と言われるものが100以上あったら誰もが有害な遺伝子をすでに持っていると思わないか? だって何らかの変異が生じたらそう簡単に取り除かれないのだからな。

 そして人間のもっている遺伝子は100じゃ効かない。

 だって人間の持つ特徴は100以上あるだろう?
 
 それぞれの特徴がひとつの遺伝子に支配されていると仮定しても、人間の遺伝子が100以上あるのは明白だ。そうだな?

 それらがそれぞれ過去のいずれかの時点で変異を起こしたら、そんな時間は十分にあるのだが、そういった変異は蓄積され、もうすでに膨大な有害遺伝子が我々の中に貯金されていることになるだろう?
 
 この結論は自明だ。
 
 そして問うが、これは弱者保護で実現されたことであろうか?
 
 以上の論証の過程で弱者保護という前提が出てきたか?
 
 出てきたのはメンデル遺伝であって、それは有性生殖だ。
 
 なればこれを実現しているのは男女という性のあり方である、これもまた自明であろう?
 
 ∧∧
( ‥)つまり人間はすでに
    有性生殖の仕組みにより
    有害遺伝子で飽和して
    いるだろう
 
  (‥ )弱者保護で有害遺伝子を
      貯金しようって発想は
      はいここで破綻です
 
 さて、以上の論点で未知の部分や、学校で習っていない箇所があったか?
 
 ∧∧
(‥ )ないですね
\−
 
  (‥ )はいここで
      考えれば分かるのだ
      という主張も破綻です
 
 考えれば分かる、というのなら以上のことはすぐ分かるはずだ。
 
 だって知ってるはずの知識をただ単純に累積させただけなのだから。
 
 だったら、考えて分かるというのなら、以上のことは考えれば絶対分かるはずだろう?

 そして分かるはずであれば、誰も”人間の生存戦略は弱者保護による有害遺伝子の蓄積である”などという、こんな馬鹿話にひっかからない。
 
 だがそうではない。
 
 だとしたら、考えれば分かるという考えが、破綻した考えであることは明白だ。
 
 ∧∧
(‥ )まあ確かに考えれば分かる!
\−  と豪語する人が
    以上の与太話を
    素晴らしい!
    とか
    知性的だ!
    って感嘆している場面を
    目撃しましたしね
 
  (‥ )あら悲し
      考えるとはかくも
      無惨なことなのだな
      考えれば自明の事柄に
      考えてもたどり着けない
      これが考えるということの
      無力さよ
 
 
 考えれば分かるはずだ、と言いつつも、考えれば理路整然と分かるはずの間違いにひっかかり、あまつさえそれを、知性的! と評価する。
 
 なにが知性的なものか。

 むしろここにあるのは知性のあからさまな敗北である。
 
 見たまえ。知性とは、なんと愚かでひ弱な存在だろう? しかも自分自身で、俺は知性的だから森羅万象を考えて見通すことができると言いよる。
 
 こんな無様なものがあるか?
 
 ∧∧
( ‥)知性というのは
    無様なものですなあ
 
  (‥ )知性というのはな
      もともと考えることに
      最適化されていないと
      見るべきだろうな
 
 考えてみれば、知性とか考えるというのは解探索において必然の部品ではなかった。
 
 実際、知性なき生物やウイルスでさえ、進化で最適化されて人間の医療防衛もかいくぐってくるのである。知性が解探索において必然でも必須でもないことは日常からして明白なのである。
 
 
 ∧∧
(‥ )案ずるより産むが易し
\−  と言いますしねえ
 
  (‥ )易い、と言ってるだけで
      産んだ方が正しいよ
      とは言っていないけど
      言わんとすることは
      分かるよね
 
 人間は全知ではないゆえに、先を見通せない。見通したつもりでも、それは概して粗雑な知識から編み出した間違いだ。試行錯誤こそが解探索の手段であって、その過程で考えることも役立つが、考えること自体は解探索で必須の部品ではない。そんなこと進化を見れば分かるだろう?
 
 ∧∧
( ‥)反対に言えば
 
  (‥ )知性や考えることを
      重んじる人間
      連中は解探索から
      逃げたのさ
 
 考えるから馬鹿になるのか、馬鹿だから考えるだけですませようとするのか? どっちなのか知らんが、考えるとは頭のひ弱な人間がやることだ。そしてそれを知性と呼ぶ。彼らは問題解決ではなく、問題から逃げるために頭を使う。
 
 ∧∧
( ‥)なればやるべきことは明白
 
  (‥ )この地上から
      知性ある人間を消すべし
 
 あるいはこうである。
 
 知性なんてものは上っ面だ。知性は考えてはいるが解探索をしていない。ゆえに知性だの考えるだの、そんなものは無視しろと。
 
 
 これはhilihiliのhilihili: 読ませたかったけどねの続き
 
 
 
  

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