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2019年10月1日火曜日

中央突破する必要は必ずしもありませんよね

 
 石油が尽きた2、3世紀後の未来。この地球において、地上の移動手段は人力と畜力しかないので、再び遊牧民が優位になっているはず。ユーラシアには新モンゴル帝国(仮称)が成立しているだろうし、北米のプレーリー、南米のパンパス、アフリカのサバンナ、そしてオーストラリアの乾燥地帯にも遊牧民の帝国や王国が出現しているだろう。
 
 ∧∧
(‥ )でも一般的には
\‐  未来がそうなると
    考えられてはいないよね
    なんでだろうね?
 
  (‥ )銃器があるからには
      定住民の優位は
      変わらない
      皆んなそう思って
      いるんじゃないか?
 
 古代世界では歩兵が優位であり、中世になると騎兵が優位になった。中世から近世にかけての帝国は基本的に遊牧民の帝国であった。

 しかし銃器の出現で歩兵が再び優位となり、定住民の帝国が出現して、現在に至る。
 
 ∧∧
(‥ )織田信長の鉄砲部隊が
\‐  武田の騎馬隊を破った
    長篠の戦い 1575年
    トルコのセリム1世が
    率いる親衛隊鉄砲部隊
    イエニチェリ軍団と
    サファビー朝の開祖
    イスマイール1世の
    騎兵部隊クズルバシュによる
    チャルディラーンの戦い
    1524年
    いずれに鉄砲歩兵部隊が
    騎兵隊を破った戦い
 
  (‥ )オスマントルコは
      騎馬民族の帝国だけど
      軍団は鉄砲部隊の歩兵
      だよね
 
 これをもって誰もが考えるだろう。銃を持った歩兵に騎兵は勝てないと。
 
 しかしこれ、よく考えてみれば火縄銃とかフリントロック式の銃が使われた時代の話であった。誰もが知るように火縄銃やフリントロック式は前から玉を込める前装式。これは装填に手間がかかり、馬上では扱いが難しい。
 
 ∧∧
( ‥)でも後装式の連発銃だったら
    この問題はない
    むしろ機動力がある分
    騎兵の方が有利なはず
 
  (‥ )でも後装式の連発銃が
      登場したのは
      19世紀末の西欧だ
      つまり定住民の世界であり
      歩兵主体の軍隊が活躍する
      場所だったわけなのよ
 
 
 これでは銃器を持った騎兵が活躍するという場がそもそも存在しない。さらに時代はWW1と機関銃の時代となってしまう。
 
 ∧∧
(‥ )それでも銃を持った騎兵と
\‐  機関銃の戦いがあるよね
    メキシコ革命の最中に起きた
    パンチョ・ビリャ率いる
    騎兵部隊の突撃と
    オブレゴン将軍が揃えた
    機関銃と鉄条網の迎撃
    1915年 セラヤの戦い
 
  (‥ )これ一見すると
     騎兵が機関銃に敗れた
     戦いなんだけどな
     WW1をみればわかるように
     歩兵の突撃でも
     機関銃は突破できないのよね
 
 というか、正面突破をする必要があったのか? という問題でもあった。確かに騎兵の突撃による敵陣の中央突破というのは昔からある。正面から駆け寄ってくる騎馬の群れは、敵の恐怖を煽って陣形を崩すだけの力がある。それが有効なのは事実。

 だけども必ずしもそれをする必要がないのもまた事実なのであった。
 
 ∧∧
( ‥)中央突破を試みる
    西欧連合軍の重装騎兵を
    モンゴル軍の軽装騎兵が
    受け流して全滅させた
    ワールシュタットの戦い
    1241年
 
  (‥ )つまりだ
      パンチョ・ビリャが
      率いた騎兵部隊が
      敗北したのは
      機関銃という新戦術に
      対応できなかっただけで
      騎兵の優位が崩された
      証明ではないってことだ
 
 
 未来の騎兵戦は過去のものとまったく同じではないだろう。昔の陣形より、ずっと分散しているのかもしれない。しかし次のことは言える。石油が消費され尽くした後、騎馬民族の帝国が再び地球に帰ってくると。銃器で武装した定住民による優位は、人類の歴史において500年程度続いただけの、比較的短い出来事ということになるだろう。
 
   
 
 

 

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