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2019年10月10日木曜日

人は望まぬ未来を描かない

 
 石油を燃やす。これによって人は地球に降り注ぐ太陽エネルギーの制限を超えた活動を行えるようになった。こうして人類は今の繁栄を得たが、それは同時に、石油が尽きた時、この黄金時代は終わるということを意味していた。
 
 化石燃料が尽きた後、世界はまるで違うものとなる。食料の生産は落ちて、農業従事者が今よりも多く必要となり、技術とその進歩の速度は大幅に遅れることになる。道路から自動車は消えて馬車と自転車の世界となる。長距離輸送では電車が使われているだろう。電車は制動する時、その運動エネルギーを発電に変えることができるから効率が良い。しかし金属とその精錬はこの時代ではもはや難しい。だから電車はパンタグラフやモーター、車輪以外は木材になっているだろう。飛行機は消えて飛行船となり、貨物船は帆船になっているはずだ。ラジオはあるだろうから情報伝達はそれなりに速いが、大陸間の移動は何十日とかかるものになる。

 日本のような島国は海洋国家のままで、帆船と艦隊を率いているだろう。しかしユーラシアなどの大陸国家では電車と馬が移動と輸送の手段であり、必然的に遊牧民の帝国が出現しているはずだ。西欧は彼ら、新しいモンゴル帝国の支配下にあるだろうし、多分、イスラム化している。当然、ヴァチカンはイタリアから脱出して、おそらくは南米のカトリック圏に移動しているだろうし、プロテスタント国家はアメリカ合衆国だけとなっているだろう。
 
 そしてそのアメリカ合衆国にも敵がなだれ込む日がやってくる。それはおそらくアメリカが今戦っている部族社会の人々。彼らは歴史的に幾度も西アジアを劫掠した。だから彼らは必ずやってくる。300年など彼らにとって昨日の出来事だ。必ず彼らはアメリカに侵入して劫掠する。そしてその時、言うだろう。これは何世代前にお前たちのドローンによって殺された誰それの仇だと。アメリカの成人男子は皆殺しにされ、女子供は奴隷にされて売り飛ばされる。それでもアメリカ合衆国は続くだろうが、おそらく、ここもプレーリーの遊牧帝国へと変貌するはずだ。

 
 ∧∧
(‥ )とまあ、未来とは
\‐  ほぼ確実にそういうものに
    なっているはずなんだけど
    こういう小説を書いた人は
    ちょっと知らないね
 
  (‥ )多分、嫌なんだな。
 
 嫌な未来を人は夢見ない。なるほど、ディストピア小説というものもある。しかし実のところあれは未来予測でもなんでもない、ただの現実批判だ。というか、今の居場所は本当の居場所じゃない、自分は不当に管理されているが、本当の居場所は別にある。そういう現実逃避がディストピア小説であって、あれは未来予測などではない。
 
 本当の未来は誰も望んでいないものとなるし、それゆえに、誰も未来小説を書こうとしなかった。そういうことなんだろう。
 
  ( ‥)そういえばさ
    ‐/ 俺が携帯電話を
       持ちたくなかった
       理由って
       自分の時間にまで
       仕事の電話がくるのが
       嫌だったからなんだよね
 
 ∧∧
( ‥)SF作家が携帯電話が
    普及した未来を
    書かなかったのは
    それが理由だって話が
    あったよね
 
 人は嫌な未来を求めない。しかし未来とは嫌なものだ。そもそも現実とは嫌なものであり、必然、未来は人が望まぬものとなる。
 
 
ちなみに付け加えると自分が携帯電話を持つようになったのは、90年代に携帯が普及し、携帯電話がないとバイトできない状態に追い込まれたからだった。労働者を管理する道具として電話を携帯することが必然となってしまったのである。
 
  

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