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2019年10月25日金曜日

未来予測とは絶えず悲劇

 
 
 彼が未来を見た時、そこにあったのは彼女が無残な死を遂げる光景だった。どの未来を見ても彼女が死ぬ運命しかない。これを悟った彼は、最悪の中から最善を選択した。少しでも彼女が苦痛なく死ぬ未来を。

 しかし、彼が最善を選択した後に明かされる事実。それは、彼が見なかっただけで、実はもっと別の選択肢が無限に存在した、ということだった。
 
 ∧∧
(‥ )未来予知ができると
\−  現在が未来に制限される
    それは選択肢が
    ゴールによって
    規定されてしまうわけで
    今の自由を失うことでもある
 
  (‥ )こういう話
      最近なんかあったよな
      なんだっけ?
 
 ∧∧
( ‥)進撃の巨人じゃね?
    あれって
    主人公の未来の記憶に
    全員が規定されていたって
    展開なんだろ?
 
  ( ‥)物語自体は主人公の選択に
    −/ 沿って話が進むけど
       噂では
       主人公が選んだ以外に
       もっと良いルートが
       あると作者が言ったとか
       なんとか...
 
 
 しかし噂は噂である。ネットという井戸端会議では、誰かが稚拙に憶測や拡大解釈をする。そうした憶測や拡大解釈を聞いた人が、これを事実だと勘違いして話を広めるものだ。
 
 ∧∧
(‥ )とはいえ主人公の未来視が
\−  問題を解決します! だと
    すべては
    規定事項に沿った出来事に
    なってしまって
    とたんに物語が薄っぺらに
    なりますからな
    主人公の選択肢が
    ベストルートでないエンドは
    本当にあるのでは?
 
  (‥ )人間は現実という
      地獄の中を生きている
      だから人間は
      あらかじめ知っている
      ベストルートを選択して
      めでたしめでたし
      という物語には
      不満を覚えるからね
 
 つまり人間の脳神経は、悪いことしか起こらないこの現実世界で機能するようにできている。

 これゆえ人はハッピーエンドを渇望するのだが、だからこそ、安易なベストルート選択を楽しむことができなくなった。

 現実を処理するための脳は、予定調和的なベストルート選択を見ると、これをご都合主義と認定して拒否してしまう。没頭できない物語は単なる嘘となり、人はこれを楽しめなくなる。

 だからこそ、物語とは救済でありながら、よくできた絶望でなければならぬ。
 
 ∧∧
( ‥)最前の努力をしてもなお
    選べたのはベターで
    ベストルートを選べなかった
    それでもこの選択肢しか
    自分にはなかった
    もっと良いルートを
    後から知っても
    主人公が
    それは僕には無理だったね
    そう苦笑しながら流す
    人の脳が受け入れる物語とは
    そういうものである
 
  ( ‥)さあさあ
    −/ 進撃の巨人の主人公は
       どんな絶望を
       選択するのかな?
       わっくわくだねえ
 
 
 たとえ未来視ができても未来は絶望で、むしろ未来に束縛されて選択の自由を失う。考えてみればこれは物語作りにおけるひとつの普遍的な形であった。

 この苦境の中で人がどうあがくか? それを読者は求めており、これをどう見せるのかが、作者の腕の見せ所であった。
 
 
 *ちなみに冒頭の実例は「砂の惑星 砂漠の救世主」で主人公のポウルが選んだもの。


 ∧∧
(‥ )ポウルってさ
\−  未来視に頼りすぎたギルドが
    それゆえに敗北したのに
    そもそも自分自身が
    ギルドを打倒したのに
    自分もギルドと同じことをして
    破滅するんだよね
 
  (‥ )むははっ
      それが物語ってやつよ

 
 
  
     

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