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2019年10月11日金曜日

キケロ曰く 友情の破綻はvtuber的にも体面上は避けねばならない

 
 紀元前1世紀末の人物キケロ。彼はローマの元老院議員であり、そしてカエサルの時代を生きた。
 
 その彼は友情について「友情論」という本を書いた。この本、建前と本音がたくみに入り混じった内容で、一見すると矛盾だらけであり、そしてその矛盾にこそ意味があるものだった。
 
 例えばある場所では次のようにいう
 
 友情とは貸し借りではない
 
 しかし別の場所では次のように言う
 
 この友情から私たちは大きな利益を得た
 
 ∧∧
( ‥)一見すると矛盾だけど
   これは本音と建前だよね
   友情とは本音では取引であり
   相手に利益を与えないと
   いけない
   しかし私たちの友情は
   ビジネスですと言うわけには
   いかないのである
   だから友情とは
   貸し借りではないのだと
   きれいな建前を言うのである
 
  ( ‥)キケロの友情論って
    ‐/ 注目すべき内容が
       多いよな
 
 例えば友人になった後、相手が友人としてふさわしくない人物であったことがわかる場合がある。しかし、こんな時でも即座に友情を解消してはいけない。むしろ君が我慢しなさい。そう説く。
 
 ∧∧
(‥ )ところがそうかと思うと
\‐  友人がやばい人だと分かったら
    距離を取りなさい
    そう説くのである
    一見するとこれも矛盾だね
 
  (‥ )でもこれキケロの
      立場だと当然なんだよな
 
 キケロたちローマ帝国の元老院議員たちは現在で言う国会議員だが、これは世襲だ。そして議員の人数は300人とか600人程度。しかも彼らは生涯、元老院議員として国政に参加し続けるのである。
 
 ∧∧
( ‥)数百人の仲間と
    生涯一緒につきあう
    これは狭い世界だよね
    この中で選挙や
    駆け引きや同盟や裏切り
    陰謀やクーデターまである
 
  (‥ )立場の浮き沈みも
      激しくてなあ
      ある人が失脚したかと
      思ったら復帰したり
      悪い噂が流れて
      皆から見捨てられたかと
      思うと
      それが
      濡れ衣だと分かったり
      めまぐるしいのよね
 
 それを踏まえればキケロの主張はわかりやすい。数百人の顔見知りと生涯付き合い、その中で支持を集めて選挙を勝ち抜き、大統領(執政官)を目指す。こんな狭い世界で敵を作ったり、一時の感情や噂話から関係を一方的に解除したり破壊したりする。そんなやり方は自殺行為なのだ。
 
 
 ∧∧
(‥ )広い世界だと
\‐  逃げ場があるけど 
    狭い世界だとどこかしら
    人間関係がつながっていて
    追いかけてくるからね
    トラブルは可能な限り
    避けた方が吉
 
  (‥ )俺もな
      編集さんとは
      喧嘩しないように
      しているけどな
      時にはどうしても
      折り合いがつかなくてな
      こういう時は
      悩みどころだよね
 
 とはいえだ、キケロが言うように、喧嘩別れする時でも、相手には修復の余地があると思わせた方が得であることは疑いない。
 
 交渉は決裂したが、あの様子だと彼とまた一緒に仕事できるかもしれない、そう相手に思わせるように、穏便に事を進める。これは確かに重要だ。
 
 ∧∧
(‥ )そういえば先日
\‐  vtuberの話を書いている時に
    調べて気づいたのだけど
    vtuberの中の人も
    所属を鞍替えしたり
    移籍したり
    喧嘩別れしたりするみたいね
    それらしい話が
    現在進行形でいくつか
    出てきたよ
 
  (‥ )vtuberの業界は
      狭いのかね?
      広いのかね?
      喧嘩別れの是非は
      それ次第だな
 
 
 広い世界なら嘘も裏切りも逃亡もなんでもありだ。広い世界ではそれが最適解となる。
 
 しかし、多分、vtuberの業界は狭いだろう。狭いことを考えたら、喧嘩別れは避けた方がいい。

 いつの間にかあの人とは疎遠になったなあ〜、とか、あの人はウチから出て行って移籍はしたけど円満だったよね、とか、あの様子ならまた一緒に仕事できそうだな〜、とか、そう思わせる努力が必要になってくるだろう。
 
 ∧∧
( ‥)実際には
    どうなのかね?
 
  (‥ )さあ?
 
 
 ネットの世界は電子の井戸端会議なので、噂や憶測、デマで成り立ってもいる。

 健康上の理由、あるいは一身上の理由で引退したvtuberが、実は移籍なのではないか? と憶測する人もいたりするわけだ。

 世の中、状況はよくわからない。
 
 ∧∧
(‥ )でもキケロさんも
\‐  その手の狭くて
    噂と憶測が蔓延する世界での
    処世術として「友情論」を
    書いたんだよね
    そして友情とは塩を何キロも
    食べるような
    苦しいものなのだと書いた
 
  (‥ )トラブルを
      可能な限り避ける
      相手との付き合いを
      我慢する
      というか
      我慢するふりをする
      それが重要だという
      ことなのだな

 
 友情とは塩を何キロも食べるようなつらいもの。これは理不尽なようでいて、実はこういう振りをすることが大事という処世術であって、ここには確かに真理があった。
 
 
 *ちなみに、キケロ自身の実際の生き様は、以上のようではなかった。友人を全部見捨てて自分だけが器用に生き抜いて、しかし余計なことばっか言うから恨みを買われて、最後は自分自身が切り捨てられて、バラバラにされて死んだ。
      


  

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