自己紹介

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2016年3月31日木曜日

必殺スライム勇者

 
 
 ∧∧
(‥ )スライム勇者の最大の技
\‐  って何ですかね?
 
  (‥ )自分の肉体の一部を
      脳内に侵入させて操った
      市民、兵士による
      無差別一斉攻撃
 
 街区から上がる悲鳴と絶叫、逃げ惑う人々、そして湧き出るようにぎくしゃくと押し寄せる人体の軍勢。迎え撃つ警護の兵士達の間にもすでに寄生体がいて、ここぞという時に背後から襲いかかり、防衛ラインが決壊していく。もはや誰が敵で誰が味方かも分からぬ中、同士撃ちと蹂躙で、城にも火の手が上がる。
 
 ∧∧
( ‥)とっ見せかけて
 
  (‥ )それも実は陽動で
      本体はすでに
      城内に侵入ずみ
 
 
 なぜだ越後屋? お前の言う通り、怪し気な者は皆遠ざけた。なんでこんなことになる??

 私が申したこととは言え、他人を貶める讒言を重んじるようではいけませんな、代官様。
 
 この期に及んで裏切り? 怒りと戸惑いの表情を見せる代官に越後屋は答える。

 ああ、親愛なる代官様。いつもの鋭敏さはどこへいってしまったのでしょう。お分かりになりませんか? すでにわたひひゃあ...
 
 男の額が内部からみりみりと無理矢理に裂けて、灰色のしずくがねっとりと流れ出し、ぬるりと突き出た腕が代官の顔を掴む。体は動かせても、頭はぴくりともその場を離れられない。
 
 おわはりに、なりまへんか、鎚でつぶしても裂けぬ強固な人皮。しかしそれを引きちぎる私の力とは、一体どれほどのものなのか? 

 しずくから伸びた腕が代官の頭をゆっくりと、しかし抗えぬ力でねじつぶしていく。
 
 
 ∧∧
(‥ )もはや大災害
\‐
 
  (‥ )ばれなきゃ犯罪じゃ
      ねーんですよ
 
 あるいはちーとも勇者が姿を見せないと思っていたら。
 
 ∧∧
( ‥)すでに悪代官は内部から
    食われている
 
  (‥ )ご乱心して越後屋や
      部下を切り捨てた後
      耳元で声がするのだ
 
 勇者はここにおりますよ、代官どの。
 
 なぜ、どうしてこんなことに? 夢のように虚ろな感覚で声のする方を振り向いても、暗い廊下の先に見えるのは自分が切り捨てた死体と、飛び散った血ばかり。
 
 あなたの鼓膜。
 
 声はすぐ耳元だ。ささやくようでいて、しかし鳴り響く声がする。
 
 いや、正確に申しますと蝸牛に直接働きかけて、私の声を聞かせているのです。自分の体に違和感を感じられませんでしたか? 

 代官様は今朝の食事時、はしを取り落としました。なぜだと思います? 

 あなた様の心に浮かんだ動きを私が再現するので、どうしても代官殿の思考と動作にわずかなずれが生じるためですよ。

 ですから、あなたの心に浮かんだ動きを私が再現しなければ、ほら、この通り。
 
 動けない。
 
 もはや体を動かせぬ代官の見つめる先で、彼の腹が膨らみ破れるが、痛みもかゆみも感じない。夢のような無痛の中で、灰色のしずくがゆらゆらと身をもたげ、浮かび出した口が笑って言う。
 
 わたくし、先日より少しずつあなた様を食べてまいりました。すでに皮膚と表情筋、脳と脊椎、胃と腸、あなた様の肉体はもはやそれだけ。他はもう残っておりません。
 
 眼球は動かせるが声が出ない。自分の動かぬ腕の皮膚がゆれ、中で無数のものたちがうごめくのが見える。
 
 代官殿、まぶたも眼も動かせますが、他は指の一本も動かせぬし、腹を破られたのに痛くもないでしょう? これこそ、あなた様の筋肉も骨も、声帯も痛覚も、すべて私が食べてしまった証拠なのですぞ。
 
 にたにた笑う口が、捕食のために大きく広がり、動けぬ代官の視界をゆっくりと覆っていく。
 
 ∧∧
( ‥)人知れず悪と戦う
    スライム勇者万歳
 
  (‥ )毎日ご飯を
      食事だ勇者
 
 
 
     
      

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