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2016年3月17日木曜日

異世界娯楽批判という現実逃避に祝福を

 
 
 ∧∧
(‥ )トラックで轢かれて
\‐  死んで
    異世界に転生して
    人生やり直し
    そういう小説や物語は
    たくさん乱造されたと
 
  (‥ )転生のさいに
      いわゆるチート能力を
      獲得したり
      現世での知識を生かして
      無双する
      こういう物語の起源を
      さかのぼれば
      きりないだろうけど
      植民地時代の西欧の
      物語なんかは
      そうなんだろうな
 
 
 西欧人のしがない俺が、野蛮人の世界にいって火を教えて王様になる話。
 
 ∧∧
(‥ )火を知らない部族って
\‐  ほとんどいないはず
    ですけどね
 
  (‥ )まあものの例えだ
 
 
 こういう物語の系譜は、それこそ前にも取り上げたようにドリトル先生にも出てくる。
 
 そして、WW2と兵器開発の結果としてロケットが生まれた時代には宇宙を冒険する物語が誕生した。いわゆるSF全盛の時代である。
 
 ∧∧
(‥ )その時代はあっという間に
\‐  終わっちゃったけどね
 
  (‥ )そりゃ人間の技術では
      太陽系の移動さえも
      ほとんど無理だし
      ましてや火星にも金星にも
      生物がいないんじゃ
      いく意味がないからな
      現実は異世界を否定し
      異世界を否定されたSFに
      未来も需要もない
      衰亡するのが当然さね

 
 かくて人々は、魔法の異世界へと目を向けた。

 野蛮な非西欧諸国とやらも火星もなくなった今、人が冒険の先に魔法世界を選ぶのは当然のことであった。
 
 ∧∧
(‥ )この手の異世界ものは底が浅い
\‐  魔法の世界は安易だ
    そう批判する人もいますが
 
  (‥ )バロウズが書いた
      火星のプリンセスとか
      底が深いのかい?
      俺にはとてもそうは
      思えないけどな
 
 舞台が火星だろうが、魔法の異世界だろうが、その底の浅さは同じであろう。
 
 底が浅かろうが楽しめれば良い。それに、海水浴客の全員が沖合まで乗り出して溺死したいわけじゃなかろう。
 
 つまるところ、

 どこかへいきたい。そこでうまいことやりたい。

 読者が求めるのは単純にこれだ。
 
 すべては現世があまりにも苦痛であるからゆえのこと。
 
 
 ∧∧
(‥ )そういう現世からの
\‐  逃避は底が浅い!! と
    さらにお怒りの小説家も
    いるみたいですけどね
 
  (‥ )それこそが現実逃避だろ?
      皆が求めているのは
      お説教ではなく
      休憩所だという現実から
      彼は目をそらしておるがな
 
 
 異世界ものは現実逃避だ、底が浅い! と言うのなら、まずは自分のうだつの上がらない人生をじっと直視するべきである。

 異世界批判に逃げるな。まずは自分の本とホコリまみれのアイデアがなぜ売れないのか、それを直視せよ。
 
 ∧∧
( ‥)でもそれを直視できないから
    こんな本が売れるのは
    間違っている!
    と怒るのである
 
  ( ‥)物書きってのはさ
    ‐/ 俺の本が売れないのは
       世間が馬鹿だからだ!
       と思っているものだけど
       口に出して
       いっちゃうのは
       ちょっと恥ずかしいよね
 
 あるいはこう考えたらどうか?
 
 受賞もしたし、作品も書いた。そこそこ名声も得たが、結局、自分は世間では無名のままである。今の若者は自分の本には見向きもしない。

 魔法の異世界は薄っぺらい、転生、俺tueeeは安易すぎる。そう指摘すると、若者どころか同業者にまで批判される。
 
 ∧∧
( ‥)ところがそんな俺様が
    トラックに轢かれて
    気がついたら
    SF小説が全盛のまま
    21世紀になった平行世界に
    飛ばされていたー!!
 
  (‥ )しかもその平行世界には
      どういうわけか
      アシモフもニーヴンも
      いないんだな
      こちらの知識を生かし
      正確で深い設定で
      小説を書ける俺様が
      小説家無双するー
      そんな馬鹿話
 
 まあ異世界転生もの、というのはこれと同じぐらい荒唐無稽でご都合主義な物語である。
 
 しかしだ、その異世界転生ものを批判する時、その批判者は、現実がこういう平行世界であったらいいのになあ、と考えてもいるのだ。
 
 ∧∧
(‥ )それを考慮すると
\‐  売れてる異世界小説批判って
    微妙なんですねえ
 
  (‥ )せめて
      俺は納豆が苦手なんだ
      程度にすませれば
      自分の好悪を大声で
      叫ぶ人ですむんだがな
      文化論だの世代論だの
      無駄な理論武装をすると
      途端に痛い人に
      なっちゃうわけで
      その現実は踏まえないと
      駄目だよね
 
 好き嫌いで終わらせず、それを理論武装すると、自分の単なる好悪を公共物として振り回す危ない人になってしまう。それが周囲から見るとどう思われるか、それは明白なことであろう。
 
 そしてこれこそが踏まえるべき現実の世界であった。この現実から逃れるわけにはいかないのである。


 異世界小説批判という現実逃避には限界がある。

     
       

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