自己紹介

イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック

2015年2月16日月曜日

じつは羽毛があるかないかの問題じゃないよな

 
 最近はティラノサウルスに羽毛が生えている復元が当たり前なのだけども
 
 ∧∧
(‥ )これに不満を持つ人も
\‐  いるみたいですね
 
  (‥ )自分が子供の頃に
      図鑑で見た復元図が
      正しいと思ってる
      だから
      そうじゃない復元図は
      間違っていると思うし
      復元図を成り立たせる
      その理屈も
      間違っていると思う
      そういうことだろうな
 
 人間は思いつきに後付けで理屈をつける。これ自体は悪いことではない。
 
 例えば、
 
 昨日の自分と今日の自分は同一個体の連続体である。
 
 この前提を疑う人はまずいないが、これは真実でも事実でもない。ただの思い込みだ。実際、この前提は論理でも経験でも正当化できないだろう。しかし少なくとも自分が自分でないという証拠がない以上、自分が自分であるという思い込みを疑う必要はない。
 
 かように、人間は論理では正当化できない思い込みを大前提としているし、その思いつきに後付けで理屈をつける。それが人間の日常的な思考であり、推論である。これ自体は問題無い。
 
 だがしかし、これは次のことを示しているように思われる。
 
 人間は、自分の思いつきと違うものは受け入れられないし、自分の思い込みと違うものを成立させる理屈は非論理的であると考えるだろう。
 
 ∧∧
(‥ )ティラノサウルスの化石から
\‐  羽毛が見つかった例はない
 
  (‥ )肉も見つかってないけどな
 
 そうである以上、ティラノサウルスには肉がありませんでした、ということにして良いか?
 
 ∧∧
( ‥)羽毛が見つからないのだから
    羽毛を描くなというのなら
    肉が見つからないのだから
    肉を描くなという理屈になる
 
  ( ‥)実際にはティラノサウルスが
    ‐□ 羽毛を持っていた根拠は
      ちゃんとあるけども
 
 そういうことを書いた本もすでにちゃんとある。
 
 ∧∧
(‥ )あなたも書いたよね
\‐
 
  (‥ )何度も書いたな
      ティラノサウルスが
      羽毛を持つ
      その根拠と説明なんて
      もう飽きちゃったけど
      今の本にも書こうか
 
 ティラノサウルスが羽毛を持つ根拠は、祖先に当たる種族や近縁種が軒並み羽毛を持っていたからだ。これは、ティラノサウルスは動物なのだから、生きていた時は骨だけじゃなくて肉もついていたでしょ? という推論の発展型である。つまり理屈は単純で、しかしそれゆえに手堅いものだ。
 
 だが、羽毛を持っていない復元図を正しいと思う人は、羽毛があるとする以上の根拠と理屈を非論理的と見なすであろう。
 
 ∧∧
(‥ )啓蒙するべき?
\‐
 
  (‥ )必要ないだろ
  
 以上の理屈からすれば羽毛付きのティラノが耐えられない人は宗旨替えなどしない。反対に羽毛のあるティラノサウルスの絵で育った世代は、これが当たり前だと思うだろう。そうして世代交代が進めば、羽毛付きを受け入れられない世代は消える。それだけだ。
 
 変革は旧世代の改宗や宗旨替えで起こるのではない。旧世代の死滅で起こる。これはいつでもなんでも繰り返されたことである。
 
 例:SFマニアは絶滅へと向かい、アニメが代わって興隆する。しばしばSFマニアはこの人気アニメのこのアイデアは、このSFのパクリだ、アニメマニアはなんでこんなものをありがたがるのか? と言い立てたりするが、これ自体がすでに置換が進行している証拠だ。置き換えが進行し、最後は消し去られてしまう過程の、まさにその中にあることを自覚せねばならぬ。
 
 あるいは老人を見れば分かるであろう? 彼らは子供の時、あるいは20代の時の知識と経験、あるいはこれまでの人生をただ反復するのみだ。
 
 老人は言うであろう? 若者も俺たちと同様に苦労すれば必ず見返りがあるはずだ、老人たちはそんな錆び付いた時代遅れのモデルをただオウムのように繰り返すばかりではないか。
 
 羽毛のあるティラノサウルスが気に入らない、というのもそれと同じであろう。単に子供の時に得た知識を反復しているにすぎぬ。
 
 ∧∧
(‥ )まあ、実際には
\‐  ティラノサウルスは羽毛を
    ほとんど失っていた
    はずですけどね
 
  (‥ )子供の頃は鳥のヒナ
      みたいだっただろうけど
      大きくなる過程で
      羽毛はまばらになるか
      失ってしまっただろうな
 
 大型動物は体積に対して表面積が小さくなる。体温の放熱が問題になるので断熱材である羽毛や体毛を失う傾向がある。だから大人のティラノは毛を二次的に少なくしただろう。
 
 そして、ティラノサウルスに羽毛をつけるべきか否か? というのはどうでも良い問題なのだ。なぜかというに、本来、羽毛はあったでしょ、という意見に落ち着いているからである。
 
 ∧∧
( ‥)むしろ問題は
 
  (‥ )どう描けば
      羽毛付きの
      ティラノサウルスが
      生物学的にもっともらしく
      なおかつ
      格好よくなるのか?
      課題はそこだよ
 
 あるいは思うのである。
 
 実のところ、世の中の”羽毛付きティラノサウルス”に対する不満の幾分かは、羽毛があることではなく、羽毛をつけたら格好わるく見えてしまったのが原因ではないかと。
 
 ∧∧
(‥ )...まあ確かに
\‐  他人様の絵をあーだこーだと
    言うのは良くないことですが
    羽毛付きのティラノは
    なんか今一ですよね
 
  (‥ )いやそれは
      俺も同じでね
      やっぱ格好よくならんのよ
      しょぼくなるのよな
      実はさ
      羽毛付きでなおかつ
      格好よく描いて
      それでいて
      生物的にもおかしくない
      そういう絵を描くのは
      ものすごく難しいのだよね
 
 しかもティラノサウルスはおそらく二次的に羽毛を失っている手合いである。その点では現在のゾウに似ていただろう。しかし一部には鱗も残していたと考えるのが妥当だ(*実際、肉食恐竜の化石にはそれを示唆するものがある)。これを考えると、納得がいけてなおかつ格好よい復元図は至難の業である。
 
 ∧∧
( ‥)あなたも個人的には
    恐竜には羽毛が無い方が
    ありがたかったのだよね
 
  (‥ )羽毛が無い頃は良かったよ
      骨に筋肉をのせて
      全体の形を取れば
      復元図になったからな
      形も取りやすい
      組み立てもしやすい
      理解もしやすい
      でも羽毛や体毛があると
      そうはいかなくなるんだ
 
 
 さりとて、楽だからという理由で物事をねじ曲げるわけにもいかぬのだ。
 
 
 

 

ブログ アーカイブ