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2018年6月26日火曜日

心折れた巨大な知識の空白 火星6月26日

 
 2016年、6月26日、火星は大シルチスが見えており、ここら辺はおおむね砂嵐が晴れてきたようである。



 =>http://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili/keitou/qa/mars2018.html
 
 
 とはいえ、ストームで砂が舞っていることには変わりなく、あいも変わらず、火星は真っ黄色な惑星だ。望遠鏡で覗いていても、模様が見えるのは一瞬、一瞬、しばらく、そしてまた一瞬。黄色く輝く夜空の炎である。
 
 さて


 UFOが好き。そういう人は星には興味がない。だから望遠鏡を覗かない。
 
 ∧∧
(‥ )UFOが好きで
\‐  望遠鏡で星を見るのも好き
    そういう人もいるだろうけど
 
  (‥ )そんな少数派を
      ことさら取り上げても
      事態の傾向は覆せん
 
 大勢は決まっているのだ。

 オカルトに恋した人間はオカルトが好きなのであって、宇宙に興味を持っているわけではない。本人自身がいかに宇宙の話に心踊らせても、実際には退屈な望遠鏡を覗くよりも、オカルト雑誌を読んで興奮している方が当然なのだ。
 
 オカルトと宇宙はまったく別の世界にいて、互いに興味を持っていない。
 
 だがしかし、かつて望遠鏡を覗く人々にもロマンというかオカルトが動機となっていた時期があった。そしてその対象は月と火星であった。
 
 ∧∧
(‥ )月は火山噴火があると言われ
\‐  発光現象や噴煙を見た!
    という人がいて
    火星は人工の運河はさすがに
    信じられなくなったけど
    極冠の雪解け水がもたらす
    湿った土地や
    植物が生える場所が
    まことしやかに
    信じられていたのである
 
  (‥ )アポロが月へいき
      マリナー号や
      バイキング号が火星へいく
      70年代まで
      そういうことが
      信じられていたのだよな
 
 望遠鏡で見る先に火山噴火や雨や植物があるに違いない。

 こうした期待は当時の天体観測者にとって、大きな動機、あるいはモチベーションだったらしい。
 
 ∧∧
(‥ )アポロ以後
\‐  バイキング以後の人間からすれば
    なにそれ? な話だよね
    火山噴火もなければ
    雨も降らず生き物もいない
    これが以後の人間の
    基本理解なのである
 
  (‥ )月は死んだ天体
      火星は死んだ天体
      現代人からすれば
      だから何???
      という話でしかないけど
      当時の人間からすれば
      この事実は
      衝撃だったみたいだね
 
 そもそも死んだ天体、という言葉自体、その重みと期待を裏切られた挫折をあらわしているだろう。
 
 命がないと知った時の人の絶望感たるや、哀れをさそうと同時に、失笑を禁じ得ないほど滑稽でもある。
 
 ∧∧
( ‥)反対に月の火山噴火は
    10億年以上前に終わった
    火星に生物はいない
    水も事実上存在せず
    存在しても
    基本的に凍りついてる
    そういう世界観で理解する
    あなたとしては
 
  (‥ )最初からそういう世界観で
      月や火星を見ている
      自分からすれば
      70年代以前の人たちって
      現在の月の火山噴火とか
      火星の生物とか植物とか
      そんなありもしない
      くだらないことに
      興味あったの???
      と驚くからな
 
 
 というか、そんな下らないことのために望遠鏡を覗いていたとか、そんな馬鹿馬鹿しいことが観測を続けるモチベーションであったとか、まったくもって理解不能だ。
 
 
 ∧∧
(‥ )でも最初の動機がそうだったら
\‐  そうなっちゃうんだよね
    そして動機と憧れの先に
    それが無いと知ったら
    そこで心が折れて
    二度と立ち上がれない
 
  (‥ )しょうがないことだが
      すげー迷惑なんだよな
 
 例えば月を望遠鏡でのぞいていると、なんだこれ? と面食らう地形がある。例えば大隕石衝突で形成され吹っ飛ばされた岩石流が、一部だけ黒く染まっているのだ。周囲の地形を考えると高低差では説明できない出来事である。ちょうどスプレーで塗料を吹きかけられたように、岩石流も平坦な地形も、高低関係なく黒く染まっている。なんらかの過程で、高低関係なく、上から堆積物が降り注がないと説明できないし、これを実現するには膨大なエネルギーが必要だ。
 
 ∧∧
( ‥)でっ調べて見ると
    実は割れ目噴火で
    噴出した溶岩の噴水が
    飛散して固まって
    舞い降りて作った
    構造なんだよね
    しかも地球の割れ目噴火が
    おもちゃに見える
    規模でないと説明できない
    ただし10億年単位の
    過去の出来事なんだけど
 
 
  ( ‥)10億年単位の過去
    ‐/ 心が折れたやつは
       そういう発見や知識を
       前にしても
       もう心踊らないのよ
 
 心が折れるってのは、こういうことなのだ。月は今でも生きている天体だ! そう信じていて、それが間違いだと知って心折れた人間は、10億年単位の過去に形成された成層構造にはもう見向きもしない。
 
 ∧∧
( ‥)10億年単位の物語を
    前にしても
    死んだ心は
    もう反応しないのである
 
  ( ‥)月の本も火星の本もよ
    ‐/ 70年代以後
       事実上、ぷつって
       途切れちゃうんだよね
       みんな心が折れて
       書くのをやめちまった
       のだろうな
 
 
 だから今の人は何にもないところから探索を始めねばならない。もっとも、ないのは日本語の文献だけなのであるが。
 
 ∧∧
(‥ )とはいえ日本語の文献がないと
\‐   めんどくさいことには
     変わりないんですけどね
 
  (‥ )過去の連中の心の挫折が
      空白を生み出してるんだ
      迷惑な話だぜ
 
 
 心折れた巨大な知識の空白が、ぽっかりとそこにあるのだ。   
      
 
     

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