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2014年2月19日水曜日

灰色の牢獄

 
 ゲルマン民族は優秀である。
 
 この言葉は、
 
 あなた方には生まれ持った権利があります。
 
 と言っていることに他ならない。
 
 さらに言えば
 
 あなた方には生まれ持った権利があります。しかし、その権利を不当にも奪われてきたのです。皆さん、立ってください。そして戦いましょう。生まれ持った権利を手にするために。
 
 そういう主張であったし、それを実現せんがための戦争であった。
 
 では、なにゆえに、このような主張をしなければならなかったのか?
 
 ∧∧
( ‥)そりゃあ当時の戦争が
    総動員の形式だから
    だよね
 
  (‥ )だから国民に直接、
      国民が全員持っている
      何かに向けて
      語りかける必要がある
      反対に、
      軍人貴族が幅を効かす
      戦争では
      こんなことは言わないか
      言うにしても貴族だけに
      言うのだよね
 
 *例:頼朝様のご恩を忘れたのですか by政子
 
 見方を戻せば
 
 ∧∧
(‥ )つまり、ヒトラーという人は
\‐  国民がいて、権利があって
    総動員が鍵となる状況の
    人であった
 
  (‥ )要するに彼は民主主義の
      使徒であったという
      ことだな
 
 一見すると彼が民主主義の使徒に見えないのは、彼と戦う側が、彼は民主主義の破壊者であり、悪魔であり憎むべき敵だ、と主張する必要があったこと、そして結果的に勝利したからに他ならない。
 
 *ヒトラーが勝利した世界では、たぶん、ガス室は無かったことにされているか、あるいは、あれは偉大な人の過ちであると意図的に糊塗されているんだろう。勝利して現政権の基礎を築いたが、あまりに巨大な失敗をしてしまった創業者を評価する時に、こういう二枚舌はよく使われる。
 
 ともあれ、
 
 ここで話を大きく飛ばす
 
 ∧∧
(‥ )元首制に移行して
\‐  じょじょに専制を強める
    ローマはオリエント的な
    専制政治、あるいは
    ファシズム的な警察国家に
    堕落して滅びた
    そう要約できる意見も
    あるわけですね
 
  (‥ )滅亡論ってのはなんでも
      そうなんだけども、
      答えを提案する当事者と
      その時代が抱えている
      問題が反映されるものだ
 
 以上のような意見も、ロシア革命とボルシェビキ支配の確立、そしてWW2の時に出て来たものだそうである。
 
 少数独裁と専制政治の暴虐、そしてファシズムへの嫌悪
 
 しかし、考えてみれば妙な話なんである。
 
 ローマ帝国は当時すでに一般市民を徴兵して軍隊に入れる、というか、市民は武器を持って戦争に参加する義務がある、なんてことはとっくの昔に止めていたからだ。
 
 ∧∧
( ‥)つまり、権利と獲得の自由
    参加への義務を説いた
    ヒットラー総統の
    主張と目標とは
    意味合いがまるで違うと
 
  ( ‥)総力戦、総動員の
    ‐□ 世界におけるファシズムと
      それに対して、
      徴兵制や軍役の義務なんて
      とっくの昔になくなって
      国家の色々な側面を
      宗教や法律で規制し
      統制しようとした
      後期ローマ
      この二つは同列には
      扱えないよねえ
 
 つまり統制の意味も目的も全然、あるいはかなり違うってことになる。
 
 ∧∧
(‥ )でも、ローマの目的は、
\‐  一目瞭然ですよね?
 
  (‥ )国家を運営する
      究極的には国家を防衛する
      そのために必要な
      予算を集め
      仕組みを機能させる
      ためのものだよね
 
 危機に瀕した国家は問題を解決しなければならず、有限な資金をかき集める必要がある。その時、ヒトラーはあなた方には権利がある、と国民に奮起を呼びかけ、ローマは単純に必要な義務を指定した。
 
 ∧∧
( ‥)どちらも統制はした
    共通点を見れば同じだけど
    しかし、
    相違点を見ればずいぶん
    違うじゃないかと
 
  (‥ )素人を恐るべき兵士に
      変えてしまう機械、銃
      これがあるからこそ
      民主主義が成立し
      農奴は市民になり
      市民は恐るべき軍隊になる
      だからこそヒトラーは
      大動員をかける必要がある
      彼は所詮は民主主義と
      市民の人でしかないわけだ
 
 それに対して、古代ローマはどうもそうではなかった、というか明らかにそうではなかった。そもそも銃がないんだから当たり前。
 
 ∧∧
(‥ )ということは、ローマが
\‐  法律と宗教で統制的な
    国家になっていく過程とは
    一部の人が揶揄した
    ファシズムとは全然違う
    理由に基づくものだろうと
 
  (‥ )評価する人がその時代の
      困難を滅亡論に反映させる
      というのなら、答えは
      明白だよね
 
 ∧∧
( ‥)あなたがたは略奪や奴隷化で
    富を作ることができず
    もはや国内で格差を作ること
    でしか富を築けない
  
  (‥ )それにも関わらず
      防衛しなければならない
      低賃金で最高の効率を
      上げる事でなんとか
      状況を回さないといけない
      こんな条件で人を動かす
      それには義務に熱狂する
      宗教的情熱と
      自主的に統制に従う
      道徳的な
      信念がなければならない
      それは国家が
      ブラック企業化するって
      ことなんだよな
 
 もしもヒトラーの生存圏とやらが土地と資源と奴隷を保証するものだったら、ファシズムとかなんとか、そういう理屈っぽい言葉は単なるメッキで、ひっぺ剥がせば、それは民主主義に他ならない、ということになる。
 
 それは輝かしく、人々を活気づける夢であり、それゆえに実現不可能なものであったとも言える。なんといっても夢は、所詮は夢なのだ。民主主義とは結局のところ奴隷で維持される暴虐で、滅びの道を歩んでいる。そうである以上、民主主義のメッキであるファシズムにも自動的に先がない。
 
 ∧∧
(‥ )実際の未来は国家の
\‐   ブラック企業化で
    そこにはうんざりする
    灰色の世界しかないだろう
 
  (‥ )宗教と道徳は灰色の現実に
      はさまった
      ピンク色の肉でな
      無いよりましだが
      味がいいのは一口目
      だけだろうねえ
 
 さてもさても、民主主義の終焉と、ファシズムの熱狂がありえない、灰色の牢獄へ向かう旅を続けようではないか。
 
 
 これはhilihiliのhilihili: この世界がただの遊園地だったらどうする?の続き  
      
    

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