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2019年4月6日土曜日

貨幣改鋳に沈黙するタキトゥス

 
 紀元1世紀、ローマ帝国の元老院議員であり歴史家であったタキトゥス。その作品「年代記」は初代皇帝アウグストウゥスからネロ帝までを記述する。
 
 ∧∧
(‥ )でもあんまり詳しいことは
\‐   書いていないね・・・
 
  (‥ )まあ詳しくは書いているが
      ほとんどがスキャンダルや
      ゴシップネタだからな
 
 ネロ帝が妻を殺し、新しい妻も殺し、母を殺し、自分の先生であるセネカを殺した。
 
 なるほど? しかしそれが一体なんだというのだろう? どうでもいい話ではないか。

 
 ∧∧
(‥ )言い換えればそれこそが
\‐  タキトゥスさんにとって
    重要なことなのだね
    彼は道徳的退廃をこそ
    問題視したと言うからね
 
  (‥ )その一方で
      ネロ帝が貨幣の改鋳を
      行った話は出てこないな
 
 
 ネロ皇帝は貨幣の質を落とし、その流通量を増やしたという。このような改鋳は悪貨を作って財政をしのぐ悪手だとよく言われるし、このような事例に出くわすと、歴史家は脊髄反射のように悪政と書き立てる。
 
 しかし、貨幣経済が成長する時にはそもそも貨幣が必要なのであって、ネロ帝の改鋳は経済の要望に応えたものとも受け取れる。実際、我々だって金貨や銀貨など使っていない。あっても5万円玉とか3万円玉のようなものなのだから、不便なだけだろう。
 
 ∧∧
(‥ )でもタキトゥスさん
\‐  貨幣についてはなんにも
    書いてないねえ...
 
  (‥ )タキトゥスは経済に
      まったく興味なかった
      のかもしれないなあ
 
 これは彼が元老院議員であったことを考えるとかなり奇妙なことのようにも思われる。共和制時代の元老院議員は兵役をこなし、財務を担当し、一通り国家の業務をこなして出世したと聞いた。
 
 しかしタキトゥスのいた紀元1世紀。この時代の元老院議員とは財政にあまり関わらないものであったのか?
 
 
 

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