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2014年8月31日日曜日

物語は現実をシェイプ、整形したもの

 
 
  ( ‥)昔、女王の教室という
      ドラマがあって
 
 ∧∧
(‥ )得体の知れない女教師が
\‐  小学生である主人公たちに
    脅迫なども用いた
    統制を強いるが
    それ自体が彼女の計画で
    それによって主人公たちは
    自主性へと至る...
    だかなんだかですか
 
 これに対し、
 
 いいかね、あの物語にはデブがいないのだ、それはなぜか? と力説した奴がいた。
 
 彼の主張は明瞭である。デブは意図的に省かれたのだよ。なぜなら、デブはデブ特有の問題を引き起こすからだ。つまりデブキャラを配置した瞬間から、デブが攻撃対象になってしまう。そうである以上、必ずやデブは話題と事件の中心になる。つまりデブが主人公になってしまうのだ。
 
 物語の方向性がデブを中心としてそれてしまう。それを阻止するためにデブキャラは配置されなかったのだ。
 
 確かにそうである。もしこの処置がなくば物語は変る。
 
 デブの失敗によって連帯責任をとらされた同級生はデブをリンチするだろう。デブは生まれ変わる。デブは努力する。デブは皆を見返す。デブはヒーローになる。そして卒業式の日に女教師を射殺するのだ。
 
 ∧∧
( ‥)どこのフルメタルジャケット
    だよ
 
  ( ‥)でも言わんとすることは
    ‐□ 分かるだろ?
      物語を成立させるために
      現実世界にある要素は
      適時切り落とされ
      あるいは誇張され
      物語世界へと
      整形されるのだ
 
  物語世界はシェイプスされた存在で、接合手術の結果生まれた非現実空間である。持って生まれた四肢を取り除き、機械に置き換えたサイボーグのようなものだと言えば良いか。

 
 これを踏まえるに例えばの話
 
 ∧∧
(‥ )エヴァンゲリオンの
\‐  ネルフ機関がブラック企業では
    ない世界
 
  (‥ )それでも危機感を出すには
      あれかな?
      予算自体はあるのに
      作るものが高価で特別で
      武装の配備が追いつかない
      自転車操業状態の
      町工場みたいな感じに
      なるのかな?
 
 シンジくんの目の前で使徒に倒された零号機、放り出されたエントリープラグから顔を出すゲンドウお父さん。シンジ...やっぱ父さんでは無理だわ、後は頼む、ぐへ。博士、銃とかないんですか? ごめんなさい、開発中でまだチキチキカッターしかないの...。カッターってどこのあぶない人ですか。うわっ、きたー!
 
 ∧∧
( ‥)雰囲気が台無しですな
 
  ( ‥)シンジくんは高額の
    ‐□ 給料をもらっているのだ
      という人もいるけど
      一度でもそういうことを
      示唆したら
      やっぱドラマが
      あらぬ方向へいくよな
 
 シンジくんがケンスケやトウジと買い食いするなんて描写があるのか怪しいものだ。というか、シンジくんは高額の給料をもらっていると知ってしまった視聴者は、その光景をもう素直に見れないだろう。そしてシンジくんがトウジの妹の入院費を出すことになるだろう。そうでなければ人でなしであるし、シンジくんの悩みも葛藤も、全部、空々しく感じて、見てなどいられまい。
 
 ∧∧
(‥ )それこそ妹ちゃんの入院費を
\‐  稼ぐために戦う話に
    なっちゃうかもね
 
  (‥ )使徒1体1000万だー!
      ぴかりん
      あびゃー!
     (正八面体使徒の光線直撃)
      みたいになるのかな?
      物語の中心が妹との関係に
      変るから
      アスカやレイの必要性が
      薄まってしまうよね

 
 さてもさても、物語とは、それを描写したら駄目だよ、ということがよくある。考えてみれば物語とはありうる可能性から起こりうるすべての時間線をのぞいてみて、そうして取捨選択されたものだとも言える。
 
 ∧∧
(‥ )ネルフ機関が理不尽な
\‐  集団であることも
    妹ちゃんの影が薄いのも
    シンジくんの収入が
    描写されないのも
    必然の理由があるのだと
 
  (‥ )少なくとも、制作者は
      ありうる設定から起きる
      それぞれの物語の
      未来と時間線に
      首を突っ込んでみた
      その中から
      破綻が起きないものを
      選んだ
      そういうことだろう
      からね
 
 文章作りもそうだけども、物語もまたそういうものだろう。目前ではいかにもよさげな一手に見えるが、数手先まで読んでみると破綻が起こる、だからその手を打てない、ということがある。
 
 言い換えてしまうと、目前の問題を解決できる、このことに有頂天になって悪手を打つような人は、物語作りにも文章を書くのにも向いていない。というか、あらゆることに向いていないのではなかろうか。そんな彼に出来るのは、今、目前のことをただべらべらと論評することだけだろう。実際、評論家は自分の主張の先が破綻していようがなんだろうが、そんなことはおかまいなしに語る。
 
 ∧∧
( ‥)評論家はともかく
    作り手側として
    むしろ課題なのは
    受取側の状況が変ることで
    物語の解釈や印象や
    連想が変ってしまうという
    ことですね
 
  ( ‥)ネルフからブラック企業を
    ‐□ 連想するようになる
      これは時代が変ったこと
      日本の経済とその構造が
      変ってしまったことを
      示しているわけだ
      解釈と連想が変る
      この状況こそが
      色々な意味で深刻なこと
      なのだよな

 
 これはhilihiliのhilihili: 学校の物語がブラック企業の物語になったの続き
 
 
      

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