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2014年8月12日火曜日

実はマルサスから一歩も出ていない

 
 
 
 台風11号は過ぎ去り、昼間は青空、そして夜は曇り空だが風が強く、晴れ間も見えた
 
 ∧∧ 満月がきれーい
( ‥)
 ‐( ‥)散歩へいくか
 
 曇り空の方が面白い写真が撮れるのでやってみたけども、風が強くて動く雲と木の葉がぶれる。写真を見ると目が少し痛くなってくる。
 






















 
 流星を2つ見た。ひとつは緑色で非常に明るかった。流れた方角からして、13日に極大をむかえるペルセウス座流星群のものなんだろう。

 さて

 例えばこんな意見が曰く
 
 マルサスは人口論で、人口は幾何級数的に増えるが、食料は等差級数的にしか増えないと書いた。それゆえに食料危機が起こるというが、それは嘘だ。食料がないと人口は増えないのだから、食料より先に人口増加が起こるわけがない。ゆえに危機も起こらない。
 
 ∧∧
(‥ )だ、そうですが
\‐
 
  (‥ )いや、マルサスの指摘は
      そういう内容じゃ
      ないよなあ
 
 あの話はようするに、
 
 人間はねずみ算式に倍々で増えることも可能だ。しかし、2人が4人になっても8人になっても、たとえ全員が働けたとしても、一人が耕して管理できる畑の面積それ自体は変らない。つまり人口の増加は食料の増産よりも大きい。しかるに食料が支えられる人間の数には限りがある。
 

 
 ∧∧
( ‥)ということは
    畑が養える限界まで
    人口が増える
    我が家には耕作できる大人が
    2人いますが
    養うべき子供が8人いまして
    今やいっぱいいっぱい
 
  ( ‥)マルサスの言ってることは
    ‐□ 人間は永久に
      貧しさから抜け出せないよ
      ということなんだけども

 
 ひるがえれば、冒頭の話は、マルサスの指摘を、食料より”先に”人口増加が起こる、と解釈したのが間違いなのだ。そうではなくて、人口増加と食料増産は同時にレースしている。そして人口増加の方がスピードが速いから、食料増産に必然的に追いつく。そういうことである。
 
 ∧∧
( ‥)そして人口自体は
    食料の生産量に制限されるから
    食うや食わずやの人間に
    あふれることになる
 
  ( ‥)つまり人間は
    ‐□ 永久に貧乏です
 
 
 *冒頭の話は、速度の違いを時系列の違いに、つまり速度の話を順番だと勘違いして生じた誤解だと言える。
 
 
 ∧∧
(‥ )でも、これを打開する方法が
\‐   あるんだよね
 
  (‥ )農業生産の効率自体を
      高めれば良いのだ

 
 
 かつてのような世界。一人の労働で4人を支えるのが精一杯の世界から、化学肥料と農薬の使用、品種改良と機械化によってはるかに多くの人を支えることが可能になった。
 
 ∧∧
( ‥)これなら人口増加も
    怖くない
 
  ( ‥)例えば1人の労働で
    ‐□ 100人を支えられる場合
       家族が100人なんて
       ことはないわけで
       人口増加を緩衝できる
 
 より正確に言い換えればこうかもしれぬ。
 
 一人当たりの食料生産量が人間の繁殖可能な人数以上の人間を養えるようになった場合、この問題は解決すると
 
 ∧∧
(‥ )でも実際にはこれも
\‐   正しくはないですね
 
   (‥ )より正確にはあれだ
       もはや事は
       家族を養う問題ではない
       膨大な食料生産を
       可能にした
       そのインフラ
       これ自体を
       維持するだけの生産が
       農業になければならない
 
 化学肥料を作る工場とそこで働く人を、農薬を作る工場とその従業員、それらの機械を維持する工業群と従業員、それらを運ぶ運輸にたずさわる人々と、それを維持する機械と、それらを維持するための工場と、それを維持するための技術者、そして農業試験場とこれらすべてを維持するための人材を供給する学校と教育者
 
 ∧∧
( ‥)そして発電所と
    送電網と
    水路と水道と
    エンジンと
    道路と
    でも今や農業に必要なのは
    なによりも石油ですよ
 
   ( ‥)我々が直面する
     ‐□ 究極的な問題が
       ここにあるのだ
 
 
 人力よりも畜力よりもはるかに巨大な力を生み出す動力装置、畑を耕し、収穫し、そしてそれを運搬する。それを動かす石油。この石油を我々は猛烈な勢いで消費している。
 
 石油が植物プランクトンの成れの果てであり、数百万年以上に及ぶ光合成の産物であり、太陽エネルギーを化学エネルギーへ転換したものであるとすると、問題点はもはや明白だ。
 
 ∧∧
(‥ )今のあなたたちの
\‐  食料生産の根幹とは
    実は貯金の食いつぶし
    でしかない
 
  (‥ )数百万年以上の貯金を
      数百年で使い尽くす
      勢いなのでな
 
 つまり、我々の偉大なる成果とは、実はただの幻でしかない、ということでもある。これは他のことについても言える。地球の可能な耕作面積は無限ではないし、水の供給量の問題もある。地域によっては農業に使用している地下水は過去に蓄えられたもので、これもまた貯金の食いつぶしでしかない。問題を解決したわけではない。未来へ追いやっているだけなのだ。
 
 *つまり現在の農業の視点でマルサスを否定することは、これもまた正しくないだろう。
 
 ∧∧
( ‥)マルサスさんが指摘した
    限界から
    人類は一歩たりとも
    外へ出たことがない
    出たというのは
    ただの幻
 
  ( ‥)我々が直面する問題は
    ‐□ 物理的な制約でな
      これは覆しようが無い
      ものなのだ
 
 究極的には統制する、という選択肢もありうるんだろう。農業に従事する人間の割合を決め、それを維持するための工業力とそれに従事する人間の割合を決め、それらを調整する官僚たちの割合を決め、すべての子供たちをそれらの役割へと配分し、各自に義務を負わせる世界。
 
 ∧∧
( ‥)技術力が可能ならしめた
    農業の生産効率の拡大枠が
    以上の運営を可能にした場合
    帝国は維持が可能になる
 
  ( ‥)今の僕らの文明と違って
    ‐□ 貯金が無い世界だ
      その状況でこれを
      可能ならしめようと
      あらゆるところが
      統制されるだろうな
 
 人間が作るべき子供の数、人間が払うべき税金の金額、結婚と子育ては義務になり、それは強制されると同時に、数自体は指定されるだろう。少なくとも、推奨されること疑いない。
 
 ∧∧
(‥ )ここでさらに他国との
\‐  競合があるのだよね
 
  (‥ )これを考えるとさ
      後期ローマ帝国の
      軍人皇帝たちが
      本当は何と戦っていたのか
      それが見えてくるよね
 
 確かに敵は国境外のゲルマン人であり、あるいはペルシャ人であった。そしてそれこそが軍隊を維持しなければいけない理由なのだが、本当の問題はそこではなかったんだろう。
 
 ∧∧
(‥ )キリスト教徒の著述家は
\‐  迫害者であった
    ディオクレティアヌス帝を
    ”軍隊を過剰に増やした”と
    批判したよね
 
  (‥ )多分、今の僕らと
      同じだったんだろうな
 
 おそらく、今の私たちと同じで、最高指導者の立場など著述家は考えもしなかったんだろう。皇帝たちが直面した問題など考慮もしなかったんだろう。農業と農村とそれを維持する諸々を守るために必要な軍隊と、軍隊それ自身を維持するための農民の数と農業生産、そのバランスを計算したこともなかったんだろう。そしておそらく、自分の立場から見た愚痴と不満だけを正論にして批判したのだろう。そこにあるのは理想から現実を否定する行為であり、夢の国を信じる上から目線ではなかったか? 現実と苦闘した人々をそうして罵倒する行為ではなかったか?
 
 ∧∧
(‥ )愚痴と不満を言うのは
\‐  しかたないことですけどね
 
  (‥ )問題はそれを
      ”正論”だとすることよ
 
 
 
 

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