例えばフジカンゾウを見た時、思った。彼らの羽状複葉は同属の他の種よりも小葉の数が多いのだから、彼らは原始的ではないのか? だとしたらフジカンゾウの”茎までがべたつく”という形質もまた原始形質ではないのか?
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( ‥)でもその”お話”には幾つも仮定とか前提が含まれていますね。
(‥ )しかり。
1:羽状複葉はヌスビトハギ属の内部で3つ以上→3つという方向性を持って進化している
2:別個の形質である”茎までべたつく”という形質もそれとリンクした方向性を持っている(例えば固有の派生形質ではない)
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( ‥)こんな前提、壊すことはたやすいでしょ?
(‥ )そりゃそうだ。無意識に仮定しているとはいえ、これは
ただの前提にすぎないからね。
例えば逆のことを/あるいは違う前提を挿入すればいい。それで”お話”はおしまい。
∧∧
( ‥)進化の歴史を探るさいに最初にシナリオを用意してはいけない
そういうことでもありますね。
(‥ )シナリオ、あるいは”お話”というのは所詮、第一印象であって
あるいはごく少数のデータを使っただけの危ういものだって
ことだな。実は多数のデータを無視しているので結果的に
そうしたデータを無視したつけを後で払うということもでもある。
いわゆるあれ。人間が何かの体系を作る時、実のところ”ごく少数の形質だけを取り上げて、それを並べているだけだ”というやつ。
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( ‥)まさにフジカンゾウとヌスビトハギを見た時に
あなたが思いついてしまった思考過程、そのままですね。
( ‥)今度のエッセイで、こういうことは悪い事例だから
-□ やっちゃいかんと書くことにしよう。
一般的に人間の観察力ってのは実は大したことがない。例えば葉っぱだけを見せて同定させてみればいい。あるいはこう。オレ様鳥進化論を語っている人たちに坐骨だけを見せて、それが何の坐骨か同定できるかやらせてみればいい。
( ‥)形態に基づく同定のテクニックをなめちゃいかん
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( ‥)でもそう言う作業が扱うデータでは系統は再現できないでしょ?
しかり。そういう時に使えるデータ。例えば分類学が集めて扱うデータのかなりな部分は系統学では使えない。シドニー・マントンが賞賛されると同時に批判されるのもこの点でしょ? 彼女は途方もないデータを辛抱強く集めたけども、原始形質と派生形質をごっちゃにして系統を語ったので、その点は結局批判されることになった。
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( ‥)でも業績はすごいですよね?
(‥ )本を見るとあっけにとられるからなあ。
すげーすげー。でもデータの扱いに問題があった。だからコンウェイ・モリスに”彼女はすごいけども、残念ながら間違っていたと思う”と書かれるわけでありますのでしょうよ。
つまるところ、データは大量にある。しかしデータの中には系統解析に使えないものがある、そのままでは破綻するし、しかもおうおうにして人間はそれらを脳内で把握しきれないし、扱うのにも限界がある。だからおそらく一部の形質だけを使って並べてしまう、そして
∧∧
( ‥)そうして作ったシナリオは無視したデータにしばしば裏切られると
(‥ )データに使えないものもある、ということを失念していると
特にそうなるだろうね。
例えばフェデューシ○教授。オレ様鳥進化論の親玉ともいうべきおっさん。シナリオを作ってしまったばかりに人生の後半は防衛戦を戦うはめに。
∧∧
( ‥)でも90年代まではそれでも良かったのかもしれませんね
(‥ )そうねえ。あの時までは知らない人が聞いたら
へー、そんな異論があるんだー、というぐらいには
評価してもらえただろうしね。
当時はまだ、データはこう扱うべきです。そう言って分岐学やら系統学やらが攻め込んできたばっかりだったので、データ処理という点とか、科学哲学の上ではあなたのやりかたには問題あるんじゃないですか?(シナリオが先ではへたするとトートロジーになりかねないでしょ?)とか、そういう素人には分かりにくい部分で争っていたわけだし。
∧∧
( ‥)破滅の発端はたぶん、中国の羽毛恐竜化石ですね
(‥ )それだけでないけども、あれはきつかったろうな。
羽毛? いやいやこれはほぐれたコラーゲン分子だろ? そういう発見初期における彼の言い分もそれなりにもっともなんだけども、どんどこ見つかって、しかも機能的としか思えない形態を示すものが見つかるともはや弁護しきれない。一時、アーケオラプトル騒動があった時に、ほら見ろ、中国の化石は偽物なんだ!!と怪気炎を上げたけども。
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( ‥)ピルトダウンが偽物だから他のも偽物だって論法ですね。
( ‥)ああいう隙のあること言うから創造論者とかに
学説(オレ様シナリオ)を利用されちまうんだよ。
もはや不当な重み付けに頼るしかなく、ロンギスクアマの羽毛に頼ってみたり、発生学のデータと形態学のデータのコンフリクトであるはずの、123と234問題を鳥と恐竜の対立問題にすり替えてみたりと、学説(オレ様シナリオ)を延命するために必死だったが、そこにもたてつづけて徹甲弾を打ち込まれる始末。1986年から数えて23年目、こんな短期間でここまで戦況が悪化するとは、本人も含めて誰も想像していなかったのではなかろうか? もはや端から見てると満身創痍。さえていることも言っているのだからもったいないとしか思えない。
それもこれもオレ様シナリオなんかに執着するからいかんのだ。