そういえば
( ‥)科学を扱っている編集部にはよく「おかしな人」が
「論文(自称)」を投稿してきたり、新説を披露するために
おとずれることがしばしばある。
∧∧
( ‥)まあ、そういう話はよく聞きますね。
新説を思いつく人間や、これまで誰も証明したことがない問題を解いた、新しい理論を思いついた、原稿にした、ってのは世の中には掃いて捨てるほど事例があって、連中は身の回りの人には黙っているか、注目されていないだけで、うじゃうじゃいるっぽい。
∧∧
( ‥)そして、送りつけられたそういう「論文」はゴミ箱へ直行すると
(‥ )ある意味、もったいない話だがね。
ああ、でも、オレ、ひとつもってるな。
某所に送りつけられたキ(表記不可能)な論文をもらい受けてきた。
とまあ、
世の中には「我こそ自然を探求できた、数学を解いた」と思い込む人は多い。
∧∧
( ‥)でも、一個人がおいそれとそんなことができるような
状況に、もはや科学も数学もないですよね。
( ‥)あまりにも複雑、高度化した、とでもいうのかね。
-□ 才能があってなおかつ訓練を積んだ研究者でも
手に負えない部分があるというか。
でも、そういう体系が充分にできる前は個人が「ごっこ」に近い形で(それが真剣であれ、病的であれ)、自然を理解できた、と思い込んでも他人にはその間違いが分からない時代があった。
中世の錬金術師、トマス・ノートンさん。なんでも師匠と40日間すごして、錬金術の秘密をすべて教えてもらったそうな(「錬金術師」人文書院 1978 [The Alchemists, Founders of Modern Chemistry] 1949)。
∧∧
( ‥)40日って・・・・
(‥ )当時の理論体系がものっすごい単純だったという
□- ことなのかな?
あるいは賢者の石を作るなりなんなり、その手順、あるいはその手順に行き着く手順のことさえ分かればそれでいい、ということか。
∧∧
( ‥)1つの化学実験の行程さえ分かれば
それで全部が分かった、という世界観なんですかね?
(‥ )錬金術の性質上、原理的にそうなるのかね?
ノートンさんではないけども、比較的具体的な錬金術の作業工程を現代語訳(引用前出:pp141)すると・・・・・
∧∧
(‥ )水銀を金に変える賢者の石の製法、硝酸によって金と銀の塩を作り
□- 水銀を加え、以下の手法に従えば今で言う水銀による
金のアマルガムが・・・・
(‥ )まあ、結果は聞いてがっかりだけども
こういうのが錬金術の行程だとしたら
確かに40日でマスターできるかもね。
いやまあ、当時の壊れやすい粗悪な器具でこうした行程をマスターできるってのは考えてみればたいしたもんだし、体を動かしている点では、へたれなオレ様理論屋よりもずいぶんまともではあるんだけど。
ところで
(‥ )別の文献によると1619年には金と銀の合金から
□- 硝酸を用いれば銀だけを取り出せること、これぞ
原子論の証拠である、という主張と実験が
あったそうだけども。
∧∧
( ‥)あら、びっくり。
硝酸に溶けた銀に炭酸カリウムを加えて炭酸銀にして沈殿させた後に、るつぼで融解、銀だけを取り出す。
そうな。