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2010年9月4日土曜日

ニセ科学も科学もそんなものは実在しない


 人間はしばしば、ほんのごく少数の形質に注目して、物事をグルーピングしたりカテゴライズしたりする。

 ∧∧
( ‥)なぜに?

      (‥ )人間の脳の容量には限界があって、ほんの幾つかの
          恣意的に選んだデータでものをくくって
          語るのが精一杯なのよ。たぶん。

 ∧∧
( ‥)例えば?

      (‥ )科学とは以下のように定義できる、ニセ科学とは
          次のように定義できる。こういうのって、いかにも
          データが少ないでございますって感じだろ?

 大量のデータを動員したら、そんなんじゃすまないよね。

 ∧∧
( ‥)そしてですよ、その定義が指定したグルーピングや
    カテゴライズの妥当性はいかに?

      (‥ )それもさることながら、使う定義が単純、
          たぶん、定義に用いた特徴/形質が
          少ないとしたら、これはかなり深刻な
          ことを示しているよね。

 科学もニセ科学もあるいは思想も哲学も、あるいは漫画でも小説でも文化でもなんでもいい。人から人へ伝播するものはコピーされ、伝えられていく。それはそうした無数の事柄や要素が複雑怪奇に織り合ったネットワーク(いわば系統樹)になっていると思うのだけども。

      (‥ )そうした無数の要素や動作や特徴が伝播されていく過程で
          ”あるひとつの特徴”に注目したとするよね?
 ∧∧
( ‥)はいはい


 その特徴に注目して、その特徴を追跡した時、その特徴が以上のネットワークの途中で、ふっ、と消えてしまうことはあるか?

 ∧∧
( ‥)そりゃああるでしょう。生物の系統樹では、例えば
    陸上脊椎動物はエラを失いましたよね

      (‥ )でも、もちろん他の形質を動員すれば、
          陸上脊椎動物がひとつの系統群で
          あることは論証できるよね?

 あるいはこう

 ムハイサンショウウオは二次的に肺を失っている陸上脊椎動物。肺を持つものが陸上脊椎動物であるという定義はムハイサンショウウオを陸上脊椎動物から除外するが、無数の形質を動員して得た推論はそうでないことを支持する。

 ∧∧
( ‥)人間の文化や伝統、科学もそれと同じでしょ?

      (‥ )とっ、言うことはだ。ひとつの特徴にだけ
          注目した場合、その特徴が消失してしまうと、
          ネットワークはあるのに、ネットワーク自体は
          追跡できなくなる。
          例えばの話、天動説に注目すると、16世紀
           あたりから天文学を追跡できなくなる。

 ∧∧
( ‥)それで?

      (‥ )ダーウィンの進化理論からコピーにコピーを
          重ねて劣化して、さらにはマルクス主義やら
          他の色々な発想を水平遺伝よろしく
           取り込んだルイセンコ理論。あれは科学か?

 ∧∧
( ‥)科学ではないですよね?
    最低限、ダーウィンさんの進化理論はもうほとんど
    追跡不可能なぐらい消失していると思いますよ。
    

      ( ‥)本人達は科学であると自称したし、
          そういう形質もまだわずかに残っているけども
          一般的には科学でもなんでもない、
           最悪の意味での疑似科学とされているよね?


 ある形質に注目すると、ネットワークの派生的なもの(注目した形質を二次的に消失させたもの)を追跡できなくなる。

 あるいは反対に祖先を辿って時間をさかのぼると、あるところから派生的な形質が”派生的でない状態”になる(地動説が消えて天動説になる:実際にはこんなに単純なことではないですが)ために系統を追跡できなくなる。

 使った形質が少ないと、こういうのがもろに効いてくる。

 現実の姿や関係性を再現できない。

 定義うんぬんというのは(便宜的だと分かっているのでなければ)いかにもデータが少ないことを反映していそうだ。


      (‥ )科学から産まれた異常科学ってあるよな。
          科学が科学と呼べないような思想や理論から
          誕生したこともある。
 ∧∧
( ‥)まあ、そりゃあありますね。

 受け継がれて織り成す知識や考えの中に、私たちが科学と呼ぶ部分があり、私たちが非科学、ニセ科学、疑似科学、異常科学、病的科学、黒魔術、宗教、などなどと呼ぶ部分がある。

 ∧∧
( ‥)つまり、科学もニセ科学もネットワーク/系統を
    正確に反映したものではないと。

      (‥ )系統学で言うところの偽系統群。つまり
          実際に過去から現在、そして未来まで続くだろう
           無数の知識、事柄、発想、アイデア、テクニック
            これらが織り成す系統から”ある特徴に注目して”
             部分的に恣意的に切り出したもの。

 それが科学やニセ科学であって

 そんなものは現実でもないし、実際には存在しない。

 ∧∧
( ‥)つまり科学もニセ科学も実在しないと。

      (‥ )肉食動物みたいなもんじゃないか?
          肉を食べる、という特徴でくくっているけども
          肉食の昆虫、哺乳類、鳥、爬虫類、や魚、
          ばらばらの系統に由来するよね。

 ∧∧
( ‥)パンダとかある種のクマのように、肉食の系譜から
    植物食のものも誕生しますしね。
    肉食動物という単語は、系統という、
    自然界のパターンを生み出した存在を反映していないですねえ。
    

      (‥ )でも、肉食動物というカテゴリーが存在しないもので
          あったとしても、肉食動物とされた個々の動物の
           性能や能力は個別に判断できるんだよな。

 科学やニセ科学という分類が実は存在しない恣意的なものでしかなくても、それでも個々の事例の妥当性の判断に困ることはない。


 

 
          

 

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