自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2014年11月22日土曜日
硫酸星人よりも硝酸星人
いて座=>Untitled Document
おうし座=>Untitled Document
∧∧
(‥ )いて座さんは形が
\‐ はっきりしませんね
(‥ )弓が主体だと
見るべきだろうなあ
いて座はギリシャ神話では半人半馬の存在だが、オリジナルであるメソポタミアでは、それとはちょっと違う存在、パビルサグであった。
*パビルサグはネットで検索をかけると、なんかちょっとそれは違うよね、というゲームのモンスターが出てきてしまうので割愛する。古式ゆかしきメソポタミアの文化はなかなかに伝承されがたいものだ。
さてもさても
我々は酸素を呼吸する。
だが、この地球には他の元素と結合した酸素の酸化力を利用して呼吸するものもいる。
∧∧
(‥ )例えば硫酸とかね
\‐
(‥ )つまり硫酸呼吸だ
もしそれが主流になっている惑星だったら一体全体どういう世界であったろうか?
∧∧
( ‥)単純に考えればあれですか
光エネルギーで硫酸を
作っている生物が
いるんですかね?
それが植物で
その生成物である硫酸を
使って呼吸する
( ‥)防御用に硫酸を作る
‐□ 海藻なら
地球にもいるし
かじるとめちゃくちゃ
すっぱいんだけどさ
ああいう感じなのかな
しかし、酸素と違って硫酸は液体だ。硫酸惑星の動物たちは大気を吸うのではなく、硫酸を含んだ水か、あるいは生物を食べなくてはいけない。
∧∧
(‥ )食事のために食べるというより
\‐ 呼吸のために”食べる”量の方が
多いわけだね
(‥ )それを考えるとあれだな
顎の構造が
脊椎動物的なのか
あるいは
節足動物的なのか
いずれにせよ
雑食に向いた
構造なのだろうな
多分、食べ方が汚いかもしれない。草だろうが、葉っぱだろうが、ナメクジや昆虫に該当するような小さな動物だろうが、手当たり次第に口に運んで、ぼりぼり食べてはぺっと吐き出しているのかもしれない。呑み込んでも良いだろうが、汁気の多いものは以上のようにするだろう。つぶして吸って、殻とか外骨格は吐き捨てているのではないだろうか?
∧∧
( ‥)植物は動物に
どんどん食われるから
どんどん葉っぱを伸ばすの
ですかねえ?
(‥ )地球より食害がひどいよね
でも
食われたら困る器官は
ちょっと手が届きにくい
地下とかに隠しておけば
十分かもな
あるいは
ちょっと固い外皮で
守るだけで良いかもしれん
動物たちは呼吸のために食っているのである。少し面倒な作りにするだけで、相当防御になりそうだ。
∧∧
(‥ )硫酸呼吸は酸素呼吸よりも
\‐ 生み出せるエネルギーは
低いんじゃ
ありませんでしたっけ?
(‥ )それを考えると
変温動物しかいないかもな
人間のように体温を一定に保つ動物は食べたものの多くを燃やして熱にしてしまう。燃やすとは呼吸なわけで、生み出せるエネルギーがさほど多くないとしたら、恒温動物であるのは厳しいかもしれない。
∧∧
( ‥)脳みたいにエネルギーを
膨大に消費する器官も
それを維持するのは
厳しいのでは?
( ‥)でっかい体で
‐□ 脳の維持に割ける
エネルギーを生み出す
そんな感じかなあ...
体が大きくなると、新陳代謝もゆるやかになる。つまり効率的だ。効率的なら脳に回す余力も大きくなろう。
してみると、硫酸星人は体がでかくて、変温動物で、いつもいつもなんでもかんでも、とにかく手当たり次第に口にしては、くちゃくちゃ嚼んでいることになろうか? 呑み込んだ分だけ水を排水する必要もあるので、しょっちゅうトイレにいっていることになる。もっとも、人間から見れば不衛生とは正反対の生物だけども。
∧∧
(‥ )骨格はなんですかね?
\‐ 炭酸カルシウムとかは
普通に考えれば
溶けちゃうよね
(‥ )鉱物質の骨格は
持っていないのかな?
化学的な平衡状態とかそういうことをよく理解していないから、なんとも言えない。しかし、単純に考えれば、硫酸人間は高分子の強化された組織だけを骨格にして歩き回っているのかもしれない。もしかしたら骨格がなくとも巨大な体を支持、動かすことにむいた、多足の動物かもしれないし、咀嚼器官も人間のような鉱物質の歯ではないのかもしれない。丈夫な筋肉と角質の板ですりつぶすのだろう。でかい軟体動物のようなものかもしれぬ。
さて、ここまで考えてふと思い至る。
∧∧
( ‥)あのさ
ハルク・クレメントさんの
「窒素固定世界」に登場する
異星人オブザーバーは
硝酸呼吸だよね?
(‥ )ああ、たぶん
そうだろうな
硫酸呼吸をする生物は地球にいるが、硝酸で呼吸する生物も地球にはいる。そして窒素固定世界は大気中の酸素が全部硝酸になってしまった世界。
そういえば人間に捕まったオブザーバーは逃げ出すのだけど、すぐに人間の居住区で栽培されている硝酸植物を見つけて、それを食ってたよな。
連中はやたらに食うし、食う描写が多い。それも、必要なものを見繕って食べるのだ。
∧∧
(‥ )あれは硝酸呼吸の描写だ
\‐ そういうことですかね
そういえば
オブザーバーには
骨がありませんでしたよね
(‥ )ああ、
あれはそういうことか
今から思い出せば
納得できるな
考えてみれば作者ハル・クレメントという人はそういうことをする人であったと思う。「重力の使命」だと、メスクリン人は酸化ではなく水素による還元反応を代謝に使うのだが、それを暗示する場面があるのだ。
∧∧
(‥ )メスクリンの焚き火に
\‐ 肉を加えると
より燃えやすくなる
でしたっけ?
還元反応を促進する
酵素の存在を暗示する
場面ですよね
(‥ )作者がそう述べてたしな
これは、表面的にはあまりにもご都合主義だとも言える。酸化反応を促進する酵素があるからといって、地球の焚き火に肉を放り込んでも肉が焼けるだけだ。だが、言わんとすることは分かりやすい。例えばの話、酸素呼吸をしない宇宙人が人類の話を聞いた時、
過酸化水素水に肝臓を一切れ加えると激しく発砲して酸素が出てくる??? どういうこと??
あれは過酸化水素の分解を酵素が促進するためで、これは酸素呼吸に関連した機能なんだけども、それを知らない宇宙人はひどくめんくらうだろう。それを考えれば、メスクリン人の証言に人類が、なんだかさっぱり分からん、という反応を示す場面は、そのものずばりではないにせよあり得る話だ。
そして作者がこういうことを作品に、暗示的に練り込む人であるからには、異星人オブザーバーがやたらと物を食う事や、骨を持たないことがどういうことか、それはそういう設定があったということなんだろう(確かに思い返せばそういう場面や暗示や説明があったと思う)。
それに、硫黄化合物である硫酸よりは、窒素化合物である硝酸の方が量が 多そうに思えるし
∧∧
( ‥)それを考えると
硫酸星人よりも
硝酸星人ですかね?
( ‥)そういうことかなあ
‐□
一応、これはhilihiliのhilihili: 80年代、すでに飽和していたという可能性の続き
∧∧
(‥ )でもこういう設定って
\‐ 創作だと生かすのが
難しいよね
(‥ )人類とかけ離れた
異星人というだけでも
どうにもならなくなるのに
硫酸呼吸だの
硝酸呼吸だのと言われたら
困っちゃうよね
こういう作品が廃れたのは
分かるよなあ
考えてみればハル・クレメントさんの作品は、そんな血湧き肉踊るようなものではない。なんかすごーく地味だ。「20億の針」は少年が主人公なのに、ジュブナイル小説にありがちな冒険が無い。あるいは薄い。「重力の使命」は大人たちの惑星探査である。だがしかし、それに比べると「窒素固定世界」はかなりドラマチックな話だ。
∧∧
( ‥)骨無し硝酸呼吸なのに
ドラマチックときたもんだ
( ‥)でもあれもさ
‐□ 硝酸呼吸世界に移行した
未来の地球が舞台で
酸素マスクをした家族
その家族と連れ添う異星人
彼らを巻き込む人々の思惑
硝酸の海
赤茶けた空
水没した都市
そういう世紀末的な
地獄のような世界で
みんなが生きているから
ドラマになったんだよな
それに、硝酸世界に移行して、誰もが酸素マスクをつけねばいけない時、そんな拘束がまったくない異星人が誰よりも自由に動いて子供を助ける。そうであるから硝酸呼吸異星人の設定が生きてくるのだろう。
端的にいうと、硝酸呼吸星人が酸素地球にただ来ただけでは、ああいう話にはならなかったということだ。
∧∧
( ‥)じゃあなに?
色気出して
美少女型硫酸呼吸星人とか
萌え型硝酸呼吸星人とか?
(‥ )酸ですっぱい子か
そりゃまた冒険だな
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