自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2014年11月19日水曜日
存在とは....しかしもはや何もかもが手遅れである
存在とは何か?
∧∧
(‥ )答えようがないよね
\‐
(‥ )答えようがないね
でも次のように
考えてみればどうだろう?
それが存在する。それってどのぐらい確かな根拠があるの?
∧∧
( ‥)あなたはSFオタクという
言葉を使った
ではSFオタクとは
実在するのだろうか?
( ‥)実在するのか?
‐□ 問題はだよ
この場合のSFオタクとは
「寄生獣」良いよね
”いや、あれの元ネタは
「20億の針」だ”
そう言って
SF小説の知識を
ひけらかした人
という意味なんだよな
あるいはこの人に類似の行為をする人をSFオタクと便宜的に言っているだけにすぎないとも言える。
つまりこの話である=>hilihiliのhilihili: 今はね、トサカが流行りなんすよ
この使い方に関する限り、ここで言っているSFオタクとは、
泣きぼくろのある人
酒を飲むと泣き上戸になる人
ショートヘアの女の子が好きな人
という程度の意味にしかならない。
∧∧
(‥ )ある特徴を持った人
\‐ という意味でしかないね
(‥ )ある特徴を持ったものを
集めて指し示す
これだけだと
実在するとは言えないなあ
もちろん、個々の個人は存在するのだ。先の「寄生獣」は「20億の針」だ、と言った人は実在する。それに類似する行為を行う人も実在する。
問題は、では、個々の個人はいるが、それらはひとつの集合であると言えるのか? ということになる。
∧∧
( ‥)つまりSFオタクと呼ばれる
個人は存在するが
その個人をまとめた集合
”SFオタク”という集合は
実在するのか?
(‥ )小難しい話をすると
集合には
存在する集合と
存在しない集合が
あるんだけどな
例えばの話、すべての時計が正午を告げた。でっあるから時計が一つの集合として機能しているか? と言えばそうではないだろう。
∧∧
(‥ )時計は同じ時刻に合わせて
\‐ 動くように設定されて
いるだけだからね
この集合は集合として
存在しているとは言えない
(‥ )だがしかし
お互いに通信によって
時刻を合わせている
そういう時計たちなら
どうであろうか?
それは巨大なひとつの存在だ、と言って良いだろう。
∧∧
( ‥)それを言えば
サッカーチームは存在する
わけだね
(‥ )取りあえず相互作用を
していることは確かだな
もちろん、内部では様々な思惑が渦巻き、暗闘も葛藤もあろう。しかし、ひとつの目的に沿って組織化され動いていることには違いない。
あるいはこうも言える。
一致団結して動いているチームは存在が強い
反対に、観客席から人を適当に選んで、さあ、チームとして試合をしろと言われた場合、それは存在がひどく希薄であると
∧∧
(‥ )つまるところ
\‐ 存在する、しないとは
0か1かではなくて
有無の間のグラデーションで
あるのかもしれない
(‥ )最初に言った
SFオタクという
言い様の場合だと
これはこのSFのパクリだ
と主張する人のこと
それだけなのだ
この言葉のままなら
集合としての存在は
希薄だよね
少なくとも
ひとつの集合として
連動して動く奴ら
という指定はここにない
とはいえ、一方では言うではないか。
我こそはオタクの王者なり。
我が思うに、真のオタクはいなくなってしまったのである、と。
これは、存在に関する極めて強力な主張である。
∧∧
( ‥)実在する私は断言する
SFオタクは集合として実在する
私はその集合の一員である
そして私は集合の喪失に
抗議する
そう述べておりますよ
( ‥)少なくとも本人は
‐□ SFオタクという集合が
実在すると認識できた
しかめっつらしい、もったいぶった言い方をすれば、相互作用するひとつの系、とでも言うのか。
彼は主張する。SFオタクは相互作用するひとつの系として、確かにかつて実在したのであると。
もし本当にそういう形式でSFオタクが実在したと言うのであれば
∧∧
(‥ )その人が言っていることは
\‐ 昔はチームが実在した
でも今は
チームが存在しない
そういう嘆きである
(‥ )相互作用する
要するに自分たちの知識を
みせびらかしあって
競い合っていた
そういう場がかつてはあり
そして今はない
そういう嘆きだと
みなすべきだろうね
そういう意味でとらえ直した場合、冒頭で取り上げたSFオタクという言葉は途端に強烈な意味を持つようになる。実際、自らの存在と誇示の場を確信していなければ、それへの渇望がなければ、寄生獣は20億の針だ、などといちいち言わないだろう。
怒ったように知識をいちいちみせびらかすとは、表現の場、表現の舞台、見せびらかし合い競い合う、そういう相互作用の場を奪われたという怒りに他ならぬ。
∧∧
( ‥)つまり?
SFオタクとはかつて
集合として確かに
実在したのだと?
(‥ )少なくともご本人は
そう言っておるわけだ
でも新種にすべてを奪われて
絶滅の道を辿っているのだな
集合としての肉体を解体され
ばらけた個々の断片は無力で
しなびて死にかかっている
まるで破壊された
寄生獣のようにな
知識を見せびらかす、このような、生存に直結しない無駄を誇示する行為は進化的に非常に速く”成長する”一方で、とても不安定だと言う。
確かにそれはそうだろう。第一にそれは生存や存続という枠組みから離れている。つまり枠組みの中で安定する道理がない。さらにそもそも無駄でないと意味がない。言い換えれば無駄であれば良いのなら、誇示するものが流行り廃りで次々に交代するのが道理。
例えばの話、クジャクの尾羽、あれは実のところ進化的にはもう役割を終え、消滅する可能性があるものだとも言う。実際、すでにああいう無駄がブームとして過ぎ去って、二次的に装飾を失った種族も色々といるのだ。
ましてやSFとは文化の1形態であるに過ぎない。文化的なコピーと変異と伝承は極端に速い。つまり進化が速いのだ。しかも無駄となれば、それはもっとうつろいやすかろう。
∧∧
(‥ )SFオタクも
\‐ 不安定な進化の中で
廃れて時代遅れになって
新種に置き換えられていく
過程の真っ最中だと
(‥ )実際
このアニメ、
この漫画のこれは
このSFのパクリだ!
どやあ!
と言っている時点でな
置き換えと置換が
猛烈な勢いで
進行したという
ことだからな
さながら有機生物が機械生物に置き換えられるように、炭素生物が人造の器官としてケイ素生物へと置換され、置き換えられていくように。
お前らロボット共の手の指はな、俺たちホモ・サピエンスの指のぱくりだ、どやあ! と言ったところで、相手は はあ? と言うだけだ。
これはつまり、種族の交代が進行したこと、そしてその過程がほぼ完了してしまったと見るべきだろう。
そのアイデアはこのSFのパクリだ、と言った時点で、すべての置き換えがすでに済んでしまったということなのだ。肉体が次々と別のものに置き換えられ、世界と認識が変っていく過程。
何も知らぬ若造共め、そう、どや顔をする前に、これはまさに自分たち種族の落日と絶滅の兆候と見るべきだったのだ。更新と置換が進行して、過去は抹殺されたということに気づくべきだったのだ。
∧∧
( ‥)どうするべき
だったのでしょうね?
(‥ )さあ?
もはや滅びは避けられぬ。そう気がついた時にどうするべきだったのか?
故郷を捨てて太陽系の外へ逃げ出すべきだったのか?
もはや逃げ出すこともできぬ。座して母星がノヴァ化するのを待つしか無いが、せめて最外縁の惑星に自分たちの記録とモニュメントを打ち立てるべきだったのか?
あるいは自らも新人類として同化し、己の体のすべてを新しい要素に置換するべきだったのか?
あるいは反対に、我こそは最後のSFオタクとしてアニメや漫画という化け物たちと戦い続けるが、最後に捕まり、そして今や自分こそが醜い時代遅れの怪物として恐れられていたことを知って終わるのか?
あるいは、蛋白人間から電子人間になるように、自らを全く別の媒質上で模造し、それを起動させ、自らを自らの後継者とするべきだったのか?
∧∧
(‥ )でもまあ
\‐ 置き換えが完了したってことは
そんなことを
わざわざする必要はもはやない
そういうことだよね
(‥ )ようするにすべてが
手遅れなのだな
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