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2014年11月20日木曜日

80年代、すでに飽和していたという可能性

 
 そういえばふと思い出したことがある
 
 ハル・クレメントの書いた小説「窒素固定世界」
 
=>The Nitrogen Fix - Wikipedia, the free encyclopedia
 
 これを評して曰く、SFはすべてのアイデアが出尽くした。後はアイデアの組み合わせだけだ、そう言う人もいる。だが、この「窒素固定世界」を見よ、と。
 
 ∧∧
(‥ )出版は1980年
\‐  日本語版は1984年
    ようするにあれだね
    SFは80年代において
    すでにアイデアが枯渇していた
    そういうことだね
 
  (‥ )実際に枯渇し切った
      わけではない
      「窒素固定世界」が
      その証拠である
      そういう話なんだが
      裏を返せば
      飽和状態にあった
      そういうことだろうな
 
 「窒素固定世界」は惑星の大気進化を扱ったSFであった。例えば地球では光合成生物が出現することで分子状酸素が大気中に放出された。これによって、それまで存在した二酸化炭素やメタンなどからなる大気は、窒素と酸素が主体となった大気へと変貌した。そうして酸素呼吸生物も誕生した。
 
 窒素固定とは現在でも一部の生物が行うことで、窒素は蛋白を作るのに必要な元素である。大気中の窒素を、肉体を構成する要素、あるいはそれに利用可能な分子として固定する。それが窒素固定。例えばマメ科の植物がやせた土地でも成長できるのは、彼らが根に共生させている細菌が窒素固定を行うので、その生成物を利用できるからだ。
 
 「窒素固定世界」とは、知的生物が関与することで惑星の大気が次のフェーズへ進行してしまった状態を描いたもの。つまり、食料増産のために大気中の窒素を固定する植物を技術的に作り出す。そうしてある条件が整うと、それが爆発的に繁茂を開始する。
 
 大気中にあった酸素は、窒素酸化物を作るためにすべて消費される。結果的に惑星の大気から酸素は失われ、それを阻止出来ずに、知的種族はそれまで栄えていたすべての酸素呼吸生物ごと全滅する。そうして全く異なる、新たな生物群が繁栄する世界へと惑星は移行する。
 
 窒素固定によって生産された硝酸で海は酸性となり、空は窒素化合物で赤茶けて濁り、酸性化した海から放出された二酸化炭素で温暖化が進行した世界。これは様々な酸素惑星で起きる事であり、それが地球でも起こった。
 
 そういう設定だ。
 
 要するにこれまで作者ハル・クレメントが描いてきた、地球と化学的に異なる異形の惑星という設定ではなく、異形の惑星になってしまった未来の地球と、なんとか生き延びた人類、そしてそこにやってきた宇宙人オブザーバーたちを描く物語。硝酸によって金属が使えない人類は水没した遺跡からガラスを回収して道具として使う。窒素固定後の世界で進化した種族オブザーバーは、空気を呼吸することがないため、必然的に音声ではなく、神経を直接接触させることで意思と知識を伝達する。
 
 ∧∧
( ‥)これは確かに非常に
    斬新なアイデアであったのだと
 
  ( ‥)そしてひるがえれば
    ‐□ 当時SFはすでにアイデアが
      枯渇しかかっていた
      だからこれがいわば
      衝撃であった
      そういうことだよな
 
 もちろん、こんなたったひとつの事柄からジャンル全体の傾向を論じることに異を唱える人もいるであろう。だがしかし、次のように考えることが出来るのも、また事実。
 
 SFオタクは、このアニメのこの設定はこのSFのこれこれだ、と無駄に知識をひけらかすが、なぜだろうね?
 
 そういう苦言に対して、こう答えることが出来るのではなかろうか?
 
 SF自体が80年代にはすでにアイデアが枯渇して、アニメうんぬん関係なく、SFというジャンルの中ですでに「この設定はこれこれが元だ。こんなのをありがたがってどうするんだ??」そういう内ゲバみたいなことをしていたんじゃねーの?
 
 少なくともこの疑惑はぬぐえない。
 
 今から30年以上前、このジャンルはすでに飽和して、未来などなかったのではないのか? という疑義
 
 ∧∧
(‥ )まあ、今でもこのアニメの
\‐  この場面はこのアニメの
    パクリだ! とか
    熱心に言い立てる
    アニメファンがいますからね
    漫画ファンにもいるし
    小説のファンでもいるし
    どこのジャンルでも
    自分の知識を
    クジャクの尾羽として
    誇示したい人はいるのだと
    そして30年前
    すでにSFは
    飽和状態であったのだと
 
  (‥ )アイデアが飽和する
      そうなるとさ
      クジャクの尾羽という
      自慢大会自体が
      成立しなくなるんだよな
 
 そういう時に流行りの小説と物語の形式が古い相を放棄し、次のフェーズへ移行する。これは当然ではなかろうか?
 
 人間の想像力は無限かもしれないが、物語として成立する設定となるとあからさまに有限である。物語は人間の認識や神経回路に制限される。そして現実もまた物語に制限をくわえる。物理的、化学的、生物学的、社会的な制限がどうしても加わる。
 
 それを考えればどんなジャンルも早晩、飽和してしまうのは当然であろう。これは別に自慢大会で尾羽を広げる一部の”オタク”に限ったことではない。同じものを何度も見せられると、もっと大量にいる声を上げない消費者たちも飽き始めるのだ。彼らは次を求めだす。ホラーやファンタジーがその受け皿になるのは当然。これらは人類と共に歩んできた、古い、古い、ジャンルであり文化なのだから。
 
 ∧∧
( ‥)ジャンルが飽和したら
    次のフェーズへ移行する
    これはいわば
    リセットみたいなもの
    ですかねえ
 
  ( ‥)どこかでリセットして
    ‐□ もう一度新鮮な気持ちで
      始める
      それはどんな分野でも
      必要なことだろうな
 
 それを考えたら、このアニメのこれはこのSFのこれこれだ、と乱入する人は、現代世界に迷い込んだ、滅亡した古代文明の生き残りみたいなものかもしれない。
 
 
 ∧∧
(‥ )でもアイデアが伝承されて
\‐   いるのだとしたら
     SFは文化としては
     アニメという子孫を
     残せたわけだよね
     だとしたらむしろ
     喜ぶべきじゃ
     ないですかね?
 
  (‥ )文化としての存続ではなく
      自分の知識を見せつける
      尾羽誇示の場として
      好きだった
      やっぱり
      そういうことじゃないか?
 
 ただ、「窒素固定世界」のアイデアが伝承されたのかは、知らない。
 
 ∧∧
(‥ )大気進化が別フェーズへ
\‐  移行する
    これはちょっと難しいかもね
 
  (‥ )人類の活動で大気が
      汚染されすぎて
      酸素が消滅した未来とか
      そういう話はあるのだがな
      「窒素固定世界」は
      アイデアが特異だから
      伝承が難しいよなあ
      

 これはhilihiliのhilihili: 存在とは....しかしもはや何もかもが手遅れであるの続き
 
 
 
   
  

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