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2012年1月31日火曜日

粛々たる埋葬

 以前、見た光景、トンビとカラスがバトル中。トンビは大きいが、カラスの方が旋回能力があるので通常、空中戦ではカラス優勢なるものの、今回はトンビとカラス、互角。しかしそこへさらに1羽のカラスと、どういうわけか周囲を根城にしているオオタカが参戦。3種族、4羽、三つ巴の大乱戦に
 
 
   ( ‥)悲しみのなーいー
       自由な空へー
       翼ーはためーかーせー♪
 ∧∧
( ‥)うーそーだー!!
 
 
 均衡状態のなか、戦いは散会。
 
 アーサー・ケストラーの「真昼の暗黒」を買う。
 
 ∧∧
( ‥)おや、小説を買うなんてめずらしいですね
 
    ( ‥)アーサー・ケストラーは
      -□ ヨハネス・ケプラーに関する印象的な
        本を書いていてね、その参考だ。
        手隙な時に読む予定さね。
 
 ケプラーの考えでは重力と慣性力が実際とは逆の役割をはたしていたが、そこには後のニュートンにつながる重力理論の萌芽が見られる、というのは
 
 ∧∧
(‥ )確かに、ケプラーさんの著作を
 □-  読むと、その評価は正しいし
    的を射ているように思えますね。
 
    (‥ )アーサー・ケストラーの著作
        「ヨハネス・ケプラー」がしばしば
        引用されるのは、こういうこと
        だろうね。薄いけども重厚な本でね
        なかなかにすばらしい。
 
 それにしてもアーサー・ケストラー。ずっと以前にもどこかで聞いた名前だよな、と思っていたら。
 
 ∧∧
( ‥)ケストラーさん、「サンバガエルの謎」の
   作者ですよ。
 
    (‥ )中学生ぐらいの時に本屋で手にして。
     □-  「獲得形質? 何言ってるの??」
        と思って買わなかったやつだわ。
 
 ∧∧
(‥ )ケストラーさんは小説家でジャーナリストで
 □-  いわゆるユダヤ人で、共産党に入って
    スペイン内乱に参加して、共産党とスターリンに
    失望して脱党して、ソ連内部での粛正を
    題材にした「真昼の暗黒」でフランス共産党や
    知識人から大バッシングを受けて..そういう
    経歴みたいですね。
 
    (‥ )興味深い。スペイン内乱に参加したのは
       「1984年」のオーウェルと同じ(親交が
        あったという)。スターリニズムとかに
        絶望したのも同じ。ユダヤ人で共産党や
        マルクスつながり、さらにはダーウィニズム
        を批判しようとしたのはグールドと
        ある程度、共通するわけだ。
 
 これは面白い。
 
 *注:グールドはしばしばガチガチのダーウィニストだと勘違いされるが、実際はまったくの逆。彼の理論や理解や主張は、ダーウィンやその後継者のものとは似ても似つかないなんか変なもの、というのが正しい。彼が否定した理論、斉一的で漸進的な進化、社会生物学、個体間どころか遺伝子の間でさえも起こる競合、さらには分岐学、これらすべてが結局は現在のスタンダードであって、このすべてにおいて彼が敗北したこと、マルクス主義者だったことは非常に印象的。
 
 ∧∧
( ‥)あの当時の知識人はなんとか
    自由になりたい、と思った
    そういうことでしょうか?
 
   ( ‥)血統によるレッテル貼りで絶滅収容所に
     -□ 送られるかもしれない。そういう
       体験や目撃をするとダーウィニズムや
       遺伝的決定論を否定しないと、自分たちは
       自由になれない。生存競争を否定しないと
       自分たちは資本主義に圧殺される、そう
       思い込むのかもしれないなあ。
 
 ∧∧
(‥ )自分たちでは品種改良で作った家畜や野菜を
 □-  食べて生活しているのに、自分たちは遺伝子から
    フリーダムだと考えるって妙じゃありません?
 
    (‥ )だから人間は特別だって言い出す
        のかもしれんね。端から見ると
        ちょーごーまーん、なんだが。
 
 すばらしい、なかなかに興味深い。実際、旧世代たちは自由になろうと見果てぬ夢を追いかけて、結局挫折しただけであった。大空の向こうにも自由はないし、そもそも羽ばたく翼さえ持っておらず、無理に持とうとしたらそれは無惨にへし折れた。実に痛快。
 
 ∧∧
( ‥)調べますか
 
    ( ‥)ああ、そしてかつての敗残兵たちを
      -□ 粛々と埋葬しよう。
 
 空を飛ぶなら、鳥のように、逃げるためではなく、生きるために飛ぶべし。
 
 

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