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2009年9月5日土曜日

分布はどうして産まれるの?

 
 人間は情報を鵜呑みにする人が圧倒的に多く、考える人はどうも少ないらしい。しかも考えていれば妥当な答えに必ずたどり着けるというわけではない。自力でたどり着ける人とつけない人とがいる。そしてどういうわけか自力でたどり着ける人の方が圧倒的に少ない。つまりこう。

鵜呑みにする人>考えるが自力では正しい答えにたどり着けない人>考えてなおかつ自力で答えに到達できる人

 ∧∧
( ‥)その数を不等式で表すとこうですね

    (‥ )そうなるなあ。

 まあこういうことはほとんど誰もが経験的に見聞きする事柄で、たぶんこの構図を疑う人はほとんどいなさそう。実際、例えばどこかで”問題”を見た場合、それをあえて”解こうとしない人/する人”とに分かれるし、する人の中でも”解ける人/解けない人”がいるわけで。それはやはり

 解こうとしない人>解こうとするが正しい解答を見つけられない人>解こうとして実際に解ける人

 ∧∧
( ‥)とっ、なりますよね。

    (‥ )なるよねえ。

 場合によっては、例えばものすごく簡単な常識問題という場合にはこれは齟齬するとは思うけども、ここでは平均よりも難しいとされる問題を考える。ともあれ、どうしてこんな分布になるわけ?

 ∧∧
( ‥)まあ、当たり前っちゃ当たり前なんですよね。

    ( ‥)めんどくさい何かを検討するにはエネルギーがいる。
        大部分の人間はそんなことをせずに流す。
        流さずにあえて解答を探した人のうち、問題が難しく、
        誤答する人が多くなったら場合、以上の配置は
        すべからく実現するよなあ。

 だが一部の人が嘆く状態。つまり、

 なんでこいつらは教科書も読まずに俺様理論を考えて悦にいって、あげくの果てに研究者は間違っているんだ、俺様理論の正しさが分からない馬鹿ばっかりなんだ、と言えるわけ?

という状況はさてどうして生ずるものか? なぜ教科書を読まない。なぜリサーチもしないでスタンダードな仮説を否定し、あげくに俺様理論を展開できる?

 ∧∧
( ‥)何が不思議なんですか?

    (‥ )だって教科書にあたるような本を買えば
        これは取りあえず、すむ話だろ?

 なんのこっちゃない。数千円か1万円か、2万円弱くらいかけて、そいでもって本を読めばすむ話。だって答えが(あるいは答えの参考になりそうな情報や、さらには考え方が)そこに書いてあるがな。別に難しい話でもなんでもない。

 ∧∧
( ‥)それをしていないと。

    (‥ )そもそも読んでいない、というか、読むという発想が
        ないらしいんだよな。

 さながらこんな状態。

あの本を買えば問題の答えが書いてあるのに、その本を買わず、読まず、そのまま自分で解答を思いつくのだが、それが見当はずれの大間違いで、しかも本人それに気づかず。そしてそのあまりの駄目っぷりに文句をつけられた研究者があきれ果てるという構図。

 ∧∧
( ‥)まあごくまれに考えたその人の答えが正しかったって
    こともあるにはあるんですよね。

    (‥ )いるけど、そういう人ってちゃんと教科書を
        読んでいるもんだけどね。
 
 でっ、こう考えた。これは単に支払うコストと利益の問題か?

 例えばの話、人間誰でも支払うコストは最小限にしたい。だったら本は買わないし読まないのは当然。時間も金も節約です。時間は時給で、結局は金だしね。それにしてもずいぶん小さなコストを削ったもんだ。

 ∧∧
( ‥)そういうコスト削減の見返りで手にした利益は何?

    (‥ )なんかおれ、すげーの考えたって満足感じゃね?

 ∧∧
( ‥)それで満足なんですかね?

    (‥ )だっていわゆるトンデモさんって自慢してるじゃんよ。
        クジャクの無駄な尾羽と同じくらい自慢してる。

 じゃあ研究者やまともな院生はなぜこうはならないのか? まあ、もとから出来がいいだけなんじゃねーの? 先天的にさ、とかそういうことは抜きにしてコストとベネフィットでもっともらしく書いてみる。

 ∧∧
( ‥)彼らがまっとうなことをして手にする利益はなんでしょうね?

    (‥ )賞賛、実力に裏付けられた科学社会でのステータス
        安定的な収入、あわよくば科学史に残る永遠の業績
        ってとこかな?

 ∧∧
( ‥)では、なぜコストを払ってまでそんなことをするんでしょうね?
    だって研究って意外と命がけでしょ?

    (‥ )利益が彼らにとって大きいからとも言えるけど、
        減点するに値すると評価された時のペナルティが、
        あるいは支払うコストが巨大すぎるんじゃないの?

 例えばの話、素人の世界で本を読まない、論文読まないは、一応、冗談ですむけども研究者の世界ではそうはいかない。皆から、あっ、駄目だこいつ、とレッテル張られてはいおしまい。 まあ、端から見ていると、いいのかこれ? とこちらが思ってしまうくらいに無神経だったり鈍感だったり、あるいはもうすっかり老いぼれていてレッテルを気にしない人もいるけども、なんというか、まあ、普通の場合、

”ああ、こいつ必要な資料を自分で調べることもできないやつなんだ”

という評価は、もはや死刑宣告も同然。

 ∧∧
( ‥)でもまあ、理系って本来そういう世界ですよね。

    ( ‥)端から見ている限りでは彼らは職人気質で
        学生を手取り足取り教えたりしないからな。

 そういえばこんなことがあった。ある研究者がいった。自分で調べないような学生に物を教えたって無駄だと思うよ。そりゃあごもっとも、と北村が思っていると、別の同業者がこう言った。いや、でもまだ学生ですから教えてもいいんじゃないでしょうか?

 ∧∧
( ‥)でっ、あなたはそれに納得しなかったんですよね?

    (‥ )だってさ、その人、
        自分じゃなーんにも調べない人なんだよ? 

 だから思う。自分で調べない人に説明を試みる必要はない。どうせ理解しないから。

 そして思う。めんどくさいとコストを削減したあげくに手にしたものは小さな妄想という爽快感だけってのは、いかがなものでしょうかと。

 


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