自己紹介

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2014年10月27日月曜日

面倒くさくて危険 それが扉

 
 ∧∧
(‥ )嘘か本当か
\‐  35歳なんだけど
    もう採算が取れないから
    漫画家をやめたい
    そういう愚痴がネットに
    上がってるね
 
  (‥ )35歳かあ
     取ってつけたような
     そのまんまな数字だなあ
     まるで作り話のようだね
 
 人の能力は体力と経験の合算から成り立っている。
 
 体力の低下による作業効率の低下
 経験の向上による作業効率の上昇

 この二つを加味した時、人間のピークは40歳である。

 40歳を過ぎた以上、後は落ちる一方だ。  
 
 ∧∧
( ‥)それを踏まえた場合
    40までに事業を軌道に乗せて
    実作業はアシスタントにまかせ
    自分は経営者として
    第一線から退き
    安定的な飛行が 組織として
    継続できるようにする
    40がタイムリミットで
    あることを考えれば
    そこに至る数年前までに
    事業に目鼻をつけねばならぬ
 
  ( ‥)切りの良いところで
    ‐□ 区切れば
      それが35歳なのだ
 
 言い換えると、35歳で事業に目鼻をつけるにまで至らなかった場合、後は落下する一方となる。人工衛星になれず軌道に乗れなかった者は、単なる弾丸となって着弾する運命。
 
 ∧∧
( ‥)あなたなんて
    軌道に上がるどころか
    35歳でようやく
    とっかかりを得ただけ
    ですけどね
    しかもイラストレーターだし
    もう45だよ?
 
  ( ‥)まあ、そういうわけでだな
    ‐□ 着弾どころか
      飛ばないままの飛行機は
      風力で地上を走行中よ
 
 風に流され、からから音を立てながら動いていく始末。そうして時々、空から落下してくる人々をぼんやり眺めるのみである。
 
 落下する人が着弾すると、派手に土煙が....と言いたいところだが、そんなことは起きないし、見えもしない。
 
 軌道から落下するに従って人々の知名度はどんどん下がる。着弾する時には誰もがすでに無名だ。彼が地面に叩き付けられる音も悲鳴も、もはや聞こえない。
 
 大空には色々な人が飛び交っているのが見えるし、怒号や悲鳴も聞こえてくるが、地上はおそろしく静かなままだ。
 
 ∧∧
(‥ )正社員と違って
\‐  漫画家さんや
    イラストレーターには
    保証がありませんしね
 
  (‥ )当然だけども
      出版社は社員である
      編集者に関して
      責任を負っているのだ
 
 それはいつでもどこでも同様である。例えば、知っているイラストレーターで某企業に雇われている奴がいる。絶対的には中小企業ではあるが、その業界では一番の大手だ。だが彼は、いや、彼らは発注を受けているだけで、雇用関係にあるわけではない。
 
 ∧∧
( ‥)いつ関係を切られても
    文句は言えないのである
 
  ( ‥)会社だって馬鹿ではない
    ‐□ いつ使い物に
      ならなくなるか
      それが分からん奴を
      保証付きで高額で
      雇ったりはしないものよ
      大損害だからな
 
 ブームが終われば生産体制を大きく変える必要がある。その時のために雇わず、そして発注し、良いように使って、いざとなれば切り捨てだ。そうでなければ会社も正社員も雇用も守れない。そういうものだ。
 
 ∧∧
(‥ )あなたのお知り合いは
\‐  それ分かっているのですかね?
 
  (‥ )さあねえ?
      でも彼らは30、40を
      過ぎているのだよ。
 
 切り捨てられた時に、そんなことは分かりませんでした、ではすまされない歳だ。これは確かであろう。
 
 会社に名刺を作ってもらった。そう少しだけ嬉しそうな顔をしていたけども、名刺は所詮、名刺だ。保証ではない。
 
 ∧∧
( ‥)あなたも他人事ではないよね
 
  ( ‥)まったくだな
    ‐□ 依頼元は複数ある
      だがしかし
      いつ切られるか
      分からんからな
 
 まあ、とはいえ、救いも無いわけではない。
 
 ∧∧
(‥ )出版界は何が起こるか
\‐  分からないですからね
 
  (‥ )売れる売れないの
      因果関係が
      さっぱり分からないのでな
      なぜこれが売れないのだ?
      ということもあるし
      これは普通に売れるけど
      普通に売れるだけだよな
      ということもあれば
      時として
      何か分からんけど
      めちゃくちゃ売れてる
      なんで???
      ということも起こる
 
 動態が複雑な世界ではこういうことが起こる。
 
 確かに90年代の出版界を知っている人は、今のこの業界には絶望しているようだ。ネットに分母を食われたせいか、かつてぶいぶい言わせた漫画家やライターたちが、浸食によって青色吐息となり、絶望にその身をこがしておる。
 
 ∧∧
( ‥)だけど出版界とは
    得体の知れないことが
    まだ起こる世界である
 
  ( ‥)他の業界じゃ
    ‐□ こういうことは
      あまり起きないのでな
      自由と可能性がなく
      賭けの余地がない業界が
      どんな顔をしてるか
      それは知ってるよね
 
 昨今の人が申し述べる絶望とは、自由と可能性が無く、賭けに出る余地がまったくないことにある。
 
 だがしかし、出版界にはまだそれがあるのだ。
 
 いや、無い! と叫ぶ人も、結局は空を仰ぎ見ながら、なぜ俺はあそこへいけなかったのだろう? と嘆きながら言っている。可能性が無いのではない。自分には可能性が無かった...そう言っているにすぎぬ。
 
 ∧∧
(‥ )でも言い換えればさ
\‐  絶望にうちひしがれる人は
    出版界にもいっぱいいる
    そういうことだよね
 
  (‥ )そりゃそうだろうな
      一生懸命作ったものが
      まったく売れない
      それは存在を全否定された
      ようなものだからな
      漫画家だろうが
      イラストレーターだろうが
      ライターだろうが
      編集者だろうが
      それで絶望しない人間は
      むしろおかしいだろうね
 
 ∧∧
( ‥)どうしたものでしょうねえ
 
  ( ‥)今までの経験からすると
    ‐□ 駄目だった
      ということは
      今までにやっていない
      ことをやれ
      そういうことなんだが
 
 ∧∧
( ‥)それは面倒くさいね
 
  (‥ )面倒くさいどころか
      危険だろうな
      実際、失敗の可能性は
      大きいだろう
 
 とはいえ、しかし、賭け、とはそういうものである。そして賭場でない限り、高揚感は生まれないし、可能性の扉も開かないものだ。
 
 面倒くさくて危険。それが扉。
 
  
 
    
    

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