自己紹介
- 北村雄一(北村@)
- イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック
2014年8月23日土曜日
要するに君は最終回が見たくないのだな?
科学はもう発展しない方が良い。
∧∧
(‥ )まあ、正論かもね
\‐
(‥ )農薬と化学肥料で
食料生産は飛躍的に
伸びたけども
医学の発達で
死亡率は下がり
人口がひたすら増える
農業と工業力が
維持可能な許容一杯まで
増加する
貧困は根絶不可能で
我々に未来はない
状況は悪化するだけで、それは時間の問題だ。
技術が引き起こした問題を解決するために新しい技術が、その技術が引き起こした新たな問題を解決するためにより新しい技術が。技術を維持するたびに状況は複雑化し、しかし問題自体の根本的解決はなし得ていない。
∧∧
(‥ )そりゃあ物理的な制約が
\‐ あるからね
(‥ )このひた走る状況を
是正するには
科学技術を放棄して
昔に戻るべきだ
そう考えるのは
当然だろうね
医学を放棄して死亡率を上げれば良い
化学肥料と農薬と品種改良を放棄して作物の生産量を激減させれば良い
石油も石炭も放棄して物流の強大な力をそいでしまえば良い
地球人口は急減して、状況の速度ははるかにゆるやかになる
∧∧
( ‥)後は極貧と多数死による
安定した世界が
残される
少なくとも状況の進展は
1万分の1ぐらいにまで
落ちるでしょうね
(‥ )問題はだ
”そのユートピア”は
実現不可能である
そこだよね
科学と技術と医学と農業技術と化石燃料を放棄しよう。
これ自体は簡単だ。
だが、その取り決めを守らないものが一人でもいたら、彼が世界の覇王となる。彼が覇王となるのを阻止するために他の誰もが技術を放棄しない。
つまり話は単純だ。放棄したものから食いつぶされ、残されるのは絶えず放棄しなかった者たちだ。状況は整理されるが、残されるのは爆走する国家群だけである。というか、今、起こっているのがそれではないか。
∧∧
(‥ )それでもユートピアを
\‐ 建造するとしたら
逸脱をゆるさない
暴虐の
管理社会になるしかない
(‥ )1984年のようにだね
一般的には誤解されているが、小説1984年の世界はディストピアを描いた小説ではない。あれは完璧なユートピアを描いた小説だ。核戦争とその破壊力に恐怖した人々が、もう二度とこんなことは御免だ。そう考えて集い、通常兵器による戦争を永久に継続しよう。そう取り決めた世界だ。
戦争の永久継続によって勝ち負けがない世界にしよう。生存競争と淘汰のない永久に続く楽園を作り出そう。負け組がない世界を作ろう。最低の労働者も、最高の指導者も、誰もが平等に過労死できる社会にしよう。社会を変革してしまう科学と技術を放棄しよう。みんなでこの楽園に永住しよう。それを乱す異分子は細心の注意を払って取り除こう。そうしないと、このガラスのような平和とユートピアは崩れてしまうから。
戦争の無限継続に基づく絶対平和
絶対平和に基づく無謬の管理
無謬遍在の管理に基づく楽園の永劫継続
これが1984年、科学と技術を放棄して、前に進む事を諦め、引きこもりの道を選んだ人類が維持する永久と諦めのユートピア。
∧∧
( ‥)でも実際は1984年なんか
実現するわけがない
(‥ )誰か、必ず裏切り者が
いるのだ
1984年の指導者たちは現実的に言うと楽観的すぎるとも言える。彼らがしていることは敵を信頼し、仲間を信用する甘い考えでしかない。愚劣。
∧∧
(‥ )人間はそんな動物ではない
\‐
(‥ )我らは全体主義などと
ロマンチックに
呼称してもな
個体は集合には染まらん
どんだけ甘っちょろい
考え方をしているのだかな
言い換えると、人間の未来に1984年はないのだ。
∧∧
( ‥)すると残された道は
破滅の道だね
(‥ )地球全体の植生を破壊し
気候を変え
農業それ自体で
農業を破綻させ
人間以外のすべての
動物を抹殺してしまうのだ
これ以外の未来は
我らにない
そして、タンパク源が人体しかなくなった未来では、人肉食が成立することになろう。
∧∧
(‥ )植生を食い尽くしたり
\‐ 家畜を喪失した
孤島で起きたことだよね
さすがに地球規模では
起こらないだろうけど
(‥ )家畜の喪失は
地球のような巨大な
世界では起きにくい
だろうからね
でも状況は近似だぞ
他の生物を構成する元素をことごとく人体に変えているのである。人間の死体を構成する元素からほぼ直結して食料を生産しなければ食料生産が間に合わなくなる。
こういう状況は破滅的で、ついには複雑で高度化した社会を維持できなくなることは確実だ。社会は流動している。水が容器一杯にあふれて内部で渦を巻き、乱流を作り出したら何が起こるか道理であろう。物事は安定なんかしないのだ。そうではなく、物事は安定解へと崩壊しようとする。
そもそも、社会を維持することも、生きていることも、その維持には膨大なエネルギーを費やさねばならない。生きた人間と都市ではなく、死んだ人間と都市の廃墟こそがエネルギー最低に近い状態であり、これこそが安定解なのだ。
つまり、死体と廃墟へと至ること、これこそがこの世界の道理。この道理には、なんびとも逆らえない。
∧∧
( ‥)つまりあなたたちは
生き延びるために
今、戦っているわけではない
最後に死ぬ権利を求めて
殺し合いをするのである
( ‥)これは楽観的な世界観でな
‐□ 物事にすっぱりとした
終わりがある
視聴者に安心を与える
価値観なのだ
古今東西、すべての人ではないにせよ、世界には終わりがある、人はしばしばそう言ってきた。それを考えれば、以上のような未来への展望は、人々に対して希望を与えるものであること疑いない。
言い換えれば、現在の工業社会は発展の限界と繁栄の頂点から崩れ去り、世界は破滅へ下る、この未来像はあまりにも楽天的なのだ。実際、正確には以上のようにはならないだろう。現実はもう少し複雑だ。事実、何でも誰でもだらだらと続いて見苦しいではないか。私たちは死体と廃墟でいることが安定解なのに、楽に死ぬ権利すらない。
∧∧
( ‥)でもあなたはそれでも
この未来を現実的であると
確信していると
(‥ )方向性は正しい
それを確信しているし
望んでいるのだな
というかだな
最後に死ぬ権利を
勝ち取る戦いに
是非とも貢献いたしたく
なんといっても、最後に死ぬ権利を手にするとは、最終回を見れる、ということなのだ。最終回を見れぬままに死んでいった、あまたの勇者たちを思い出せば良い。彼らには申し訳ないが、この特権を手放すのはあまりにもおしい。
∧∧
(‥ )...まあ、あなたの一生では
\‐ ちょっとたどり着けないけどね
(‥ )そうかもね
でもひるがえれば思うな
技術と科学を捨てよ。ああ、もう歩くのに疲れたのは分かるし、膝を抱えて座り込みたくなるのも自然だろう。だがしかし、それはちょっとつまらない。それ以上に、現実的な選択肢でも認識でもない。というか、あなたは最終回が見たくないだけだ。なぜそんなことになってしまったのか?
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